親から住宅資金1,000万円の贈与を受けたら、いつまでに何を申告する?2026年12月までの非課税特例の使い方
省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで非課税です。翌年2月1日〜3月15日の贈与税申告期限を1日でも過ぎると特例が外れるため、振込前に税務署で要件と書類を確認します。
目次(11項目)
- 「1,000万円までの非課税」と「500万円までの非課税」の境目は省エネ等住宅かどうか
- 贈与をした側・受けた側それぞれに条件がある
- 床面積・住宅の用途にも上限と下限がある
- 申告は翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告書を税務署へ — 期限後だと特例自体が外れる
- 暦年贈与の年110万円・相続時精算課税の年110万円とは別枠で使える
- 親の相続が発生したときの『持ち戻し』対象外という効果
- 親からの振込日と物件の引渡し日、どちらを贈与日として扱うか
- 住宅ローン控除との関係 — 贈与資金は自己資金として扱われる
- 兄弟姉妹で別々の家を建てるとき、それぞれが特例を使えるか
- 2026年12月末までの取得が条件 — 2027年以降は現時点で延長未定
- 参考資料
「親や祖父母から住宅資金を出してもらえる」と決まったあと、最初に気になるのは贈与税の扱いです。一定の条件を満たすと、最大1,000万円までを贈与税の対象から外せる『住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例』が現在も使えます。期間は2026年12月末までの取得が条件で、翌年の確定申告期間内に贈与税の申告書を出すところまでがセットです。条件のひとつでも欠けると特例そのものが外れ、もらった金額に通常の贈与税がかかります。手続きの順番と振込のタイミング、家の仕様まで確認した上で進めるのが安全です。
「1,000万円までの非課税」と「500万円までの非課税」の境目は省エネ等住宅かどうか
非課税の枠は2段階に分かれます。省エネ等住宅に該当する家であれば1,000万円まで、それ以外の家であれば500万円までの贈与が非課税です。境目は『省エネ等住宅』の定義に当てはまるかで、断熱等性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上、耐震等級2以上、または高齢者等配慮対策等級3以上のいずれかを満たす家屋が該当します。
新築の場合は建築会社から住宅性能証明書、建設住宅性能評価書のいずれかを発行してもらい、贈与税の申告書に添付します。建売住宅や注文住宅のパンフレットに『長期優良住宅』『ZEH』と書かれていても、それだけでは省エネ等住宅の証明にはなりません。証明書を発行できる住宅かを契約前に確認しておくと、後で500万円までしか使えなかったという行き違いを避けられます。中古住宅でも対象にはなりますが、性能を満たす中古は限られるため、現実的には新築の方が1,000万円枠を取りやすい印象です。長期優良住宅の認定通知書を持っている家は、それを性能証明書の代わりとして使えます。
贈与をした側・受けた側それぞれに条件がある
贈与者は受贈者から見て直系尊属に当たる人、つまり父母・祖父母・曽祖父母です。配偶者の親、いわゆる義父母は直系尊属に含まれず対象外です。受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上である必要があります。
受贈者側にもう一つ重要なのが、合計所得金額の上限です。贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円を超える人は、原則として特例の対象外になります。床面積が40㎡以上50㎡未満の家を取得するときは、合計所得金額の上限が1,000万円まで下がる扱いです。会社員の年収ベースでは、年収2,200万円前後が2,000万円基準のおおよその目安になります。共働き世帯で夫婦両方の親から贈与を受ける場合は、夫の所得は夫が受けた贈与に、妻の所得は妻が受けた贈与に対して別々に判定する形で、世帯合算ではない点に注意が必要です。
床面積・住宅の用途にも上限と下限がある
家の側の条件も確認しておきます。床面積は登記簿上で50㎡以上240㎡以下が原則です。先ほど触れた通り、40㎡以上50㎡未満も合計所得金額1,000万円以下の人なら対象に加わります。240㎡を超える大型住宅は特例の対象から外れる点に注意します。
