眼科で受けるオルソケラトロジー(角膜矯正療法)とレーシック手術(視力回復レーザー手術)の費用は、医療費控除の対象です。国税庁は、どちらも眼の機能そのものを医学的な方法で正常な状態に回復させるもので、その費用は医師の診療または治療の対価に当たると回答しています(タックスアンサーNo.1122のQ&A Q3)。オルソケラトロジーは、夜に着ける特殊なコンタクトレンズと、矯正した角膜の状態を保つリテーナーレンズの購入費用も含めて対象です。
一方、近視や遠視などを矯正するために日常生活で使う眼鏡やコンタクトレンズの購入費、眼の屈折検査、眼鏡やコンタクトの処方の費用は、視力を回復させる治療の対価ではないので対象外です。
同じ「近視の対策」でも、治療として視力を回復させるものか、見え方を補う道具かで分かれます。この記事では、国税庁の回答の中身、対象になる眼鏡の条件、子どもの治療費を親が払ったときや、ローンで払ったときの数え方を確かめます。
国税庁の回答
レーシック手術
No.1122のQ&A Q3は、眼科医で治療を受けるために払う費用として、レーシック手術、オルソケラトロジー、眼鏡の三つを並べて答えています。レーシック手術については次のとおりです。
視力回復レーザー手術(レーシック手術)とは、角膜にレーザーを照射して近視や乱視などを治療し、視力を矯正する手術のことです。 この手術は、眼の機能それ自体を医学的な方法で正常な状態に回復させるものであり、それに係る費用は、医師の診療または治療の対価と認められますので、医療費控除の対象となります。
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーについて、Q3は、近視などの角膜の屈折異常を特殊なコンタクトレンズを装用することで正常化させて視力を回復させるもので、レーシックと同じく医師の診療または治療の対価として対象になるとしています。
国税庁の質疑応答事例「オルソケラトロジー(角膜矯正療法)による近視治療に係る費用の医療費控除」は、さらに具体的です。照会の内容は、特殊なコンタクトレンズを主に就寝中に装用して角膜を矯正し、その状態を保つためにリテーナーレンズを定期的に装用する治療で、費用にはこれらのレンズの購入費用が含まれる、というものです。照会は、この治療が、医師が近視の治療が可能となる症例に対象を絞ったうえで、専門的知識、技能および経験をもって角膜の矯正を行う治療法だと説明しています。
回答は「医療費控除の対象となります」。理由は、リテーナーレンズの購入費用を含め、角膜を矯正して視力を回復させる治療の対価として払われるものなので、医師による診療または治療の対価に当たる、というものです。
眼鏡・コンタクト・検眼は対象外
同じ質疑応答事例は、近視などの屈折異常を矯正するために眼鏡やコンタクトレンズを買った費用、眼の屈折検査、眼鏡やコンタクトレンズの処方の費用は、視力を回復させる治療の対価に当たらないので医療費控除の対象にならないとしています(最高裁平成3年4月2日判決を引用)。
Q3も、近視や遠視などのために日常生活の必要に基づいて買う眼鏡は、視力を回復させる治療の対価ではないので対象外としています。
対象になる眼鏡の条件
眼鏡がすべて対象外というわけではありません。国税庁の質疑応答事例「医師による治療のため直接必要な眼鏡の購入費用」は、医師の治療を受けるため直接必要な眼鏡なら対象になるとし、例として次の二つを挙げています。
- 視機能が未発達の子どもの治療をしている医師が、視力の発育を促すために眼鏡の使用を指示し、その指示に基づいて買う眼鏡
- 白内障の患者が、手術後の創口の保護と、治るまでの視機能回復のために一定期間着ける眼鏡
対象になるには、医師による治療を必要とする症状があり、かつ医師による治療が現に行われていることが必要です。この事例によると、厚生労働省は日本眼科医会に対し、治療を必要とする症状を次の疾病のうち一定の症状に限るよう指導しています。
- 弱視、斜視、白内障、緑内障
- 難治性疾患(調節異常、不等像性眼精疲労、変性近視、網膜色素変性症、視神経炎、網脈絡膜炎、角膜炎、角膜外傷、虹彩炎)
そのうえで、所定の処方箋に、医師が疾病名と治療を必要とする症状を書くことになっています。フレームは、プラスチックやチタンなど一般的な材料のものなら対象で、特別に高価な材料や特別な装飾のものなど、ぜいたくなものは除かれます。
処方箋の扱い
Q3によると、対象になる眼鏡には、疾病名と治療を必要とする症状が書かれた処方箋が発行されます。医療費控除を受けるときは、その写しを確定申告書に添付するか、提出時に提示します。
医療費控除の明細書の欄外の余白などに「発行年月日、処方箋の名称及び医師の氏名等」を書けば、添付や提示を省略できます。その場合、処方箋の写しは医療費の領収書と一緒に、確定申告期限等から5年間、自宅などで保存します。
