欠席しても入学はできる。決まっていないのは「受け直し方」のほう
来年小学校に上がる子のいる家に、市区町村から就学時健康診断の通知が届きます。指定されるのはたいてい平日の午後で、会場は住んでいる地域の小学校です。仕事を休めない、当日に熱が出た——理由はさまざまですが、行けないと分かったときにまず頭をよぎるのは「これを受けないと入学できないのではないか」でしょう。
そこは心配いりません。さいたま市は、就学時健康診断のよくある質問に**「受診できなかった場合も小学校の入学にあたり支障はありません。また、医療機関等で個別に受診いただく必要はありません」**と書いています。横浜市も「受診できなくても入学にあたり支障はありません」とし、入学後に学校で改めて健康診断を行うと案内しています。
理由は法律の構造にあります。学校保健安全法11条は「市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、(中略)その健康診断を行わなければならない」と定めていて、義務を負っているのは保護者ではなく教育委員会です。同法は総則・学校保健・学校安全・雑則の四章でできており、罰則の章が置かれていません。保護者が受けさせなかったときの制裁を定めた条文が、そもそも存在しないのです。
ではどこが問題になるのか。受け直せるかどうかが自治体によって違う、という一点です。ここには全国共通のルールがなく、しかも通知が届いた時点で、あなたの市区町村の答えはもう決まっています。
通知が届いた日に確かめるのは、三つだけ
先延ばしにすると選択肢が減ります。届いたその日に、通知の紙を見ながら次の三つを押さえてください。
- 予備日はあるか。あるなら予約はいつから始まるか
- 他校(会場校以外の小学校)で受けられるか。その相談期限はいつか
- 欠席の連絡先は学校か、教育委員会か
三つめが軽く見えて、実はいちばん間違えやすいところです。通知の差出人は教育委員会ですが、欠席の連絡先は「指定された小学校」になっている自治体が多くあります。京都市は都合がつかなくなった場合に指定学校へ連絡するよう求め、そのうえで「学校から別途健康診断日程等をお知らせします」としています。さいたま市も同じく学校へ連絡する形で、「以降の手続について、学校からお知らせします」と書いています。差出人に電話をかけると、そこから学校へ案内し直されて一往復ぶん遅れます。
予備日は先着で埋まります。東京都北区は通知書を10月上旬に送るとしたうえで、予備日の予約受付は10月7日から始めると案内しています。予備日は11月26日の1日だけです。通知を封筒に入れたまま数日置いた人から、順に枠が無くなっていく仕組みになっています。
受け直す道は、自治体で三通りに分かれている
実際に五つの自治体の案内を開いて並べたところ、扱いがきれいに割れました。
| 自治体 | 指定日に行けないときの扱い | 案内の書きぶり |
|---|---|---|
| 東京都北区 | 予備日が1日あり、予約制。他校での受診も相談できる | 「健診日の1週間前までにご相談」「受入人数の都合上、受入をお断りさせていただく場合がございます」 |
| 京都市 | 他校への振り替えは不可。指定学校に連絡すると別日程が案内される | 「指定学校以外で受診することはできません」 |
| さいたま市 | 学校へ欠席連絡。その後の手続きは学校から案内。個別受診は不要 | 「医療機関等で個別に受診いただく必要はありません」 |
| 北九州市 | 予備日なし。指定された学校に相談する | 「どうしても都合がつかない場合は、指定された学校に相談してください」 |
| 横浜市 | 37.5℃以上の発熱時は受診を控えて学校へ連絡 | 「受診できなくても入学にあたり支障はありません」 |
北区と京都市が逆になっている点に注目してください。**「他校で受ければいい」という助言は、住んでいる場所によっては通じません。**逆に北区のように他校受診の窓口がある自治体で、そのことを知らないまま丸ごと諦めてしまう人もいます。
だから電話の一言目は、こう固定するのがいちばん早いです。
「◯月◯日の就学時健康診断に行けません。予備日はありますか。ほかの学校で受けることはできますか。」
二つ同時に聞けば、どの型の自治体かがその場で分かります。片方だけ聞いて「ありません」と言われ、もう片方の道を見落とすのが、いちばんもったいない終わり方です。
当日に何をされるのかは、省令に書いてある
検査の項目は自治体が独自に決めているわけではなく、学校保健安全法施行令2条が七つを挙げています。栄養状態、脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無、視力及び聴力、眼の疾病及び異常の有無、耳鼻咽頭疾患及び皮膚疾患の有無、歯及び口腔の疾病及び異常の有無、そしてその他の疾病及び異常の有無です。
方法まで踏み込んでいるのが学校保健安全法施行規則3条です。視力は「国際標準に準拠した視力表を用いて左右各別に裸眼視力を検査」し、聴力は「オージオメータを用いて検査」します。この二つは、たいていの人が思い浮かべるとおりの中身です。
意外に思われるのが最後の項目です。同規則は「その他の疾病及び異常の有無」について、知能および呼吸器・循環器・消化器・神経系等を検査すると書いています。この「知能」という語だけが一人歩きして、身構えてしまう保護者がいます。実際の自治体の案内では、京都市が保健調査を含む十二項目、横浜市が「面接」、北九州市が「教育相談」という名前で載せている時間がこれにあたります。難しい試験を受けさせられる場ではありません。
「面接」があるのは、この健診が就学先の話につながっているから
なぜ健診に面接が付くのか。学校保健安全法12条が、健診の結果を受けて教育委員会がとる措置を定めているためです。条文には「治療を勧告し、保健上必要な助言を行い」に続けて、就学義務の猶予もしくは免除、または特別支援学校への就学に関し指導を行う、といった措置が並びます。健康状態を見るだけの場ではなく、就学先の検討に接続する手続きとして設計されているわけです。
