主務教諭は、教育等を担うとともに、命を受けて教職員間の総合的な調整を行う学校の職です。 制度は2026年4月1日に施行されましたが、すべての学校で一斉に任用されるわけではありません。選考を考えている方は、まず勤務先の教育委員会の設置規則と最新の選考要項、給与条例を確認してください。
国の職務規定、自治体が職を置く決定、給料表の改正は分けて読む必要があります。神奈川県では2026年秋に県立学校の規則改正と人事委員会の給与勧告が出ています。以下では、この具体例と国の制度を区別して説明します。
主務教諭は何をする職か
学校教育法第37条第11項は、小学校の主務教諭について、児童の教育をつかさどり、命を受けて学校の教育活動に関する教諭その他の職員間の総合的な調整を行うと定めています。教諭の仕事から離れて調整だけを行う、という職務規定ではありません。
文部科学省の2025年9月26日通知では、担当する教育活動の核となる調整を想定しています。例として、教育相談、特別支援教育に関する連絡調整、校内研修、学校安全、情報教育、道徳教育が挙げられています。
同通知は、主務教諭だけに業務が集中しないよう留意し、校長等が学校全体の校務のマネジメントに取り組むよう求めています。任用を考えるときは、担当する分掌だけでなく、他の教職員との分担や相談先も確認しておきましょう。
主幹教諭・指導教諭・主任との違い
小学校についての学校教育法第37条の職務を要約すると、次の違いがあります。
| 職 | 条文にある主な役割 |
|---|---|
| 主幹教諭 (第9項) | 児童の教育を担う 校長等と教頭を助ける 命を受け、校務の一部を整理 |
| 指導教諭 (第10項) | 児童の教育を担う 他の教員に、教育指導の 改善・充実のための指導・助言 |
| 主務教諭 (第11項) | 児童の教育を担う 命を受け、教育活動に関する 職員間の総合的な調整を行う |
この職名の並びだけで、全国共通の昇任順序や給料の級を決めることはできません。任命要件と給与は、勤務先の規則・条例をあわせて読みます。
校内の「主任」との違いについて、大阪府の2025年10月資料は、主任は校長の職務命令による単年度の任命である一方、主務教諭は任命権者が任命し、教諭からの任用は昇任・給料表の上位級への昇格に当たると説明しています。これは同府の説明であり、「主任」という呼び名だけを全国で同じ職位とみなすものではありません。
同資料は、主務教諭には所属職員を監督したり自ら職務命令を出したりする立場はないとしています。また、主務教諭の持ち授業時間には制限を設けないという当時の説明です。具体的な分担や勤務条件は自分の学校・自治体で確かめてください。
養護・栄養を担う主務教諭もある
学校教育法第37条第20項第2号には、学校の実情に照らして必要と認めるときに、児童の養護または栄養の指導・管理を担い、あわせて職員間の総合的な調整を行う主務教諭を置く規定もあります。教育を担う第11項の主務教諭との区別があります。
小学校の必置職の例外を定める第3項では、主務教諭を置くときに教諭を置かないことができる規定から、この第20項第2号の職を除いています。一方、養護をつかさどる主務教諭等を置くときは、養護教諭を置かないことができます。主務教諭という職名だけで配置を一括して判断せず、どの職務を担う人なのかを確認してください。
国の制度が始まった日と、学校での任用日は別
主務教諭の職を置けるようにする制度は、2026年4月1日から施行されています。幼稚園は学校教育法第27条、小学校は第37条に職務等の規定があり、中学校や高校、特別支援学校等にも関係規定があります。
文部科学省の通知は、主務教諭を任意に設置できる職として、学校や地域の状況を踏まえて各教育委員会が判断するとしています。ただし、自治体が自らの学校の規則で「置く」と定める場合は、その規則の対象と施行日を確認する必要があります。
全国の制度の施行日だけを見て、自分の学校でも任用が済んでいる、あるいは全国一律に翌年4月に置かれる、と考えないでください。配置予定、選考の実施、任用の発令をそれぞれ確認しましょう。
神奈川県の県立学校では、2027年4月からの設置を決定
神奈川県教育委員会の2026年9月1日の会議速報は、定教第32号議案「神奈川県立高等学校の管理運営に関する規則等の一部を改正する規則」が提案され、決定したと記録しています。提出された議案の本文だけでなく、この会議結果も確認できます。
改正は、県立高校、県立特別支援学校、県立中等教育学校に主務教諭を置く内容です。主務教諭の設置に関する施行日は2027年4月1日です。別の校名変更に関する規定には公布日施行の例外がありますが、主務教諭の設置時期とは別です。
主務教諭を任命する対象の職は、学校種によって異なります。いずれも教育委員会が任命する規定です。
| この改正の対象 | 主務教諭を任命する対象の職 |
|---|---|
| 県立高校 | 教諭または養護教諭 |
| 県立特別支援学校 | 教諭、養護教諭 または栄養教諭 |
| 県立中等教育学校 | 教諭、養護教諭 または栄養教諭 |
県立高校では教育または養護を担い、校長の命を受けて教育活動に関する職員間の総合的な調整を行うと定めています。特別支援学校と中等教育学校には、栄養の指導・管理も含まれます。特別支援学校では、舎監を主務教諭または教諭で充てる改正もあります。
総括教諭の新しい任命要件には経過措置がある
同じ改正では、県立3種類の学校の総括教諭を「主務教諭のうちから」教育委員会が任命する要件に変えています。ただし、この要件を適用するのは2027年4月2日以降に任命する総括教諭です。同日前の任命は、なお従前の例によると定めています。
