熱が出てインフルエンザかもしれないと思ったとき、抗インフルエンザウイルス薬は発症から48時間以内に使い始めるのが目安です。この48時間は、病院に着いた時刻からではなく、熱などの症状が出た時刻から数えます。だから最初にすることは受診の予約ではなく、症状が始まった時刻を確かめて覚えておくことです。夜中に熱が上がったなら、その時刻をメモしてから休んでください。翌朝いちばんの受診なら、時間の計算では十分内側に入ります。ただし高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいといった状態のときは、48時間の計算より受診が先です。
この記事の内容は、厚生労働省の令和8年度ARI総合対策Q&A(令和8年9月30日版)を2026年10月6日に開いて確認したものです。
48時間は、受診した時刻ではなく症状が出た時刻から
このQ&AのQ16は、抗インフルエンザウイルス薬について、発症から48時間以内に使用を開始すると発熱期間が通常1〜2日間短縮されるとしています。そして「症状が出てから2日(48時間)以降に使用を開始した場合、十分な効果は期待できません」と書いています。
起点は「症状が出てから」です。病院の受付をした時刻でも、検査をした時刻でも、薬局で薬を受け取った時刻でもありません。つまり48時間の持ち時間は、受診する前からすでに減り始めています。
ここは診察で必ず聞かれるところです。「昨日の夜から」ではなく「昨夜10時ごろから寒気が来て、11時に38度5分でした」と答えられると、薬を使うかどうかの判断材料がそろいます。解熱剤を飲んでいったん下がった場合も、最初に症状が出た時刻が起点です。下がったタイミングから数え直すわけではありません。
夜中に熱が出たとき、朝いちばんの受診で間に合う計算になる
48時間は、慌てているときに感じるよりは長い時間です。木曜の夜11時に発症したなら、48時間後は土曜の夜11時です。金曜の朝に受診すれば、まだ10時間ほどしか使っていません。日付が変わると「もう昨日のことだ」と感じますが、時間で数えると余裕があります。
逆に、見落としやすいのは日中に軽く始まった場合です。月曜の昼に体がだるく、夕方から熱が上がったというとき、起点は夕方ではなく、だるさが始まった昼になることがあります。自分では風邪だと思って過ごした時間も、48時間の中に入っています。「いつからおかしかったか」を思い出すほうが、熱が何度まで上がったかより重要です。
休日や連休にかかると、この計算が効いてきます。金曜の夜に発症すると、48時間後は日曜の夜です。土曜の午前に開いている医療機関を探すか、日曜に休日診療に行くかで、48時間の内側か外側かが変わります。先に調べておくのは、自分の市区町村の休日・夜間診療の当番表です。
48時間を過ぎていても、受診をやめる理由にはならない
Q&Aが書いているのは、48時間を過ぎてから薬の使用を始めた場合に「十分な効果は期待できません」ということです。受診しなくてよい、とは書かれていません。
受診の目安は別のところに書かれています。Q15は、具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょうとしています。これは発症からの時間とは関係のない基準です。48時間が過ぎてもつらい状態が続いているなら、それはQ15が受診を促している状態にあたります。
診断が付くこと自体にも意味があります。職場や学校に説明するとき、家族のなかで誰がどう動くかを決めるときの前提になります。学校については出席停止の日数が法令で決まっていますが、一般の会社については日数を定めた法令がなく、勤め先の就業規則で決まります。この違いはインフルエンザで会社は何日休むかに分けて書いています。
時間の計算より先に受診を考える状態
Q15が早めの受診をすすめているのは、次のような状態のときです。どれも48時間の計算を待つ必要はありません。
- 高熱が続く
- 呼吸が苦しい
- 意識状態がおかしい
あわせてQ15は、子どもや未成年者については、一人にさせないような配慮が必要だとしています。熱が高いときに部屋で一人にしない、という話です。
一方で、基礎疾患がある人、妊娠中の人、乳幼児や高齢者をどう線引きするかは、このQ&Aの受診の項には書かれていませんでした。該当する人は一般の目安より慎重に動いたほうがよいと説明されることが多いものの、今回開いた資料のなかでは確認できていません。迷う場合は、次の電話相談で状況を伝えて判断してください。
休日・夜間に迷ったときの電話相談
子どもについては、厚生労働省が子ども医療電話相談事業(♯8000)を案内しています。休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できる仕組みです。日本全国統一の短縮番号♯8000を押すと、住んでいる都道府県の相談窓口に自動転送されます。
注意点は時間です。実施時間は都道府県ごとに違い、厚生労働省のホームページに「子ども医療電話相談実施状況」として掲載されています。深夜まで受けている県と、夜のうちに終わる県があります。自分の県の時間帯は、熱が出る前に一度見ておくほうが確実です。
大人の場合は、総務省消防庁の救急安心センター事業(♯7119)があります。番号は消防庁のページで確認できました。ただしこのページに載っているのは番号と案内のリンクで、相談できる内容や実施されている地域の範囲は別のページに分かれています。今回はそこまで開いていないため、自分の地域で使えるかどうかは消防庁のページから確かめてください。
市販の検査キットだけで受診するかを決めない
令和8年度ARI総合対策Q&Aには、市販の検査キットや自分で行う検査についての記載がありませんでした。検査のタイミングや精度についても書かれていません。つまり自己検査の結果をどう扱うかは、この資料からは判断できません。
そのうえで実務的に言えるのは、結果待ちで時間を使わないことです。陰性と出たことを理由に受診を遅らせれば、48時間のうちの時間だけが過ぎます。判断の基準は、検査の結果ではなく症状が出た時刻です。陽性と出た場合も、診断は医療機関で受けることになります。
確かめていないこと
- 検査が発症直後だと陰性になりやすいかどうか。令和8年度ARI総合対策Q&Aに検査の記載がなく、今回は公式の資料で裏を取れていません
- インフルエンザの一般用(OTC)検査キットの承認状況
- 救急安心センター事業(♯7119)の実施地域と対応時間
- 抗インフルエンザウイルス薬の種類ごとの違いと、窓口で払う金額
参考にした公式ページ
- 厚生労働省 令和8年度 ARI総合対策Q&A — Q16(抗インフルエンザウイルス薬と48時間)、Q15(受診の目安と子どもへの配慮)。令和8年9月30日版
- 厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ) — 年度ごとのQ&Aと発生状況の入口
- 厚生労働省 子どもの症状は♯8000 — 相談できる内容、自動転送の仕組み、実施時間の確認先
- 総務省消防庁 救急車の適時・適切な利用 — 救急安心センター事業♯7119の番号
※個人差があります。受診の判断は医師にご相談ください。