共同親権が2026年4月に始まったら、すでに離婚した夫婦の親権はどうなるか

結論

施行前に離婚した家庭の親権は自動的に共同親権へ変わることはなく、変更するには父母の話し合いか家庭裁判所への申立てが必要で、DVや虐待の事情があれば単独親権が維持されます。

どうする?編集部 · · 読了 約9分
目次(10項目)
  1. 施行しても単独親権は自動的に共同親権へ切り替わらない
  2. 共同親権になると、何を単独で決められるか
  3. 変更を望むなら、まず父母同士の話し合いから
  4. 合意できないときは「親権者変更調停」へ
  5. 家庭裁判所が重視するのは子の利益とDVの有無
  6. 親子交流(旧・面会交流)のルールも見直された
  7. 児童扶養手当や養育費はどう扱われるか
  8. 共同親権にしてから対立したときはどうするか
  9. 申立てにかかる費用と用意する書類
  10. 弁護士や法テラスに相談するタイミング

「もう何年も前に離婚したのに、今さら親権の話に巻き込まれるのか」。2026年4月に共同親権の制度が始まってから、こうした戸惑いの声を見かけるようになりました。改正民法が施行されても、過去に離婚した家庭の親権が自動的に書き換わることはありません。とはいえ、元配偶者から「共同親権に変えたい」と申し出を受けたり、自分から変更を望んだりする場面はこれから増えていくはずです。まず、施行によって何が変わり、何が変わらないのかを確認してください。

この記事が対象にしているのは、2026年3月31日までに離婚が成立し、単独親権のまま子育てをしている家庭です。施行日以降に新たに離婚する夫婦は、離婚の話し合いの中で最初から共同親権か単独親権かを選ぶ形になるため、ここで説明する変更手続きの対象にはなりません。

たとえば、10年前に離婚して母親が単独親権で子どもを育ててきた家庭で、父親から「共同親権の制度ができたから、自分も親権者に加えてほしい」と連絡が来た、という相談が実際に出てきています。この場合も、母親が同意しない限り親権が自動的に共同へ変わることはなく、父親側が家庭裁判所に申し立てて初めて手続きが動き出します。連絡を受けた側が慌てて返事をする必要はなく、まず制度の枠組みを理解してから対応を考えれば十分間に合います。

施行しても単独親権は自動的に共同親権へ切り替わらない

2024年5月に成立した改正民法は、2026年4月1日に施行されました。父母の離婚後、これまでどちらか一方しか持てなかった単独親権に加えて、双方が親権者となる共同親権を選べるようになったのが柱です。

ここで誤解が起きやすいのが、施行日を境に既存の家庭にも新ルールが自動で適用されると思い込むケースです。実際には、施行前にすでに離婚が成立していれば、単独親権はそのまま続きます。共同親権にしたいなら、父母のどちらかが動いて手続きを取らない限り何も変わりません。

法務省の解説資料でも、この点は繰り返し注意喚起されています。ニュースの見出しだけを見て、相手の同意なしに親権が共同へ切り替わったと思い込む相談が出ているためです。逆に言えば、今のまま単独親権を続けたい側が、新たに何かを届け出る必要もありません。

共同親権になると、何を単独で決められるか

「共同親権になったら、習い事ひとつ決めるのにも相手の同意がいるのか」という質問をよく見かけます。結論から言うと、そこまで細かくはありません。改正民法では、子育てに関わる判断を「日常の行為」「重要事項」「急迫の事情」という区分で整理しています。

日常の行為にあたるのは、習い事の選択、放課後のアルバイト、短期の観光目的の海外旅行、子どもの心身に重大な影響を与えない範囲の通院や予防接種、薬の服用などです。こうした場面は、同居して育てている親が単独で決められます。いちいち相手の同意を取り付ける必要はありません。

一方、進学するか就職するかの選択、通う学校そのものの選択、生命に関わる医療行為、子どもを連れての引っ越しは重要事項にあたり、原則として父母双方の合意が必要です。ここが単独親権との一番の違いです。

ただし例外もあります。受験願書の提出期限が迫っている、試験結果発表後に入学手続きの期限が迫っている、緊急の手術が必要になったといった「急迫の事情」があるときは、重要事項であっても単独で判断してかまいません。話し合いを待っていたら子どもの利益を損なう場面まで縛られる制度ではない、という設計です。

