第一志望の合格発表より先に、併願校の入学金の納付期限が来ることがあります。このとき、募集要項の「納付された入学料は返還しません」という一行だけを見て、数十万円を捨てる前提で決めてしまう必要はありません。文部科学省は令和7年6月26日付の通知で、私立大学に対して入学料の納付期限を後ろにずらしたり、一部を返還したりといった負担軽減を検討するよう求めています。取組の内容は募集要項ではなく大学のホームページ側に書かれていることがあるので、見る場所は二か所です。それでも分からなければ、その大学の入試課に電話で聞くのがいちばん早く決着します。
募集要項の「返還しない」は、確認の終点ではない
入学手続要項に「納付された入学料はいかなる理由があっても返還しません」と書かれている大学は、いまでも珍しくありません。ただ、その一文があるからといって、その大学が入学金について何も手当てしていないとは限りません。
文部科学省が公開している考え方のページには、募集要項に入学料を返還しない旨の記載がある場合であっても、別途ホームページ等においてその旨を公表することなどによって対応することが可能だ、という趣旨の答えが載っています(同ページの問4)。募集要項の印刷物は前年の文面がそのまま残ることがあり、大学が新しく決めた取扱いは別の場所に出す、という運用が想定されているわけです。
つまり、募集要項の文面と実際の扱いがずれていることを、制度の側があらかじめ見込んでいます。だとすれば、募集要項を読んで終わりにはできません。もう一か所、大学のホームページを確かめます。
国が私立大学に求めたのは、入学料をいつ・いくら払わせるかの見直し
もとになっているのは、令和7年6月26日付の文部科学省高等教育局私学部長通知「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」です。文部科学省は、この通知について考え方を示したページを別に用意していて、令和8年3月13日に内容を更新しています。
そこでは令和8年度大学入学者選抜に向けて検討のうえ、必要な対応を行うよう各大学にお願いする、と説明しています。法律で一律に義務づけたわけではなく、実施するかどうかは大学が自分で決めます。だから扱いが大学ごとに違ってきます。
もともとの問題は、第一志望の結果が出る前に併願校へ入学金を納めざるを得ないことです。納めた分が戻らなければ、受験校の数を絞るしかない家庭も出てきます。
挙げられている対応は、納付を遅らせる型と、返す型
ページに並ぶ対応を、受験生から見た意味に置き換えると次のようになります。どれも制度として決まった選択肢ではなく、文部科学省が「こういう対応が想定される」として挙げているものです。
| 型 | 挙げられている対応 | 受験生から見た意味 |
|---|---|---|
| 納付を遅らせる | 入学料の納付期限を後ろ倒しする/納付時期を複数回設定する/納付を猶予する | 第一志望の発表を待ってから判断できる余地が生まれる |
| 分けて払う | 合格者の決定発表後に入学料の一部を納付し、年度内など一定の時期までに残余の額を納付する | 発表前に出す金額そのものが小さくなる |
| 返す | 入学料の全部または一部を返還する/いくつかの時期に応じて返還額に差を設ける | 納めたあとに辞退しても戻る場合がある |
「時期に応じて返還額に差を設ける」は、書かれ方に気をつけて読んでください。早く辞退を伝えれば多く戻り、遅いと戻らない、という設計がありえます。返還があると分かった時点で、いつまでに何を伝えれば何割戻るのかまで踏み込んで確認します。
自分の受ける大学の扱いは、二か所を見ないと分からない
順番はこうなります。
- 入学手続要項・募集要項の「入学手続」「納付金」の項を読む。納付期限、納付回数、返還の有無がここに書かれていれば、それが一次の答えです。
- 大学のホームページで入試情報のページを開き、入学手続や学費の案内を見る。募集要項に無い取扱いが、ここに単独で出ていることがあります。「入学しない場合の入学料の取扱い」といった見出しが手がかりです。
- それでも判断がつかないときは入試課(入学課・アドミッションセンター)に電話します。
確認するのは合格発表の後ではなく、出願する前です。納付期限は合格発表から1週間程度しかない大学もあり、発表後に調べ始めると、読む時間と振込の時間を同時に失います。出願する大学が決まった段階で、各校の納付期限を一枚の紙に書き出しておくと、どの併願が現実に間に合わないかが先に見えます。
この通知が向いていたのは令和8年度入試だった
正確に書いておきます。文部科学省が示した考え方は、令和8年度大学入学者選抜に向けた検討を求めるものです。令和9年度入試について追加の通知が出ているかどうかは、この記事では確認できていません。
したがって「去年から国が言っているのだから、今年もどの大学もやっているはずだ」とは考えないでください。一度設けた取扱いを続ける大学もあれば、内容を変える大学も、そもそも設けていない大学もあります。判断の単位はあくまで大学ごと、入試方式ごとです。
対象は私立大学。入学料以外のお金はこの通知の外
当てはまる人は、私立大学を併願していて、第一志望の結果が出る前に入学金の納付期限が来る受験生と保護者です。学校推薦型選抜や総合型選抜で先に合否が出る場合にも、同じ確認が要ります。
この通知から答えが出ない人は次のとおりです。
- 国公立大学の入学料について知りたい場合。この通知は私学部長から私立大学に向けて出されたもので、国公立の扱いは読み取れません。
- 授業料・施設設備費・諸会費など、入学料以外の納付金の返還について知りたい場合。今回確認したページは入学料についての考え方を示したもので、それ以外の納付金には触れていません。
- 専門学校・短期大学など、大学以外の学校種について知りたい場合。通知の表題は私立大学です。
入学金以外のお金については、各大学の入学手続要項に「入学辞退の場合の取扱い」がまとまっていることが多いので、納付前にその欄を読んでください。
入試課に電話するときは、三つだけ聞く
窓口は入試期間中ほど混みます。聞くことを先に決めておくと1〜2分で終わります。
- 「入学金の納付期限を延ばす扱い、または分けて納める扱いはありますか」
- 「入学を辞退した場合、入学金の返還はありますか。あるなら、いつまでに何を提出すればいくら戻りますか」
- 「その扱いはどこに書かれていますか」
3番目を必ず聞いてください。電話口の説明だけを頼りに振込を決めるのは避けたいので、書かれている場所(募集要項の何ページ、ホームページのどのページ)を教えてもらい、自分の目で確認します。あわせて、話した日付と担当者名をメモに残しておくと、後で食い違いが出たときの手がかりになります。
確かめていないこと
- 通知の本文(PDF)は開けていません。確認できたのは、文部科学省が公開している考え方のページの記述です。
- 実際に納付期限の後ろ倒しや返還を実施している大学の名前は確認していません。一覧の形で公表されている資料も見つかりませんでした。
- 令和9年度入試に向けた追加の通知の有無は確認していません。
- 授業料など入学料以外の納付金の返還、および国公立大学の扱いは確認していません。
参考資料
- 文部科学省「『私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について』(令和7年6月26日付文部科学省高等教育局私学部長通知)の考え方等について」— 入学料の納付・返還について想定される対応が問答形式で示されています
- 文部科学省「入学者選抜実施要項」— 令和9年度大学入学者選抜実施要項とQ&AがPDFで掲載されています