冬の朝、エンジンをかけてから何分か待つべきか。国の目安は、現在の乗用車では基本的に暖機運転は不要で、エンジンをかけたらすぐに出発するというものです。警察庁・経済産業省・国土交通省・環境省でつくるエコドライブ普及連絡会の「エコドライブ10のすすめ」に書かれています。例外として挙げられているのは「−20℃程度の極寒冷地など特別な状況」で、それ以外は走りながら暖めるウォームアップ走行で充分としています。
もう一つ知っておきたいのは、止めたままエンジンをかけて車内を暖めて待つことの扱いです。東京都は条例で駐車・停車するときのエンジン停止を運転者に義務づけ、愛知県は条例でアイドリングを原則禁止にしています。愛知県は「駐停車中の車内の冷・暖房のためのアイドリング」を、禁止される例として名指ししています。
この記事では、国の資料に書かれている暖機運転の扱いと、冬にやりがちな「エンジンをかけて待つ」が条例でどう扱われるかを、公式の案内で確かめます。
国の「エコドライブ10のすすめ」に書かれていること
エコドライブ10のすすめは、エコドライブ普及連絡会が平成15年度に策定し、数回の見直しを経たものです。国土交通省の2024年10月31日の発表資料によると、最終改訂は令和2年度です。連絡会は11月を「エコドライブ推進月間」としています。
暖機運転に触れているのは、6番目の「ムダなアイドリングはやめよう」です。経済産業省が公表している全文には、次のように書かれています。
待ち合わせや荷物の積み下ろしなどによる駐停車の際は、アイドリングはやめましょう(※1)。10分間のアイドリング(エアコンOFFの場合)で、130cc程度の燃料を消費します。また、現在の乗用車では基本的に暖機運転は不要です(※2)。エンジンをかけたらすぐに出発しましょう。
注の※2はこうです。
-20℃程度の極寒冷地など特別な状況を除き、走りながら暖めるウォームアップ走行で充分です。
同じ文面は、鳥取県警察の「エコドライブ10のすすめ」の解説ページにも載っています。
つまり、国の資料が勧めているのは「止まったまま暖める」ではなく「走りながら暖める」です。何分待てばよいかという数字は書かれていません。
「−20℃程度の極寒冷地など」をどう読むか
例外は「−20℃程度の極寒冷地など特別な状況」です。「など」とあるので、気温だけで線を引いたものではありません。ただ、どの地域が当たるか、どの車種が当たるかは書かれていません。寒冷地で車を使う人は、車の取扱説明書に寒いときの始動や走り出しについての指示があるかを確かめます。
発進は穏やかに
10のすすめの2番目は、ふんわりアクセル「eスタート」です。発進するときは穏やかにアクセルを踏み、最初の5秒で時速20km程度が目安で、やさしい発進を心がけるだけで10%程度燃費が改善するとしています。冬の朝に限った話ではありませんが、エンジンをかけてすぐ出発するなら、走り出しはこの目安で穏やかにします。
10分間のアイドリングで130cc
10のすすめは、10分間のアイドリング(エアコンOFFの場合)で130cc程度の燃料を使うとしています。毎朝10分エンジンをかけてから出かけると、それだけで1日130cc程度を使う計算です。これはエアコンOFFの場合の数字で、エアコンをつけた状態での数字は書かれていません。
止めたまま車内を暖めて待つのは、条例で禁じている地域がある
暖機運転とは別に、冬にありがちなのが、止めたままエンジンをかけ、暖房で車内を暖めながら待つ使い方です。これは駐車・停車中のアイドリングです。
東京都
東京都は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(環境確保条例)で、アイドリング・ストップを義務づけています。東京都環境局の案内によると、内容は次のとおりです。
- 運転者:自動車等を駐車、または停車するときは、エンジンを停止する義務がある。原動機付自転車も対象
- 事業者:管理する自動車等の運転者にアイドリング・ストップを守らせるための適切な措置をとる義務がある(研修、朝礼での確認など)
- 20台以上の駐車場の設置者・管理者:看板の掲示などで利用者に周知する義務がある
対象から外れるのは、信号待ちなど道路交通法の規定で止まる場合、交通の混雑で止まる場合、人の乗り降りのために止まる場合、冷凍車・医療用車・清掃車などがエンジンを動力として使う場合、緊急自動車が用務に使っている場合などです。東京都環境局のよくあるご質問は、これに加えて「やむを得ないと認められる場合」を挙げ、例として次の三つを示しています。
- 急病人への措置や、火災・震災など緊急を要する事態に対応するために停止する場合
- 病弱者、障害者等が、体を健全な状態に保つ温度設定を必要とするが、その自動車以外に休養室等の確保が難しい場合
- 熱中症で命の危険が生じるおそれがある中で、運転者が自動車から離れることができないなどやむを得ない事情がある場合(必要な時間に限り、近隣住民等に十分配慮した場所で)
