学校や保育所、学習塾などでこどもと接して働いている人には、2026年12月25日から「犯罪事実確認」という手続きが関わってきます。申請そのものは勤め先が行いますが、本人がやることが二つあります。国のシステムに自分の氏名・住所・生年月日・性別などを入力すること、そして過去のすべての戸籍・除籍を登録することです。戸籍の登録はマイナンバーカードをスマホのアプリで読み取る方法と、市区町村の窓口で16桁のコードをもらう方法の二択。まず確かめるのは、勤め先が義務対象か認定対象かという一点です。期限の数え方がそこで変わります。
この記事はこども家庭庁が公開している対象従事者向け資料と、令和8年4月のQ&A、同庁のこども性暴力防止法のページを2026年10月27日に読んで書いています。運用の細部はガイドラインの改訂で動いているので、実際に自分の番が来たときは勤め先からの案内と同庁のページを合わせて確かめてください。
施行日は確定している。まず勤め先がどちら側かを見る
こども家庭庁のページには「こども性暴力防止法については、第213回国会(令和6年通常国会)に提出し、令和6年6月19日に成立、同月26日に公布されました。令和8年12月25日に施行されます。」と書かれています。施行期日を定める政令(令和7年政令第439号)も公布済みで、ここは検討段階の話ではありません。
対象になる事業は二階建てです。
- 義務対象事業:学校、認可保育所、認定こども園、児童福祉施設など。公立・私立を問わず対象になります。
- 認定対象事業:放課後児童クラブや学習塾、スポーツクラブなど。こども家庭庁に申請し、認められた場合に法律に基づく取組の対象になります(民間教育保育等事業者)。
つまり、学習塾やスポーツ教室で働いている人は、勤め先が認定を受けていなければこの手続きは始まりません。逆に小学校や認可保育所で働いているなら、施行と同時に自分の職場が対象になります。自分がどちら側かで、このあとの期限がまったく違う読み方になります。
本人がやることは二つだけ
手続きは、こども家庭庁が新たに開発する「こまもろうシステム」で行われます。事業者が行うことと従事者本人が行うことが分かれていて、本人の分は次の二つです。
- 本人情報の入力:氏名、住所、生年月日、性別などをシステム上で入力します。
- 本人確認書類の登録:日本国籍の人は、過去のすべての戸籍・除籍を登録します。
交付申請そのもの(事業者や事業の情報、従事者情報、従事予定日、従事者が行う業務内容など)は事業者側の作業です。本人が法務省に照会するわけでも、警察署へ行くわけでもありません。本人の作業は、実質的には戸籍をどう用意するかに集約されます。
照会の対象になる「特定性犯罪」は、不同意性交、不同意わいせつ、児童買春、児童ポルノ所持、盗撮などとして法で定められた性犯罪です。これらが大人に対して行われた場合も確認の対象になります。
戸籍の登録は、カードで読み取るか、窓口で16桁をもらうか
従事者向け資料には「従事者は過去のすべての戸籍・除籍を登録する必要があります。」とあり、方法は次の二つが示されています。
| 方法 | 本人がすること | つまずく点 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード | 専用アプリで読み取る | カードと暗証番号が要る |
| 窓口で識別符号 | 16桁を受け取り入力 | 取れない市区町村がある |
一つめは、スマートフォンを用いて、マイナンバーカードを専用のアプリで読み取ることで戸籍情報を登録する方法です。役所に行かずに済みます。読み取りに使える端末と、カードの暗証番号が前提になります。
二つめは、市区町村の窓口で「戸籍(除籍)電子証明書提供用識別符号」という16桁のコードが記載された書面を受け取り、記載されたコードと本人情報をシステム上で入力する方法です。窓口に行く日が必要になります。そして、市区町村の戸籍の電算化の対応状況によってはコードが取得できず、窓口で紙の戸籍・除籍を取得してその内容をシステム上で入力することになります。本籍地が今の住所から遠い人、何度も転籍している人、婚姻や養子縁組で戸籍が分かれている人は、ここがいちばん時間のかかるところです。
資料で「過去のすべての」と書かれているのは、本籍そのものだけの話ではありません。施行規則で定められた「本籍など」には、変更前のすべての本籍と変更年月日、変更前のすべての氏名、氏名の振り仮名、出生の年月日、戸籍に入った原因および年月日、実父母の氏名および実父母との続柄が含まれます。改姓や転籍をしている人は、その履歴がたどれるところまでそろえることになります。
窓口で紙を取る場合の手数料や、識別符号の交付にかかる扱いは市区町村の案内で確かめてください。この記事では各自治体の金額を確認していないため、具体的な額は書きません。
日本国籍でない場合は、戸籍の代わりに出すものがある
外国籍の従事者の場合は戸籍ではなく、在留カード、住民票、旅券など、個人情報を確認できる書類が必要になります。従事者向け資料の提出書類の整理では、このほかに過去に氏名・国籍・性別または生年月日に変更があった場合はその国籍の属する国で発行などされた変更を示す戸籍相当書類(過去に変更がない場合はその旨の証明または誓約書)が挙げられています。来日履歴・氏名のカナ読み・重国籍の有無等に関する情報も必要になる点は、Q&Aでも同じ整理です。
交付までの標準処理期間も国籍で分かれていて、日本国籍者は2週間から1か月程度、外国籍者は1か月から2か月程度とされています。新しく働き始める場合は、この期間を見込んだうえで従事開始前に確認が終わっている必要があります。
