退職金を受け取った。住民税は来年いつ請求される?翌年の手取りはどうなる?
退職金は「分離課税」で支払時に住民税が精算済み。翌年に退職金分の住民税は来ません。ただし退職した年の給与所得分の住民税は翌年6月から請求されます。
目次(12項目)
結論から先に
退職金の住民税は「分離課税」という特別ルールで、退職時に天引き精算済みです。翌年に退職金分の住民税が追加請求されることはありません。一方、退職した年の1月〜退職月までの給与所得分の住民税は、翌年6月から普通徴収(自分で納付)で請求が来ます。退職所得申告書を出さないと控除が適用されず損するので、退職時に必ず提出してください。
退職金の住民税は「分離課税」
通常の所得(給与・事業・不動産など)は他の所得と合算して課税されますが、退職金は次の理由で分離されて課税されます。
- 長年の勤労の対価として一度に受け取るため
- 老後資金としての性格が強いため
- 受け取った年に税負担が極端に重くならないように
具体的には、退職金から退職所得控除を引いた額の半分が課税対象になり、住民税10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)が天引きされます。
退職所得控除の計算
退職所得控除は勤続年数で決まります。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
例:勤続35年なら 800万円 + 70万円×15年 = 1,850万円
退職金1,500万円・勤続35年の場合:
- 退職金 1,500万円 − 退職所得控除 1,850万円 = マイナス
- 課税対象 0円
- 住民税・所得税 0円
退職所得控除が大きいので、勤続20年超の方は退職金が2,000万円以下なら住民税負担が軽くなるケースが多いです。
退職時の天引きを確認する
退職金の振込明細または源泉徴収票で、次の項目を確認してください。
- 退職金の総額
- 所得税(源泉徴収額)
- 住民税(特別徴収額)
- 手取り額
「住民税」欄に金額が記載されていれば、その時点で天引き済みです。翌年に同じ分の請求は来ません。
退職した年の給与分の住民税は別
ここでよく混同するポイントです。退職金は精算済みですが、退職した年の1月〜退職月までの給与所得に対する住民税は、翌年6月から請求されます。
例:2026年5月末で退職した場合
- 2026年1〜5月の給与所得 → 翌年(2027年)6月から普通徴収で請求
- 2026年5月の退職金 → 退職時に天引き済み(追加請求なし)
退職年の途中で会社の特別徴収(給与天引き)が止まるため、5月末退職なら未徴収分(6月以降の特別徴収予定額)が普通徴収に切り替わります。
普通徴収の支払い時期
退職後の住民税は、市区町村から納付書が郵送され、自分で金融機関やコンビニで納めます。
- 6月末:第1期分
- 8月末:第2期分
- 10月末:第3期分
- 翌年1月末:第4期分
口座振替を申し込むと自動引落しになり、納付忘れを防げます。「来年6月の請求」を想定して、生活費とは別に取り分けておくと安心です。
翌年の収入が下がる場合の備え
退職して個人事業主・無職・短時間勤務に切り替える場合、翌年の住民税負担が重く感じることがあります。
- 退職年の年収が高ければ、翌年の住民税も高い
- 翌年の収入が下がっても、住民税は前年の所得ベースで計算される
- 退職金とは別に、半年分の住民税を取り分けておく
目安として、退職年の年収500万円なら住民税は年20万円前後。退職金から「来年の住民税分20万円」を別口座に取り分けておく方が、後で慌てなくて済みます。
退職所得申告書は必ず提出
退職時に勤務先から「退職所得の受給に関する申告書」が渡されます。これを提出しないと、退職所得控除が適用されず、退職金の20.42%が源泉徴収されます。
例:退職金1,500万円・勤続35年
- 申告書提出 → 退職所得控除1,850万円で実質0円
- 申告書未提出 → 1,500万円×20.42% = 約306万円の源泉徴収
後で確定申告すれば取り戻せますが、最初に提出するほうが圧倒的に楽です。
確定申告で取り戻すケース
次のような場合は、退職した年に確定申告を検討してください。
- 退職所得申告書を出し忘れた
- 医療費控除を使いたい
- ふるさと納税のワンストップ期限を過ぎた
- 住宅ローン控除の初年度(自分で申告が必要)
- 退職金を含めた年収で総合課税のほうが有利な場合
- 配偶者控除・扶養控除の調整が必要な場合
確定申告期限は退職年の翌年3月15日です。
iDeCo・年金との同時受取に注意
退職金とiDeCo一時金、企業年金の一時金などを同じ年に受け取ると、退職所得控除を取り合う形になり、税負担が増えることがあります。
- 退職金とiDeCo一時金を別の年に受け取る
- 退職金は一時金、iDeCoは年金で受け取る(分離)
- 受給順序を確認(過去14年・19年ルール)
詳しくは「退職金 iDeCo 同時受給」「退職所得控除 重複」で具体的なケースを確認してください。タイミングを工夫すれば、数十万円〜数百万円の節税につながることもあります。
よくある質問
Q. 退職した年の住民税はいつ・いくら請求されますか?
退職した年の1月〜退職月までの給与所得に対する住民税が、翌年6月から「普通徴収」で請求されます。会社員時代は給与天引きでしたが、退職後は自分で納める形になります。年4回(6月・8月・10月・1月)の分割払いが一般的です。退職金そのものに対する住民税は、退職時に天引き済みなので別途請求はありません。
Q. 退職所得申告書を出さなかった場合はどうなりますか?
退職所得申告書を勤務先に提出しないと、退職金の20.42%が一律源泉徴収されます。退職所得控除(勤続20年超で1年あたり70万円)が適用されないため、本来より多く税金を引かれます。後で確定申告すれば取り戻せますが、最初に提出するほうが手間がかかりません。退職時に必ず提出してください。
Q. 退職金を受け取った年に確定申告は必要ですか?
退職所得申告書を提出していれば、退職金については確定申告不要です。ただし、医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン控除などを使いたい場合、または退職金を含めた所得で確定申告したほうが有利な場合(退職金以外の所得が少ない年など)は、自主的に申告するメリットがあります。
Q. 退職金が2,000万円を超えると住民税はいくらですか?
勤続30年で2,000万円受け取る場合、退職所得控除1,500万円を引いた500万円の半分(250万円)が退職所得です。住民税は10%なので25万円が住民税として源泉徴収されます。所得税は累進で約32.5万円(復興特別所得税含む)。合計60万円弱が源泉で引かれ、残り1,940万円が手取りとなります。
参考資料
- 国税庁「退職金と税」— 退職所得控除の計算と分離課税
- 総務省「個人住民税」— 退職時の特別徴収と普通徴収の切替
- 国税庁「退職所得申告書の手続」— 申告書未提出時の源泉徴収率
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参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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