屋根の雪下ろしで事故を防ぐために、国土交通省が「最重要」としているのは安全な装備です。安全帯と命綱、あごひもを締めたヘルメット、滑りにくい長靴。そのうえで、はしごを固定する、2人以上で作業する、建物の周りに雪を残して下ろす、携帯電話を身につける。これらは国土交通省の「雪下ろし安全10箇条」に並んでいる項目です。
除雪作業中の事故は、多雪の年には年間1000件以上起き、100人以上が亡くなっています。死亡事故の約8割は65歳以上の高齢者です。国土交通省は、昔から安全対策をしなくても事故に遭わなかったから大丈夫、と考えるのはとても危険だとしています。
この記事では、10箇条の中身と、事故の起き方についての国の調査を確かめます。
どんな事故で亡くなっているか
国土交通省によると、除雪作業中の事故の要因で最も多いのは屋根からの転落事故です。ほかに、転倒、除雪機の事故、屋根からの落雪、水路などへの転落、重労働による発作があります。
内閣府(防災)と国土交通省のチラシ「よくある除雪作業中の事故とその対策」は、平成22年度の調査をもとに、除雪作業中の死者の内訳を次のように示しています。
- 屋根からの転落:41%
- 屋根からの落雪:17%
- 水路への転落:10%
- 除雪作業中の発作:8%
- 除雪機に巻き込まれた:5%
同じチラシには、次の数字も載っています。
- 屋根から転落した死者のうち 60%が1階の屋根から
- 転落した死者のうち 51%が地面に強く打ちつけられている
- 屋根からの転落事故の 32%は、はしごから
消防庁の「消防の動き」2020年12月号は、平成30年11月から令和元年5月までの冬の雪害で、死者40人全員が屋根の雪下ろしなど除雪作業中の事故によるものだったとしています。内閣府の雪害対策のページは、雪による死者の多くが高齢者の事故、一人での作業中の事故だとしています。
雪下ろし安全10箇条
国土交通省がまとめている10箇条と、それぞれの説明です。
1. 安全な装備で行う(最重要)
- 安全帯は、腰全体を支えるハーネス型か、体全体を支えるフルハーネス型を使う
- 命綱は、ザイルロープなど丈夫なものを、屋根の上で止まる長さで正しく結ぶ
- 命綱の一端は、アンカー(ない場合は、雪下ろしをする屋根の反対側の柱や固定物)にしっかり固定する
- ヘルメットはあごひもを締める。長靴は滑りにくいものを使い、動きやすい服装で
これらの装備は、ホームセンターや登山・キャンプ用品店などで買えるとしています。内閣府・国土交通省のチラシは、トラロープ(標識ロープ)は滑りやすいので命綱に使わないこと、命綱は使う前によく点検すること、靴は厚底を避けることも挙げています。命綱は正しく使わないとかえって危険だとも書かれています。
2. はしごは固定する
はしごは倒れることがあるので、必ずしっかり固定します。斜めに立てかけず、決められた角度でまっすぐ立て、軒先から少し高くかけます。はしごから屋根に移るときは特に注意し、はしごの上で雪庇を落とすような作業は絶対にしないよう求めています。
3. 作業は2人以上で行う
1人で作業すると、事故が起きたときに発見が遅れ、重大な事故につながる危険が高くなります。家族や親戚、近所の人と一緒に作業し、地域で協力する除雪も大切だとしています。
4. 足場の確認を行う
屋根の雪止めの位置を確かめてから作業します。落雪に巻き込まれないよう、屋根の上から下ろします。滑りにくくするため、雪は少し残して作業します。内閣府・国土交通省のチラシは、厚さ20cm程度の雪を残すこと、雪止めより下には足場を作らないこと、軒先の雪は作業の最後に落とすこと、軒下の人や電線にも注意することを挙げています。晴れて気温が高い日は滑りやすくなるので特に注意します。
5. 雪下ろしのときは周りに雪を残す
屋根から落ちたとき、地面やアスファルト、コンクリートに強く打ちつけると被害が大きくなる可能性があります。落ちた場所に雪が積もっていると、被害を軽くできる場合があります。そのため、住宅周りの除雪は雪下ろしの後に行うよう書かれています。
