介護保険のサービスを使ったときの自己負担は、医療費控除に入るものと入らないものに分かれます。分かれ目は、サービスの中身が看護や医学的管理の下での療養上の世話に当たるかどうかです。
訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護といった医療系のサービスは、自己負担の全額が対象です。デイサービス(通所介護)や訪問介護、訪問入浴介護、短期入所生活介護などは、同じ月のケアプランに医療系サービスが入っているときに限って対象になります。施設に入っている場合は、特別養護老人ホームが介護費・食費・居住費の自己負担の2分の1、介護老人保健施設と介護医療院が全額です。有料老人ホーム等で受ける特定施設入居者生活介護、グループホームの認知症対応型共同生活介護、福祉用具のレンタル代は対象になりません。
確定申告の前に手元にそろえるのは、事業所や施設の領収証と、ケアマネジャーから毎月届くサービス利用票です。
介護サービスが医療費控除に入る理由
医療費控除の対象になる医療費は、タックスアンサーNo.1122に一覧があり、その中に「介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額」が含まれています。同じ一覧には「保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価」もあります。
タックスアンサーNo.1127は、介護保険サービスには日常生活上の世話のほかに看護や医学的管理の下における療養上の世話も含まれているとしたうえで、居宅サービスの対価のうち療養上の世話等に相当する部分を利用者が負担した金額が医療費控除の対象になると説明しています。どのサービスがそれに当たるかは、厚生労働省が国税庁と協議して定めた取扱いで決まっています。
自宅で使うサービスは三つに分かれる
タックスアンサーNo.1127は、居宅サービス等を次の三つに分けています。
自己負担の全額が対象になるもの
- 訪問看護、介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)、介護予防居宅療養管理指導
- 通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)、介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所療養介護(ショートステイ)、介護予防短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
- 看護小規模多機能型居宅介護(上の居宅サービスを含む組合せで提供されるもの。生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)
保健師や看護師などが行う療養上の世話や診療の補助に当たるため、これらの自己負担額として支払った金額は対象になる、とされています。厚生労働省の事務連絡でも、これらに係る費用は、ほかの要件を満たすかどうかに関係なく自己負担額全額が対象になるとしています。
医療系サービスと併せて使う月だけ対象になるもの
- 訪問介護(ホームヘルプ。生活援助中心型を除く)、夜間対応型訪問介護
- 訪問入浴介護、介護予防訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護(ショートステイ)、介護予防短期入所生活介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合と連携型事業所)
- 看護小規模多機能型居宅介護(上の医療系サービスを含まない組合せのもの。生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)
- 地域支援事業の訪問型サービス・通所型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
入浴、排せつ、食事などの介護といった日常生活上の世話ですが、医療系サービスと併せて使った場合には療養上の世話に当たるとされ、自己負担額が対象になります。医療系サービスと併せて使わなければ対象になりません。
「併せて利用した」とは、1か月単位のケアプランに医療系サービスが位置付けられていることを指します。タックスアンサーNo.1127は、居宅介護支援事業者などから交付される「サービス利用票」に医療系サービスが書かれているかどうかで判断するとしています。ある月は訪問看護が入っていて、次の月は入っていない、という使い方なら、デイサービスの自己負担が対象になるのは訪問看護が入っている月だけです。
対象外のもの
- 訪問介護のうち生活援助中心型(調理、洗濯、掃除など家事の援助が中心のもの)
- 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)、介護予防認知症対応型共同生活介護
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)、地域密着型特定施設入居者生活介護、介護予防特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(施設サービスの対価については、後述のとおりNo.1125に別の記載があります)
- 福祉用具貸与、介護予防福祉用具貸与
- 地域支援事業の生活支援サービス、生活援助中心の訪問型・通所型サービス
生活援助を中心とした日常生活上の世話であるため、医療系サービスと併せて使っても対象になりません。
ただし、二つ目と三つ目の区分のサービスの中で、介護福祉士などが喀痰吸引や経管栄養を行った場合は別の扱いがあります。タックスアンサーNo.1127の注2では、二つ目の区分を医療系サービスと併せずに使った場合と三つ目の区分の場合に、喀痰吸引等の対価として、居宅サービス等の対価として支払った金額の10分の1に相当する金額が対象になるとしています。
ケアプランに基づいていることが前提
タックスアンサーNo.1127の説明は、要介護者等がケアプラン(居宅サービス計画または介護予防サービス計画)に基づいて事業者からサービスを受けることを前提にしています。厚生労働省の事務連絡も、対象者の要件の一つ目を、居宅サービス計画または介護予防サービス計画に基づいてサービスを利用することとしています。この計画には、介護保険法施行規則に定める「指定居宅サービスの利用に係る計画」のうち市町村への届出が受理されているものも含まれると書かれています。
要介護認定を受けずに全額自費で同じようなサービスを頼んだ場合がどう扱われるかは、今回読んだ資料には書かれていませんでした。
施設に入っている場合
タックスアンサーNo.1125は、介護保険の施設サービスについて次のように定めています。
- 特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)、指定地域密着型介護老人福祉施設。 施設サービスの対価(介護費、食費、居住費)に係る自己負担額として支払った金額の2分の1
