先に結論
年末のおせちや年始の福袋のように、商品を受け取る前に代金を払う注文は、特定商取引法の「前払式」の通信販売に当たります。消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、事業者が代金を受け取り、その後、商品の引渡しに時間がかかるときには、申込みを承諾したかどうかなどを記載した書面を渡さなければなりません(法第13条)。つまり、払ったのに何の通知も来ない状態は、事業者側の義務が果たされていない可能性がある状態です。まず広告と最終確認画面に表示されていた引渡時期を保存し、広告に表示されている事業者の氏名(名称)・住所・電話番号あてに、承諾の有無と引渡時期を確かめます。
そもそも「通信販売」とは
特定商取引法の規制対象となる通信販売は、販売業者または役務提供事業者が「郵便等」によって売買契約・役務提供契約の申込みを受けて行う商品、権利の販売または役務の提供のことです。消費者庁の説明では、新聞や雑誌、テレビ、インターネット上のホームページ(インターネット・オークションサイトを含む)などの広告や、ダイレクトメール、チラシ等を見た消費者が、郵便や電話、ファクシミリ、インターネット等で購入の申込みを行う取引方法を指します。ただし「電話勧誘販売」に該当する場合は除かれます。
「郵便等」には、郵便または信書便、電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器または情報処理に用いられる機器を利用する方法、電報、預金または貯金の口座に対する払込みのいずれかであれば該当します。販売を業として営む者であれば、個人でも法律上の「販売業者」になり得ると説明されています。
前払式のときに事業者が渡さなければならない書面
消費者が商品の引渡し(権利の移転、役務の提供)を受ける前に、代金(対価)の全部あるいは一部を支払う「前払式」の通信販売で、事業者が代金を受け取り、その後、商品の引渡しに時間がかかるときには、申込みの諾否等、次の事項を記載した書面を渡さなければなりません。
- 申込みの承諾の有無(代金を受け取る前に申込みの承諾の有無を通知しているときには、その旨)
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
- 受領した金銭の額(それ以前にも金銭を受け取っているときには、その合計額)
- 当該金銭を受け取った年月日
- 申込みを受けた商品とその数量(権利、役務の種類)
- 承諾するときには、商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)。これは期間または期限を明らかにすることにより行わなければならない
承諾しないときには、受け取ったお金をすぐに返すことと、その方法を明らかにしなければならないとされています。なお、商品の引渡時期等について「遅滞なく」申込みに係る商品を送付する場合の「遅滞なく」とは、取引の実態からみて1週間程度だと説明されています。
広告と最終確認画面に何が書かれていたかを保存する
通信販売は隔地者間の取引で、販売条件等の情報はまず広告を通じて提供されます。そのため特定商取引法は、広告に表示する事項を定めています(法第11条)。そこには販売価格(送料についても表示が必要)、代金の支払時期・方法、商品の引渡時期、申込みの期間に関する定めがあるときはその旨と内容、契約の申込みの撤回または解除に関する事項(返品特約があればその内容を含む)、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号などが含まれます。
引渡時期について消費者庁は、消費者からの注文を受けた後に商品が消費者の元に届く時期をいい、期間または期限を表示することが必要だとしています。特に前払式の通信販売の場合には、申し込んでいつ商品が引渡されるか分からないと購入者の地位が不安定になるので、明確に表示しなければならないとされています。適切な表示例として「代金入金確認次第、速やかに商品を発送します。」「代金入金確認後、○○日以内に発送します。」が、不適切な表示例として「入金確認前後に週3回程、発送します。」が挙げられています。
インターネット通販では、事業者が定める様式に沿って申込みを行う「特定申込み」に当たる場合、最終確認画面に分量、販売価格、代金の支払時期・方法、商品の引渡時期、申込みの期間の定めがあるときはその旨と内容、申込みの撤回または解除に関する事項(返品特約があればその内容を含む)を表示するよう定められています。注文直後の画面やメールが残っていれば、まずそれを保存します。
解約や返金を妨げる行為は禁止されている
特定商取引法は、通信販売の契約の申込みの撤回または解除を妨げるために、撤回・解除に関する事項や契約の締結を必要とする事情に関する事項について、事実と違うことを告げることを禁止しています。また、申込みの撤回等ができることから契約当事者双方に原状回復義務が課された場合に、事業者が代金返還など債務の履行を拒否したり、遅延したりすることも禁止されています。
これらの行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示や業務停止命令、役員等の業務禁止命令等の行政処分の対象となり、一部は罰則の対象にもなります。誇大広告や、著しく事実に相違する表示、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示も禁止されています。
届いた後に「思っていたものと違う」ときの8日
通信販売では、消費者が売買契約を申し込んだり締結したりした場合でも、その契約に係る商品の引渡し(特定権利の移転)を受けた日から数えて8日以内であれば、事業者に対して契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます。ただし、事業者が広告であらかじめ、この撤回や解除につき特約を表示していた場合は、その特約によります。返品に関する事項(返品の可否、返品の期間等条件、返品の送料負担の有無)は、広告で省略が認められない事項とされています。
対象にならない取引もある
特定商取引法が適用されない場合として、営業のため、または営業として締結するもの、海外にいる人に対する販売または役務の提供、国・地方公共団体が行う販売または役務の提供、事業者がその従業員に対して行う販売または役務の提供、他の法令で消費者の利益を保護することができる等と認められるもの(例として、金融商品取引法に基づき登録を受けた金融商品取引業者が行う販売または役務の提供)などが挙げられています。年末年始の食品や雑貨の個人の買い物は、通常これらには当たりません。
公的な相談先
消費者庁の特定商取引法ガイドは、制度の概要を示したものであり、詳しくは特定商取引法の条文の該当部分を見るよう案内しています。事業者と連絡が取れない、返金の話が進まないといった個別の事情は、消費者ホットライン188(いやや)で最寄りの消費生活センター等につないでもらって相談できます。