年金で暮らしている人もふるさと納税ができ、条件が合えばワンストップ特例も使えます。国税庁のタックスアンサーNo.1600とNo.2020によると、公的年金等の全部が源泉徴収の対象で、その収入が400万円以下、年金以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要です。大阪府はワンストップ特例の対象を「ふるさと納税の寄附金税額控除を受ける目的以外で所得税や住民税の申告を行う必要が無い方」と説明しています。確定申告が不要で、住民税の申告も要らない年金受給者は、寄附先が5団体以内ならこの特例を申請できます。
ただし、医療費控除などのために確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。そのときはふるさと納税も確定申告に書きます。
もう一つ確かめたいのが、戻ってくる額です。総務省が示す控除額の計算では、住民税から引かれる分のうち「特例分」は住民税の所得割額の2割が上限です。年金の額によっては所得割が少なく、寄附額の多くが自分の負担になることがあります。ワンストップ特例を使った場合にこの上限がどう働くかは、今回読んだ資料では確かめられませんでした。寄附する前に、住んでいる市区町村の住民税の担当に、自分の上限を聞いてください。
年金受給者がワンストップ特例を使える条件
総務省は、ワンストップ特例を「確定申告の不要な給与所得者等」が使える仕組みとし、寄附先が5団体以内であることを条件にしています。名前に「給与所得者」とありますが、大阪府の案内では、法律上の対象(申告特例対象寄附者)を、寄附金税額控除のため以外に所得税や住民税の申告をする必要がない人、と説明しています。
年金受給者が確定申告をしなくてよいかどうかは、タックスアンサーNo.1600の「公的年金等に係る確定申告不要制度」で決まります。
- その年の公的年金等の収入金額が400万円以下
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
両方に当てはまれば確定申告は不要です(タックスアンサーNo.2020には、公的年金等の全部が源泉徴収の対象であることも条件として書かれています)。ただし、No.1600は、確定申告が要らない場合でも住民税の申告が必要な場合がある、としています。住民税の申告が必要な人は、ワンストップ特例の対象から外れます。自分が住民税の申告を求められているかは、市区町村に確認してください。
条件に当てはまる人の手続きは次のとおりです。
- 寄附ごとに、寄附先の自治体へ「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を出す(総務省は「ふるさと納税を行う際に」提出するとしている)
- マイナンバーの番号確認と身元確認の書類の写しを添える(必要な書類は寄附先の案内に従う。大阪府の案内では、マイナンバーカードの写しなど)
- 申請書の提出期限は、寄附した翌年の1月10日(長岡市の案内)。届いた日と送った日のどちらで数えるかは寄附先に確認する
- 申請後に引っ越しなどで内容が変わったら、翌年1月10日までに寄附先へ変更届出書を出す
総務省のよくある質問は、払込取扱票の「ワンストップ特例の申請書の送付を希望します」に印を付けただけでは申請は終わらず、送られてくる申請書に記入して寄附先へ出す必要がある、と注意しています。
ワンストップ特例を使うと、所得税からの控除はありません。控除額の全額が、寄附した翌年の6月以降に払う住民税の減額という形で引かれます。
医療費控除で確定申告をすると、ワンストップは無効
年金受給者は、確定申告が不要でも、医療費控除などで税金を取り戻すために確定申告をすることができます(タックスアンサーNo.1600)。この場合、ワンストップ特例の扱いが変わります。
長岡市の案内によると、ワンストップ特例を申請した人が、寄附した年分の確定申告や住民税申告をした場合、地方税法の規定により、特例の申請自体がなかったものとして扱われます。新宿区の案内も、医療費控除の申告などのために確定申告や住民税申告をした場合は特例が適用されない、としています。
そのときは、確定申告書の寄附金控除の欄に、ふるさと納税の分も書きます。総務省は、5団体を超えて寄附した人や、ふるさと納税と関係なく確定申告をする人は、ふるさと納税の控除を受けるために確定申告をする必要があるとしています。申告には寄附先が出す受領証などが要ります(タックスアンサーNo.1150)。ワンストップ特例を申請していても、受領証は捨てずに保管しておきます。
