個人住民税は、1月1日にどこに住所があったかで納める先が決まります。地方税法は、市町村民税と道府県民税の「賦課期日」を、その年度の初日が属する年の1月1日と定めています。その日に住所があった市区町村が、その年度1年分を課税します。
12月中に引っ越し、1月1日には新しい住所に住民登録があれば、その年度の住民税は新しい市区町村から課税されます。反対に、1月2日以降に引っ越した場合は、その年度の住民税は1年分を前の市区町村に納めます。新しい市区町村で課税されるのは翌年度からです。
年末年始の引っ越しでは、この1月1日をどちら側で迎えたかを確かめてください。
1月1日の住所で、1年度分が決まる
地方税法39条は個人の道府県民税、318条は個人の市町村民税について、賦課期日を「当該年度の初日の属する年の一月一日」としています。
納税義務者は、24条1項1号と294条1項1号で、それぞれ道府県内・市町村内に「住所を有する個人」とされ、均等割と所得割を合わせた額で課税されます。
自治体の案内も同じ趣旨です。
- 神戸市は、住民税(市県民税)は毎年1月1日現在に住んでいる市町村でその年度分が課税され、1月2日以降に新しい市町村に引っ越してもその年の住民税は1月1日現在に住んでいた市町村から課税され、新しい市町村で課税されるのは次の年からになる、と説明しています。
- 横浜市青葉区は、1月2日以降に引っ越した人の住民税は1月1日に住んでいた転居前の市区町村に払い、転居先で払うのは引っ越しした翌年からになる、としています。
- 大阪市は、個人市民税は1月1日に住民登録があった市町村で課税され、引越しに伴う特別な手続きは必要ないが、課税した市町村に納めてほしいと案内しています。
引っ越した時期ごとの納め先
この決まりに当てはめると、年末年始の引っ越しは次のようになります。
- 12月中に引っ越して、年内に転入の届出を済ませた。 1月1日の住所は新しい市区町村なので、その年の1月1日を賦課期日とする年度の住民税は新しい市区町村から課税されます。
- 1月2日以降に引っ越した。 その年度の住民税は前の市区町村から課税され、1年分を前の市区町村に納めます。新しい市区町村から課税されるのは翌年度です。
- 退職した翌年の1月2日以降に引っ越した。 神戸市は、この場合もその年の納付先は1月1日時点の住所の市町村になり、6月にその市町村から納税通知書が送られると説明しています。
住民票の移し忘れや、届出が年をまたいだとき
地方税法294条2項は、市町村内に住所を有する個人とは、住民基本台帳法の適用を受ける者については、その市町村の住民基本台帳に記録されている者をいう、と定めています。道府県民税も24条2項で同じ扱いです。大阪市の案内が「1月1日に住民登録があった市町村」と書いているのは、この規定と同じ考え方です。
一方で、同じ294条には次の規定もあります。
- 3項。 市町村は、その市町村の住民基本台帳に記録されていない個人がその市町村内に住所を有する者である場合には、記録されている者とみなして市町村民税を課することができる。この場合、市町村長は、その者が他の市町村の住民基本台帳に記録されていることを知ったときは、その旨をその市町村の長に通知しなければならない。
- 4項。 3項によって市町村民税を課された者に対しては、住民基本台帳に記録されている市町村は課税することができない。
12月に実際には新しい家に移っていたのに、転入の届出が1月にずれ込んだ場合、1月1日の住民基本台帳上の住所は前の市区町村のままです。原則は前の市区町村ですが、新しい市区町村が3項によって課税することもできる、というのが条文の枠組みです。新しい市区町村が3項によって課税した場合は、住民票のある市区町村は課税できない、と4項は定めています。
実際にどちらの市区町村が課税するかは、今回読んだ資料では確かめられませんでした。通知書が届いたら発行元の市区町村を確かめ、疑問があればその窓口に問い合わせてください。
給与から天引きされている人
給与から住民税が天引き(特別徴収)されている人について、横浜市の特別徴収センターは、特別徴収している従業員が引っ越した場合、1月1日の住所が変わる場合以外は特別徴収に係る手続きは特段ないと答えています。理由として、個人住民税は賦課期日(1月1日)に住んでいる自治体に1年間納付することになっているため、年の途中で転居した場合も、その年度の個人住民税は引き続き横浜市に納めることになると説明しています。
1月1日の住所は、翌年度の住民税にかかわります。地方税法317条の6第1項は、1月1日現在に給与を支払っている事業者に対し、1月31日までに、前年中の給与所得の金額などを、給与を受けている人の1月1日現在の住所の市町村別に作った給与支払報告書に書いて、その市町村長に出すよう定めています。12月中に引っ越した人は、新しい住所を勤務先に伝えておいてください。
同じ条の3項は、年の途中で退職して給与を受けなくなった人について、給与を支払っていた事業者が、翌年1月31日までに、給与を受けなくなった日現在の住所の市町村あてに給与支払報告書を出すと定めています。その年に受けた給与の総額が30万円以下の人は除かれます。
年金を受けている人についても、317条の6第4項が、1月1日現在に公的年金等を支払っている者は、1月31日までに、受給者の1月1日現在の住所の市町村別に公的年金等支払報告書を作って出すと定めています。年金から住民税が天引きされている人が引っ越したときの扱いは、横浜市の説明をもとに別の記事でまとめています。
前の家を残して引っ越した場合
地方税法294条1項2号は、市町村内に事務所、事業所または家屋敷を有する個人で、その市町村内に住所を有しない者を、市町村民税の納税義務者に挙げています。この人には均等割で課税されます。道府県民税も24条1項2号で同じです。
どういうものが家屋敷に当たるかは、今回読んだ資料には書かれていませんでした。前の市区町村に家を残す人は、その市区町村の住民税の窓口に確かめてください。
前の市区町村に住民税が残っているとき
大阪市は、市外(海外を含む)に転出して市内に住所や事務所などを持たなくなった場合、納税に関する事項を処理してもらうために、市内に住所などを有する人の中から納税管理人を定めて申告するよう案内しています。条件によっては納税管理人の選任を免除できる場合があるとも書いています。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 転入の届出が1月1日をまたいで遅れた場合に、実際にどちらの市区町村が課税するか。地方税法294条3項・4項の枠組みまでは確かめましたが、運用は読んだ資料に書かれていませんでした。
- 地方税法294条1項2号の「家屋敷」に当たるものの範囲。
- 前の市区町村から届く通知書の送り先(新住所に転送されるかどうか)。
- 横浜市の一般向けFAQ「年の中途で引越しをした場合」は、2026年10月28日にURLが404となり読めませんでした。
参考資料
- e-Gov法令検索 地方税法(第24条・第39条・第294条・第317条の6・第318条)
- 神戸市FAQ 年の途中で住所が変わったのですが、住民税(市県民税)の取り扱いはどうなりますか?
- 神戸市FAQ 退職の翌年に転居しましたが、前年の所得に対する住民税(市県民税)はどこに納付しますか。
- 横浜市青葉区 転出したら住民税は、どこの市区町村に支払うのでしょうか?
- 横浜市 現在、個人住民税を特別徴収している従業員が引っ越した場合、どのような手続が必要ですか。
- 大阪市 引越しに伴う市税の手続き