令和8年度の地域別最低賃金は、9月3日に47都道府県すべての答申が出そろいました。全国加重平均は1,177円。昨年度の1,121円から56円、率にして5.0%の引き上げです。ただし「10月1日から全国で上がる」ではありません。10月1日に発効するのは15都道府県だけで、残る32は10月中から12月2日までに順次切り替わります。自分の県の新しい時給と発効予定日は、下の一覧でそのまま確認できます。答申のあとは県ごとに決定と官報公示の手続きがあり、東京は9月1日に決定を公示済みです。
まず結論。1,177円は全国平均で、自分の県の額ではない
報道で見る1,177円は47都道府県を加重平均した数字です。実際の額は東京の1,280円から宮崎の1,085円まで、195円の幅があります。引き上げ額も一律ではなく、最も大きい佐賀が65円、最も小さい東京・神奈川・大阪が54円でした。
7月28日の段階では、中央最低賃金審議会が示した「目安」(Aランク54円、B・Cランク56円。目安どおりに決まれば全国加重平均1,176円)しかありませんでした。その後、各都道府県の地方最低賃金審議会が実際の額を審議し、9月3日に答申が出そろっています。結果は、目安を上回った県が33、目安どおりが14、目安を下回った県は1つもありませんでした。全国加重平均も目安を1円上回る1,177円です。引上げ額56円は、昭和53年に目安制度が始まって以来2番目の大きさです。最高額(東京1,280円)に対する最低額(宮崎1,085円)の比率は84.8%で、昨年度の83.4%から縮まり、12年続けて地域差が小さくなっています。
なお、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」ページは2026年9月15日の時点でもまだ令和7年度の額のままです。いま自分の県の新しい額を原典で確かめたい場合は、一覧ページではなく9月3日の答申発表ページとその別紙PDFを見てください。一覧ページだけを見ると、改定前の額を新しい額と読み違えかねません。
47都道府県一覧。あなたの県はいくら、いつから
金額は答申された改定額、発効日は答申時点の予定です。発効日は答申の公示後、異議の申出の状況などによって変わる可能性があります。日付はすべて2026年(令和8年)です。
| 都道府県 | 新しい最低賃金 | 改定前 | 引上げ額 | 発効予定日 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,131円 | 1,075円 | +56円 | 10月1日 |
| 青森 | 1,090円 | 1,029円 | +61円 | 10月29日 |
| 岩手 | 1,090円 | 1,031円 | +59円 | 12月1日 |
| 宮城 | 1,098円 | 1,038円 | +60円 | 10月1日 |
| 秋田 | 1,090円 | 1,031円 | +59円 | 10月14日 |
| 山形 | 1,092円 | 1,032円 | +60円 | 10月30日 |
| 福島 | 1,094円 | 1,033円 | +61円 | 10月16日 |
| 茨城 | 1,136円 | 1,074円 | +62円 | 10月18日 |
| 栃木 | 1,125円 | 1,068円 | +57円 | 10月1日 |
| 群馬 | 1,120円 | 1,063円 | +57円 | 10月3日 |
| 埼玉 | 1,196円 | 1,141円 | +55円 | 10月1日 |
| 千葉 | 1,195円 | 1,140円 | +55円 | 10月1日 |
| 東京 | 1,280円 | 1,226円 | +54円 | 10月1日 |
| 神奈川 | 1,279円 | 1,225円 | +54円 | 10月1日 |
| 新潟 | 1,108円 | 1,050円 | +58円 | 10月1日 |
| 富山 | 1,119円 | 1,062円 | +57円 | 10月1日 |
| 石川 | 1,113円 | 1,054円 | +59円 | 10月3日 |
| 福井 | 1,112円 | 1,053円 | +59円 | 10月4日 |
| 山梨 | 1,113円 | 1,052円 | +61円 | 11月1日 |
| 長野 | 1,117円 | 1,061円 | +56円 | 10月2日 |
| 岐阜 | 1,121円 | 1,065円 | +56円 | 10月1日 |
| 静岡 | 1,154円 | 1,097円 | +57円 | 10月15日 |
| 愛知 | 1,195円 | 1,140円 | +55円 | 10月1日 |
| 三重 | 1,143円 | 1,087円 | +56円 | 10月1日 |
| 滋賀 | 1,136円 | 1,080円 | +56円 | 10月3日 |
