健康保険の扶養でいう「年間収入130万円未満」は、1月から12月までの収入ではありません。日本年金機構は「年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます」と説明しています。月額なら108,333円以下、雇用保険の受給者なら日額3,611円以下が、要件を満たす目安です。
いまはちょうど、協会けんぽが令和8年度の被扶養者資格の再確認を行う時期にあたります。「被扶養者状況リスト」は10月下旬から11月中旬にかけて事業主へ順次届き、提出期限は令和8年12月11日(金)です。
訂正(2026年9月29日) 初出(5月30日)では「年収130万円要件は維持されるが、判定が厳格化」と書き、確かめていない変更点を並べていました。誤りです。厚生労働省は、働く時間を調整している人が扶養に入れるかを前もって見通せるようにするための取り扱いだと説明しています。事務連絡(Q&A第2版)で確かめ、記事全体を書き直しました。
130万円は「認定日以降の1年間」の見込み額
所得税の扶養控除は1月から12月の暦年で判定します。健康保険の扶養は違います。認定日から先の1年間にいくら入る見込みかで判定するので、年の途中で扶養に入った人が1月にさかのぼって合計するわけではありません。
厚生労働省の通知も、従来の考え方を「認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定しているところであるが」と前置きしています。見るのは先の1年間です。
ここで一つ、ややこしい点があります。判定は先の1年間の見込みですが、後述する資格の再確認で抽出される人は、前の暦年の課税収入で選ばれます。令和8年度の再確認では「令和7年中の課税収入額が130万円以上である可能性が高い方」が対象です。すでに働き方を変えて今後1年の見込みが130万円未満になっていても、昨年の収入が多ければリストに載ります。その場合は、現在の契約や収入の状況を示して条件を満たしていることを伝えます。
月額と日額の目安、そして130万円だけでは決まらない条件
日本年金機構は、給与所得等の収入がある場合は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は日額3,611円以下であれば要件を満たすとしています。130万円を12で割った額が月額の目安です。
| 基準額 | 対象 | 月額・日額の目安 |
|---|---|---|
| 130万円未満 | 原則 | 給与は月額108,333円以下、雇用保険の受給者は日額3,611円以下 |
| 180万円未満 | 60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人 | 月額の目安は公表されていない |
| 150万円未満 | 19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く) | 月額の目安は公表されていない |
180万円と150万円については、日本年金機構のページに月額の目安が示されていません。単純に12で割れば15万円と12万5,000円ですが、公表されているのは130万円の場合の108,333円だけです。月額で判断する前に、加入先の健康保険に問い合わせてください。
金額の線は2つあります。 130万円未満であることに加えて、次のどちらかを満たす必要があります。
- 同居している場合 — 収入が被保険者の収入の半分未満
- 別居している場合 — 収入が被保険者からの仕送り額より少ない
ここを見落とすと判断を間違えます。被保険者の年収が200万円で、扶養に入りたい家族の収入が120万円なら、130万円未満でも半分(100万円)を超えているので条件を満たしません。
扶養の届け出は、事実が発生してから5日以内に事務センターまたは管轄の年金事務所へ出します。
10月下旬から11月中旬に「被扶養者状況リスト」が届きます
協会けんぽは毎年、すでに扶養に入っている人が条件を満たしているかを再確認します。令和8年度の対象は全員ではなく、条件を満たさなくなっている可能性が高い次の人に限られます。
- 健康保険の資格が重複している可能性が高い方
- 同居が扶養認定の要件となっている続柄の方のうち、被保険者と別居している可能性が高い方
- 令和7年中の課税収入額が130万円(60歳以上は180万円、19歳以上23歳未満かつ配偶者でない場合は150万円)以上である可能性が高い方。ただし令和8年4月1日時点で18歳未満の方を除く