なお、日本の国籍を有しない人が過去に日本国籍を有していた場合は、その期間に係る書類については日本国籍の人と同等の対応が必要になります。
自分の期限は、四つの区分のどれか
Q&Aは期限を事業者の種類と従事者の区分で分けています。自分がどれに当たるかを先に決めると、いつ動くかが見えます。
| 勤め先 | 自分の区分 | 期限 |
|---|---|---|
| 義務対象事業者 | 新規従事者 | 従事開始日まで |
| 義務対象事業者 | 施行時現職者 | 令和11年12月24日まで |
| 認定事業者等 | 新規従事者 | 従事開始日まで |
| 認定事業者等 | 認定時現職者 | 認定の日から1年 |
表の区分は、Q&Aの定義で次の意味です。義務対象事業者の「新規従事者」は、施行日(令和8(2026)年12月25日)以降に新たに対象業務に従事することとなる人で、期限はその業務の従事開始日までです。「施行時現職者」は施行日時点で対象業務に従事または内定していた人で、期限は令和11(2029)年12月24日までです。認定事業者等の「新規従事者」は認定日以降に新たに対象業務に従事することとなる人で、期限はその業務の従事開始日まで。「認定時現職者」は認定を受けた事業者において認定時点で従事または内定していた人で、期限は認定等の日から起算して1年を経過する日までです。
これに加えて、確認を受けて5年を経過する人も対象です。期限は前回の確認日の翌日から5年を経過する日の属する年度の末日までで、同じ職場で働き続ける間は5年ごとに繰り返されます。
施行時現職者の「令和11年12月24日まで」は、3年間放っておいてよいという意味ではありません。交付申請は時期を分散して行うことになっていて、こども家庭庁は令和9(2027)年度以降、事業者ごとに割り当てられた期間に申請すると説明しています。私立学校や児童福祉施設・事業については所在する都道府県ごとに期間が割り振られ、都道府県立・市町村立学校は都道府県教育委員会が作成する工程表に基づく期間に申請します。自分の番がいつ来るかは勤め先から案内される前提で、こちらから日付を選べる手続きではありません。
施行時点で育児休業などを取得している人も施行時現職者にあたり、割り当てられた時期に確認を行うことになります。また、施行時点で働いていても令和9年3月に従事期間が終わることが分かっている会計年度任用の職員やインターンシップの従事者については、実施時期を前倒しして確認を行う必要はないとされています。4月以降も再任用などで従事を継続する場合は、施行時現職者として同月以降に確認を実施することになります。
施行時点で働いている人は「いとま特例」の対象から外れる
急な欠員などのやむを得ない事情があるときに限って、確認前に従事を始められる「いとま特例」があります。期限は原則として従事し始めた日から3か月以内、合併・分割などの例外的なケースでは最大6か月以内です。適用される間は、こどもと一対一にさせないなどの対応が事業者に求められます。
ここに注意点があります。従事者向け資料には、施行された時点で義務対象事業者に従事・内定している人や、認定を受けた時点で認定対象事業に従事・内定している人は「いとま特例」の対象にならないと書かれています。現職者には3年または1年の期限が別に用意されているため、特例の側は使えないという整理です。「間に合わなければ特例がある」と読むと取り違えます。
性犯罪歴ありと回答されたとき、2週間が効いてくる
申請が完了すると、性犯罪歴がなければその旨が事業者へ直接通知されます。性犯罪歴があった場合は、一度本人に通知が来ます。
ここで本人がやることは、情報が正しいかどうかの判断です。正しい場合は訂正しない旨をシステムに登録します。誤りがあった場合は、訂正の請求をシステム上で行います。そして、訂正請求をしないまま2週間が経過すると事業者に性犯罪歴が通知されます。
同姓同名の取り違えや、過去の氏名・本籍の記録違いが心配な人にとっては、この2週間が実質的な期限になります。通知が来たら放置せず、記録の内容をその場で確かめることになります。
施行の前に、研修の受講がある
本人側でもう一つ、12月25日より前に関わる可能性があるのが研修です。Q&Aでは、対象従事者への研修は原則として対象業務に従事する前までに受講してもらう必要があるとされ、学校設置者等の施行時現職者については原則として法の施行前に受講してもらう必要があると書かれています。認定事業者等の認定時現職者については認定申請前です。
こども家庭庁は全視聴者向け、従事者向け、事業者向けに分けた研修動画と解説資料を作成・提供しています。受講の案内が勤め先から来ているなら、戸籍より先にこちらが期限を迎えます。
この記事で確かめていないこと
- 市区町村ごとの戸籍の電算化の対応状況、識別符号を取れる窓口や受付時間、紙の戸籍を取るときの手数料は確認していません。自分の本籍地と住所地の自治体の案内で確かめてください。
- こまもろうシステムの画面名や操作の手順は、同庁が公開するマニュアルが素案として示されている段階のものを含みます。この記事では画面の名称を書いていません。
- ガイドラインは2026年中に改訂が重ねられています。本文の内容は2026年10月27日時点でこども家庭庁のページと上記二つの資料から読み取れた範囲です。
参考資料
- こども性暴力防止法|こども家庭庁(施行期日を定める政令・施行令・施行規則・施行ガイドラインの掲載ページ)
- こども性暴力防止法 対象従事者向け資料(こども家庭庁)
- こども性暴力防止法に関するQ&A(令和8年4月・こども家庭庁)