6. 屋根から雪が落ちてこないか注意する
住宅の周りで除雪するときは、軒下で屋根からの落雪に注意します。屋根に積もって時間がたった雪は氷のように硬くなり、直撃すると非常に危険です。新雪や、晴れて暖かい日のゆるんだ雪は特に注意します。屋根の雪を人の手によらず落とす落雪式住宅の場合は特に注意するよう書かれています。
7. 除雪道具や安全対策用具の手入れ・点検を行う
スコップやスノーダンプには、雪がつきにくくなるスプレーを使うなどして使いやすくし、古くなって壊れていないかを定期的に点検します。
8. 除雪機の雪詰まりはエンジンを切ってから棒などで取り除く
素手で取り除くのは非常に危険なので絶対にやめること、デッドマンクラッチ(安全装置)をひもで縛るなどして無効化しないことも書かれています。
9. 携帯電話を身につける
事故が起きると動けなくなることがあります。携帯電話を身につけておけば、家族や緊急医療機関などにすぐ連絡できます。
10. 無理はしない
除雪は重労働です。体調が悪いときは作業しない、作業前に準備運動をする、こまめに休憩をとる。寒い屋外での重労働で発作などを起こす危険があるとしています。
消防庁の10箇条
消防庁も「命を守る除雪中の事故防止10箇条」を示しています。内容は国土交通省のものと重なりますが、言い方が違う項目があります。
- 作業は家族、となり近所にも声かけて2人以上で!
- 建物のまわりに雪を残して雪下ろし!
- 晴れの日ほど要注意、屋根の雪がゆるんでる!
- はしごの固定を忘れずに!
- エンジンを切ってから!除雪機の雪詰まりの取り除き
- 低い屋根でも油断は禁物!
- 作業開始直後と疲れたころは特に慎重に!
- 面倒でも命綱とヘルメットを!
- 命綱、除雪機など用具はこまめに手入れ・点検を!
- 作業のときには携帯電話を持って行く!
離れて暮らす親が雪下ろしをしているなら
国土交通省は、作業する本人だけでなく、家族、親戚、近所の人が、安全対策をしていないのを見かけたら声をかけ、10箇条を教えてあげるなど、地域全体で安全対策をすることが大切だとしています。
空き家の雪について、内閣府・国土交通省のチラシは、除雪されずに危険な状態になっている場合、災害対策基本法第64条第1項に基づき、市町村長の判断で雪下ろしを行うことができるとして、困ったときは市町村に問い合わせるよう書いています。
この記事で確認できなかったこと
2026年11月5日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 屋根に何cm積もったら雪下ろしをすべきかという基準。
- 最近の冬の除雪作業中の死者数。今回読んだ数字は平成22年度の調査の割合、平成30年11月〜令和元年5月の消防庁の集計、国土交通省の「多雪の年には」という記述です。
- 高齢者世帯の雪下ろしを自治体が支援・助成する制度の内容。
- 業者に頼む場合の費用の目安。
参考資料
- 国土交通省 雪下ろし安全10箇条(チラシ) — 10箇条と各項目の説明
- 国土交通省 雪下ろし安全10箇条~除雪作業中の事故に注意しましょう~ — 多雪の年に年間1000件以上・100人以上、死亡事故の約8割が65歳以上、要因で最も多いのは屋根からの転落、地域での声かけ
- 国土交通省 『雪下ろし安全10箇条 動く電子ポスター』の公表 — 電子ポスターとビデオの公表
- 内閣府(防災)・国土交通省 よくある除雪作業中の事故とその対策 — 平成22年度調査の割合、命綱のロープ、20cm程度の雪を残す、空き家の雪下ろし
- 消防庁 消防の動き 2020年12月号 雪害に対する備え — 平成30年11月〜令和元年5月の死者40人、命を守る除雪中の事故防止10箇条
- 内閣府 防災情報 雪害対策 — 雪による死者の多くは高齢者の事故、一人での作業中の事故