最低賃金の目安が55円引き上げへ、パートの時給はいつから・いくら変わる?
7月28日の55円はまだ目安で、県ごとの金額は8月の審議会で決まる。発効は早い県で10月上旬だが、昨年度は翌年3月末の県もあった。いまの時給が新しい額以上の人は自動では上がらず、通勤手当などは比較に含めない。
目次(11項目)
「最低賃金、55円引き上げの目安」というニュースが7月28日に流れました。全国平均で時給1,176円という数字を見て、10月から自分の時給もそうなると受け取った方が多いはずです。実際にはこれはまだ目安の段階で、県ごとの正式な金額は8月の審議で決まります。発効日も県によってばらばらで、昨年度は東京の10月3日に対し、秋田は年度末の2026年3月31日でした。まず見るのは厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」。自分の県の現在額に目安を足せば、おおよその着地が見えてきます。
答申された55円はまだ「目安」で、決定額ではない
7月28日に中央最低賃金審議会が取りまとめたのは、各都道府県の審議会に示すための引き上げ額の目安です。都道府県は経済状況に応じてA・B・Cの3つのランクに分かれており、今回の目安はAランクが54円、BランクとCランクが56円。全体を平均すると現在の1,121円から1,176円になる計算で、引き上げ率は4.9%です。
ここから8月にかけて、47都道府県それぞれに置かれた地方最低賃金審議会が実際の金額を審議します。目安どおりに決まるとは限りません。昨年度は目安が63円だったのに対し、最終的な引き上げは全国平均で66円。人手不足を背景に、目安へ上乗せして決着する県が近年は目立ちます。逆に目安を下回る決着はほとんどありません。
つまり、報道されている「1,176円」は計算上の見込みです。自分の県の金額は8月中に県の審議会から答申が出て、異議申出の手続きを経て正式に決まります。
自分の県はどのランクで、いまいくらか
Aランクは埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪の6都府県。残りがBランク28道府県とCランク13県です。厚生労働省の全国一覧ページに現在の金額が県ごとに載っているので、そこに54円か56円を足すのが最初の見当になります。
東京の現在額は1,226円なので、目安どおりなら1,280円。昨年度の改定で初めて全都道府県が1,000円を超えており、今回の目安どおりに決まれば、最も低い県でも1,050円を超える計算です。
昨年より小さい55円、それでも4.9%の引き上げ
昨年度の改定では全国平均が1,055円から1,121円へ、66円上がりました。今回の目安55円はそれに比べると小幅です。物価上昇の一服と、引き上げを負担する中小企業の支払い能力への配慮が背景として報じられています。
それでも4.9%という伸び率は、ここ10年で見れば高い部類に入ります。政府はかねて全国平均1,500円という目標を掲げており、達成時期はともかく、毎年秋の引き上げは今後も続く前提で考えておくのが現実的です。
発効日は県ごとに違う。「10月に一斉」ではなくなった
長いあいだ、最低賃金は10月1日前後に全国でほぼ一斉に切り替わってきました。この前提がここ数年で崩れています。引き上げ幅が大きくなり、賃金体系の見直しに時間のかかる中小企業に配慮して、発効日を後ろにずらす県が増えたためです。
昨年度は最も早い東京が10月3日、最も遅い秋田が翌2026年3月31日。11月や12月、年明けを選んだ県もあり、同じ年度の改定で半年近い開きが出ました。今年も同じように分散する可能性があります。
金額と同じくらい、発効日の確認が大事です。自分の県の発効日は、8月以降に都道府県労働局のサイトと厚生労働省の全国一覧で公表されます。
給与への反映はこの発効日が基準になります。発効日が月の途中なら、その日以降に働いた分から新しい時給で計算します。10月17日発効の県で月末締めなら、10月分の明細に旧時給と新時給が混ざるのが正しい処理です。
なお、発効日より前に会社が自主的に時給を上げるのは自由です。人手の確保が難しい業種では、答申の直後から募集時給を先に引き上げる動きも出ます。雇用契約の更新が9月に来る人は、更新面談の場で10月以降の時給もあわせて確かめておくと二度手間になりません。
いまの時給が新しい額より高い人は、自動では上がらない
改定で時給の引き上げが義務になるのは、現在の時給が新しい最低賃金を下回る人だけです。東京で時給1,300円のパートなら、最低賃金が1,280円になっても会社に引き上げの義務は生じません。
それでも実際には、最低賃金の引き上げは求人時給の相場全体を押し上げます。長く時給が据え置かれているなら、10月の改定は交渉の自然なきっかけです。同じ職種の募集時給をいくつか控えてから話すと、感覚ではなく相場の話として伝えられます。
「時給では上回っている」つもりで違反になっている例