計算と、どの年に入れるか
No.1120によると、医療費控除の額は次の式で計算し、最高200万円です。
(その年に実際に払った医療費の合計 − 保険金などで補てんされる金額)− 10万円
総所得金額等が200万円未満の人は、10万円の代わりに総所得金額等の5%を引きます。No.1122は、医療費控除の対象になる医療費を、病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額としています。
たとえば、子どものオルソケラトロジーに1年目に20万円を払い、家族のほかの医療費が3万円、補てんされる金額がない世帯で考えます。総所得金額等が200万円以上なら、23万円から10万円を引いた13万円が医療費控除の額です(金額は計算の例です)。控除額は所得から差し引く金額なので、この額がそのまま戻るわけではありません。
家族の分
医療費控除は、自分のほか、自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のために払った医療費も対象です(No.1120)。子どものオルソケラトロジーやレーシックの費用を親が払ったなら、払った親が医療費控除に入れます。
払った年で数える
医療費は1月1日から12月31日までに実際に払った額で数え、未払いの分は払った年の医療費になります(No.1120)。オルソケラトロジーのように、初めにまとまった費用を払い、その後も定期検査やレンズの交換で費用がかかる治療は、年ごとに払った額を数えます。
ローンで払った場合について、国税庁の質疑応答事例「借入金で支払った医療費」は、借入金で医療費を払っても支払いは現実に行われているので、その支払いの日を含む年分の医療費控除の対象になるとしています。
申告で出すもの、残すもの
No.1120によると、医療費控除を受けるには、医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作って確定申告書に添付します。領収書そのものは添付しませんが、税務署は確定申告期限等から5年を経過する日までの間、領収書の提示や提出を求めることがあります。
医療保険者の医療費通知を添付して明細書を簡略化する場合も、医療費通知に載っていない費用は領収書から明細書に書きます(No.1120)。オルソケラトロジーやレーシックの領収書は残しておきます。
確認の順番
- 受けた治療が、レーシック手術やオルソケラトロジーのように、眼の機能を回復させる治療かを確かめる。日常の見え方を補う眼鏡・コンタクト、検眼・処方は対象外
- 眼鏡なら、弱視・斜視・白内障などの治療で医師が指示したものか、疾病名と症状が書かれた処方箋があるかを確かめる
- その年に払った額を、領収書で集める(家族で生計を一にする人の分も合わせる)
- 補てんされる金額を引き、10万円(総所得金額等200万円未満はその5%)を超えるかを確かめる
- 確定申告で医療費控除の明細書を添付する。領収書と処方箋の写しは5年保存する
この記事で確認できなかったこと
2026年11月4日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- ICL(眼内コンタクトレンズ)の手術費用の扱い。国税庁の回答が名前を挙げているのはレーシック手術とオルソケラトロジーです。
- 子どもの近視の進行を抑える目的の点眼薬や、近視の進行抑制をうたう眼鏡・コンタクトレンズの扱い。
- オルソケラトロジーの定期検査やレンズの再作製の費用を、個別にどう扱うか。
- 「一般的に支出される水準を著しく超えない部分」が、これらの治療で具体的にいくらか。
- 医療保険者の医療費通知に自由診療の費用が載るかどうか。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1122 医療費控除の対象となる医療費 Q&A — Q3 レーシック・オルソケラトロジーは対象、眼鏡の扱い、処方箋の添付と省略
- 国税庁 質疑応答事例 オルソケラトロジー(角膜矯正療法)による近視治療に係る費用の医療費控除 — リテーナーレンズを含めて対象、眼鏡・コンタクト・屈折検査・処方は対象外
- 国税庁 質疑応答事例 医師による治療のため直接必要な眼鏡の購入費用 — 対象になる眼鏡の例、疾病名の一覧、処方箋、フレーム
- 国税庁 質疑応答事例 借入金で支払った医療費 — 借入金で払った年分の対象
- 国税庁 タックスアンサーNo.1122 医療費控除の対象となる医療費 — 一般的に支出される水準
- 国税庁 タックスアンサーNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) — 生計を一にする親族、支払った年、計算式、明細書と領収書の5年