総務から一枚の紙を渡されて、扶養に入れている家族の名前と生年月日が印字されている。秋になると、そういう場面が出てきます。協会けんぽが年に一度おこなう被扶養者資格の再確認で、会社を経由して加入者の手元まで回ってくる書類です。
やること自体は多くありません。名前が載っている家族について、いまも扶養の条件を満たしているかを確かめ、変わっていなければその旨を書いて会社に返す。止まりやすいのは、別居している親を扶養に入れている場合と、家族の働き方が去年から変わった場合の二つです。
先に見るのは、渡された紙に書かれた提出期限と、印字されている家族の名前。会社の締切は協会けんぽの締切より早く設定されているので、合わせるのは会社のほうです。
会社に届くのは「被扶養者状況リスト」という一枚
協会けんぽは、加入者本人ではなく事業主あてに書類を送ります。中身は単票形式の「被扶養者状況リスト」で、扶養に入っている家族が印字されたものです。同封されるのは、確認方法と記入方法を案内するリーフレット、被扶養者調書兼異動届、マイナ保険証の利用を勧めるチラシ、返信用封筒。
直近で公表されている令和7年度の案内では、10月下旬から順次発送され、協会けんぽへの提出期限は12月12日でした。この日付は年度ごとに変わります。手元に届いた案内に書かれた期限を見てください。
事業主が加入者に確認を求め、加入者が答え、事業主がまとめて返送する。この順で動きます。だから従業員の手元に来るのはリストそのものではなく、会社が作った確認用紙やコピーであることが多いです。健保組合に入っている会社なら書類の名前も時期も違いますが、年に一度確認するという流れは同じです。
全員に届くわけではない。名前が載る人には理由がある
自分の家族の名前が印字されているのを見て、疑われていると感じる方がいます。そうではありません。協会けんぽは確認する相手を絞っています。
令和7年度の案内で対象とされていたのは、次に当たる人でした。
- ほかの健康保険に加入していないかを確かめる必要がある人
- 同居していることが扶養認定の条件になっている続柄で、別居している可能性が高い人
- 前年中の課税収入が130万円(60歳以上は180万円)を超えている人
18歳未満の家族と、直近で認定を受けたばかりの家族は対象から外れます。小さい子どもの名前が載っていないのは、これが理由です。
絞り込みに前年中の課税収入が使われている点は、知っておくと気が楽になります。去年の一時期だけ働きすぎた家族は、いまの働き方が条件の内側でも名前が載ります。載ったことは結論ではなく、質問です。
収入の線は、いまは一本ではない
長いあいだ130万円の一本で覚えられてきた基準ですが、いまは家族の年齢で分かれます。
| 扶養に入っている家族 | 年間収入の上限 |
|---|---|
| 一般 | 130万円未満 |
| 60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人 | 180万円未満 |
| 19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く) | 150万円未満 |
19歳から22歳の線が150万円になったのは新しい扱いです。協会けんぽ大阪支部の案内では、扶養認定日が令和7年10月1日以降になる人が対象で、年齢は認定日が属する年の12月31日時点で判定するとされていました。収入以外の要件は変わっていません。
大学生の子どもがアルバイトを増やしていて、130万円のつもりで慌てていた家庭は、まずこの線を確かめてください。ただし新しい線が当てはまるのは認定日が新しい人です。大阪支部の案内もこれから認定される人を前提にした書き方で、それ以前から扶養に入っている子どもの扱いまでは読み取れません。ここは加入している支部に直接確かめるのが確実です。
なお、ここでいう収入は税金の所得とは数え方が違います。給与だけを足して安心していると、あとで食い違いが出ます。年金、傷病手当金、失業給付のように、税では扱いが別になるお金もあります。位置づけに迷ったら、自分で決めずに支部へ電話を入れる。数分で終わります。
同居が条件になる続柄で別居していると、そこで止まる
健康保険の扶養は、続柄によって扱いが二つに分かれます。配偶者、子、孫、兄弟姉妹、それに父母や祖父母といった直系尊属は、別居していても扶養に入れます。ここから外れる三親等内の親族は、同居していることが条件です。配偶者の父母、おい・めい、内縁の配偶者の父母などが当たります。
