親の後期高齢者医療保険料を子が負担していても、保険料が親の年金から天引きされている限り、子の社会保険料控除には入れられません。国税庁は、年金から特別徴収された保険料を支払ったのは年金の受給者自身なので、その受給者に社会保険料控除が適用されるとしています。
子の控除にするには、天引きをやめて口座振替に切り替え、子の口座から引き落とします。国税庁は、口座振替で払った保険料を支払ったのは口座の名義人であり、名義人が被保険者本人か、被保険者と生計を一にする配偶者その他の親族であれば、その人に社会保険料控除が適用されるとしています。
切替えは、親が住む市区町村への申し出で行います。天引きが止まるまで3か月ほどかかると案内している自治体があるので、来年分から子の控除にしたい人は早めに窓口に相談してください。
天引きされた保険料は「年金を受け取る人」の控除
社会保険料控除は、自分または自分と生計を一にする配偶者その他の親族が負担すべき社会保険料を支払った場合に受けられる控除です。タックスアンサーNo.1130は、後期高齢者医療制度の保険料(高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料)も対象に挙げています。控除できるのは、その年に実際に支払った金額か、給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。
ポイントは「誰が支払ったか」です。No.1130のよくある質問(Q6)は、後期高齢者医療制度の保険料について次のように説明しています。
- 原則として、保険料は年金から特別徴収の方法で徴収される
- 市区町村等へ一定の手続きをすれば、特別徴収に代えて口座振替で支払うことを選べる
- 年金から特別徴収された保険料を支払ったのは年金の受給者自身なので、受給者に社会保険料控除が適用される
- 口座振替で徴収される保険料を支払ったのは口座の名義人なので、名義人(被保険者または被保険者と生計を一にする配偶者その他の親族に限る)に社会保険料控除が適用される
国税庁の「年末調整のしかた」も、本人と生計を一にする親族が負担すべき後期高齢者医療制度の保険料を本人が口座振替で支払った場合は本人の社会保険料として控除でき、年金から特別徴収された介護保険料と後期高齢者医療制度の保険料は年金の受給者の社会保険料として控除できる、と書いています。
子が親にお金を渡して保険料分を負担していても、年金から天引きされているなら、支払ったのは親です。同じ考え方で、Q5は、扶養している妻の公的年金から特別徴収されている介護保険料を、夫の社会保険料控除に入れることはできないとしています。
子の控除にするための条件
国税庁の説明から、子が親の後期高齢者医療保険料を自分の控除に入れるには、次の二つがそろう必要があります。
- 保険料を、子名義の口座からの口座振替で支払っている
- 子が、被保険者である親と生計を一にしている
「生計を一にする」は同居とは限りません。タックスアンサーNo.1180のよくある質問は、勤務、修学、療養などの都合で別居していても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費などの送金が行われている場合は「生計を一にする」ものとして扱うとしています。反対に、生計を一にしていない親の保険料を払っても、子の控除にはなりません。判断に迷うときは、税務署に確認してください。
控除の対象になるのは、子の口座から実際に引き落とされた額です。No.1130は、控除できる金額をその年に実際に支払った金額としています。年の途中で切り替えた年は、切替え前に年金から天引きされた分が親の控除、切替え後に子の口座から引き落とされた分が子の控除になります。
天引きから口座振替への切り替え方
手続きは市区町村ごとに決まっています。今回読んだ自治体の案内では、次のようになっていました。
申し出の書類と条件。 町田市は「後期高齢者医療保険料普通徴収納付承認申出書」に記入し、口座の登録も行います。申出の要件として、国民健康保険税と後期高齢者医療保険料の納付状況が良好であること、後期高齢者医療保険料を口座振替で納付できることを挙げています。申出書の事務処理欄には口座名義が「本人・家族」と分かれています。新潟市も、保険料の滞納がある人は申請できないとしています。村上市は「後期高齢者医療保険料納付方法変更申出書」を市役所の窓口に出す形で、金融機関では手続きできないとしています。