変更を望むなら、まず父母同士の話し合いから

共同親権への変更を希望する場合、最初のステップは家庭裁判所ではなく父母間の協議です。双方が合意できれば、合意書を作成したうえで親権者変更の手続きに進みます。

話し合いの場では、子どもの生活環境がどう変わるのか、進学や医療といった重要な決定を誰がどう関わって決めるのかを具体的に詰めておくと、後々のすれ違いを避けやすくなります。共同親権になっても、日常の細かな判断は主に子どもと同居する親が担い、進学先や手術の同意といった重要事項だけ双方の合意を必要とする運用が想定されています。子どもが今の生活を大きく変えずに済むかどうかも、話し合いの段階で確認しておきたい点です。

合意できないときは「親権者変更調停」へ

父母の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てます。調停委員を介して双方の言い分を聞きながら合意点を探る手続きで、離婚調停と同様に非公開の場で進みます。

調停でも合意に至らなければ、審判に移行します。審判では家庭裁判所が一切の事情を踏まえ、共同親権にするか単独親権のままにするかを判断します。話し合いから調停、審判へと段階を踏む流れは、これまでの親権者変更の手続きと同じ枠組みです。

段階進め方決めるのは誰か
協議父母が直接話し合う父母双方の合意
調停家庭裁判所で調停委員を介して話し合う父母双方の合意
審判調停不成立の場合に移行家庭裁判所

家庭裁判所が重視するのは子の利益とDVの有無

裁判所が判断の中心に置くのは、あくまで子どもの利益です。父母の関係が良好かどうかだけでなく、これまでの養育の実態、子ども自身の意向、面会交流の実施状況などを総合的に見ます。

なかでも重い意味を持つのがDVや虐待の有無です。改正民法では、DVや虐待のおそれがある場合や、父母が共同して親権を行使することが難しい事情がある場合を「必要的単独親権事由」と位置づけています。これに該当すると判断されれば、一方が共同親権を望んでいても、裁判所は単独親権を維持します。診断書のような客観的な証拠がそろっていなくても、これまでの経緯や関係性を踏まえて考慮される運用です。

調停や審判の過程では、家庭裁判所調査官が関わることがあります。子どもと面談して気持ちを確認したり、自宅を訪ねて生活状況を把握したりする役割です。子どもの年齢や理解の程度によって聞き方は調整されますが、小学校高学年くらいからは本人の意向が比較的重視される傾向にあります。調査官の報告書は、裁判所が最終的に判断する際の重要な材料になります。

逆のパターンもあります。単独親権を続けたい側が反対しても、DVや虐待に類する事情がなく父母が意思疎通できる状態にあると裁判所が判断すれば、審判で共同親権に変更されることがあります。相手が感情的に反対しているだけなのか、安全面で共同養育が難しい具体的な事情があるのかによって、結論は大きく変わります。過去のやり取りを時系列で整理し、必要ならメールやメッセージアプリの記録を残しておくと、調停や審判で事情を説明しやすくなります。

DVを理由に単独親権を主張する側は、診断書や警察への相談記録があれば有力な資料になりますが、なくても不利になるとは限りません。暴言や威圧的な態度を録音・録画したもの、避難した経緯が分かる自治体や配偶者暴力相談支援センターの相談記録も、あわせて考慮の対象になります。手元に残っている資料は、些細に見えても捨てずに保管しておいてください。

親子交流(旧・面会交流)のルールも見直された

改正民法では、これまで「面会交流」と呼ばれていた仕組みが「親子交流」という名称に変わり、子どもの利益を最優先するという原則が条文上はっきり書き込まれました。単独親権のままでも共同親権に変えても、この見直しはどちらの家庭にも関わってきます。

新たに設けられたのが「試行的実施」という仕組みです。調停や審判が進む過程で、家庭裁判所が父母に対して親子交流を試しに行うよう促し、家庭裁判所調査官の調査や父母からの報告を通じて、その様子や結果を裁判所と父母で共有します。いきなり本格的な取り決めをするのではなく、まず小さく試してから条件を詰めていく発想です。

日程調整や子どもの受け渡し、付き添いをNPOなどの民間第三者機関が支援する仕組みも位置づけられました。父母同士が直接顔を合わせにくい事情がある家庭でも、第三者を挟むことで親子交流を続けやすくする狙いです。利用できる機関は地域差があるため、家庭裁判所や自治体のひとり親家庭窓口に問い合わせてみてください。

