車をこすった修理代7万円、自動車保険を使うか使わないかはどう判断する?
修理代と、保険を使った場合の3年間の保険料増加分を比べて判断するのが基本で、増加額は契約ごとに異なるため、保険会社に等級ダウン後の見積もりを出してもらってから決めるのが確実です。
目次(15項目)
- 保険を使うと、次の等級と保険料はどう変わるか
- 「3等級ダウン」と「1等級ダウン」で影響の大きさが違う
- 等級が下がらない事故もある
- 修理を頼む前に、写真と複数の見積もりを残しておく
- 修理代と3年間の保険料差を試算してみる
- 相手がいる事故と自損事故では判断の自由度が違う
- 相手がけがをした事故では、損得計算より優先することがある
- 免責金額を先に保険証券で確認する
- 車両保険の型によっては、そもそも補償の対象にならない
- 事故受付と保険金請求は分けて考えられる
- 保険を使った影響は、次の契約更新から反映される
- 迷ったら「等級ダウン後の見積もり」を出してもらう
- 3年以内にもう一度事故を起こすとどうなるか
- 無事故で積み上げてきた割引も、事故がきっかけで失われる
- 判断に迷ったときの相談先
月極駐車場から車を出そうとして、隣の柱に軽くこすってしまった。修理工場に見積もりを頼んだら7万円。さて、自動車保険を使うべきか、それとも自腹で払うべきか。
駐車場での接触、電柱やガードレールへの単独事故。この手のこすり傷で、まず出てくるのがこの迷いです。ただ、修理代の額だけを見て即断はできません。保険を使うと等級が下がり、その後数年は保険料が上がった状態が続くからです。比べるべきなのは、修理代と、これから増える保険料の合計。まずは自分の契約でどのくらい上がるのか、確認する手順から見ていきます。
保険を使うと、次の等級と保険料はどう変わるか
自動車保険には「ノンフリート等級制度」という仕組みがあり、1等級から20等級まで区分されています。契約したばかりの人は6等級からスタートし、1年間事故なく過ごすと翌年は1つ上の等級に進みます。等級が上がるほど保険料の割引率も大きくなる設計です。
事故で保険を使うと、この流れが逆に回ります。下がるのは等級だけではありません。「事故有」という区分の係数に切り替わり、同じ等級でも無事故の契約者より保険料が高く計算されます。この係数がかかり続ける期間が「事故有係数適用期間」で、長さは事故の種類によって変わります。
「3等級ダウン」と「1等級ダウン」で影響の大きさが違う
駐車場での接触や、相手のいない単独事故で車両保険を使った場合、その多くは「3等級ダウン事故」に分類されます。下がる等級は3つ、事故有係数適用期間は3年。この3年は等級が毎年1つずつ戻っていっても事故有の係数がかかったままなので、保険料の下がり方は通常より鈍くなります。
一方、飛び石によるフロントガラスの破損、盗難、いたずら、台風による損害などで車両保険金を受け取った場合は「1等級ダウン事故」です。下がる等級は1つ、事故有係数適用期間も1年で済みます。同じ「保険を使った」でも、翌年以降の負担はここまで違ってくるわけです。自分のケースがどちらに分類されるかは、保険会社に事故を伝えた時点で教えてもらえます。
等級が下がらない事故もある
人身傷害保険や搭乗者傷害保険、弁護士費用特約などを単独で使った場合は「ノーカウント事故」として扱われ、等級はそのまま据え置かれます。翌年も無事故の契約者と同じペースで等級が上がっていきます。
たとえば信号待ち中に追突され、こちらにはまったく過失がない事故。人身傷害保険だけを使って治療費をまかなったなら、等級への影響は基本的にありません。ロードサービスや代車費用特約も、等級には関係しない付帯サービスです。何を使えば等級が動いて、何なら動かないのか。契約時の説明書やしおりで一度たしかめておくと、いざというときに迷わずに済みます。
修理を頼む前に、写真と複数の見積もりを残しておく
まず、保険を使うかどうかを決める前に、傷やへこみの状態を写真で残しておいてください。保険会社に相談するときも、修理工場に見積もりを頼むときも、状況を説明しやすくなります。相手がいる事故なら、警察への届け出も忘れずに。届け出をしていないと、自動車安全運転センターが発行する交通事故証明書が取れず、保険金請求の書類がそろわないことがあります。