- 介護老人保健施設。 施設サービスの対価(介護費、食費、居住費)に係る自己負担額として支払った金額
- 介護医療院。 施設サービスの対価(介護費、食費、居住費)に係る自己負担額として支払った金額
どの施設でも、日常生活費と特別なサービス費用は対象外です。日常生活費は、理美容代など、施設で提供される便宜のうち日常生活でも通常必要になるもので、入所者に負担させることが適当と認められるものと説明されています。
介護老人保健施設と介護医療院の個室などの特別室の使用料は、診療や治療を受けるためにやむを得ず支払うものに限って対象になります。
なお、地域密着型の特養については、二つのタックスアンサーの書き方が分かれています。No.1127の居宅サービス等の表では「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」が対象外の区分に入っています。一方、No.1125の施設サービスの表では「指定地域密着型介護老人福祉施設」の施設サービスの対価(介護費、食費、居住費)の自己負担額の2分の1が対象とされています。二つの表をどう使い分けるかを説明した記述は、今回読んだ資料にはありませんでした。入所している人は、施設の領収証に書かれた医療費控除の対象額を確かめてください。
特養が2分の1になるのは、厚生労働省の通知などで、施設サービスの対価のうち療養上の世話等に相当する部分が、介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1とされているためです。
有料老人ホームやグループホームについては、施設サービスの表には出てきません。居宅サービス等の表で、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)と認知症対応型共同生活介護(グループホーム)が対象外の区分に入っています。
計算するときに差し引くもの
高額介護サービス費
同じ月の自己負担が上限を超えて高額介護サービス費が戻った場合は、戻った額を医療費の金額から差し引いて計算します(タックスアンサーNo.1127の注4、No.1125の注3)。
特養と指定地域密着型介護老人福祉施設については、施設サービス費の自己負担額だけに対する高額介護サービス費なら、その2分の1を医療費から差し引くとされています。
保険金などで補てんされる金額と10万円
ここから先は、ほかの医療費と同じ計算です。タックスアンサーNo.1120では、その年に支払った医療費の合計から保険金などで補てんされる金額を引き、さらに10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセント)を引いた残りが控除額で、上限は200万円です。
介護費だけで10万円に届かなくても、同じ人が払った病院代や薬代と合わせて計算します。
領収証とサービス利用票の見方
タックスアンサーNo.1127とNo.1125は、居宅サービス事業者や施設が発行する領収証には基本的に医療費控除の対象となる金額が書かれることになっているとしています。介護老人保健施設については、厚生労働省の通知(平成30年)で、介護費・食費・居住費の自己負担額を区分ごとに書くこと、できる限り医療費控除の合計対象額を書くよう努めることが求められていると紹介されています。
確定申告の準備では、次の順で確かめると手戻りが少なくなります。
- 1年分の領収証を月ごとに並べ、医療費控除の対象額が書かれているかを見る
- デイサービスや訪問介護の領収証に対象額が書かれていない月は、その月のサービス利用票に医療系サービスが入っているかを見る
- 高額介護サービス費の支給決定通知が届いていれば、戻った額を確かめる
- 対象額が分からない月は、事業所や施設に問い合わせる
領収証そのものは確定申告書に付けず、「医療費控除の明細書」を作って添付します。タックスアンサーNo.1120によると、税務署は申告期限等から5年を経過する日までの間、明細書の内容を確かめるために医療費の領収書の提示や提出を求めることがあります。領収証は捨てずに保管しておきます。
誰の医療費控除に入れるか
医療費控除は、自分または自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のために、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が対象です(タックスアンサーNo.1120)。親の介護費を子どもが払っている場合は、生計を一にしているかと、実際に誰が払ったかで決まります。
同じページには、未払いの医療費は現実に支払った年の医療費控除の対象になると書かれています。この決まりに当てはめると、12月に使ったサービスの代金を翌年1月に払った場合は、翌年の医療費として数えることになります。
通所するときの交通費
タックスアンサーNo.1127の注3では、通所リハビリテーションや通所介護、短期入所生活介護などを受けるために介護老人保健施設や指定介護老人福祉施設などへ通う交通費は、そのサービスの自己負担額が医療費控除の対象になった場合で、かつ通常必要なものに限って対象になるとしています。デイサービスなどの自己負担が医療費控除の対象にならない場合は、通う交通費も対象になりません。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 区分支給限度額を超えて全額自己負担になった部分が、医療費控除の対象額に入るかどうか。平成12年の照会文書には、支給限度額の範囲内で提供されるものは一般的に支出される水準を著しく超えないと解される、という記述があるだけでした。
- 要介護認定を受けずに全額自費で利用した訪問介護やデイサービスの扱い。
- 市区町村が独自に行う上乗せ・横出しサービスの自己負担の扱い。
- 施設に入所している人が、施設サービスとは別に払ったおむつ代などの扱い。
- 地域密着型の特養について、No.1127の表(地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は対象外)とNo.1125の表(指定地域密着型介護老人福祉施設は2分の1)をどう使い分けるか。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
- 国税庁 タックスアンサーNo.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
- 国税庁 タックスアンサーNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1122 医療費控除の対象となる医療費
- 国税庁 介護保険制度下での居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(平成12年6月1日 老発第509号 照会文書)
- 厚生労働省 介護保険制度下での居宅サービス等の対価に係る医療費控除等の取扱いについて(平成25年1月25日 事務連絡)