児童扶養手当や養育費はどう扱われるか

子どもと同居して育てている親にとって気になるのが、児童扶養手当への影響です。こども家庭庁は、手当の支給を親権の形態ではなく、実際に子どもを養育しているかどうかで判断すると明言しています。共同親権になっても、これまでどおり子どもと同居し養育している側が受給者であれば支給は続きます。所得制限の計算も受給者本人の所得だけで行われ、別居する親の収入と合算されることはありません。

あわせて導入されたのが「法定養育費」の制度です。離婚時に養育費の取り決め自体をしていなかった家庭でも、法律で定める最低限の額を請求できる仕組みが新設されました。金額や算定の考え方は個々の事情で変わるため、法務省の解説資料か家庭裁判所の窓口で確認してください。

共同親権にしてから対立したときはどうするか

一度共同親権に変更したあと、進学先や引っ越しをめぐって意見が対立し、話し合いが機能しなくなることもあり得ます。急迫の事情に当たらない重要事項で合意できないときは、家庭裁判所に「共同行使の定めに関する審判」を申し立て、裁判所に判断してもらう仕組みが用意されています。

それでも共同養育そのものが立ち行かなくなった場合は、改めて親権者変更調停を申し立て、単独親権に戻すことも制度上は可能です。共同親権への変更は一度決めたら後戻りできないものではなく、事情が変われば見直しの手続きを取れる、という位置づけです。とはいえ調停や審判を繰り返すことは子どもの負担にもなるため、変更を検討する段階で、日常の意思疎通をどう確保するかまで含めて話し合っておくほうが現実的です。

申立てにかかる費用と用意する書類

親権者変更調停を申し立てる際は、子ども1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手が必要になります。切手の内訳は裁判所によって多少異なるため、申立て先の家庭裁判所に事前に確認しておくと二度手間になりません。

書類としては、申立書、申立人と相手方双方の戸籍謄本、未成年の子の戸籍謄本、事情説明書などをそろえます。戸籍が遠方の役場にあってすぐ取り寄せられない場合、申立て後に追加提出できる扱いになっているため、まず申立てを先に進める選択肢もあります。申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申立て自体は本人でも手続きできますが、事情説明書に何をどこまで書くかで調停の進み方が変わってくるため、書式をダウンロードして一度目を通し、書きにくい部分があれば早めに弁護士や家庭裁判所の手続案内窓口に相談しておくと安心です。

弁護士や法テラスに相談するタイミング

DVや虐待が絡む事案、あるいは相手との関係がすでにこじれている場合は、調停を申し立てる前の段階で弁護士に相談しておくほうが安全です。必要的単独親権事由に該当するかどうかの見通しは個別の事情によって判断が分かれやすく、自己判断で進めるより専門家の目を通したほうがトラブルを防げます。

費用が気になるなら、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を使う方法があります。収入や資産が一定の要件を満たせば、弁護士費用の立て替えや無料の法律相談を利用できます。まずは電話相談で、自分のケースが調停に進んだほうがよいのか、当面は様子を見てよいのかを聞いてみるところから始めても遅くありません。

各地の弁護士会が開いている法律相談会も選択肢のひとつです。30分5,000円前後で初回相談を受けられる事務所が多く、離婚・親権を専門に扱う弁護士を探している旨を伝えれば、担当を割り振ってもらえます。いきなり依頼まで決めなくても、今の状況で調停を申し立てるべきかどうかを一度確認するだけでも、次に取るべき行動がはっきりします。

制度は始まったばかりで、運用や解釈が今後の家庭裁判所の実務を通じて固まっていく部分も残っています。法務省やこども家庭庁のページは随時更新されるため、実際に手続きを検討する段階では最新の案内を確認してください。迷ったときは一人で抱え込まず、家庭裁判所の手続案内窓口や法テラスに問い合わせることが、結果的に一番の近道です。

共同親権が2026年4月に始まったら、すでに離婚した夫婦の親権はどうなるか — くらし 関連イラスト (どうする?)
Photo by Michael Kahn on Unsplash
#共同親権 #離婚 #親権者変更調停 #民法改正

参考資料

  1. 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」
  2. 裁判所「親権者変更調停」
  3. こども家庭庁 ひとり親家庭のためのポータルサイト「民法等改正について」
  4. 法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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