家庭で使う除雪機の事故を防ぐために、消費者庁が毎冬の前に呼びかけているのは次の点です。安全機能を無効化しない、エンジンを掛けたまま離れない、人が近くにいるときは使わない、雪詰まりはエンジンを切って雪かき棒で取り除く、屋内や換気の悪い場所でエンジンを掛けたままにしない。 2024年11月26日の資料では、これを「除雪機事故を招く5つのNG行動」としてまとめています。
除雪機の事故は、けがよりも死亡事故が多いのが特徴です。2014年度から2023年度までの10年間にNITE(製品評価技術基盤機構)に通知された歩行型除雪機の死傷事故38件のうち、25件が死亡事故でした。原因の約8割に当たる32件は、安全機能の無効化や周囲の確認不足などの誤使用・不注意によるものです。
この記事では、消費者庁の資料に書かれている事故の起き方と、使う人と家族が確かめておくことを整理します。
歩行型除雪機は資格なしで使えるが、回転部は覆われていない
主に家庭で使う歩行型ロータリ除雪機は、資格や免許がなくても使えます。一方で、雪を取り崩す回転部分(オーガ)が覆われていない構造なので、使うときには十分な注意が必要だと、消費者庁は内閣府の広報誌「ぼうさい」の記事で説明しています。
各部の名前は、資料では次のように説明されています。
- オーガ:雪を取り崩して集める回転部
- ブロア:集めた雪を吐き出すための回転部
- 投雪口・シュータ:雪の出口と、雪を飛ばす向きを決める部分
- デッドマンクラッチ:手を離すと自動的に機械が止まる機構
安全装置には、デッドマンクラッチのほかに、外れると機械が止まる緊急停止クリップ、押すと止まる緊急停止バーや緊急停止ボタンがあります。
事故は四つの形で起きている
消費者庁の資料に載っている事故例は、次の四つの形に分けられます。
安全装置を固定して、転倒しても止まらなかった
2021年1月、広島県で80歳代の男性が、使用中の除雪機の下敷きになって亡くなりました。デッドマンクラッチを大きな洗濯バサミで固定して無効化していたため、後進中に転倒して手を離しても走行が止まらず、乗り上げられたと考えられています。
エンジンを掛けたまま離れ、子どもが巻き込まれた
同じ2021年1月、新潟県で9歳の男の子が、オーガに巻き込まれて亡くなりました。使用者が作業の途中、エンジンを切らずにオーガが回ったままその場を離れ、周りで遊んでいた子どもが触れたと考えられています。
投雪口に手を入れた
2022年12月、秋田県で50歳代の女性が、ブロア(投雪口)に詰まった雪を取り除く際に左手指を負傷しました(重傷)。エンジンを掛けたまま、付属の雪かき棒を使わずに直接手で取ろうとして回転部に触れたと考えられています。2019年の資料には、投雪口のカバーを外して素手で雪を取り除いた瞬間にブロアが回り始め、指を切断した例も載っています。
物置でエンジンを掛けたままにした
2023年1月、北海道で80歳代の男性が、物置で除雪機のエンジンを掛けたままにして一酸化炭素中毒で亡くなりました。
数字で見る除雪機の事故
2024年11月の資料によると、2014年度から2023年度までの10年間にNITEに通知された歩行型除雪機の死傷事故は38件です。
- 被害の内訳は、死亡25件、重傷11件、軽傷2件
- 誤使用・不注意と推定されるものが32件(死亡21件、重傷10件、軽傷1件)
- 38件中26件(死亡18件、重傷8件)が、安全機能を無効化したり、使わなかったりして起きている
- 死亡事故は「除雪機の下敷きになった」「除雪機に巻き込まれた」で多く、重傷事故は「エンジンを掛けたままの除雪機内部に手を入れた」で多い
この数字には、消費生活用製品安全法に基づいて報告された重大製品事故のほか、事故情報収集制度で集めた非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)が含まれます。
別の集計もあります。2019年の消費者庁の資料では、消費者安全調査委員会が降雪の多い12道県(北海道、青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、富山、石川、福井、長野、鳥取)の協力で集めた事故情報として、降雪期(11月〜翌年3月末)の事故が平成29年度98件(死亡8件、重傷51件)、平成30年度54件(死亡2件、重傷22件)でした。集め方が違うので、二つの資料の件数は比べられません。
使う前と使うときに確かめること
消費者庁の資料に書かれている注意点を、使う順に並べます。
シーズン前の点検
2019年の資料は、シーズンの使用前に定期点検を行い、特に安全装置が正常に動くかを確かめるよう求めています。故障などで正常に機能しない場合は、絶対に使わないようにとしています。