条例に違反した場合は必要な措置をとるよう勧告され、勧告に従わないときは違反者の氏名などが公表されます。都は条例に基づく「自動車公害監察員(自動車Gメン)」が路上でアイドリング・ストップの指導をしているとしています。対象地域は島しょを含む都内です。
江東区は、冬季を中心にアイドリング・ストップの啓発をしていると案内しています。東京都も11月から1月を「冬季大気汚染対策」の推進期間とし、冬は大気がよどみやすく窒素酸化物などの濃度が高くなるとして、不要なアイドリングをしないエコドライブを呼びかけています。
愛知県
愛知県は「県民の生活環境の保全等に関する条例」第77条で、平成15年10月からアイドリングを原則禁止にしています。名古屋市内は、名古屋市の条例で原則禁止です。
愛知県の案内は、エンジンを止めるべき例として次の四つを挙げています。
- 買い物などで自動車から離れる場合
- 休憩、電話のために駐停車する場合
- 駐停車中の車内の冷・暖房のためのアイドリング
- 荷待ち、客待ち
禁止されない例は、緊急車両の緊急用務、信号待ちや渋滞での停車、冷凍・冷蔵車の冷凍・冷蔵機能の使用、人の乗り降りのための停車です。車内を暖めるためというのは、例外には入っていません。
ほかの地域
アイドリングの決まりは、都道府県や市の条例ごとに違います。この記事で確かめたのは東京都と愛知県(名古屋市は市の条例があるという記載まで)です。住んでいる地域の決まりは、都道府県や市の環境部局の案内で確かめてください。
暖房とエアコン(A/C)のスイッチ
10のすすめの5番目「エアコンの使用は適切に」は、車のエアコン(A/C)を「車内を冷却・除湿する機能」と説明し、暖房のみ必要なときはエアコンスイッチをOFFにしましょうとしています。車内の温度設定が外気と同じ25℃でも、A/CをONにしたままだと12%程度燃費が悪化するという例も載っています。
信号待ちで自分でエンジンを止めるのは別の話
同じ6番目の注(※1)は、交差点で自分でエンジンを止める手動アイドリングストップについて、安全上の問題があるので注意するよう書いています。手動で止めている間に何度かブレーキを踏むとブレーキの効きが悪くなる、慣れないと誤動作や発進の遅れが起きる、エアバッグなどの安全装置や方向指示器が作動しない、といった理由です。自動アイドリングストップ機能が付いた車は問題ないとしています。駐車・停車中にエンジンを止めることと、走行中の信号待ちで自分で止めることは分けて考えます。
冬の朝の出発の順番
公式の資料に書かれていることを、朝の手順に並べるとこうなります。
- エンジンをかけたら、そのまま出発する(−20℃程度の極寒冷地など特別な状況は除く)
- 走り出しは穏やかに(最初の5秒で時速20km程度が目安)
- 暖房だけが必要なら、A/CはOFF
- 人を待つ、荷物を積む、といった駐停車の間はエンジンを止める。東京都や愛知県では条例の義務・原則禁止に当たる
雪で車が埋もれているときや、大雪で立ち往生したときの扱いは、別の記事にまとめています。
この記事で確認できなかったこと
2026年11月5日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 自宅の敷地内や月極駐車場など、私有地でエンジンをかけたまま待つ場合に、東京都や愛知県の条例がどこまで及ぶか。案内には場所の区別が書かれていません。
- フロントガラスが凍っている、曇っているときに、視界を確保するまでエンジンをかけておくことの扱い。10のすすめにも条例の案内にも、窓の凍結や曇りについての記述はありませんでした。
- ハイブリッド車や電気自動車、ディーゼル車についての暖機の扱い。10のすすめの記述は「現在の乗用車」です。
- −20℃程度の極寒冷地で、どのくらい暖めればよいかという目安。
- 東京都・愛知県以外の都道府県や市の条例の内容と、罰則の有無。
参考資料
- エコドライブ10のすすめ(全文) — 6「ムダなアイドリングはやめよう」(暖機運転は基本的に不要、−20℃程度の極寒冷地などを除く、130cc)、2「eスタート」、5「エアコンの使用は適切に」
- 経済産業省 11月はエコドライブ推進月間です!!(2023年10月31日) — エコドライブ普及連絡会の構成、策定と見直しの経緯
- 国土交通省 11月はエコドライブ推進月間です!!(2024年10月31日) — 平成15年度策定、最終改訂は令和2年度
- 鳥取県警察 「エコドライブ10のすすめ」で環境に優しい運転を — 同じ文面と注記
- 東京都環境局 アイドリング・ストップについて — 運転者・事業者・駐車場の義務、除外される場合、勧告と公表
- 東京都環境局 アイドリング よくあるご質問 — 例外とやむを得ない場合の例
- 東京都環境局 冬季大気汚染対策について — 11月〜1月の推進期間、冬は大気がよどみやすい
- 愛知県 アイドリング・ストップについて — 条例第77条、車内の冷・暖房のためのアイドリングは禁止される例
- 練馬区 アイドリング・ストップについて — 東京都の条例の要約
- 江東区 アイドリング・ストップについて — 冬季を中心にした啓発、自動車Gメン