再確認の対象に「別居している可能性が高い人」が挙がるのは、この線引きがあるからです。同居が条件の家族が引っ越して別世帯になっていれば、条件を満たさなくなります。続柄ごとの表は同封のリーフレットに載っているので、判断に迷ったらそれを見るか、支部に電話するのが早いです。
別居の親は、仕送りが記録に残っているかで決まる
別居している家族については、その人の年収より、被保険者からの仕送り額が多いかどうかが確認されます。
数字にするとこうなります。親の年金収入が年150万円なら、仕送りはそれを上回っている必要があります。月にならすと13万円ほど。金額として軽くはありません。
ただ、この確認でつまずく理由の多くは金額ではなく、送り方です。帰省のたびに現金を手渡ししている。親の生活費を子どもがカードで直接払っている。どちらも実際に援助していますが、あとから示せる形が残っていません。確認する側から見ると、無いものと同じ扱いになります。
振込にしておけば通帳と明細に残ります。仕送りの年額、送っている方法、頻度、1回あたりの額を答えられる状態にしておいてください。送り先が親本人ではなく同居している兄弟の口座になっている場合は、本人あての口座に変えておくと説明が短く済みます。
いま現金で渡しているなら、次の月から振込に切り替える。過去の分はさかのぼれませんが、来年の確認には効きます。
外れることになったら、そこから動くもの
扶養から外れる場合、事業主が被扶養者調書兼異動届を協会けんぽへ提出するか、日本年金機構へ電子申請します。ここまでは会社が進めます。そのあとに家族側でやることが残ります。
最初は国民健康保険です。窓口は市区町村役場の国民健康保険課。健康保険の資格を失ったことがわかる証明書、本人確認書類、マイナンバーがわかるものを持っていきます。証明書は会社に依頼して出してもらう資格喪失証明書です。原則として資格を失った日から14日以内。
外れたのが20歳以上60歳未満の配偶者なら、国民年金の扱いも変わります。第3号被保険者ではなくなるので、第1号への種別変更が別に必要です。保険料は自分で納める形に切り替わります。ここは健康保険の手続きとは別に動くので、国民健康保険の窓口で年金の担当にも回ってください。
解除の日付がさかのぼるかどうかは状況によります。さかのぼった期間に病院にかかっていると、あとで精算の話が出ることがあります。心当たりがあるなら、書類を返す前に会社か支部に相談してください。黙って返して後から連絡を受けるより、先に言っておくほうが早く片づきます。
税金の扶養は、この確認では動かない
健康保険の被扶養者と、所得税の扶養親族は別の制度です。片方から外れても、もう片方は自動では変わりません。
健康保険の扶養から外れた家族を年末調整の扶養控除等申告書にそのまま書いていると、あとで税額が変わります。逆に、健康保険では扶養のままでも、税の扶養の要件を満たさない年もあります。秋に確認書類が来たら、年末調整の書類を書くときにもう一度見直す。そう決めておくと取りこぼしがありません。
返す前に手元でそろえておくもの
会社に返すまでに用意しておくと、やりとりが一往復で済みます。家族の状況によって要るものは違うので、当てはまるものだけ集めれば十分です。
- 家族それぞれの直近の収入がわかるもの。給与明細、年金額改定通知書、確定申告書の控えなど
- 別居の家族に送っている仕送りの振込記録。通帳の該当ページか、ネットバンキングの明細
- 住所が変わった家族がいる場合は、住民票
- 家族が就職している場合は、その勤務先の健康保険に入ったことがわかるもの
そろえる時間が取れないまま締切が来たら、空欄で出すより会社に一報を入れてください。会社は協会けんぽへの提出をまとめて管理しているので、遅れる理由がわかっていれば調整の余地があります。
この先は支部に聞くしかない部分
日付と対象者は、協会けんぽが公表している令和7年度の案内で確かめました。次の年度の発送時期と提出期限が同じとは限りません。優先するのは、手元に届いた案内の数字です。
19歳以上23歳未満の150万円については、大阪支部が出した案内の記載までを確かめています。すでに扶養に入っている人への適用も、健保組合に入っている会社の運用も、そこから先は追っていません。組合ごとに書類の名前も添付書類も違うので、そちらは加入している組合の案内で確かめてください。
さかのぼって解除された場合の医療費の精算についても、扱いは支部の判断になる部分があるため、この記事では踏み込んでいません。