古い除雪機には、デッドマンクラッチが装備されていない機種があります。2024年の資料によると、除雪機のメーカーなどでつくる除雪機安全協議会の自主規格「歩行型ロータリ除雪機の安全規格」では、次のように定めています。
- 2004年4月1日以降に出荷される除雪機は、デッドマンクラッチ機構を標準装備
- 2023年4月1日以降に製造される車両重量350kg以上の除雪機は、後進時非常停止バーを標準装備
- 投雪口に詰まった雪を取り除くための雪かき棒を標準装備
この規格に適合した除雪機には、SSS(Snowthrowers-Safety-Standard)マークが貼られています。消費者安全調査委員会の調査では、平成16年より前に買った、デッドマンクラッチが標準装備されていない除雪機を使っている人がいることも分かったとされています。
デッドマンクラッチを固定しない
クラッチレバーをひもで縛ったり、洗濯バサミやバイス(ハンドクランプ)で挟んだりすると、転倒などしたときに除雪機が止まりません。資料は、これを「絶対に無効化して使用しないように」としています。
一時的に離れるときもエンジンを切る
エンジンを掛けたまま離れると、子どもが近づいて触れるなどして、思わぬ事故につながるおそれがあります。資料は、一時的にその場を離れるときでも必ずエンジンを切るよう求めています。
周りに人がいないか、後ろに何があるか
作業中は周りに人を近づけないこと。背の低い子どもは死角に入りやすいので特に注意すること。後進するときは、足元や後方の障害物を事前に確かめ、転倒しないようにすること。2019年の資料は、除雪中だけでなく移動中や収納中にも気を付け、特に後進時はより注意するよう書いています。
雪が詰まったら
2019年の資料に書かれている手順はこうです。
- エンジンを停止し、鍵を抜く
- ブロアやオーガなどの回転が完全に止まったことを確かめる
- 手ではなく、雪かき棒で雪を取り除く
屋内でエンジンを掛けたままにしない
作動中の除雪機の排気には一酸化炭素が多く含まれています。一酸化炭素は無色・無臭で気づきにくく、閉め切った屋内では短時間で濃度が高くなります。資料は、除雪機は始動・停止も含めて風通しのよい屋外で使うよう求めています。エンジンを切った状態で手で押して動かせない大型の除雪機の場合は、窓などの開口部を開けて十分換気できていることを確かめてから、「屋内で始動し速やかに屋外に出る」「屋内にしまったら速やかにエンジンを切る」などの対策をとるよう書いています。
家族ができること
消費者安全調査委員会の調査では、高齢の男性が除雪機を使っているケースが多いことが分かったとされています。2019年の資料は、作業する本人以外の家族や周りの人も、除雪機の危険と注意点をよく知っておき、危険な使い方を見かけたら一声かけるよう呼びかけています。
離れて暮らす親が除雪機を使っているなら、帰省のときに次の点を一緒に見ておくと、資料の注意点をそのまま確かめられます。
- クラッチレバーにひもや洗濯バサミが付いていないか
- 手を離すと止まるか(安全装置が動くか)
- 雪かき棒が除雪機に付いているか
- 物置や車庫の中でエンジンをかける習慣がないか
- デッドマンクラッチが付いていない古い機種ではないか
この記事で確認できなかったこと
2026年11月5日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 2024年度以降の除雪機事故の件数。今回読んだ最新の集計は2023年度までです。
- 乗用型の除雪機や、電動の小型除雪機についての注意点。今回の資料は歩行型ロータリ除雪機についてのものです。
- デッドマンクラッチの付いていない古い除雪機を、後付けで安全にする方法。
- 自治体による除雪機の買い替え補助の有無。
参考資料
- 消費者庁 「除雪機の事故」を招く5つのNG行動(2024年11月26日) と報道発表資料PDF — 5つのNG行動、2014〜2023年度の38件の内訳、自主規格(2004年・2023年・雪かき棒)、屋内始動の対策
- 消費者庁 「ちょっとだけなら・・・」が命取り(2023年12月22日) と報道発表資料PDF — 気を付けるポイント5項目、事故事例
- 消費者庁 除雪機の使用時の事故に注意しましょう!(2019年11月13日) と報道発表資料PDF — 安全装置の種類、12道県の集計、雪詰まりの手順、家族への呼びかけ
- 内閣府 広報誌「ぼうさい」 消費者庁消費者安全課の解説 — 資格・免許なしで使える、回転部が覆われていない、平成16年より前の機種
- 新潟県 除雪機使用時の事故に注意しましょう! — 県の案内と関連資料の一覧