医療費控除を使う予定がある年は、最初から確定申告でまとめるつもりで寄附をすると、手続きが二重になりません。医療費控除とふるさと納税を両方使うときの上限の考え方は、別の記事にまとめています。
戻る額の上限を決めるのは、住民税の所得割
総務省の「税金の控除について」によると、ふるさと納税の控除は三つに分かれます。
- 所得税からの控除:(寄附額 − 2,000円)×所得税の税率。対象になる寄附額は総所得金額等の40%まで
- 住民税からの控除(基本分):(寄附額 − 2,000円)×10%。対象になる寄附額は総所得金額等の30%まで
- 住民税からの控除(特例分):(寄附額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税の税率)。ただし住民税所得割額の2割が上限
特例分がこの上限に当たると、特例分は「住民税所得割額×20%」になり、三つを足しても(寄附額 − 2,000円)の全額は控除されません。総務省は、この場合の実質負担額は2,000円を超えるとしています。
ここで年金受給者にとって大事なのが、所得割額の大きさです。所得割額が小さいほど、特例分の上限も小さくなります。所得割額が0円なら、特例分は0円です。
総務省のよくある質問は、寄附金控除を受けられるのは所得税や住民税を納めている人だとしています。住民税の所得割がかからない人は、住民税からの控除(基本分・特例分)を受けられません。所得税もかからなければ、控除で戻る税金はありません。控除がなければ、寄附額はそのまま自分の負担になります。
具体的な上限額は、収入やほかの控除によって変わります。総務省は、上限額の計算は住んでいる市区町村の住民税を担当する部署に問い合わせるよう案内しています(自治体によっては答えられない場合があるとも書いています)。
所得税がかかっていない人の住民税の申告
総務省のページには、年末調整などで所得税が0円になっていて、住民税からだけ控除を受ける人は、住民税に関する申告書を市区町村に出す必要がある、という注記があります。所得税が0円の年金受給者がワンストップ特例を使わずに控除を受ける場合は、確定申告ではなく住民税の申告になることがあります。どちらで申告するかは、市区町村に確認してください。
寄附の名義と、返礼品の税金
名義は本人。 総務省のよくある質問では、寄附金控除を受けるには、所得税や住民税を納めている本人がふるさと納税を行い、名義も本人である必要があります。夫婦で、年金収入の少ない側の名義で寄附しても、その人に納める税金がなければ控除にはなりません。
返礼品は一時所得。 同じよくある質問は、お礼の特産品は一時所得に当たり、一時所得は年間50万円を超える場合に、超えた額が課税の対象になるとしています。生命保険の一時金や損害保険の満期払戻金なども一時所得なので、同じ年にそうした受け取りがある人は合わせて考えます。
寄附の前に確かめる順番
- 年金の全部が源泉徴収の対象か、その年の年金収入が400万円以下か、年金以外の所得が20万円以下かを確かめる
- 医療費控除などで確定申告をする予定があるかを決める。あるならワンストップではなく確定申告でまとめる
- 住んでいる市区町村の住民税の担当に、自分の所得割額と、ふるさと納税の控除の目安を聞く
- 寄附は本人名義で行い、寄附先が5団体以内でワンストップを使うなら、翌年1月10日までに申請書を出す
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回の資料では確かめられていません。
- ワンストップ特例を使った場合の住民税からの控除額にも、所得割額の2割の上限がかかるのか。総務省のページは、特例を使うと所得税分も含めて住民税から控除するとだけ書いています。
- 年金から住民税が天引きされている人について、ふるさと納税の控除がどの時期の天引き額に反映されるか。
- 子どもが代金を出して親の名義で寄附した場合の扱い。
参考資料
- 総務省 ふるさと納税ポータル 税金の控除について
- 総務省 ふるさと納税ポータル ふるさと納税の概要
- 総務省 ふるさと納税ポータル よくある質問
- 総務省 ふるさと納税ポータル 制度改正について(2015年4月1日)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1600 公的年金等の課税関係
- 国税庁 タックスアンサーNo.2020 確定申告
- 国税庁 タックスアンサーNo.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
- 大阪府 『ふるさと納税ワンストップ特例制度』を利用される方へ
- 長岡市 ふるさと納税ワンストップ特例制度について
- 新宿区 ワンストップ特例を申請する皆様へ