ねんきん定期便や加入記録で学生時代の月が「未納」になっていて、当時は学生納付特例を出していなかった、という場合です。さかのぼって申請できるのは、保険料の納付期限から2年を経過していない期間、つまり申請時点から2年1カ月前までの期間だけです。それより古い月はもう申請できません。まず確認するのは、自分の未納月が日本年金機構の「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」の表に残っているかどうかで、残っていれば市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所に年度ごとの申請書を出します。
さかのぼれるのは「申請時点から2年1カ月前まで」
日本年金機構は学生納付特例のページで、審査の原則をこう書いています。原則として申請日にかかわらず、4月から翌年3月まで(申請日が1月から3月までの場合は、前年4月から3月まで)の期間を対象として審査します。そのうえで注意事項に、「ただし、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1カ月前までの期間)についても、さかのぼって申請することができます」と置かれています。
別ページの「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」でも、「保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1カ月前までの期間)について、さかのぼって免除等を申請することができます。(学生納付特例も同様です)」と、学生納付特例を含むことがはっきり書かれています。
ここで混ざりやすいのが、年度の区切りです。学生納付特例の年度は4月から翌年3月までで、1枚の申請書で申請できるのはその1年度分です。たとえば2年分の未納がある人は、年度が2つにまたがるので申請書も2枚になります。免除・納付猶予制度のほうは年度が7月から翌年6月までで区切りが違うため、ネット上の説明を読むときは、どちらの制度の話なのかを先に見分けてください。
自分の分がまだ間に合うかを確かめる
「2年1カ月」は月単位で動くので、同じ年度の中でも古い月から順に期限が切れていきます。日本年金機構は年度ごとの申請可能期間と、月ごとの具体的な申請期限を表で出しています。令和8年4月時点として示されている学生納付特例の表は次の内容です。
| 年度 | 学生納付特例の申請が可能な期間 | 審査対象の前年所得 |
|---|---|---|
| 令和5年度分 | 令和6年3月 | 令和4年中所得 |
| 令和6年度分 | 令和6年4月〜令和7年3月 | 令和5年中所得 |
| 令和7年度分 | 令和7年4月〜令和8年3月 | 令和6年中所得 |
| 令和8年度分 | 令和8年4月〜令和9年3月 | 令和7年中所得 |
月ごとの期限は、その月の保険料の納付期限から2年後です。同じページの表では、令和6年3月分の納付期限が令和6年4月30日で、免除申請期限の日が令和8年4月30日と示されています。また、納付期限の2年後が休日等に当たる月があり、その場合は窓口や郵送で手続きするなら直前の営業日までに申請書を受理してもらう必要がある、という注記が付いています。
この表は年度が進むと内容が入れ替わります。自分の月が残っているかどうかは、記事の表ではなく日本年金機構の「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」の最新の表で確認してください。
2年を過ぎた期間は、この申請では戻せない
同じページには「納付期限から2年を経過すると時効により免除の申請ができません」とあります。期限を過ぎた月は、学生だったことを証明できても申請の対象になりません。
未納のままにした場合との差は、日本年金機構が免除・納付猶予制度のページで表にしています。納付は受給資格期間・年金額・障害基礎年金と遺族基礎年金の受給資格期間のすべてに算入され、納付猶予(学生納付特例もこの扱い)は受給資格期間と障害・遺族基礎年金の受給資格期間には算入されるものの年金額には反映されません。未納はこの3つのどれにも算入されません。同じページは全額免除された期間について、老齢基礎年金を受け取る際に保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(税金分)を受け取れるとしたうえで、「手続きをせず未納となった場合、2分の1(税金分)は受け取れません」と書いています。
つまり、さかのぼり申請で直接増えるのは将来の年金額ではありません。変わるのは、老齢基礎年金の受給資格期間に入るかどうかと、万一のときの障害・遺族基礎年金の対象期間に入るかどうかです。年金額の側は、承認された後に追納するかどうかの話になります。
急ぐ理由は年金額より障害基礎年金のほう
学生納付特例のページの注意事項には、「学生納付特例の申請が遅れると、申請日前に生じた不慮の事故や病気による障害について、障害基礎年金を受け取ることができない場合がありますので、ご注意ください」とあります。期限内であっても、出すのが遅れている間に起きたことについては間に合わないことがある、という意味の注記です。