確認対象となる被扶養者がいない事業所にはリストが送られません。届かなければ今年の対象外ということです。
| 内容 | |
|---|---|
| 届くもの | 被扶養者状況リスト(事業主へ) |
| 発送時期 | 令和8年10月下旬から11月中旬にかけて順次 |
| 提出期限 | 令和8年12月11日(金) |
| 提出方法 | 日本年金機構への電子申請、または協会けんぽへ紙で提出 |
| 添付が必要な場合 | 年収130万円以上で、人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に収入が増加しているとき(事業主の証明書) |
| そのほか添付するもの | 持っている場合の資格確認書等(高齢受給者証、限度額認定証、特定疾病療養受療証) |
扶養の条件を満たさなくなっている人がいれば、被扶養者異動届を出します。出さずに放っておくと、資格を失った人の分まで前期高齢者納付金の算出対象に含まれます。
働いている本人がすることは、勤め先から渡されたリストや確認票に、現在の収入と同居の状況を書いて返すことです。直近の給与明細か最新の労働条件通知書を手元に置いて、月額と契約時間を見ながら書いてください。
一時的に130万円を超えたときは、事業主証明で連続2回まで
人手不足による労働時間の延長などで一時的に収入が増え、年収が130万円(60歳以上または障害厚生年金受給者等は180万円、19歳以上23歳未満で配偶者を除く場合は150万円)以上になっても、事業主証明を添えることで、原則連続2回まで被扶養者の認定が受けられます。協会けんぽは「事業主証明様式」をWordとPDFで配り、「事業主の証明による被扶養者認定のQ&A」も出しています。
厚生労働省の通知も「当初想定されなかった臨時収入により年間収入が130万円以上の場合であっても、社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、被扶養者としての取扱いを変更する必要はない」としています。どこまでが妥当かについて金額は示されていません。金額を決めると新しい「年収の壁」になりかねないというのがその理由です。
使えるのは一時的な増収のときだけです。恒常的に増えていて、妥当な範囲を超えて130万円を上回っていたと分かった場合は、保険者が確認を行った日以降に扶養から外す届け出をします。連続2回を使い切ってもなお超えているなら、一時的とは言えなくなります。その先は勤め先の社会保険か国民健康保険に移ることになるので、3回目をあてにして働き方を決めないでください。
2026年4月1日以降に認定される人は、労働契約の内容で判定
ここからは2026年4月の変更点です。認定日が4月1日以降の人は、労働条件通知書などに書かれた時給・労働時間・日数から年収を見込み、基準額未満かどうかで判定します。契約にはっきり書かれていない残業代は数えません。
| これまで | 2026年4月1日以降に認定する人 | |
|---|---|---|
| 何で見込むか | 過去・現在の収入と今後の見込み | 労働条件通知書などの時給・労働時間・日数 |
| 残業代 | 見込みに含める | 契約にはっきりした定めがなければ含めない |
| 基準額 | 130万円未満 | 130万円未満(同じ) |
計算例です。時給1,200円、1日5時間、週4日の契約なら、1,200円×5時間×4日×52週で124万8,000円です。130万円未満なので、ここは通ります。ただし同居しているなら、被保険者の年収がおよそ250万円以上なければ「半分未満」を満たしません。先に挙げた年収200万円の被保険者なら半分は100万円なので、この契約では扶養に入れません。契約から出した額が130万円未満でも、それだけで決まるわけではありません。
賃金には諸手当と賞与も含まれます。契約で決まっている賞与や手当があれば、その分を足して見込みます。数えないのは、契約にはっきりした定めがなく、契約の段階では見込めない残業代などの臨時収入です。認定の時点ですでに残業が続いていても、契約の段階で残業が見込まれていなかったのなら、契約の内容で判定します。
この判定が使えない人と、出す書類
契約から年収を計算できない次のような人は、従来どおり給与明細書や課税(非課税)証明書などで判定されます。