家族名義の口座。 新潟市は、配偶者または世帯主の口座からの引き落としもでき、その場合の社会保険料控除は口座名義人に適用されると案内しています。子が世帯主でない場合や別世帯の場合に子の口座を使えるかは、自治体に確かめてください。
切り替わるまでの期間。 新潟市は、申請からおおむね3か月後の年金天引きから中止になるとしています。町田市も、申し出を受理してから年金天引きが中止になるまで3か月ほどかかるとしています。
その後。 町田市と新潟市は、一度手続きをすれば次の年度以降も口座振替が続くと案内しています。町田市と新潟市は、口座振替で納められなくなった場合や未納があった場合に、年金天引きに戻されることがあるとしています。新潟市は、国民健康保険料で登録していた口座は後期高齢者医療保険料には引き継がれず、改めて登録が必要としています。
世帯の税額が変わることがある
新潟市と村上市は、家族の口座からの納付に変えると、世帯全体の所得税や住民税の税額に影響が出る場合があると注意を促しています。
新潟市によると、口座振替にしても納める保険料の総額は変わりません。変わるのは、誰の社会保険料控除になるかです。子の口座から払った分は子の控除になり、その分、親の控除は減ります。世帯全体で税額がどう変わるかは、親と子それぞれの所得によって違い、今回の資料には計算の例はありませんでした。切り替える前に、親子それぞれの源泉徴収票や住民税の通知をそろえ、市区町村や税務署に相談してください。
年末調整・確定申告での書き方
年末調整。 子が給与所得者なら、勤務先に出す「給与所得者の保険料控除申告書」の社会保険料控除の欄に、親の保険料として支払った額を書きます。「年末調整のしかた」は、国民年金保険料と国民年金基金の掛金には支払いを証明する書類の添付か提示が必要だが、それ以外の保険料等には必要ないとしています。後期高齢者医療保険料はこちらに当たり、証明書類は要りません。
確定申告。 新宿区は、その年に納めた後期高齢者医療保険料は確定申告等で社会保険料控除として認められ、確定申告書への資料の添付は要らないと案内しています。
払った額の確かめ方。 新宿区の場合、口座振替の人には12月下旬に「後期高齢者医療保険料預金口座振替払込済通知書」が送られ、その年に口座振替で納めた額が書かれています。その年に納めた総額を確かめたいときは、翌年1月中旬以降に「後期高齢者医療保険料納付確認書」を交付するとしています。年の途中で納め方が変わった人や75歳になった人などは、それぞれで納めた額の合計になり、還付を受けた人は還付額を差し引くよう求めています。
年金から天引きされた分については、新宿区は、翌年1月下旬に日本年金機構などから届く「公的年金等の源泉徴収票」に社会保険料の金額として書かれているとしています。介護保険料や国民健康保険料も天引きされている人は、合算した額が書かれています。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 年金から天引きされている介護保険料や国民健康保険料を、口座振替に切り替えられるか。
- 子が親と別世帯の場合に、子の口座を口座振替に使えるか。新潟市は配偶者または世帯主の口座を挙げていて、それ以外の家族の口座については書かれていませんでした。
- 年末調整の時点で12月の引き落とし額が確定していない場合に、見込みの額で書いてよいか。
- 本文の手続きの例(新宿区・新潟市・町田市・村上市)以外の市区町村の申出書の名前や必要書類。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1130 社会保険料控除
- 国税庁 タックスアンサーNo.1130 社会保険料控除(よくある質問)
- 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた
- 国税庁 タックスアンサーNo.1180 扶養控除(よくある質問)
- 新宿区 後期高齢者医療制度の保険料の税控除(社会保険料控除)について
- 新潟市 後期高齢者医療保険料のお知らせ(令和8年度)
- 町田市 後期高齢者医療保険料普通徴収納付承認申出書・納付方法変更のご案内
- 村上市 後期高齢者医療保険料(令和8年8月 変更決定のお知らせ)