保険料を自分で払ってきた個人年金保険の年金は、所得税では「公的年金等以外の雑所得」です。所得になるのは受け取った年金の全額ではなく、そこから対応する払込保険料を差し引いた残りです。個人年金を含む「それ以外の所得」が20万円を超えると、公的年金を受け取っている人は確定申告不要制度が使えなくなり、給与を1か所から受けている会社員は確定申告が必要になります。
保険会社が支払のときに差し引く10.21%の源泉徴収は、年金の年額から対応する保険料を引いた残りが25万円以上の場合だけです。源泉徴収されているかどうかで、確定申告の要否が決まるわけではありません。まず契約の形を確かめ、次に所得の額、最後にほかの収入との組み合わせを見ます。
保険料を払った人と受け取る人が同じかを先に見る
国税庁No.1610によると、個人年金保険の年金は、保険料を負担した人と年金を受け取る人が誰かで課税のしかたが変わります。年金の受取人(被保険者)が亡くなり、遺族が年金を受け取る権利を引き継いだ場合はNo.1615で別に扱われます。
| 契約の形 | 課税されるもの | 毎年の年金の所得税 | 支払時の源泉徴収 |
|---|---|---|---|
| 保険料を払った人が自分で受け取る | 所得税 | 公的年金等以外の雑所得 | あり(25万円未満は除く) |
| 保険料を払った人と受け取る人が違う(例:夫が払い、妻が受け取る) | 給付事由が生じた時点で贈与税 | 1年目は全額非課税、2年目以降は課税部分が段階的に増える | なし |
| 年金受取人が亡くなり、遺族が受給権を取得 | 亡くなった人が保険料を払っていれば相続税。亡くなった人でも受け取る人でもない人が払っていれば贈与税 | 2行目と同じ方法(No.1620) | 原則あり(受取人と契約者が違う一定の契約は除く) |
2行目と3行目の毎年の所得税は、年金を非課税部分と課税部分に振り分けて計算します。実際に贈与税や相続税の納税額が出なかった場合も同じ方法です。具体的な課税割合はNo.1620に表があります。
ここから先は、1行目の「自分で払って自分で受け取る」場合について説明します。
雑所得の計算は「年金額 − 対応する保険料」
雑所得の金額は、その年に受け取った年金の額から、その年金に対応する払込保険料を差し引いた額です。国税庁No.1500は雑所得を「公的年金等」「業務に係るもの」「それ以外」に分けていて、個人年金はこのうち「それ以外」に入ります。公的年金のような公的年金等控除はなく、差し引けるのは必要経費、つまり対応する保険料です。
必要経費の割合の出し方
対応する保険料の計算は、所得税法施行令第183条第1項に定められています。
必要経費 = その年の年金の額 ×(保険料の総額 ÷ 年金の支払総額)
- 支払開始の日に支払総額が確定している年金は、その支払総額で割ります。
- 支払総額が確定していない年金(終身年金など)は、支払総額の見込額で割ります。見込額は同施行令第82条の3第2項に準じて計算します。
- 割合は小数点以下2位まで出し、3位以下は切り上げます。
- 年金のほかに一時金(死亡保険金など)も支払う契約では、保険料の総額をそのまま使いません。年金の支払総額(見込額)と一時金の額の合計のうち、年金の部分が占める割合を保険料の総額に掛けてから使います。国税庁の質疑応答事例では、終身年金付終身保険の年金がこの計算の例として挙がっています。
- 年金の支払開始後に受け取る剰余金や割戻金は、雑所得の収入に加えます。
仮の数字で計算すると
10年間の確定年金で、年額60万円(支払総額600万円)、払い込んだ保険料の総額が463万円だったとします。
- 割合:463万円 ÷ 600万円 = 0.7716… → 3位以下を切り上げて0.78
- 必要経費:60万円 × 0.78 = 468,000円
- 雑所得:600,000円 − 468,000円 = 132,000円
切り上げのため、割合をそのまま掛けた場合より必要経費はわずかに多くなります。保険料の総額や支払総額は契約で決まっているので、保険会社の書類で確かめてください。
雑所得は「公的年金等」「業務」「それ以外」の合計額です。国税庁No.1500によると、雑所得の計算で生じた損失は、給与など他の所得と損益通算できません。
源泉徴収は10.21%、残りが25万円未満なら差し引かれない
国税庁No.1610によると、年金が支払われるときに次の額の所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます。
(年金の額 − その年金に対応する保険料)× 10.21%
