自転車保険が義務と言われたけれど、すでに入っているかもしれない。新しく契約する前に確認すること
条例が求めるのは商品名ではなく補償の中身で、自動車保険や火災保険に付いている個人賠償責任特約でも義務を満たすため、新規契約の前にまず手元の証券と家族の契約を確認する。
目次(9項目)
自転車保険が義務になったと聞いて、どこで契約すればいいのかを調べはじめる人がいます。その前に開くものがあります。手元の保険証券です。条例が求めているのは「自転車保険」という名前の商品ではありません。自転車で他人にけがをさせたときの賠償をまかなえる保険や共済であればよく、自動車保険や火災保険にもともと付いている特約でも義務を満たします。先に確かめておけば、二重に保険料を払わずに済みます。
条例が求めているのは「自転車保険」という名前の商品ではない
都道府県が条例をつくるときのひな型として、国土交通省が「標準条例」と、その条文解説を公開しています。解説の最初の項目が、条例にいう自転車損害賠償責任保険等とは何か、でした。
そこに書かれている定義は、自転車利用者が加害者側となって被害者に対する民事上の損害賠償責任を負うことになったとき、その金銭負担を補償する保険や共済、というものです。補償の中身で決まるのであって、商品名は問われません。
代表例として国が挙げているのは、専用商品ではなく特約のほうです。原文では「自動車保険や火災保険、傷害保険など、他の保険商品等の”特約”として、『日常生活賠償特約』や『個人賠償責任補償特約』等の名称で販売されているものが、“自転車損害賠償責任保険等”に該当する代表的な商品であり、クレジットカード等の会員専用保険の中にも同様の商品がある」と書かれています。
加入を促すための文書なのに、新しく買えとは書いていません。解説は最後にこう念を押しています。まずは、自らが現在どのような保険等に加入しているのか、よく確認することが重要である、と。
証券のどこを見るか
探すのは商品名ではなく、特約の欄に並んでいる言葉です。「個人賠償責任」「日常生活賠償」のどちらかが入っていれば、それが条例のいう保険にあたります。保険会社ごとに呼び名が違うので、この二つに完全一致するものだけを探すと見落とします。「賠償責任補償特約」「日常生活賠償責任補償」なども中身は同じです。
見に行く先は、加入している可能性が高い順に次のあたりです。
- 自動車保険の証券。特約が並ぶ欄を見ます。付けた記憶がなくても、セット型の商品では最初から入っていることがあります
- 火災保険の証券。賃貸で入居するときに不動産会社ですすめられたものも含みます
- 傷害保険や共済(都道府県民共済、こくみん共済、JA共済など)の加入者証
- クレジットカードの会員特典の案内。年会費のあるカードに付いていることがあります
- 勤務先の団体保険。給与から天引きされているものの内訳
証券が見当たらないときは、保険会社のマイページで契約内容を表示できます。電話で「個人賠償責任の特約が付いているか」と聞けば、その場で答えが返ってきます。
家族の分は、たいてい誰か一人の契約に載っている
この特約でいちばん誤解されているのが、対象になる範囲です。契約者本人だけの補償だと思っている人が多いのですが、条文解説には、契約者本人だけでなく、同居している家族や、生計を一にする別居の未婚の子も補償対象範囲であることが殆どである、と書かれています。
別居の未婚の子の例として挙がっているのが、親元を離れて仕送りを受けて生活している大学生です。一人暮らしを始めた子が自分で自転車保険を探しているなら、実家の親の契約でもう終わっている可能性があります。
未成年の子についても同じです。保護者が自分の自動車保険や火災保険に特約を付ければ、子も同時に加入していることになる、と解説は書いています。子どもの人数分を契約する必要はありません。
見落としやすいのが、学校経由で入っている保険です。解説には、学校等で加入する総合補償制度等によりカバーされている場合もあり、保護者以外の者によって加入しているときは保護者の義務の対象から外れる、という注記が入っています。入学時にまとめて申し込んだPTA経由の保険がこれにあたることがあります。
つまり、世帯で見るべき契約は一つとは限らず、誰か一人が持っていれば足りることもある。家族全員の契約内容をよく確認することが重要である、というのが解説の言い方です。
通勤で乗る人と、仕事で乗る人は別に考える
ここで扱いが分かれます。通勤で自転車に乗るぶんには、条例上は本人の義務で、個人向けの特約がそのまま効きます。