- 契約期間が1年に満たない。被扶養者(異動)届の「被扶養者になった日」から起算して1年未満かで見ます
- 「シフト制による」などで、契約書に労働時間がはっきり書かれていない
- 手当の金額がはっきりしない
- 年金収入や事業収入など、給与以外の収入がある
- 労働条件通知書などを出さない
掛け持ちの人は、すべての勤め先の書類を出し、それぞれの見込みを足して判定します。一部の勤め先の分しか出せないときは従来の判定になります。
出す書類は次の2つです。
- 労働条件通知書、雇用契約書、または労働条件が記載されている事業主証明(任意様式) のいずれか。決まった様式がなくても、勤め先に労働条件を書いた書面を作ってもらえば足ります
- 扶養に入る本人が書く、「給与収入のみである」旨の申立書
申立書は、被扶養者(異動)届の「扶養に関する申立書」の欄に書くか、本人が作ったものを添える形です。課税(非課税)証明書は前の年度の所得を証明するもので、これから1年間給与だけであることの証明にはならないため、申立書の代わりにはなりません。
19歳以上23歳未満は150万円。年齢は12月31日時点で見る
150万円未満の基準が使えるのは、扶養認定日が令和7年10月1日以降で、扶養認定を受ける人が19歳以上23歳未満の場合です。被保険者の配偶者は除かれます。
年齢要件は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。 認定日に22歳でも、その年の12月31日に23歳になっているなら130万円が基準です。誕生日が年末にある子どもは、ここで基準額が変わります。
令和7年9月30日以前に扶養認定済みの19歳以上23歳未満の人については、令和7年10月1日以降、年間収入が150万円以上見込まれる場合に削除(非該当)の届け出が必要です。
勤め先の社会保険に入るときは、扶養の判定より先
130万円の計算をしても、勤め先の社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象になれば、そちらが先です。加入すれば自分が被保険者になるので、扶養に入るかどうかの話ではなくなります。
月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月1日に撤廃されました。年収が低くても、対象の事業所で週20時間以上・2か月超の雇用見込み・学生でないことに当てはまれば加入対象です。年収だけでは判断できなくなっています。順番としては、まず勤め先の社会保険の対象かを確かめ、対象でなければ130万円と半分未満の線を見ます。詳しくは106万円の壁の撤廃と加入対象の確認手順にまとめています。
認定のあとの確認と、外れるとき
認定した年度のうちは確認を行う必要はないとされ、翌年度以降は少なくとも年1回、保険者が扶養の条件を満たしているかを確かめます。そのときは、その時点の最新の労働条件通知書などを出します。厚生労働省の通知は「労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合には、条件変更の都度、当該内容が分かる書面等の提出を求めること」としています。年1回の確認を待たず、更新や条件変更のたびに書面を出すことになります。
外れるのは次のような場合です。
| 分かったこと | 扱い |
|---|---|
| 恒常的な残業で、妥当な範囲を超えて130万円を上回っていた | 保険者が確認を行った日以降に、扶養から外す届け出をする |
| 賃金や労働時間を不当に低く書くなど、認定時の書類に誤りがあった | 認定時にさかのぼって取り消す |
| 失業給付を受け始め、基本手当の日額が3,612円以上になった | 扶養から外す届け出をする |
年間収入には給与以外も含めます。公的年金、個人年金、事業収入、家賃などの財産収入、雇用保険の失業等給付が対象です。60歳以上の親を扶養に入れている場合は、公的年金と個人年金を合わせて180万円未満かを見ます。年金額の改定通知や個人年金の支払通知が届いたら、二つを足して180万円未満かを見てください。
税の扶養とは別の線
ここまでは健康保険の扶養の話です。所得税の扶養控除や配偶者控除は別の基準で判定され、家族の給与収入が2026年分は136万円以下なら扶養控除の対象になります。健康保険の130万円と税の136万円は別の線なので、片方だけを見て働き方を決めると、もう片方で外れます。税の側は2026年12月の年末調整で変わる欄にまとめています。