同居している家族がインフルエンザと診断されても、子ども本人にインフルエンザ様の症状がなければ、学校にも保育園にも行けるのが原則です。学校保健安全法が定める出席停止は、感染症に「かかつた者」を基準にして日数を決めているからです。まず見るのは、通っている学校や園から配られている案内です。そこに同居家族についての指示がなければ、あとは当日の体温と体調で判断することになります。学校から休むように言われたときは、それが校長による出席停止の指示なのかを聞いてください。同じ一日を休んでも、記録の残り方が変わります。
出席停止の日数は「かかった人」に向けて決められている
学校保健安全法第19条は、校長が出席を停止させることができる相手を「感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等」と書いています。幅のある書き方ですが、具体的な日数を決めているのは同法施行規則第19条のほうです。
インフルエンザは、施行規則第18条で第二種の感染症に位置づけられています。そして第19条第2号は、第二種の感染症に「かかつた者」についての期間として、インフルエンザにはこう定めています。
発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで
数え始めるのは、本人が発症した日と、本人が解熱した日です。家族が発症した日ではありません。ここが、家庭の心配と条文の設計がずれるところです。
| 家庭の状況 | 学校保健安全法での位置づけ |
|---|---|
| 子ども本人が診断された | 第19条第2号イ。発症した後5日、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで出席停止 |
| 同居家族が診断され、本人に症状はない | 第19条第4号に規定はあるが、適用するかは校長の判断。自動では休みにならない |
| クラスや学年で流行して閉鎖になった | 第20条の臨時休業。決めるのは学校の設置者で、家庭の判断ではない |
この記事が当てはまらないのは、次の場面です。本人に発熱やだるさが出ているなら、登校の可否より先に受診の判断になります。麻しんのように感染の広がり方が違う病気では、学校の動き方も変わります。学級閉鎖や休校がすでに決まっている場合は、第20条の話であって、家庭が選べる余地はありません。
条文には「患者のある家に居住する者」も書いてある
同じ第19条には、本人が発症していない場合の規定も並んでいます。第4号です。
第一種若しくは第二種の感染症患者のある家に居住する者又はこれらの感染症にかかつている疑いがある者については、予防処置の施行の状況その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
家族に患者がいる児童生徒等も、条文上は出席停止の対象に含まれています。ここだけを読めば「家族が出たら自分も休み」と読めてしまいます。
ただ、この号は解除の条件が重い作りになっています。期間が日数で決まっておらず、「学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」と書かれています。適用すれば、いつ登校できるかは医師の判断待ちになります。またこの号は第一種と第二種の感染症に共通の規定で、インフルエンザのために用意されたものではありません。エボラ出血熱もジフテリアも同じ号の対象です。
第19条はあくまで「基準」で、実際に出席を停止させるかどうかを決めるのは校長です。だから条文の存在と、日々の運用は分けて見る必要があります。
大阪府教育庁は「協力依頼は行わない」と書いている
運用のほうを明文で示している例があります。大阪府のよくある質問は、「家族の中にインフルエンザ(新型コロナウイルス感染症)にかかった者がいます。子どもは学校(幼稚園)に登校(園)できますか。」という問いに、こう答えています。
患者の同居家族である児童生徒等には、原則として、自宅待機の協力依頼は行いません。従って、インフルエンザ(新型コロナウイルス感染症)様症状がなければ、登校(園)が可能です。
回答しているのは教育庁教育振興室保健体育課で、ページの更新日は2024年5月14日です。第19条第4号があっても、症状がなければ登校できるという運用がはっきり書かれています。
注意したいのは、これが大阪府の案内であって、全国共通の通知ではないことです。ほかの自治体や個々の学校が別の案内を出している可能性は残ります。自分の地域の扱いを確かめるなら、市区町村名と「教育委員会 インフルエンザ 出席停止」で検索するか、学校から配られている保健だよりを見るのが早いです。
学校から休むように言われたときに確認する三つ
学校から連絡が来た場合、それが指示なのかお願いなのかで扱いが変わります。学校保健安全法施行令第6条は、出席停止について次のように定めています。
校長は、法第十九条の規定により出席を停止させようとするときは、その理由及び期間を明らかにして、幼児、児童又は生徒(中略)にあつてはその保護者に、高等学校の生徒又は学生にあつては当該生徒又は学生にこれを指示しなければならない。