神奈川県の「総括教諭」は、県の学校管理運営規則に職務と任命要件が定められています。今回の中等教育学校の新旧対照表では、総括教諭は教育・養護・栄養の指導および管理を担い、「校長の監督を受け」て規定の職務を行うという文言です。学校教育法の主幹教諭の職務条文と同じ文言として引用するものではありません。
この県立学校の任命要件を、全国や県内の市町村立学校の昇任条件に広げないでください。自分の学校に適用される規則と、選考・任命の対象日を確認することが大切です。
給与は、給料表の級・号給で確かめる
文部科学省は、主務教諭の設置に伴う新たな級の創設による適切な処遇の検討を求めています。全国一律の定額手当を受け取る、と考えるのではなく、適用される給料表の職務の級を確かめます。
神奈川県人事委員会が2026年10月13日に実施した報告・勧告の概要は、主務教諭の職務・職責に応じた給与とするため、教育職給料表の2級と3級の間に新たな級を創設することが必要としています。また、全国人事委員会連合会が示したモデル給料表を参考に改定することが適当としています。
人事委員会の勧告は、給与条例そのものではありません。職を置く規則が決まったことと、自分に適用される級・号給や金額が決まったことも別です。勧告の見出しや「級が増える」という情報だけでは、自分の支給額は判断できません。
大阪府資料の6,000円は、日付のある想定
大阪府教育庁の2025年10月23日時点の資料は、当時の2級と特2級の間に新たな級を設け、教諭より月6,000円程度高い処遇を想定しています。Q&Aでは、国の想定として2級に6,000円程度を加える額が示され、最終的な給料表は人事委員会での検討を経て条例で定めると説明されています。
これは、全国の教員に今同額が支給されるという情報ではありません。資料は当時の配置予定を2027年4月としていますが、現在の自分の選考日や給与額を確定する資料としては使わないでください。神奈川の「2級と3級」、大阪の「2級と特2級」は、各自治体の給料表の表現です。
主務教諭にならない人についても、文部科学省の通知は、教諭の職務内容・職責に変更がないことを踏まえ、適切な給与水準の確保に努めるよう求めています。大阪府の当時の資料も、2級の給料月額は減額しないとしています。ただし、これを将来のすべての給与項目や手取り額の保証に置き換えないでください。
教職調整額の率は、主務教諭への任用と別に読む
ここで扱う給与の率は、公立学校を対象とする給特法の教職調整額です。主務教諭への昇任でどの級になるか、学級担任としてどの手当が支給されるかとは別の制度です。私立学校の給与に、この率をそのまま当てはめる説明ではありません。
給特法第3条第1項の本則の基準は10%ですが、同法附則第2項には期間ごとの読替表があります。幼稚園以外の支給対象者について、現在の条文を年ごとに整理すると次のとおりです。
| 期間 | 教職調整額の基準率 |
|---|---|
| 2026年1月1日〜 12月31日 | 5% |
| 2027年1月1日〜 12月31日 | 6% |
| 2028年1月1日〜 12月31日 | 7% |
| 2029年1月1日〜 12月31日 | 8% |
| 2030年1月1日〜 12月31日 | 9% |
| 2031年1月1日 以降 | 10%(本則) |
切り替わるのは4月ではなく1月です。幼稚園の教育職員の基準は4%で、この読替表による引上げの対象ではありません。幼稚園の給与全体が据え置きになる、という意味ではありません。
第3条第1項は、校長・副校長・教頭と指導改善研修被認定者を支給対象から除いています。また、2026年1月1日前に教育公務員特例法第25条第1項の認定を受け、2025年12月31日までに同条第4項の認定を受けていない人については、同条第4項の認定を受けるまで従前の例による経過措置があります。該当する場合は、認定日と適用される扱いを給与担当に確認してください。
法律が定めるのは給料月額に対する教職調整額の基準で、支給は条例に基づきます。この表を給与総額や手取り額の上昇率として計算しないでください。自分の給与明細では、給料と教職調整額を分けて確かめましょう。
選考を考えたら、最新の要項と校内の期限を確認する
大阪府の2025年10月資料では、書類選考によると説明しています。推薦者は市町村教育委員会教育長で、府立学校は校長・准校長です。当時の資料は、職や中堅層としての年齢、調整力・指導力などの推薦要件を設け、適性評価と勤務実績を選考内容としていました。
ただし、同資料の選考スケジュールは当時未定で、後日詳しい日程を示すという説明でした。この資料だけで現在の募集日、年齢要件、提出書類を決めないでください。学校種や任命権者が違う場合も、別の要項を確認する必要があります。
自分の自治体の教育委員会サイトで「主務教諭」「選考」「学校管理運営規則」「教育職給料表」を確認し、対象年度と学校種が一致する資料を開きます。資料が見つからない場合や内容が不明な場合は、校長や任命権者の教職員人事担当に次の点を確かめてください。
- 自分の学校種・現在の職が選考対象か。いつの任用を目指す選考か。
- 推薦が必要か、公募か。書類・面接等は何が必要か。
- 校内の提出期限と、教育委員会への提出期限はそれぞれいつか。
- 任用後に担当する業務、他の教員との分担、適用される給与の級・号給はどうなるか。
給与勧告が出たことや、学校にその職を置くことだけで、個人の推薦・選考・任用が決まったとは判断しないでください。要項に沿って必要な手続きを行い、任用の結果と発令日、給与の取扱いが分かる通知を確認します。日程が未公表なら、いつどの案内を確認すればよいかを問い合わせておくと、過去資料の予定日だけで動かずに済みます。