古い家を取り壊すとき、年内に壊すか年が明けてから壊すかで、固定資産税の流れは変わります。決め手は取り壊した日ではなく、1月1日(賦課期日)に何が建っていたかです。
- 年内に住宅を壊す:翌年1月1日に家屋がないので、翌年度は家屋の固定資産税がかかりません。その代わり、土地は住宅の敷地ではなくなるので、住宅用地の特例が外れるのが原則です。
- 年が明けてから壊す:1月1日には家が建っているので、その年度は家屋の税が全額かかり、土地の特例も続きます。家屋分がなくなり特例が外れるのは、その翌年度からです。
家屋の税がなくなっても、土地の税が上がる分のほうが大きく、合計が前の年より高くなった例を浜松市が紹介しています。建て替える場合は、要件を満たして申告すれば、工事中でも特例を続ける扱いがあります。
この記事では、自治体のよくある質問と案内で、この仕組みを確かめます。
固定資産税は「1月1日の状態」で1年度分が決まる
広島市のよくある質問は、こう説明しています。
年の中途で家屋を取り壊されても、その年の4月1日から始まる年度の固定資産税は、その年の1月1日現在の所有者に全額(一年度分)課されます。
翌年の4月1日から始まる年度からは家屋には課税されなくなりますが、取り壊した家屋が住宅だった場合は、土地に住宅用地の特例が適用されなくなり、税額が上がる場合があるとしています。
1月中に壊しても同じです。船橋市は、令和8年1月30日に取り壊した家屋は令和8年1月1日には存在していたので、令和8年度分の固定資産税が課税されると回答しています。
住宅用地の特例とは
住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が軽くなっています。総務省の解説によると、特例率は次のとおりです。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):評価額の6分の1
- 一般住宅用地(200㎡を超える部分。家屋の床面積の10倍まで):評価額の3分の1
浜松市と秋田市は、この特例を受けるには、1月1日現在に土地を住宅の敷地として使っていることが必要だと説明しています。東京都主税局の案内は、固定資産税と都市計画税の両方が軽くなっているとしています。
特例が外れたときにどのくらい上がるかは、土地によって違います。大津市の案内は、住宅が建っていない土地や建設中の土地は原則として特例が適用されず、特例が適用されている土地と比べて、土地の固定資産税・都市計画税の額は約3倍から4倍程度になるとしています(大津市内についての説明です)。
年内に壊す場合と、年明けに壊す場合
2026年中に壊すか、2027年になってから壊すかで比べると、自治体の説明から次のように整理できます(建て替えの特例を使わない場合)。
| 取り壊す時期 | 令和9年度(2027年1月1日の状態) | 令和10年度(2028年1月1日の状態) |
|---|---|---|
| 2026年12月までに壊す | 家屋の税はなし。土地は住宅用地の特例なし | 土地の状態による |
| 2027年1月以降に壊す | 家屋の税は全額。土地は特例あり | 家屋の税はなし。土地は特例なし |
どちらの場合も、令和8年度(2026年1月1日の状態)の家屋の税は、すでに全額かかっています。
「壊したのに高くなった」浜松市の例
浜松市のよくある質問には、150㎡の土地に建っていた古い一戸建てを前の年の7月に取り壊し、12月に貸し駐車場にしたところ、今年度の固定資産税が前年度より高くなった、という相談が載っています。
浜松市の回答は、前の年の1月1日には住宅の敷地だったので特例が適用されていたが、今年の1月1日には住宅の敷地ではないので特例が受けられなかった、というものです。家屋の税は今年度からかからなくなりますが、家屋の税の減少分より、土地が特例を受けられなくなった上昇分が上回ったため高くなったと思われる、としています。
秋田市も、古い住宅を壊して駐車場にしたら固定資産税が高くなったという質問に、住宅用地の特例が適用されなくなったためと答えています。
建て替えるなら「建て替え特例」がある
住宅を壊してすぐに新しい住宅を建てる場合、1月1日に新しい家が完成していないと、その時点では住宅の敷地ではありません。千葉市と鹿児島市は、1月1日に新築中の家屋が未完成なら家屋の固定資産税はかからないが、土地の固定資産税は上がることがあるとしています。
これに対して、要件を満たせば工事中でも住宅用地として扱う「建て替え特例」の案内を出している自治体があります。今回読んだ東京都主税局(23区内)と大津市の要件は、次のようなものです。
東京都主税局(23区内の土地)
- 前年度の賦課期日(1月1日)に住宅用地だった
- 当該年度の賦課期日に住宅の新築工事に着手している。または、賦課期日までに建築確認申請書が受領されていて、賦課期日後の3月末日までに新築工事に着手している