修理代は、工場によってはっきり差が出ます。ディーラー、保険会社が紹介する提携工場、街の板金塗装専門店では、部品代も工賃の設定も違うためです。1社だけの見積もりで決めてしまうと、もう少し安く直せたはずのケースを見逃しかねません。時間に余裕があるなら、2〜3社から見積もりを取ってから、保険を使うかどうかの判断に進んでください。
修理代と3年間の保険料差を試算してみる
比べるのは、修理代と、保険を使った場合に3年間で増える保険料の合計です。増加額は契約している保険会社や年齢条件、車種によって幅が出ます。たとえば年間保険料が6万円前後の契約で3等級ダウン事故を1件起こすと、事故有の係数が適用される3年間、保険料が年間1万5,000円から2万5,000円上がる例があります。3年分をまとめれば4万5,000円から7万5,000円の増加です。
この幅に当てはめると、修理代が5万円なら自費で払ったほうが総額は安く収まります。逆に15万円を超えるようなケースでは、保険を使ったほうが手元にお金は残ります。
ただ、ここを一本の数字で書けないのがもどかしいところで、増加額は契約ごとに本当に差が出ます。あくまで目安として読んだうえで、自分の契約でいくら変わるのかは、後で説明する方法で必ず確認してください。
相手がいる事故と自損事故では判断の自由度が違う
電柱にぶつけた、駐車場の壁に接触したといった自損事故なら、修理代と保険料の増加分を比べるだけで判断できます。壊したのは自分の車だけで、賠償する相手がいないためです。
相手の車や体に損害を与えた場合は、事情が変わります。対物賠償や対人賠償の示談交渉を保険会社に任せた時点で、通常は保険を使ったことになり、等級に影響します。賠償を自分で交渉して解決するのは現実的ではなく、少額の物損事故でもない限り、保険を使わずに済ませる選択肢はほとんど残りません。
過失割合が自分にまったくない、いわゆるもらい事故なら話は別です。相手の保険会社が賠償を負担するため、自分の保険を使わなければ等級はそのまま維持されます。示談交渉サービスだけを使いたい場合に等級への影響が出るかどうかは、契約している保険会社に事前に確認しておいてください。
相手がけがをした事故では、損得計算より優先することがある
ここまでは、自分の車だけが壊れた自損事故と、軽い物損事故を想定した話です。相手がけがをしているなら、前提から変わります。
治療費や休業損害、慰謝料といった賠償額は、物損事故とは桁が違ってきます。示談交渉を専門知識なしに進めるのは危険です。等級が下がるのを気にして保険を使うのをためらっていると、対応が遅れて相手との関係が悪化したり、賠償額の算定でこちらが不利になったりします。人身事故が絡むときは、保険料の増加分を覚悟してでも、示談交渉サービスを含めて保険会社に任せてください。
免責金額を先に保険証券で確認する
ここで見落としやすいのが「免責金額」、つまり自己負担の設定です。車両保険にはこれがついていることが多く、契約によっては5万円や10万円といった額が決められています。免責金額を超えた分しか保険金は出ません。修理代がその額を下回っていれば、保険を使う意味そのものがなくなります。
金額は契約時に選んだ内容しだいで、0円から数十万円まで幅があります。保険証券や契約内容のお知らせに書いてあるので、修理代の見積もりが出た時点で一度見ておいてください。
車両保険の型によっては、そもそも補償の対象にならない
車両保険には主に「一般型」と「エコノミー型(車対車+A)」の2つのタイプがあります。どちらの契約かを確かめないまま損得だけを計算すると、話が根本からずれます。
一般型は、相手のいる事故はもちろん、電柱やガードレールにぶつけた、駐車場の壁に接触したといった単独事故による損害も補償の対象です。今回のような「柱にこすった」というケースでも、一般型なら保険金の請求そのものはできます。