同じページは、障害や死亡といった不慮の事態が生じた場合について、次のどちらかに該当すれば障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されるとしています。
- 事故が発生した月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2以上ある場合
- 事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合
そして、学生納付特例制度の承認を受けている期間は保険料納付済期間と同様にこの要件の対象期間になる、と書かれています。直近1年に未納がないかどうかで見る2つ目の条件は、未納が数か月あるだけで外れ得るものです。申請できる期間が残っているなら、年金額の損得を考える前に先に出しておくほうが筋が通ります。
使える人・使えない人
対象になるのは、その年度の前年所得が一定額以下だった学生です。所得基準は申請者本人のみで「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」とされ、配偶者および世帯主の所得審査はありません。学生の範囲は、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する方で、夜間・定時制課程や通信課程も含まれます。各種学校については修業年限が1年以上の課程に在学している方に限られ、私立の各種学校は都道府県知事の認可を受けた学校に限られます。自分の学校が対象かは「学生納付特例対象校一覧」で確認できます。
使えないのは、申請できる期間を過ぎた月です。また、学生ではない期間については学生納付特例ではなく免除・納付猶予制度のほうを見ることになり、こちらは年度の区切りも審査対象も違います。
前年(または前々年)の所得について税の申告(確定申告や年末調整)が行われていない場合は、市区町村の税務担当窓口で市区町村民税の申告を行ったうえで申請書を提出するよう案内されています。何年も前の年度分を出すときは、ここで止まることがあります。
申請先と添付書類
申請先は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口、お近くの年金事務所、そして在学中の学校等です。学校は、学生納付特例の代行事務を行う許認可を受けている場合に限られ、許認可の有無は「学生納付特例対象校一覧」の「学生納付特例事務法人の指定状況」欄に「〇」が表示されているかで確認します。すでに卒業している場合は、窓口か年金事務所が実際の提出先になります。申請書は郵送で提出することもできます。
申請用紙は「ケース12:国民年金保険料の納付猶予を受けるとき(学生の方)」からダウンロードでき、提出するのは[提出用]と[学生証(写)・在学証明書(原本)の添付欄]のみです。添付書類は次のとおりです。
- 学生等であることまたは学生等であったことを証明する書類(在学期間がわかる在学証明書の原本、または学生証の写し。学生証の裏面に有効期限・学年・入学年月日の記載がある場合は裏面も含める)
- 基礎年金番号で手続きする場合は「基礎年金番号通知書」または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
- マイナンバーで手続きする場合はマイナンバーカード。持っていない場合は、マイナンバーが確認できる書類と、運転免許証・パスポート・在留カードなどの身元確認書類
学生証の写しにクレジットカード番号が載っている場合は、不安であればその番号をマスキングしてよいと案内されています。市区町村の窓口で直接これらを提示する場合は、添付は不要です。
手続きの手段としては電子申請が案内されています。ねんきんネットには申請書の作成を支援する機能もありますが、こちらは画面で入力して印刷用ファイルをダウンロードし、印刷した届書を窓口に持参するか郵送する仕組みで、電子申請ではないと明記されています。利用にはねんきんネットのIDが必要です。
承認された後に残る「年金額」の話
承認を受けた期間は、10年以内であれば保険料をさかのぼって納めること(追納)ができます。ただし、承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。
老齢基礎年金については、承認期間は受給資格期間(原則として保険料の納付済期間等が10年以上)に含まれますが、年金額の計算の対象となる期間には含まれません。満額を受け取るには40年の保険料納付済期間が必要とされています。さかのぼり申請を済ませたら、次に考えるのは追納をいつするかという別の判断になります。
参考資料
- 日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」— 対象者と所得基準、申請先と添付書類、さかのぼり申請の注意事項、追納、障害基礎年金等との関係
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」— 年度ごとの申請可能期間と審査対象所得、月ごとの申請期限、複数年度の申請枚数
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」— 納付・全額免除・一部免除・納付猶予・未納それぞれが年金に反映されるかの一覧