床面積の上限・下限は、マンションの場合は『専有部分の床面積』で判定します。バルコニーや共用部分は含めません。注文住宅で図面より広く建ててしまい、240㎡超えになった事例も実際にあるため、契約段階で図面と登記の見込み面積を照らし合わせます。用途は『自己の居住の用に供する家屋』に限られます。賃貸用や投資用、別荘は対象外です。新築または取得後、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住の用に供するか、確実に居住する見込みがあることが必要です。引渡しはされたが住み始めるのが翌年4月以降になりそうな場合は、申告書に居住予定の旨を記載し、実際に住み始めた後で別途の届出書を出す手順を踏みます。
申告は翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告書を税務署へ — 期限後だと特例自体が外れる
特例を使うには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書と必要書類を税務署に提出します。申告期限を1日でも過ぎると、たとえ非課税枠の範囲内であっても特例の適用ができなくなる扱いです。期限後申告だと、もらった金額の全額が通常の贈与税(基礎控除110万円を超えた部分が課税対象)の対象になります。1,000万円を受け取った場合の通常税率での贈与税は約231万円、直系尊属からの特例税率を適用しても約177万円になるため、申告期限の管理が結果として最も大きな分岐になります。
申告書には『住宅取得等資金の非課税の計算明細書』、源泉徴収票や所得証明書、戸籍謄本、住民票、登記事項証明書、売買契約書または工事請負契約書のコピー、省エネ等住宅を申告する場合は性能証明書を添付します。書類の数が多く、特に省エネ等住宅の性能証明書は発行に時間がかかることがあります。家の引渡しが12月後半になると、翌年2月の申告開始までに書類が間に合わないこともあるため、契約段階で発行スケジュールを確認するのが安全です。提出は税務署窓口、郵送、e-Taxのいずれでもよく、e-Taxの場合も添付書類の電子イメージデータを送る扱いになります。
暦年贈与の年110万円・相続時精算課税の年110万円とは別枠で使える
非課税特例は、暦年贈与の年110万円基礎控除や相続時精算課税の年110万円基礎控除と『重ねて』使えます。たとえば暦年課税を選んでいる人が省エネ等住宅で1,000万円の住宅資金贈与を受けた同じ年に、別途100万円の現金を親からもらった場合、住宅資金1,000万円は特例で非課税、現金100万円は暦年贈与の基礎控除110万円以内で非課税、という形で両方を組み合わせられます。
相続時精算課税を選んでいる場合も同じ年に1,000万円(または500万円)を住宅資金特例で非課税にした上で、残りを相続時精算課税の枠で扱う設計が可能です。2024年1月以降、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設され、110万円までは贈与税も相続税の持ち戻しも対象外になりました。住宅資金贈与と相続時精算課税の組み合わせは、まとまった援助に向く設計です。ただし相続時精算課税は一度選ぶと撤回できないため、将来の贈与をすべて精算課税で扱う前提になります。家族構成と相続発生時の財産規模を見て選ぶ判断です。
親の相続が発生したときの『持ち戻し』対象外という効果
通常、亡くなる前の数年間の暦年贈与は、相続税の計算上『持ち戻し』として相続財産に加算されます。2024年1月の改正で、加算対象期間が亡くなる前3年から段階的に7年に延長されました。住宅取得等資金の非課税特例で受け取った分は、この持ち戻しの対象から外れます。1,000万円を生前贈与しても、その1,000万円は親の相続税計算に加算されない扱いです。
将来の相続税を意識して生前贈与を組み立てる家族にとって、この特例は数少ない『確実に持ち戻し対象から外せる枠』です。暦年贈与だけで1,000万円を渡そうとすると、110万円ずつ約9年かけて贈与しても、最後の7年分は持ち戻しの対象に戻ってくる可能性があります。住宅資金贈与は、特例の条件を満たす一度きりの大きな贈与で、相続税対策と住宅取得の援助を同時に進められる仕組みになっています。
親からの振込日と物件の引渡し日、どちらを贈与日として扱うか
実務でつまずきやすいのが『贈与日』の捉え方です。贈与税の世界では、現金贈与は『資金が受贈者の口座に着金した日』が贈与日になります。親から子どもの口座に1,000万円が振り込まれた日が起点で、その年の翌年2月1日〜3月15日が申告期間です。
物件の引渡し日や住宅ローンの実行日が翌年にずれ込む場合でも、贈与は前年で完了しているとみなされるため、申告は前年分として進めます。注意したいのは、振込日と物件取得日の前後関係です。原則として『贈与を受けた翌年3月15日までに、その資金を住宅の取得に充てて、かつ実際に居住するか、居住する見込みがある』ことが要件です。振込が早すぎて使い道が決まらないまま翌年3月15日を迎えると、特例適用が外れる場面があります。逆に物件契約が先で、引渡し直前に親が振り込む場合は、振込日基準で前年に該当するかを確認します。
