訂正(2026年10月4日) 初出では「20年ルールがiDeCo→退職金の順、10年ルールが退職金→iDeCoの順」と書き、「iDeCoを先に受け取り、20年以上後に退職金」が有利だとしていました。順序が逆で、誤りです。国税庁の資料で確かめ、全体を書き直しました。
同日追記 退職金が先の場合に「19年以上空ける」としていた箇所も直しました。受取年の差が19年なら、まだ前年以前19年内に入ります。
3通りの受け取り方で何が違うか
iDeCoや企業型DCの一時金と会社の退職金を両方受け取るとき、退職所得控除の計算は、受け取る年の組み合わせで3通りに分かれます。
| 受け取り方 | 控除の計算 |
|---|---|
| 同じ年に両方 | 収入を合算。控除は最も長い期間に、ほかの期間のうち重ならない部分を足した年数で1回計算 |
| iDeCo一時金が先、退職金が後(別の年) | 退職金の年の前年以前9年内にDC一時金(2026年1月1日以後の支払い)があれば、重なった期間の分を退職金の控除から調整。2025年12月31日までのDC一時金は前年以前4年内 |
| 退職金が先、iDeCo一時金が後(別の年) | DC一時金の年の前年以前19年内に退職金があれば、重なった期間の分をDC一時金の控除から調整 |
2026年1月の改正で変わったのは、2行目の「4年内」が「9年内」に延びたことだけです。3行目の19年内は以前からのルールです。
「前年以前9年内」は年で数えます。2036年に退職金を受け取るなら、2027年から2035年に受け取ったDC一時金が対象です。受取日どうしの日数では判定しません。
同じ年に受け取る場合
同じ年なら、前年以前の調整ではなく合算の計算になります。たとえば、会社の勤続期間が35年、iDeCoの期間が20年で、その20年がすべて会社の35年に含まれるなら、控除の計算に使うのは35年です。
- 控除額: 800万円 + 70万円 × (35年 − 20年) = 1,850万円
- 退職金1,500万円とiDeCo一時金500万円を同じ年に受け取ると、収入は2,000万円
- 退職所得: (2,000万円 − 1,850万円) × 2分の1 = 75万円
控除が1,850万円と、iDeCoの20年分の800万円の2つ使えるわけではありません。詳しい計算例と、支払先に出す書類は退職金とiDeCoを同じ年に受け取るときの控除にまとめています。
別の年に受け取る場合
別の年にずらすと、合算はされませんが、上の表の範囲に入れば重なった期間の分が調整されます。
調整で差し引かれるのは、重なった期間を勤続年数とみなして計算した控除額です。対象期間に入ったら控除がゼロになる、というわけではありません。先に受け取った一時金が、その一時金の控除額より少なかった場合は、重なりの計算に使う期間を短く読み替える決まりもあります(源泉徴収のあらまし)。
退職金が先の場合、この19年の範囲から外れるには、受取年の差が20年以上必要です。たとえば退職金を2026年、DC一時金を2045年に受け取るなら範囲内で、2046年なら範囲外です。iDeCoの老齢給付金は75歳になるまでに請求する必要があるため、60歳で退職金を受け取った人が、この範囲を外すためにDC一時金を待つことはできません。
DC一時金が先なら、2026年1月1日以後に支払われた分は、受取年の差が10年以上になると前年以前9年内の範囲から外れます。それより前の支払い分は前年以前4年内です。ただし、会社の退職金の時期は自分で選べないこともあります。期間の重なりや過去の支給額も必要なので、年の差だけで税額までは決まりません。
比べるときの手順
- 会社の退職金規程で、退職金の額と支給時期、年金形式を選べるかを確認する
- iDeCo・企業型DCの運営管理機関で、残高、受け取れる時期、加入期間の記録を確認する
- 「同じ年」「iDeCoが先」「退職金が先」のうち、実際に選べる案を2〜3通り書き出す(受取年と金額を入れる)
- 過去に受け取った退職金・DC一時金があれば、その年と金額も添える
- 税務署や税理士に、案ごとの税額を計算してもらう
一時金ではなく年金形式で受け取る分は、退職所得ではなく雑所得(公的年金等)として課税されます。退職所得控除の調整は関係しなくなる一方、公的年金と合わせた課税になるので、年金形式も比べる候補に入れてください。
順序の数え方は、iDeCoの「10年ルール」とはと退職金を先に受け取ったら、iDeCo一時金はどうなる?でも説明しています。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.2735 — 同じ年の合算計算と、前年以前4年内・9年内・19年内の区分(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」退職所得の源泉徴収事務 — 重複期間の調整
- 国税庁 タックスアンサーNo.1420 — 退職所得控除の計算式
- iDeCo公式サイト — 受給開始と75歳までの請求