配達や営業など、事業活動のために自転車を使う場合は違います。解説はその理由を、個人向けに売られている特約は個々人の通勤や日常生活上の事故を補償対象範囲としており、事業者が事業活動のために自転車を利用する場合はカバーされていない、と説明しています。この場合は事業者側が「施設賠償責任保険」などに別途加入する義務を負います。
解説を通しで読んで、いちばん線引きが読み取りにくかったのがここでした。自分で請け負って配達をしている人は、業務中の事故が個人賠償責任特約の対象外になる点を、契約先に確かめておいたほうがいい。仕事で乗っているつもりがなくても、報酬を受け取って荷物を運んでいれば事業活動として扱われます。
人を雇う側にも努力義務がかかります。従業者に通勤で自転車を使う人がいるときは、加入の有無を確認し、未加入の人には必要性を伝える。確認は保険証券によるほか、加入していることを確認する誓約書を交わすことでも足りる、と解説にあります。
住んでいる県ではなく、走っている県の条例が効く
条文解説に、県外から自転車を乗り入れる場合はどうなるか、という問答があります。答えは、県内において自転車を利用するときは当該県内に居住しているかどうかにかかわらず条例の適用を受ける、です。
住民票のある県が努力義務でも、義務化している隣の県に走り込んだ時点で、その県の条例が適用されます。旅行先でレンタサイクルに乗るときも同じです。自分の県の条例だけを調べて安心すると、ここで外れます。
義務化する都道府県は増える方向です。国土交通省のまとめでは、令和6年4月1日現在で34都府県が義務化、10道県が努力義務としています。この数はその後も動くので、自分の都道府県が今どちらなのかは、国土交通省の加入促進ページから都道府県別の一覧をたどって確かめてください。
シェアサイクルを借りたときは、事業者の保険を当てにしない
借りた自転車なら事業者の保険が効く。そう考えたくなりますが、貸す側にかかっている義務の中身は、借り手をそのまま守るものとは限りません。
解説には、一般的な施設賠償責任保険では、利用者の運転ミスによる事故は補償の対象外で、対象になるのは貸付事業者の整備や管理上のミスに起因する事故だ、と書かれています。多くの交通事故は補償の対象外になることが想定される、とまで書いてあります。
だから国は、貸付事業者に対して、借り手の運転ミスを含めた自転車の利用全般に係る保険加入が必要だと求めています。裏を返せば、そこまで手当てしているかどうかは事業者ごとに違います。よく使うシェアサイクルがあるなら、利用規約の補償の項を一度読んでおくと、自分の特約でどこを埋めるべきかが決まります。
なお、貸付事業者にあたるかどうかは有償・無償では決まりません。反復継続して貸しているかどうかで判断されるので、宿泊者に無料で自転車を貸すホテルは対象に入り、友人同士の貸し借りは入りません。
罰則はない。それでも先に確認しておく理由
標準条例に罰則はありません。解説はその理由を、将来的な罰則導入を排除するものではないが、当面はまず加入促進に向けた利用者等の意識向上が重要であることから、現時点では罰則規定までは設けていない、と説明しています。
罰則がないと聞くと後回しにしたくなりますが、条例の罰則と、事故を起こしたときの賠償はまったく別の話です。国土交通省は加入促進のページで、加害者が数千万円もの高額の損害賠償を命じられる判決事例が出ている、と書いています。自転車には自動車の自賠責のような強制保険がないので、賠償は本人に来ます。
財布にも直接効きます。すでに特約が付いているのに気づかず新しく契約すれば、同じ補償に二重の保険料を払い続けることになる。電話一本で確かめられる話です。
見つからなかったとき、どこで入るか
証券をひととおり見ても該当する特約がなければ、そこで初めて新規加入を考えます。選び方は二つに分かれます。
今ある保険に特約を足す方法が、たいていは安く済みます。自動車保険や火災保険の契約中に個人賠償責任特約を追加するもので、契約先に連絡すれば手続きできます。家族も対象になるので、世帯で一つ足せば足ります。
「自転車保険」という名前で売られているパッケージ商品は、賠償の補償に、乗っている本人のけがを補償する傷害保険を組み合わせたものです。解説もこれを選択肢の一つとして挙げています。自分のけがまで備えたいなら、こちらを選ぶ理由があります。インターネットやコンビニでも買えます。
自転車を買う店でも、この話は出ます。小売業者には、購入者に加入の有無を確認して、未加入の人や分からない人に必要性を伝える努力義務があるからです。店頭で聞かれたら、その場で調べる機会だと考えてください。
参考資料
参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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