ただし、**就学先がこの日に決まることはありません。**学校教育法施行令18条の2は、視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱にあたる子について、教育委員会が入学期日などを通知しようとするときは、その保護者および教育学・医学・心理学その他の専門的知識を有する者の意見を聴くと定めています。全員が対象の手続きではありません。ただ、支援が必要かもしれないと感じている家庭にとっては、健診の面接とは別に話を聴く場が法令上ちゃんと置かれている、ということになります。
多くの自治体はこの意見聴取を「就学相談」の名前で、健診より早い時期に受け付けます。相談したいことがあるなら、健診の日を待つのではなく、通知が届いた時点で教育委員会に申込期限を聞いてください。順番を逆にすると、その年度の相談枠に間に合わないことがあります。
通知が届かないときは、10月1日の住民登録を疑う
そもそも通知が来ない、という詰まり方もあります。この場合の当たり先は学校ではなく教育委員会です。名簿を持っているのが教育委員会だからです。
学校教育法施行令2条は、市町村の教育委員会が翌学年に就学させるべき子について、あらかじめ学齢簿を作るよう定めています。その基準日を決めているのが学校教育法施行規則31条で、「学校教育法施行令第二条の規定による学齢簿の作成は、十月一日現在において行うものとする」とあります。**10月1日時点でその市区町村に住民登録がなければ、その年の名簿には載りません。**転入届をまだ出していない、10月に入ってから引っ越した、という事情があれば、まずここを確かめてください。
再送はどこも受け付けています。さいたま市は「就学時健康診断通知書を再送しますので、さいたま市教育委員会にお問い合わせください」、横浜市は教育委員会人権健康教育課の直通番号(045-671-3275)を案内し、北九州市は紛失時に学校保健課へメールで連絡するよう書いています。届かないまま年末を迎えないでください。
年度内に引っ越す場合も、窓口は入学する側の市区町村です。さいたま市は転出予定者に「転出先の市区町村教育委員会にお問い合わせの上、受診方法の指示を受けてください」と案内し、北九州市も市外に転居する予定なら「先に入学予定の学校の教育委員会にお尋ねください」と書いています。健診の実施日を過ぎてから名簿に加わった子についても、学校保健安全法施行令1条2項が、他の市町村で受けていないときは速やかに健診を行うと定めています。転入が遅れても、受ける機会そのものが消えるわけではありません。
日程の外枠は、法律で決まっている
自治体ごとに日付は違っても、動く範囲は法令で縛られています。全体像を持っておくと、いま自分がどこにいるかが分かります。
| 時期 | 何が動くか | 根拠 |
|---|---|---|
| 10月1日現在 | この日の住民登録をもとに学齢簿を作る | 学校教育法施行規則31条 |
| 毎学年の初めから5月前まで | 学齢簿の作成 | 学校教育法施行令2条 |
| 学齢簿ができたあと、翌学年の初めから4月前まで(就学の手続に支障がない場合は3月前まで) | 就学時健康診断 | 学校保健安全法施行令1条 |
| 翌学年の初めから2月前まで | 入学期日と指定校の通知 | 学校教育法施行令5条 |
| 翌学年の初めから15日前まで | 就学時健康診断票が入学する学校の校長へ送られる | 学校保健安全法施行令4条2項 |
実際の日程も開いた自治体で確かめました。健診は北九州市が9月30日から12月4日、東京都北区が10月19日から11月26日、横浜市が10月下旬から12月上旬の平日午後、京都市が原則11月中(所により12月中)。通知の発送は北九州市が9月末、北区が10月上旬、京都市が10月中頃、横浜市が10月中旬でした。12月に入る自治体があるのは、施行令1条が「就学に関する手続の実施に支障がない場合にあつては、三月前」という例外を置いているからです。
9月のうちに通知を出す自治体があるという点は覚えておいてください。「通知は10月に来るもの」と決めてかかると、予備日の予約受付を丸ごと逃します。
付き添いは、保護者本人でなくてかまわない
最後にもう一つ。休めない理由が「自分が行けないから」なら、そこは崩せる場合があります。さいたま市は付き添いについて「祖父母の方など、保護者の方以外でも大丈夫です。お子さんの状況や健康状態をよく知る方がお付き添いください」と案内しています。
条件は続柄ではなく、子どもの状況と健康状態をよく知っていることです。当日は保健調査票やアレルギーの調査票を出す自治体もありますが(京都市は基本情報シート・健康に関する調査票・食物アレルギーに関する調査票の事前記入を求めています)、書類そのものは前もって保護者が書けます。書いた紙を持たせて祖父母に連れて行ってもらう形なら成立します。この扱いも自治体で違うので、欠席の連絡を入れる前に「保護者以外の付き添いでも受けられますか」を先に聞いてみてください。それで済むなら、予備日も他校受診も要りません。
まとめ
- 欠席は入学の可否に影響しない。法律上の義務は市町村の教育委員会にあり、学校保健安全法に罰則の章はない
- 分かれるのは受け直し方。予備日、他校受診、受け直し不要と三通りあり、住んでいる場所で決まっている
- 通知が届いた日に、予備日・他校受診・欠席の連絡先の三つを一度の電話で聞く
- 連絡先は差出人の教育委員会ではなく「指定された学校」のことが多い。ただし通知が届かないときだけは教育委員会
- 発達の相談は健診の日を待たない。就学相談の申込期限が健診より前のことがある
- 付き添いは保護者本人でなくてよい自治体がある。まずそこを確かめると、日程を動かさずに済むことがある