訂正(2026年10月4日) 初出では「勤続20年区切りの見直しが議論され、長期勤続者は実質増税の方向」と書き、見直し案や負担増の試算を載せていました。令和8年度税制改正大綱にそうした見直しは入っておらず、根拠を確かめられませんでした。iDeCoとの順序の説明でも「5年」「14年」と誤った数字を書いていました。国税庁と財務省の原文で確かめ、全体を書き直しました。
同日追記 要約の「4年内から9年内に延びた」が、2026年1月1日以後に支払われたDC一時金に限られることを書き足しました。それより前に支払われたDC一時金は、従来どおり前年以前4年内で判定します。
勤続20年の区切りは、今も変わっていない
退職金にかかる税金を軽くする退職所得控除は、勤続年数で金額が決まります。国税庁のタックスアンサーNo.1420(令和8年4月1日現在法令等)の計算式は次のとおりです。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(80万円に満たないときは80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
20年を超えた部分は1年あたりの控除が40万円から70万円になります。これが「勤続20年の壁」と呼ばれる区切りです。
2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱を読むと、退職所得控除の見直しは入っていません。退職所得に関する項目は、個人住民税の退職所得の特別徴収票を市町村長に出す手続きを省略できるようにする措置だけです。勤続20年の区切りを縮める、上限を設けるといった改正は、2026年10月時点で決まっていません。
計算の例
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 40年 | 2,200万円 |
退職金が控除以下なら、所得税・住民税はかかりません。控除を超えた部分は、原則として2分の1にした額が退職所得になります。
たとえば勤続30年で退職金が2,500万円なら、(2,500万円 − 1,500万円) × 2分の1 = 500万円が退職所得です。この500万円にほかの所得とは分けて所得税(復興特別所得税を含む)と住民税がかかり、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば、会社が計算して差し引きます。
勤続5年以下の短期退職手当等や、役員等として勤続5年以下の特定役員退職手当等には、2分の1にしない部分があります(No.1420)。
2026年1月から変わったのは、iDeCoなどとの調整期間
2026年に変わったのは控除の計算式ではなく、iDeCo・企業型DCの一時金と会社の退職金を別の年に受け取るときの調整です。国税庁のタックスアンサーNo.2735では次のように分かれています。
| 受け取る順序 | 後の受け取りで調整の対象になる過去分 |
|---|---|
| DC一時金(2026年1月1日以後に支払い) → 退職金 | 退職金の年の前年以前9年内のDC一時金 |
| DC一時金(2025年12月31日までに支払い) → 退職金 | 退職金の年の前年以前4年内のDC一時金 |
| 退職金 → DC一時金 | DC一時金の年の前年以前19年内の退職金 |
勤続期間とDCの期間が重なっている部分の控除が調整されます。対象期間に入っても控除がゼロになるとは限らず、重なった年数と過去の支給額で計算が変わります。順序ごとの数え方はiDeCoの「10年ルール」とはに、同じ年に受け取る場合は退職金とiDeCoを同じ年に受け取るときの控除にまとめています。
今できること
- 会社の退職金規程で、支給額の見込みと支給時期、年金形式を選べるかを確認する
- 勤続期間の開始日を確かめる(前の勤務先の期間を通算する制度があるかも含めて)
- iDeCo・企業型DCがあれば、受け取れる時期と加入期間の記録を運営管理機関で確認する
- 受取年と金額の案を2〜3通り作り、税務署や税理士に税額を計算してもらう
税制改正の内容は、毎年12月ごろにまとまる税制改正大綱で発表されます。退職所得控除が見直されるかどうかは、その原文で確かめてください。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1420 — 退職所得控除の計算式、短期・特定役員退職手当等(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2735 — 前年以前4年内・9年内・19年内の区分
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」— 退職所得に関する項目は個人住民税の特別徴収票の措置のみ