| 京都 | 1,180円 | 1,122円 | +58円 | 11月16日 |
| 大阪 | 1,231円 | 1,177円 | +54円 | 10月1日 |
| 兵庫 | 1,172円 | 1,116円 | +56円 | 10月1日 |
| 奈良 | 1,107円 | 1,051円 | +56円 | 10月4日 |
| 和歌山 | 1,101円 | 1,045円 | +56円 | 10月3日 |
| 鳥取 | 1,090円 | 1,030円 | +60円 | 10月3日 |
| 島根 | 1,092円 | 1,033円 | +59円 | 10月10日 |
| 岡山 | 1,104円 | 1,047円 | +57円 | 10月2日 |
| 広島 | 1,141円 | 1,085円 | +56円 | 10月11日 |
| 山口 | 1,101円 | 1,043円 | +58円 | 10月8日 |
| 徳島 | 1,103円 | 1,046円 | +57円 | 11月1日 |
| 香川 | 1,092円 | 1,036円 | +56円 | 10月1日 |
| 愛媛 | 1,093円 | 1,033円 | +60円 | 11月1日 |
| 高知 | 1,086円 | 1,023円 | +63円 | 10月29日 |
| 福岡 | 1,114円 | 1,057円 | +57円 | 10月4日 |
| 佐賀 | 1,095円 | 1,030円 | +65円 | 11月15日 |
| 長崎 | 1,087円 | 1,031円 | +56円 | 11月2日 |
| 熊本 | 1,092円 | 1,034円 | +58円 | 12月1日 |
| 大分 | 1,096円 | 1,035円 | +61円 | 11月1日 |
| 宮崎 | 1,085円 | 1,023円 | +62円 | 10月24日 |
| 鹿児島 | 1,090円 | 1,026円 | +64円 | 10月25日 |
| 沖縄 | 1,086円 | 1,023円 | +63円 | 12月2日 |
| 全国加重平均 | 1,177円 | 1,121円 | +56円 | — |
10月1日に変わるのは15都道府県だけ
「最低賃金は10月1日に切り替わるもの」とは限りません。厚生労働省の発表自体が、答申された改定額は都道府県労働局長の決定により「令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定」という書き方です。発効日は県ごとに決まるため、同じ改定でも切り替わる日が2か月以上ずれます。
令和8年度に10月1日発効となったのは、北海道・宮城・栃木・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・富山・岐阜・愛知・三重・大阪・兵庫・香川の15都道府県です。それ以外の32府県は10月中が22県、11月が7府県(山梨・徳島・愛媛・大分が11月1日、長崎が11月2日、佐賀が11月15日、京都が11月16日)、12月が3県(岩手・熊本が12月1日、沖縄が12月2日)となっています。
つまり大阪で10月1日に上がっても、隣の京都は11月16日まで変わりません。ニュースの見出しは「10月1日から」で揃いますが、それが当てはまるのは3分の1弱です。
「答申」はまだ確定ではない。決定・公示・発効の順に進む
9月3日の発表は、47都道府県すべてで審議会の答申が出そろったという段階の集計です。答申は地方最低賃金審議会が労働局長に出した意見で、ここで確定するわけではありません。厚生労働省の「改正手続の流れ」では、答申のあとに、関係する労使から異議申出があった場合の再審議、決定、決定の公示、発効という順に進みます。別紙の発効日に「予定」と付いているのはこのためで、異議申出の状況によっては変わる可能性があると注記されています。
東京の例が分かりやすいです。東京地方最低賃金審議会は8月5日に54円の引上げを答申し、東京労働局長は答申内容の公示などを経て、9月1日に時間額1,280円とする決定を官報に公示しました。発効は10月1日で、公示からちょうど1か月後です。10月1日発効の他の14道府県も、同じように9月上旬までに決定と公示を終えているはずの日程になります。
自分の県がどこまで進んだかは、都道府県労働局のサイトの「お知らせ」や「報道発表」で確かめられます。「○○県最低賃金の改正決定」「官報公示」という見出しが出ていれば決定済みで、「答申」「審議会の意見に関する公示」までしか出ていなければ、まだ異議申出の期間か決定前です。11月や12月発効の県は、9月中旬の時点で答申止まりでも遅れているわけではありません。
昨年度のような「年またぎ」は、今年はない
昨年度(令和7年度)は発効日が大きく散らばりました。最も早い栃木が10月1日だったのに対し、秋田は年度末の2026年3月31日。福島・徳島・熊本・大分が2026年1月1日、群馬が3月1日と、6県が年をまたいでいます。最も早い県と遅い県で半年近い開きがありました。
