親が亡くなり、残った親と未成年の子が同じ相続人になる。このとき、遺産についての手続を親が子の分までまとめて進めてよいのか、という疑問が出ます。
民法824条は、親権を行う者が子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表すると定めています。代表する権限そのものは条文にあります。
一方で826条1項は、親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないとしています。条文は「しなければならない」という書き方です。
この記事では、824条と826条の関係、子が複数いる場合、特別代理人を立てずにした行為についての108条2項、後見人の場合の860条を、e-Gov法令検索の法令APIで取得した民法の現行条文で確かめます。
824条——親権を行う者は子を代表する
824条の本文は「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する」です。
ただし書も付いています。「その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない」。子自身が何かをすることを内容とする債務が生じる場合は、子本人の同意が必要だという定めです。
なお818条1項は、親権は成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならないとしています。818条2項は、父母の婚姻中はその双方を親権者とするとしています。
826条1項——利益が相反する行為は家庭裁判所に請求
826条1項は次のとおりです。「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」
条文の構造を分けて読むと、こうなります。
- 対象:親権を行う父または母と、その子との利益が相反する行為
- 誰が:親権を行う者が
- 何を:その子のために特別代理人を選任することを
- どこに:家庭裁判所に
- どうする:請求しなければならない
ここで重要なのは、何が「利益が相反する行為」に当たるのかを、826条は列挙していないという点です。遺産分割の協議、子の財産の処分、子を債務者にする契約などが当たるかどうかは、今回根拠にした条文からは判断できません。この記事では当てはめを書きません。
826条2項——子が複数いて、子どもどうしで相反する場合
826条2項は、「親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない」としています。
1項が「親と子」の相反、2項が「子の一人と他の子」の相反です。2項の文言は「その一方のために」となっています。親が相続人でない場合でも、子が複数いれば2項の場面がありうる書き方です。
特別代理人を立てずにした行為——108条2項
108条1項は、同一の法律行為について相手方の代理人として、または当事者双方の代理人としてした行為を、代理権を有しない者がした行為とみなすとしています。ただし、債務の履行および本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りでないとされています。
108条2項は、「前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす」としています。こちらにも「ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない」というただし書が付いています。
826条自体には、請求をしなかった場合の効果についての定めは書かれていません。
未成年後見人・成年後見人の場合——860条と851条4号
860条は、「第八百二十六条の規定は、後見人について準用する」としています。続けて、「ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない」とされています。
後見監督人がいる場合の扱いは851条にあります。851条は後見監督人の職務を四つ挙げており、その4号が「後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること」です。
つまり条文上は、後見監督人が選ばれているかどうかで、826条の準用があるかが分かれています。
期限との関係——915条の3か月
相続の場面では期限も気になります。915条1項は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならないとしています。同項のただし書は、この期間は利害関係人または検察官の請求によって家庭裁判所において伸長することができるとしています。915条2項は、相続人は承認または放棄をする前に相続財産の調査をすることができるとしています。
なお919条1項は、相続の承認および放棄は915条1項の期間内でも撤回することができないとしています。同2項は、総則および親族の規定による取消しを妨げないとし、同3項はその取消権が追認をすることができる時から6か月間行使しないとき、または承認・放棄の時から10年を経過したときに時効によって消滅するとしています。同4項は、限定承認または相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならないとしています。
まず確かめること
条文の上では、(1) 自分が親権を行う者として子を代表する場面か(824条)、(2) その行為が「利益が相反する行為」に当たるか(826条)、(3) 子が複数いて子どもどうしの相反があるか(826条2項)、(4) 後見人であって後見監督人がいるか(860条ただし書)——この四つが分かれ目です。
どの行為が利益相反行為に当たるかの判断、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する具体的な手続(申立書の様式、費用、添付書類、審理の期間)は、この記事の根拠にした民法の条文には書かれていません。実際に申立てをする段階では、管轄の家庭裁判所の案内と法律相談の窓口で確認してください。
参考資料
- e-Gov法令検索 法令API 民法(明治二十九年法律第八十九号)現行条文:https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/129AC0000000089?law_full_text_format=json
- e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号):https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089