理由と期間を示して指示する、という手順が決まっているわけです。だから電話口で聞くことは三つに絞れます。
- 出席停止の指示でしょうか。それとも家庭の判断でお願いということでしょうか
- 出席停止であれば、理由と期間はいつまででしょうか
- 登校を再開するときに、書類は必要でしょうか
出席停止として指示された日数は、文部科学省が示す指導要録の記入要領で「出席停止・忌引等の日数」に入ります。この欄は授業日数から差し引かれる側なので、欠席日数には現れません。逆に、指示がないまま家庭の判断で休むと、欠席として記録されることがあります。休むかどうかを決めた後でいいので、この一言だけは確認しておく価値があります。
保育園は、この法律の外にある
ここまでの条文は、保育園には当てはまりません。学校保健安全法第2条は「学校」を学校教育法第1条に規定する学校と定義しています。幼稚園はここに入りますが、保育所は児童福祉施設なので入りません。つまり保育所には、法律に基づく出席停止という仕組みそのものがないということです。
代わりに目安を示しているのが、こども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン」(2018年改訂版・2023年5月一部改訂)です。インフルエンザの項目には、罹患した子どもの登園のめやすとして「発症した後5日経過し、かつ解熱した後3日経過していること(乳幼児の場合)」と書かれています。小学生の基準は解熱した後2日なので、保育所のめやすのほうが1日長くなります。きょうだいで登園と登校の日がずれるのは、この差によるものです。
そしてこのガイドラインにも、同居家族が発症した場合に登園を控えるという記載はありません。園から登園自粛を求められた場合、その根拠は、園または自治体が独自に決めた運用です。きょうだいが保育所と小学校に分かれて通っているなら、根拠が違うので両方に確認してください。片方の答えをもう片方に当てはめると、話が合わなくなります。
いつ発症するかを見込んでおく
登校させると決めた場合でも、数日は様子を見る期間が続きます。こども家庭庁のガイドラインは、インフルエンザの潜伏期間を1〜4日としています。家族が発症した翌日にうつることもあれば、4日目に出ることもあるという幅です。
うつす側の期間についても目安があります。厚生労働省の急性呼吸器感染症に関するQ&Aは、「一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています」と書いています。家庭内に症状のある人がいる間は、接触の機会が残ります。
朝にやることは多くありません。体温を測り、前の日との差を見ます。食欲とだるさ、咳の有無も聞いておきます。どれかが崩れていれば、無理に送り出さずに受診を考えてください。本人に症状が出た時点から、出席停止の日数を数え始めます。日中に体調を崩したときのために、家庭内に患者がいることを担任に伝えておく方法もあります。
今シーズンの数字(2026年9月29日時点)
厚生労働省が令和8年9月18日に公表した第37週(9月7日〜9月13日)の発生状況では、全国の定点当たり報告数は5.54人、報告数は20,697人でした。前の週の第36週は3.29人だったので、1週間で増えています。昨年の同じ時期は0.72人、2,732人です。
同じ報告に含まれるインフルエンザ様疾患発生報告では、第37週に休校11件、学年閉鎖130件、学級閉鎖528件があり、休業した施設は合計669でした。第36週は合計167だったので、1週間で4倍になっています。
都道府県の差は大きく、第37週は沖縄県16.61人、東京都9.53人に対し、岡山県0.72人、広島県1.59人でした。住んでいる地域の状況は、都道府県の感染症情報センターのページで確認できます。
この節の数字は週ごとに更新されます。最新の値は厚生労働省の報道発表で確かめてください。条文と大阪府の運用の部分は、この間に変わっていません。
参考資料
- e-Gov法令検索 学校保健安全法施行規則(第18条・第19条・第21条)
- e-Gov法令検索 学校保健安全法(第2条・第19条・第20条)、同施行令(第6条)
- 大阪府 よくある質問「家族の中にインフルエンザ(新型コロナウイルス感染症)にかかった者がいます。子どもは学校(幼稚園)に登校(園)できますか。」
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン」(2018年改訂版・2023年5月一部改訂)
- 厚生労働省「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」(令和7年12月19日版)
- 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」(令和8年第37週・令和8年9月18日公表)
- 文部科学省〔別紙1〕小学校及び特別支援学校小学部の指導要録に記載する事項等
※個人差があります。受診の判断は医師にご相談ください。