令和8年度はここが変わりました。年をまたぐ県は1つもなく、最も遅い沖縄でも12月2日です。昨年の「半年の開き」が、今年は10月1日から12月2日までの2か月あまりに縮まりました。昨年の感覚で「うちの県は年明けかもしれない」と身構えていた人は、思ったより早く上がると考えて構いません。
給与に反映されるのはいつからか
給与への反映は発効日が基準です。発効日以降に働いた分から新しい時給で計算します。発効日が月の途中の県では、その月の給与明細に旧時給と新時給が混ざるのが正しい処理になります。
たとえば秋田は10月14日発効です。月末締めなら、10月1日から13日までの勤務は1,031円、14日以降は1,090円で計算されます。10月分がまるごと新しい時給になるわけではありません。京都のように11月16日発効の県なら、11月分の明細が同じように二段構えになります。締め日が月末でない職場では、給与計算の対象期間と発効日の関係をひとつずつ当てはめてください。
なお、発効日より前に会社が自主的に時給を上げるのは自由です。雇用契約の更新が9月や10月に来る人は、更新面談の場で発効日以降の時給もあわせて確かめておくと二度手間になりません。
いまの時給が新しい額より高い人は、自動では上がらない
改定で時給の引き上げが義務になるのは、いまの時給が新しい最低賃金を下回る人だけです。東京で時給1,300円のパートなら、最低賃金が1,280円になっても会社に引き上げの義務は生じません。
それでも、最低賃金の改定は周りの募集時給が見直される時期でもあります。長く時給が据え置かれているなら、改定は交渉の自然なきっかけです。同じ職種の募集時給をいくつか控えてから話すと、感覚ではなく相場の話として伝えられます。
月給や年収に直すといくらか
時給だけでは生活の見当がつきにくいので、仮の条件で月給と年収に直します。1日8時間、月21日勤務の168時間で計算した仮定の例で、実際の額は所定労働時間と休日数で変わります。
| 時給 | 月168時間の月給 | 12か月の年収 |
|---|---|---|
| 全国加重平均 1,177円 | 197,736円 | 約237万円 |
| 東京 1,280円 | 215,040円 | 約258万円 |
| 宮崎 1,085円 | 182,280円 | 約219万円 |
この額は最低賃金の対象になる基本の賃金だけの計算で、残業代や通勤手当は別に加わります。逆に、月給制で働いている人は、この計算を反対向きに使います。手当を除いた月給を月平均所定労働時間で割り、出てきた時給が自分の県の新しい額を下回っていないかを見ます。次の項目で具体的に説明します。
「時給では上回っている」つもりで下回っている例
最低賃金と比べる賃金には、含めてはいけないものがあります。厚生労働省は、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金で、割増賃金・精皆勤手当・通勤手当・家族手当などは除くとしています。賞与や臨時の手当も同じく除外です。
「手当込みで時給換算1,200円」と説明されていても、手当を除いた部分が新しい最低賃金を下回れば違反です。月給制なら、対象になる月給を月平均所定労働時間で割って時給に直します。月給18万円で所定労働時間が月160時間なら時給換算1,125円。今回の改定で、この金額は14都道府県(北海道・茨城・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・愛知・三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・広島)の最低賃金を下回ります。栃木はちょうど同額です。パートだけでなく、月給制の契約社員や正社員でも起こりうる話になってきました。
残業や深夜の割増賃金も、新しい時給を基準に計算し直されます。時給が56円上がれば、1.25倍で計算する時間帯は1時間につき70円上がる計算です。
試用期間・研修中・派遣スタッフも下回れない
「研修期間中は時給950円」といった求人を見かけますが、研修中や試用期間中でも最低賃金は原則そのまま適用されます。下回る額にするには、使用者が都道府県労働局長の許可(最低賃金法第7条の減額の特例)を受ける必要があり、許可なしに下回る額にすることはできません。求人票に研修中の時給が書いてあるだけでは、この許可を受けたことにはなりません。
派遣で働く人に適用されるのは、派遣会社の所在地ではなく、実際に働く派遣先の最低賃金です。派遣会社の所在地と派遣先の県が違うときに取り違えやすいところです。また、製造業の一部など産業によっては地域別より高い「特定最低賃金」が設定されていて、地域別と特定の両方が適用される場合は高いほうの額以上を支払う義務があります。
扶養内で働く人は年収の見込みを引き直す
