前年に収入がなかった人が住民税の申告をしなければならないかは、住んでいる市区町村によって違います。地方税法317条の2は、住民税の申告書を3月15日までに1月1日の住所地の市区町村長に出すよう定め、ただし書きで、所得割の納税義務を負わないと認められる人のうち市区町村の条例で定める人は除くとしています。
それでも、申告しておいたほうがよい理由ははっきりしています。横浜市、川崎市、仙台市、大阪市はいずれも、申告がないと国民健康保険料の軽減判定や非課税証明書の発行、福祉の手続きに影響すると案内しています。横浜市は、申告することで収入がないことが確定し、非課税として判定できると説明しています。
1月1日に住んでいた市区町村から申告書が届いたら、収入がなかったことを書いて出しておくのが確実です。
法律では「条例で免除できる」仕組み
申告の期限と出し先
地方税法317条の2第1項は、市町村内に住所を有する個人は、3月15日までに、前年の総所得金額などを書いた申告書を、賦課期日現在の住所地の市町村長に出さなければならないとしています。賦課期日は1月1日です。横浜市も、毎年3月15日までに賦課期日(1月1日)現在の住所地の区役所税務課へ申告する、と案内しています。横浜市の案内では、3月15日が土曜日・日曜日のときは翌開庁日が期限です。
申告しなくてよい人
同じ条のただし書きは、次の人を申告の対象から外しています。
- 1月1日現在、給与支払報告書や公的年金等支払報告書を出す義務がある支払者から給与や公的年金等を受けていて、前年に給与所得以外(または公的年金等に係る所得以外)の所得がなかった人。ただし、一定の控除を受けようとする人を除く
- 所得割の納税義務を負わないと認められる人のうち、その市町村の条例で定める人
前年に収入がなかった人は、二つ目に当たり得ます。条例でどう定めているかは市区町村ごとに違うので、案内も分かれています。
確定申告書を出した人
地方税法317条の3は、前年分の所得税の確定申告書を出した場合は、その日に住民税の申告書が出されたものとみなすとしています。横浜市も、所得税の確定申告書を税務署へ出した人は、同時に市民税・県民税の申告をしたものとみなされるので、改めて申告する必要はないとしています。
収入がなかった人の扱いは市によって違う
今回読んだ5市の案内は、次のように分かれていました。
- 横浜市。 前年の収入がない人も「原則、申告していただく必要があります」。申告で収入がないことが確定し、非課税として判定できる。各種福祉関係の課税(非課税)証明書の発行、児童手当の支給資格の認定、国民健康保険料の減額判定などのために申告が必要
- 川崎市。 前年中に全く収入がなくても申告をする必要がある。申告がないと、国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料の算定や軽減判定、所得証明証等の発行、保育園、福祉サービス等に影響が出る可能性がある
- 仙台市。 前年中に所得がなかった人も申告が必要。申告しないと非課税証明書等を発行できないことがあり、国民健康保険料など申告状況をもとに算出する行政サービスの負担額が上がる場合がある
- 神戸市。 前年に収入がない場合は申告義務はない。ただし所得がないことを証明する所得証明書の発行が必要な場合は申告が必要。世帯主が給与所得者で年末調整をしている場合や、本人が確定申告をしている場合は申告不要
- 大阪市(国民健康保険)。 前年が無収入で税の申告が不要な場合でも、国民健康保険料を計算するための所得申告が必要
申告の義務があるかどうかの書き方は違っても、申告がないと証明書や保険料の判定で困る場面がある、という点はどの市も共通しています。
申告しないと何に響くか
国民健康保険料の軽減
大阪市は、国民健康保険料の軽減(7割・5割・2割軽減)と減免は、世帯全員の所得で判定するとしています。軽減の場合は、被保険者でない世帯主も含みます。そのため、所得の分からない人が世帯に一人でもいると、軽減・減免を受けられないと書いています。
大阪市は、申告書を送った世帯のうち未提出の世帯に、コールセンターから電話で提出を呼びかけているとしています。
非課税証明書・所得証明書
神戸市は、所得がないことを証明する所得証明書が必要な場合は申告が必要としています。仙台市も、申告しないと非課税証明書等を発行できないことがあるとしています。
扶養されている人、年金だけの人
扶養されている人
- 川崎市は、被扶養者は申告書の提出は不要としつつ、児童手当・国民健康保険などの各種申請に必要な証明書の交付を受けるためには申告が必要になる場合があるとしています。
- 仙台市は、給与収入のみまたは公的年金等収入のみの人などの扶養親族等(同一生計配偶者または扶養親族)になっている人は申告不要としています。ただし、仙台市以外に住む人に扶養されている人は申告が必要です。
- 横浜市は、扶養されていて収入がない場合は申告は原則不要としつつ、収入がない人として申告してほしいとしています。申告がない場合、市が確認できるのは、市内の人に扶養されているという情報だけになると説明しています。
扶養している家族と別の市区町村に住んでいる人は、とくに自分の住所地の案内を確かめてください。
年金だけの人
横浜市は、公的年金等収入のみでほかに所得がない人は申告の必要がないとしています。年金の支払者から公的年金等支払報告書が出されるためです。ただし、源泉徴収票に書かれていない社会保険料控除や医療費控除などを受ける場合は申告が必要です。
一方、遺族年金や障害年金だけの人について、横浜市は、住民税はかからないものの、課税(非課税)証明書の発行や児童手当の支給資格の認定、国民健康保険料の減額判定などのために申告が必要としています。
申告のしかた
横浜市の案内では、市民税・県民税申告書は、前年中に申告書を出した人や申告が必要と思われる人に送付しています。届いた場合は、収入がなかった旨を書いて出します。横浜市は、記載済みで添付資料がそろっていれば、本人以外が代理で出すことも、郵送で出すこともできるとしています。
仙台市は、令和8年度分(令和7年中の所得等に対する申告分)から、eLTAX、マイナポータル、市のホームページから、マイナンバーカードを使って電子申告ができるようになったと案内しています。電子申告ができるかどうかは市区町村ごとに確かめてください。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 申告義務のある人が申告しなかった場合の罰則の有無と内容。
- 今回読んだ5市以外の市区町村が、収入のない人の申告をどう定めているか。
- 横浜市の個別FAQ「前年中に収入がない場合の市民税・県民税の申告は?」は、2026年10月28日にURLが404となり読めませんでした。同じ内容は横浜市の申告書FAQで確かめました。
参考資料
- e-Gov法令検索 地方税法(第317条の2、第317条の3)
- 横浜市 市民税・県民税の申告について
- 横浜市 市民税・県民税申告書に関するよくあるご質問
- 川崎市 前年中に全く収入がなくても、市民税・県民税申告は必要ですか。
- 神戸市FAQ 前年に収入が無かったときの住民税の申告は必要ですか。
- 仙台市 個人市県民税の申告について
- 大阪市 「国民健康保険料等のための所得申告書」の提出をお願いします