出産にかかった費用は、医療費控除の対象になります。国税庁のタックスアンサーNo.1124は、妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用と通院費用を対象に挙げています。No.1122は、病院や助産所などへ収容されるための人的役務の提供の対価や、助産師による分べんの介助の対価も医療費控除の対象に含めています。
計算のときは、健康保険から出る出産育児一時金を医療費から差し引きます。一方、産休中に給与の代わりに出る出産手当金は、医療費を補てんするものではないので差し引きません。
出産の年は、妊婦健診から分娩・入院までの支払いが重なります。領収書と通院の記録をそろえ、一時金の額を確かめてから計算してください。
出産の費用で対象になるもの、ならないもの
タックスアンサーNo.1124は、出産に伴う一般的な費用について、次のように判断の例を示しています。
対象になるもの
- 妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用
- 通院費用
- 出産で入院するときに、電車やバスなどの通常の交通手段では難しいためにタクシーを使った場合のタクシー代
- 病院に支払う入院中の食事代(入院費用の一部として支払うもので、No.1124は「一般的には」対象になるとしています)
対象にならないもの
- 実家で出産するために実家へ帰省する交通費
- 入院に際して購入した寝巻きや洗面具など身の回り品の費用
- 入院中に、病院以外から出前を取ったり外食したりした費用
タクシー代は、入院のときに通常の交通手段によることが困難な場合という条件付きです。妊婦健診に通うたびのタクシー代がどこまで認められるかは、No.1124には書かれていません。通院の交通費全般の考え方は、交通費とタクシー代を扱った記事にまとめています。
通院費用には領収書がないものが多いため、No.1124は、家計簿などに記録して、実際にかかった費用を明確に説明できるようにしておくよう求めています。
出産育児一時金は差し引く、出産手当金は引かない
差し引く給付
No.1124の注意事項は、健康保険組合や共済組合などから支給される次の給付は、医療費控除の額を計算するときに医療費から差し引かなければならないとしています。
- 出産育児一時金
- 家族出産育児一時金
- 出産費
- 配偶者出産費
タックスアンサーNo.1120も、差し引く「保険金などで補てんされる金額」の例として、健康保険などで支給される出産育児一時金を挙げています。
一時金の額は、2026年10月時点の協会けんぽの案内では、産科医療補償制度に加入している医療機関で在胎週数22週以降に出産した場合は1児につき50万円です。22週に達しなかった出産では1児につき48.8万円で、産科医療補償制度に加入していない医療機関での出産は額が違います。健康保険組合や国民健康保険に入っている人は、加入先の案内で確かめてください。
差し引かない給付
出産手当金は差し引きません。No.1124は、出産の前後の一定期間勤務できないことを理由に健康保険法などの規定で給付される出産手当金は、医療費を補てんする性格のものではないので、医療費控除の計算上差し引く必要はないとしています。
一時金が出産費用より多いとき
No.1120は、保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引き、引ききれない金額が出ても他の医療費からは差し引かないとしています。質疑応答事例「支払った医療費を超える補填金」も、入院費を超える入院給付金を受け取った場合に、超える部分を歯の治療費から差し引く必要はないと答えています。
出産費用より出産育児一時金のほうが多かった場合にこの決まりを当てはめると、余った分をほかの病院代や家族の医療費から引かない計算になります。ただし、出産を例にしたこの説明は今回の資料にはなく、一時金が補てんの対象とする医療費の範囲(妊婦健診の費用を含むかどうかなど)を国税庁が説明した資料は、今回見つけられませんでした。金額が大きく変わる場合は、税務署に確認してください。
直接支払制度を使ったとき
協会けんぽの案内によると、直接支払制度は、協会けんぽが出産育児一時金を医療機関等に直接支払う制度です。出産費用が一時金を下回ったときは、差額が本人に支給され、上回ったときは超えた分を医療機関に支払います。
この制度を使うと、窓口で払うのは一時金を超えた分だけになります。国税庁の資料のうち今回読んだものには、直接支払制度を使った場合の書き方を直接説明した記載はありませんでした。病院の領収書に書かれた出産費用の総額と、医療機関に直接支払われた一時金の額、差額として受け取った額を手元にそろえ、作成コーナーの入力画面や税務署の案内に沿って入力してください。
いつの年の医療費になるか
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が対象です。No.1120は、未払いの医療費は、実際に支払った年の医療費控除の対象になるとしています。12月に出産して1月に入院費を払った場合は、支払った年の医療費になります。
確定申告のときまでに出産育児一時金などの額が決まっていない場合は、質疑応答事例「医療費を補填する保険金等が未確定の場合」により、受け取る額を見積もって差し引きます。後日、確定額が見積額と違ったときは、さかのぼってその年分の医療費控除額を訂正します。No.1120のよくある質問は、その訂正を修正申告か更正の請求で行うとしています。
誰の控除にするか、いくら戻るか
医療費控除は、自分または自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が対象です。生計を一にする妻の出産費用を夫が支払っていれば、夫の医療費控除に入れられます。
控除額は、No.1120では次の式で計算し、最高200万円です。
(支払った医療費の合計 − 保険金などで補てんされる金額)− 10万円
総所得金額等が200万円未満の人は、10万円の代わりに総所得金額等の5%を引きます。出産の年は、出産以外の家族の医療費も合わせて計算します。
手続きは、医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作り、確定申告書に添付します。健康保険から届く医療費通知を添付すると、明細書の記載を簡略化できます。明細書に書いた分の領収書は、確定申告期限等から5年間、提示や提出を求められることがあるので保存しておきます(医療費通知を添付した分を除く)。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 直接支払制度を使った場合に、医療費控除の明細書で「支払った医療費」と「補てんされる金額」をどう書くか。
- 出産育児一時金が補てんの対象とする医療費の範囲(妊婦健診の費用や、出産前の別の入院の費用を含むか)。
- 自治体の妊婦健診の受診券(補助券)で負担しなかった部分の扱い。医療費控除は「支払った医療費」が対象と書かれているだけで、受診券について直接の記載は見つけられませんでした。
- 不妊治療、無痛分娩の費用、産後ケアの利用料が対象になるか。
- 出産費用の無償化など、制度の見直しが行われた後の扱い。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
- 国税庁 タックスアンサーNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1120 よくある質問
- 国税庁 タックスアンサーNo.1122 医療費控除の対象となる医療費
- 国税庁 質疑応答事例 支払った医療費を超える補填金
- 国税庁 質疑応答事例 医療費を補填する保険金等が未確定の場合
- 全国健康保険協会(協会けんぽ) 子どもが生まれたとき(出産育児一時金)