最低賃金と比べる賃金には、含めてはいけないものがあります。通勤手当・家族手当・精皆勤手当、残業代などの割増賃金、賞与や臨時の手当は計算から除外し、基本の時給部分だけで比べるのがルールです。
「手当込みで時給換算1,200円」と説明されていても、手当を除いた部分が新しい最低賃金を下回れば違反です。月給制なら、対象になる月給を月平均所定労働時間で割って時給に直します。月給18万円で所定労働時間が月160時間なら時給換算1,125円。最低賃金が1,100円を超える県が増えてくると、月給制の契約社員や正社員でも下回る例が出てきます。
残業や深夜の割増賃金も、新しい時給を基準に計算し直されます。時給が56円上がれば、1.25倍で計算する深夜帯は1時間につき70円上がる計算です。
試用期間・研修中・派遣スタッフも下回れない
「研修期間中は時給950円」といった求人を見かけますが、研修中や試用期間中でも最低賃金は原則そのまま適用されます。下回る額にするには都道府県労働局長の減額特例の許可が必要で、一般のパートやアルバイトにこの許可が使われることはまずありません。
派遣で働く人に適用されるのは、派遣会社の所在地ではなく、実際に働く派遣先がある県の最低賃金です。県境をまたいで通勤していると勘違いしやすいところです。また、製造業の一部など産業によっては地域別より高い「特定最低賃金」が設定されていて、該当するなら比べる基準はそちらになります。
これから仕事を探すなら「発効日またぎ」に気をつける
秋に向けて求人を探している人は、募集時給がいつ時点の最低賃金を前提にしているかを見てください。いまの最低賃金ぎりぎりの募集なら、発効日以降は新しい額まで自動的に上がります。応募の段階で「10月以降の時給はどうなりますか」と確かめておくと、働き始めてから明細で気づくより話が早く済みます。
答申前に作られた求人票は、古い金額のままのこともあります。求人票の掲載日や更新日もあわせて見ておくと確実です。
発効日を過ぎても明細が変わらないとき
発効日以降の給与明細で時給を確かめ、新しい額を下回っていたら、まず勤め先に伝えます。改定を把握していなかった、翌月分からまとめて変えるつもりだった、という事務処理の遅れは実際にあり、指摘だけで解決する場合も少なくありません。
会社が応じない場合でも、最低賃金を下回る時給の合意はその部分が無効で、最低賃金額で契約したものと扱われます。差額はさかのぼって請求できます。相談先は都道府県労働局・労働基準監督署か、各労働局の総合労働相談コーナー。匿名でも相談できます。
「経営が苦しくて上げられない」という会社側の事情があっても、最低賃金を下回る選択肢はありません。設備投資とあわせて時給を引き上げる中小企業には業務改善助成金という国の支援策があり、窓口は労働局です。パート側から持ち出す話ではないものの、会社との話が平行線になったとき、こうした制度があると知っているだけで話の運び方が変わります。
扶養内で働く人は年収の見込みを引き直す
時給が上がると、シフトを変えなくても年収が増えます。月80時間働く人の時給が56円上がれば、年収ベースで5万円あまりの増加です。扶養の範囲に収めて働いている人は、発効日が決まった時点で年間の見込みを一度引き直しておくと、年末に慌ててシフトを削る事態を避けられます。
社会保険の扶養から外れる130万円の基準や、勤め先の規模によって厚生年金・健康保険への加入対象になる基準は、時給ではなく月収・年収で判定されます。このあたりは制度改正が続いている分野なので、境目に近い人は勤め先の総務か年金事務所で現時点の扱いを確かめるのが確実です。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」— 答申の全文とランク別の目安額
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」— 現在の県別金額と発効日
- 厚生労働省「最低賃金制度の概要」— 対象となる賃金の範囲、減額特例、特定最低賃金
参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
この記事をシェア
関連記事
住宅ローンの本審査で落ちた。事前審査は通ったのに、原因はどこ?
お金 どうする?住宅ローンの本審査で落ちた。事前審査は通ったのに、原因はどこ?
結論本審査の否認は、団信・物件評価・書類差異・属性変化のいずれかに寄ります。原因を電話で切り分け、住宅ローン特約の期限内に別行へ出し直せば、契約自体は守れる場面が多めです。
給付付き税額控除が2027年本格的な開始、誰が対象になる?
お金 どうする?給付付き税額控除が2027年本格的な開始、誰が対象になる?
結論2026年中の中間取りまとめ後、2027年から本格的な開始予定。低所得世帯から中所得世帯まで段階的に対象。年収の壁問題への対応も含む。
給付付き税額控除の中間取りまとめは2026年6月のどんな内容?
お金 どうする?給付付き税額控除の中間取りまとめは2026年6月のどんな内容?
結論中間取りまとめは6月予定。対象は低・中所得世帯。給付・税額控除の混合方式が議論。2027年度本格的な開始が現時点の目処。