- 建て替え前の住宅の敷地と同じ敷地で建て替えている
- 建て替え前の住宅の所有者と同じ人が建て替えている(親族などの例外あり)
「新築工事に着手している」とは、水盛り、遣り方、根切りなど住宅の基礎工事に着手している状態で、造成工事、地盤改良、地鎮祭、地縄張りなどは含まれないとしています。今年9月に住宅付きの土地を買い、翌月に壊して新築するケースや、個人名義の住宅を壊して法人名義で新築するケースは、建て替える人が前年度の1月1日の住宅の所有者と別になるため、特例は適用されないとしています。手続きは、土地のある区の都税事務所に「固定資産税の住宅用地等申告書」などを出します。
大津市
- 前年度の賦課期日に住宅用地だった
- 当該年度の賦課期日に住宅の建設に着手していて(最低限基礎工事に着手、または建築確認を受けている)、翌年度の賦課期日までに完成する
- 建て替え前と同じ敷地で建て替える
- 土地と住宅の所有者が、前年度と当該年度で原則として同じ(配偶者・直系血族などは同じとみなす)
大津市は、住宅を取り壊した年の翌年1月31日(必着)までに申告書を出すよう求め、申告がなければ固定資産税・都市計画税が約4倍程度になると注意しています。
二つの案内は、着手の考え方や所有者の範囲の書き方が同じではありません。建て替えを予定しているなら、土地のある市区町村(23区は都税事務所)の案内で、要件と申告の期限を確かめてください。
年の途中で建てた家は、翌年度から
千葉市は、年の途中に完成する建物は、翌年1月1日の状態により翌年度から課税されると説明しています。鹿児島市も、新築した家屋は完成した翌年から課税されるとしています。たとえば2026年12月に完成すれば令和9年度から、2027年1月に完成すれば令和10年度からです。
壊したあとの手続き
取り壊したあとの手続きは、建物が登記されているかどうかで分かれます。
- 登記されている建物:不動産登記法第57条により、表題部所有者または所有権の登記名義人は、滅失の日から1か月以内に、法務局へ建物の滅失の登記を申請しなければなりません。鹿児島市は、滅失登記が完了すると法務局から市に通知されるので、市への申請は必要ないとしています。
- 登記されていない建物(未登記家屋):千葉市は市税事務所資産税課に「家屋滅失届出書」を、船橋市は資産税課への届出を求めています。鹿児島市は、取り壊した年の年末までに電話などで連絡するよう案内しています。
登記されているか分からない場合は、法務局か資産税課に問い合わせるよう船橋市は案内しています。
この記事で確認できなかったこと
2026年11月5日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 都市計画税の住宅用地の特例率。
- 東京都主税局の建て替え特例の申告期限(案内の該当部分を読み取れませんでした)。
- 東京都23区と大津市以外の市町村の建て替え特例の要件。
- 特定空家・管理不全空家に指定された場合との関係。
- 取り壊し後に土地を売る場合の譲渡所得の特例との関係。
- 自分の土地で特例が外れたときの具体的な税額。課税明細書と、土地のある市区町村の資産税課で確かめます。
参考資料
- 広島市 年の中途で家屋を取り壊した場合や新築した場合 — 1月1日現在の所有者に全額、翌年度から家屋は課税なし、土地は特例がなくなる場合
- 千葉市 年の途中で家屋を取り壊した又は建て替えた場合 — 今年度分は納める、年の途中に完成した建物は翌年度から、未完成なら家屋は課税なしだが土地は上がることがある、滅失登記・家屋滅失届出書
- 船橋市 令和8年1月30日に家屋を取り壊しました — 1月中の取り壊しでもその年度分は課税
- 船橋市 建物を取り壊しました。なにか届出が必要ですか? — 登記家屋は滅失登記、未登記家屋は資産税課へ
- 浜松市 住宅を取り壊して駐車場にした場合の固定資産税は? — 1月1日現在の住宅の敷地、家屋分の減少より土地分の上昇が上回った例
- 秋田市 古い住宅を取り壊し駐車場にしたら高くなった — 住宅用地の特例が適用されなくなったため
- 鹿児島市 年の途中で家屋を取り壊した、または建て替えた場合 と家屋を取り壊した時 — 全額課税、未完成の新築、未登記家屋の連絡、登記家屋は市への申請不要
- 東京都主税局 住宅を建て替える土地の特例措置のご案内 — 23区の要件4つ、着手の意味、所有者が変わる場合
- 大津市 住宅建替え中の土地に係る特例措置について — 約3倍から4倍程度、要件、翌年1月31日必着の申告
- 総務省 固定資産税 — 小規模住宅用地6分の1、一般住宅用地3分の1
- 不動産登記法 第57条 — 滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請