時給が上がると、シフトを変えなくても年収が増えます。月80時間働く人の時給が56円上がれば、年収ベースで5万3千円あまりの増加です。扶養の範囲に収めて働いている人は、自分の県の発効予定日が分かったいまの時点で年間の見込みを一度引き直しておくと、年末に慌ててシフトを削る事態を避けられます。
発効日が遅い県ほど、今年に限っては影響が小さくなります。12月2日発効の沖縄なら、新しい時給で働くのは今年のうち1か月足らずです。逆に来年は12か月まるごと効いてくるので、来年の見込みは別に立ててください。
社会保険の扶養から外れるかどうかは、時給そのものではなく、週の所定労働時間・賃金・勤め先の規模で決まります。厚生労働省の資料では、月額賃金8.8万円以上という賃金要件(いわゆる106万円の壁)は2026年10月に撤廃予定とされています。撤廃されれば週20時間以上働くかどうかが軸になるので、境目に近い人は勤め先の総務か年金事務所で現時点の扱いを確かめてください。
発効日を過ぎても明細が変わらないとき
自分の県の発効日を過ぎたら、給与明細で時給を確かめます。新しい額を下回っていたら、まず勤め先に伝えてください。改定を把握していなかった、翌月分からまとめて変えるつもりだった、といった事務処理の遅れなら、指摘だけで解決する場合もあります。発効日が県ごとに違うので、本社が別の県にある職場では、どちらの県の日付で処理されたかも見ておくと確実です。
会社が応じない場合でも、最低賃金に達しない賃金を定める労働契約はその部分が無効で、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます。差額はさかのぼって請求できます。地域別最低賃金を下回った場合、使用者には50万円以下の罰金が定められています。相談先は都道府県労働局か、最寄りの労働基準監督署です。
「経営が苦しくて上げられない」という会社側の事情があっても、最低賃金を下回る選択肢はありません。設備投資とあわせて事業場内の最低賃金を引き上げる中小企業には業務改善助成金があり、申請の窓口は各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。令和8年度分の受付は9月1日に始まっていて、締切は自分の県の発効日の前日か11月30日のいずれか早い日です。パート側から持ち出す話ではないものの、会社との話が平行線になったとき、こうした制度があると知っているだけで話の運び方が変わります。
これから仕事を探すなら「発効日またぎ」に気をつける
秋に向けて求人を探している人は、募集時給がいつ時点の最低賃金を前提にしているかを見てください。答申前に作られた求人票は、改定前の金額のままのこともあります。求人票の掲載日や更新日もあわせて見ておくと確実です。
いまの最低賃金ぎりぎりの募集なら、発効日以降は新しい額まで自動的に上がります。ただし発効日が11月や12月の県では、10月に働き始めてもしばらくは改定前の額のままです。応募の段階で「発効日以降の時給はどうなりますか」と確かめておくと、働き始めてから明細で気づくより話が早く済みます。
参考資料
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」— 9月3日発表。全国加重平均1,177円、引上げ額54円〜65円、発効は10月1日から12月2日
- 厚生労働省「(別紙)令和8年度地域別最低賃金額答申状況」— 47都道府県の改定額・引上げ額・目安差額・発効予定日。発効日は異議申出の状況で変わる可能性があるとの注記
- 厚生労働省「(参考)地域別最低賃金の改正手続の流れ」— 答申→異議申出に係る調査審議→決定→決定の公示→発効の順
- 東京労働局「東京都最低賃金を1,280円に引上げます」— 8月5日答申、9月1日決定・官報公示、10月1日発効
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」— 7月28日時点の目安。A54円・B56円・C56円
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」— 改定前(令和7年度)の県別金額と発効日。2026年9月15日時点でも未更新
- 厚生労働省「最低賃金制度の概要」「最低賃金制度とは」「最低賃金の対象となる賃金」— 対象となる賃金の範囲、派遣労働者の扱い、特定最低賃金、無効の規定と罰則
- 兵庫労働局「最低賃金法第7条に基づく最低賃金の減額の特例許可制度について」— 減額の特例許可
- 厚生労働省「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」— 賃金要件(106万円の壁)は2026年10月に撤廃予定
- 厚生労働省「業務改善助成金」— 令和8年度分の受付開始日と申請の締切、申請窓口