ただし、年金の年額から対応する保険料を差し引いた残りが25万円未満なら、源泉徴収されません。この25万円は、所得税法第209条第1号を受けて、同施行令第326条第5項が定めている金額です。同施行令第326条では、生命保険契約の年金について、源泉徴収で差し引く保険料も第183条の必要経費の割合を年金額に掛けて計算すると定めています(一部の掛金の扱いには別の定めがあります)。
さきほどの例では、年額60万円から46万8千円を引いた残りは13万2千円で、25万円に届かないため源泉徴収されません。
別の仮の例として、年額120万円・支払総額1,200万円・保険料の総額840万円の確定年金なら、割合は0.70、対応する保険料は84万円、残りは36万円です。25万円以上なので、年額で見ると36万円 × 10.21% = 36,756円が源泉徴収されることになります。実際には年金を受け取るたびに差し引かれます。
10.21%について、国税庁は次のことを注記しています。
- 平成25年1月1日から令和29年12月31日までに生じる所得には、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収される
- 令和9年1月1日以後に生じる所得は、復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%)が併せて源泉徴収される
令和9年以後に受け取る年金で実際にいくら差し引かれるかは、保険会社の支払の通知などで確かめてください。
源泉徴収は前払い
この源泉徴収は、差し引かれた時点で課税が終わる仕組みではありません。国税庁No.2020は、源泉徴収された税金などがある場合、確定申告でその過不足を精算すると説明しています。所得税の税率は課税される所得金額に応じて5%から45%の7段階(No.2260)なので、10.21%で差し引かれた額が最終的な税額より多いことも少ないこともあります。
保険料を払った人と受け取る人が違う契約の年金は、支払のときに源泉徴収されません。差し引かれていないことは、所得税がかからないことを意味しません。
確定申告が要るか:ほかの収入で分かれる
個人年金の所得額が分かったら、ほかに何の収入があるかで判定のしかたが変わります。どの場合も、使うのは受け取った年金額ではなく、必要経費を引いたあとの所得額です。
公的年金を受け取っている人
国税庁No.2020では、公的年金等を受け取っている人は、次のすべてに当てはまれば確定申告は不要です。
- その年の公的年金等の収入金額が400万円以下
- その公的年金等の全部が源泉徴収の対象
- その年の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
生命保険契約に基づく年金は公的年金等に当たらない、と国税庁No.1600は明記しています。個人年金は1の400万円には入れず、3の「公的年金等に係る雑所得以外の所得金額」に入ります。
最初の例(所得13万2千円)で、ほかに所得がなければ3は満たします。2つめの例(所得36万円)では20万円を超えるので、この不要制度は使えません。その場合は、国税庁No.2020の原則どおり、公的年金等に係る雑所得を含む所得の合計から所得控除を差し引いて税額が出るかどうかで、確定申告が要るかを判断します。400万円の数え方や源泉徴収票の見方は、年金だけで暮らしている人の確定申告の記事で扱っています。
給与を1か所から受けている人
国税庁No.1900では、給与を1か所から受けていて全部が源泉徴収の対象の人は、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。給与の年間収入が2,000万円を超える人は、それだけで申告が必要です。個人年金の雑所得は「給与所得と退職所得以外の所得」に入ります。給与を2か所以上から受けている人は、年末調整されなかった給与の収入金額と合わせて判定するなど、条件が異なります。
公的年金も給与もない人
国税庁No.2020の原則では、その年の所得の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える額に対する税額が配当控除額などを超える人は確定申告が必要です。個人年金の所得から基礎控除などの所得控除を差し引いて税額が出るかどうかを見ることになります。源泉徴収税額がある場合の扱いを含め、自分が当たるかどうかは税務署で確認してください。
申告が不要な人でも確かめたいこと
- 税金が戻る場合。 国税庁No.1600は、公的年金等の確定申告不要制度に当てはまる人でも、医療費控除などの所得控除による所得税の還付を受けるための確定申告はできるとしています。No.1900も、確定申告をすれば税金が還付される人を、申告しなければならない人から除いています。