12月後半に振込と引渡しが集中する家族では、振込のタイミングを年明けに動かすか、年内に動かすかで使える特例の年が変わります。引渡しが3月15日以降にずれ込みそうなら、振込を翌年に回す選択肢も検討の余地があります。
住宅ローン控除との関係 — 贈与資金は自己資金として扱われる
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を併用する家族が多いため、関係を整理しておきます。住宅ローン控除は『住宅取得のために借りたローン残高』に対して所得税・住民税が軽減される制度で、贈与で受け取った1,000万円はローン残高に含まれません。贈与分は自己資金扱いになるため、ローン控除の計算ベースには影響しません。
ただし注意したいのが、住宅ローン控除の上限となる『取得対価』の計算です。たとえば4,000万円の家を、贈与1,000万円+ローン3,000万円+自己資金0円で取得した場合、ローン残高3,000万円が控除の対象になります。一方、6,000万円の家を贈与1,000万円+ローン3,500万円+自己資金1,500万円で買った場合、ローン3,500万円のうち、住宅ローン控除の限度額(認定住宅で5,000万円、その他は3,000〜4,500万円の年度別上限)に応じた金額までが控除対象です。家の取得対価が一定額を超えると、贈与で減らした自己資金部分とローン上限の関係が変わるため、節税効果の合計を試算するときは贈与額・ローン額・自己資金の3つを合わせて見るのが安全です。
兄弟姉妹で別々の家を建てるとき、それぞれが特例を使えるか
兄弟姉妹それぞれが別個に家を建てる場合、両親はそれぞれの子どもに対して、それぞれの非課税枠を使って援助できます。長男に1,000万円、次男に1,000万円を同じ年に贈与しても、受贈者ごとに別の特例適用となるため、両方とも非課税が成立します。
ただし一人の受贈者から見ると、特例の非課税枠は『生涯で1回限り、最大1,000万円』が原則です。同じ子どもが父から500万円・母から500万円を同年に受け取った場合は、合算して受贈者側の枠を消化する扱いになります。父からの分・母からの分で別々に1,000万円ずつ使うことはできません。両親の援助を一人の子どもにまとめるなら、上限1,000万円もしくは500万円の枠内に収めます。
2026年12月末までの取得が条件 — 2027年以降は現時点で延長未定
現在の住宅取得等資金贈与の非課税特例は、令和6年度税制改正で2024年1月1日から2026年12月31日までの3年間の措置として延長されたものです。2027年以降の延長有無は2026年6月時点ではまだ決まっていません。過去には2015年、2019年、2021年、2023年、そして今回の2024年延長と、住宅政策に合わせて何度か延長されてきた制度であり、再延長される可能性は残っていますが確実視はできない段階です。
来年以降の住宅購入を検討している家族からは『2027年に建てる予定でも今年中に贈与を済ませれば特例は使えるか』という相談が時々あります。原則として『贈与を受けた翌年3月15日までに居住の用に供する見込み』が要件のため、贈与だけ前倒しすれば良いというわけではありません。住宅の取得・居住スケジュールと贈与日を合わせて設計します。年末調整の時期に親から「年内に振り込んでおこうか」と打診があった場合は、家の引渡し日を翌年3月15日までに確定できるかを優先して確認します。
参考資料
ここで触れた数字は2026年6月時点の国税庁・国土交通省の公式情報をもとに整理しています。家族の所得や住宅の仕様で適用が変わる場面が多いため、判断に迷う場合は最寄りの税務署か、相続・贈与を扱う税理士に直接ご確認ください。フロントマターのsources欄に主要な公的情報ページを記載しています。
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参考資料
- 国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
- 国税庁 贈与税の申告のしかた
- 国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
- 国税庁 No.4503 相続時精算課税の選択
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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