エコノミー型は保険料を抑えられる代わりに、補償の範囲が狭くなっています。相手の車との衝突や、当て逃げのように相手が特定できる事故は対象。ただ、単独事故や建物・構築物への衝突は補償の対象外とされていることがほとんどです。契約がエコノミー型なら、「使うか使わないか」で悩む前に確かめることがあります。そもそも保険金が出るのかどうか。自分の契約がどちらの型かは、保険証券の車両保険の欄を見るか、保険会社に問い合わせれば分かります。
事故受付と保険金請求は分けて考えられる
事故が起きたら、保険会社への連絡自体は早めに済ませておきましょう。多くの保険会社では、状況を伝えて相談した段階ではまだ保険金請求が確定しておらず、見積もりを取ったうえで「今回は自費で直す」と決め直すこともできます。
ただし、いったん保険金が支払われると等級への影響は確定します。迷っている間は「請求はまだ保留にしてほしい」と伝えておいてください。対応の細かさは保険会社によって違うので、電話口で確認しながら進めるのが確実です。
保険を使った影響は、次の契約更新から反映される
等級ダウンや事故有係数は、事故が起きた瞬間ではなく、次に契約を更新するタイミングから反映されます。今の契約期間中の保険料が、事故によってさかのぼって変わることはありません。
更新日までどれくらい残っているかで、体感はかなり違ってきます。更新直後に事故を起こしたなら、次の更新までの1年間は今の等級のまま。そこから3年間、事故有の係数がついた状態が続きます。逆に更新が目前の契約なら、保険料アップはすぐそこまで来ています。
迷ったら「等級ダウン後の見積もり」を出してもらう
実際にいくら上がるのかは、契約している保険会社に聞くのが一番早いです。事故有等級になった場合の次年度保険料を試算してもらえます。多くの保険会社がこの依頼に応じていて、電話一本で数字が出てくることがほとんどです。
修理工場の見積もりと並べれば、感覚ではなく実際の金額で比べられます。代理店を通しているなら、代理店経由でも頼めます。担当者には「保険を使った場合と使わなかった場合の差額を知りたい」と伝えれば通じます。
3年以内にもう一度事故を起こすとどうなるか
事故有係数適用期間が残っている間にもう一度3等級ダウン事故を起こすと、期間はそこからさらに3年積み増されます。1年ごとに1年ずつ減っていく仕組みなので、残り2年のところで新たな事故が起きれば、そこからまた3年に戻ります。
短期間に事故が続くと、等級が下がったまま保険料の高い状態が長引きます。一度保険を使ったあとの数年は、小さな傷で二度目を使うかどうかの判断が、いま以上に重くなると考えておいてください。
無事故で積み上げてきた割引も、事故がきっかけで失われる
等級は、契約年数を重ねて無事故で維持するほど保険料の割引率が大きくなる仕組みです。20等級近くまで到達していた契約者が事故で3等級下がると、割引率が縮むだけでなく、元の等級に戻るまでに数年の無事故期間が必要になります。
長年かけて積み上げた割引を、目先の修理代を惜しんで手放す。それが惜しいと感じるなら、自費で直すほうに傾く理由になります。逆に契約したばかりで等級がまだ低いなら、事故有係数による影響の絶対額もそこまで大きくなりません。今の等級が高いか低いかも、判断材料に加えてください。
等級は無事故で1年過ごすごとに1つ戻るので、3等級ダウンを取り返すには最低でも3年。事故有係数適用期間もほぼ同じ3年で終わるため、保険料が事故前の水準に近づくのは3年後だと見ておいてください。
判断に迷ったときの相談先
保険会社のコールセンターでは、事故受付だけでなく損得の相談にも応じてもらえます。契約している保険会社や代理店にまず連絡し、見積もりが出そろった段階で相談するのが一番早い方法です。
契約内容の説明でわかりにくい点があれば、日本損害保険協会の相談窓口でも一般的な仕組みを聞けます。ここは焦らなくていい場面です。修理代の見積もりと、等級ダウン後の保険料。この2つの数字がそろってから決めても、遅くはありません。
参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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