- 住民税の申告。 国税庁No.1600は、公的年金等以外の所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要な場合があるとしています。横浜市は、市民税・県民税の申告をしなければならない人として「公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の人」を挙げています。確定申告書を出した人は、住民税の申告をしたものとみなされます。横浜市の案内では、個人年金の収入があった人は、保険会社など支払先が発行した支払証明書等を持って申告します。手続きはお住まいの市区町村の案内で確認してください。
一時金で受け取ると一時所得になる
国税庁No.1610によると、年金の受給開始日より前に一時金で受け取った場合や、受給開始後に将来の年金の総額に代えて一時金で受け取った場合は、雑所得ではなく一時所得として課税されます。
一時所得の金額は、ほかに一時所得がなければ、受け取った総額から払い込んだ保険料を差し引き、さらに特別控除の50万円を差し引いた額です。課税の対象になるのは、その2分の1です。この計算は、国税庁No.1755が満期保険金などを一時金で受け取った場合として示しているものです。
例外もあります。国税庁の質疑応答事例では、保証期間付終身年金で、保証期間中の年金を繰り上げて一時金で受け取った場合は雑所得とされています。保証期間が過ぎても生きていれば再び年金を受け取れるため、「将来の年金給付の総額に代えて」支払われるものには当たらない、という理由です。この場合の必要経費は、年金の支払開始日の必要経費の割合で計算します。
一時金で受け取るか年金で受け取るかを選べる契約もあります。どちらが有利かは、ほかの所得や保険料の額によって変わるため、ここでは扱いません。
申告するときに用意するもの
確定申告の期間は原則として翌年2月16日から3月15日で、提出先は住所地を管轄する税務署です(国税庁No.2020)。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って入力すると申告書を作れます。
- 個人年金の支払額が分かる書類(横浜市の住民税申告の案内では「保険会社など支払先から発行された支払証明書等」)
- 公的年金を受け取っている人は、公的年金等の源泉徴収票
- 給与を受けている人は、給与所得の源泉徴収票
- 所得控除を受ける場合は、その証明書類
保険会社の書類に必要経費や源泉徴収税額がどう載っているかは、契約先によって違う可能性があります。見方が分からなければ保険会社に、申告の要否や税額は税務署に確認してください。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月27日時点で、次の点は今回の資料では確認できていません。
- 保険会社が送る書類の名称、記載項目、送られてくる時期。今回は保険会社の資料を見ていません。
- 令和9年1月1日以後に支払われる年金の源泉徴収の合計の率。国税庁は内訳が変わることだけを注記しています。
- 終身年金の支払総額の見込額の具体的な計算方法(所得税法施行令第82条の3第2項に準じる部分)。
- 医療費控除などで確定申告をするとき、20万円以下の個人年金の所得をどう扱うかを直接書いた国税庁のページ。
- 確定申告書のどの欄に個人年金の所得を書くか。
- 個人年金の所得が、住民税・国民健康保険料・介護保険料などの額にどう影響するか。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金
- 国税庁 タックスアンサーNo.1600 公的年金等の課税関係
- 国税庁 タックスアンサーNo.1500 雑所得
- 国税庁 タックスアンサーNo.2020 確定申告
- 国税庁 タックスアンサーNo.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 タックスアンサーNo.1615 遺族の方が支払を受ける個人年金
- 国税庁 タックスアンサーNo.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係
- 国税庁 タックスアンサーNo.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
- 国税庁 タックスアンサーNo.2260 所得税の税率
- 国税庁 質疑応答事例 生涯保障保険(終身年金付終身保険)に係る年金の必要経費の計算
- 国税庁 質疑応答事例 保証期間付終身年金契約に基づく年金の繰上受給
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(第183条・第326条)
- e-Gov法令検索 所得税法(第209条)
- 横浜市 市民税・県民税の申告について