賃貸の退去立会いに大家や管理会社が来ない。鍵だけ置いて帰っていい?
立会いに大家・管理会社が来ない場合でも、室内の現状を写真と動画で記録し、鍵は配達証明郵便で送る方法が安全です。立会いは法律上の義務ではなく、敷金精算は引き渡し後でも可能です。
目次(16項目)
立会いに来ないと言われたとき、まずやること
退去日が決まっていて、管理会社や大家から「当日は行けない」「立会いはしない」と連絡が来ると、どう動けばいいか戸惑います。最初にやってほしいのは次の2点です。
- 立会いができない理由と、鍵をどう扱うかをメールまたはLINEで文字で確認する
- 退去後の連絡先と、敷金精算の進め方を聞いておく
「ポストに入れて帰ってください」「鍵を郵送してください」と指示があったら、口頭ではなく必ず文字で残してください。後から『鍵を受け取っていない』『立会いを希望していた』と言われるリスクを減らせます。
立会いそのものは、宅地建物取引業法や民法で義務付けられた手続きではありません。慣習的に行われているだけです。立会いがなくても退去は成立しますが、後で修繕費の請求が来たときに『退去時の状態』を立証する手段が必要になります。
室内の状態を全部記録する
立会いがない退去では、室内の状態を借主自身で記録しておくことが最重要です。スマホで撮影できる範囲で十分なので、次の手順で残してください。
写真で撮るべき場所
- 各部屋の四隅(壁紙の状態)
- 床全体(フローリングのキズや畳の擦れ)
- キッチン(コンロ周り・換気扇・シンク内部)
- 浴室(壁・床・排水溝・カビ)
- トイレ(便器内部・床・壁)
- 玄関と廊下
- ベランダ
- 押入れ・クローゼットの内側
- ドア・建具のキズや穴
- エアコンや照明など備え付け設備の状態
撮影日時が記録されるよう、スマホの位置情報をオンにして撮ると後から日付の証明がしやすくなります。
動画で1〜2分の室内ツアー
写真に加えて、玄関から各部屋を歩きながら1〜2分の動画を撮っておくと、後から『写真に写っていなかった』と言われるのを防げます。撮影前に「20XX年X月X日 退去日の室内記録です」と声で日付を入れておくと、編集していない証拠になります。
入居時の写真と比べる
入居時に撮った写真や入居時チェックリストが手元にあれば、退去時の写真と並べて確認してください。退去時にあるキズが、入居時すでにあったものなら、原則として借主負担にはなりません。
鍵の返却方法を確実にする
退去日に立会いがない場合、鍵の返却方法は3つに分かれます。
1. 配達証明付きの郵送(おすすめ)
最も証拠が残りやすい方法です。鍵を厚紙で挟んで補強した封筒に入れ、書留または配達証明付き郵便で送ります。
- 配達証明(一般書留+配達証明)の費用は約750円
- 配達証明書は郵便受け取り後に届く小さなはがき
- 万一の紛失時も補償対象になる
退去日当日の消印が残る郵便局窓口で発送し、消印付きの控えを保管してください。
2. 宅配便(メルカリ便などは不可)
鍵を入れて宅配便で送ることもできますが、現金や貴重品扱いのため、ヤマト便や日本郵便のレターパックプラスを利用します。追跡番号と受取サインが残るため、こちらでも記録は残ります。費用は600〜1,000円程度です。
3. ポスト投函(指示があった場合のみ)
「ポストに入れて帰ってください」と文字で指示があった場合のみ、管理会社のポストに直接投函します。このとき、
- 鍵を入れた封筒に『〇月〇日 退去 ◯号室 鍵返却』と書く
- 投函直前にポストの前で鍵入り封筒の写真を撮る
- 投函した時刻と場所を記録する
特殊な事情がない限り、ポスト投函よりも配達証明郵便のほうが安全です。
原状回復で不利にならないために
立会いをしない退去でもっとも揉めやすいのが、後から送られてくる原状回復費の明細です。国土交通省のガイドラインに沿って判断材料を整理しておくと、不当な請求に気付きやすくなります。
原則として借主負担になるもの
- 借主の過失や故意によるキズ・へこみ・破損
- たばこのヤニ汚れ(壁紙の張り替え)
- ペット飼育による傷・臭い(ペット可物件でも常識の範囲を超えるもの)
- 家具を引きずってできた深いキズ
- 結露を放置したことによるカビ・腐食
原則として貸主負担になるもの
- 日光による壁紙の色あせ
- 家具の設置跡(凹みなど自然な範囲)
- 経年劣化による畳・襖の傷み
- 給湯器・エアコンなど設備の寿命による故障
- 通常使用による床のすり減り
明細書に「壁紙全面張替え」「畳全部交換」と書かれていても、経年劣化分は借主負担になりません。築年数や入居年数に応じて減額する考え方が一般的です。
敷金精算の流れと期限
立会いがない退去でも、敷金精算は別途進みます。一般的な流れは次のとおりです。
- 退去(鍵返却)から1〜2週間で業者が現場確認
- 退去から3〜4週間以内に明細書(精算書)が送られてくる
- 借主が内容を確認し、不明点を質問
- 合意した金額が指定口座に振り込まれる
退去から1か月以上経っても明細書が届かない場合は、まず電話やメールで進捗を確認してください。それでも返答がない場合は、内容証明郵便で『敷金返還請求』を送ることで督促の証拠が残ります。
民法上、敷金は退去後『相当期間内』に返還する必要があるとされており、目安は1〜2か月以内です。
揉めたときの相談先
明細書に納得できない、追加で高額請求された、敷金が返ってこないといった場合は、次の窓口に相談できます。
- 消費生活センター(局番なし188): 賃貸トラブル全般の相談窓口。無料
- 各自治体の住宅相談窓口: 都道府県や政令市にある建築・宅建相談
- 法テラス(0570-078374): 収入条件により無料の弁護士相談
- 少額訴訟(60万円以下): 簡易裁判所で1回の審理で判決まで進む
少額訴訟は、印紙代と切手代を合わせて1万円前後で利用できます。証拠として写真・動画・契約書・明細書がそろっていれば、本人だけで進めることも可能です。
退去前の1週間でやっておきたいこと
立会いがない退去でも、後でトラブルになりにくいよう次の準備をしておくと安心です。
- 入居時のチェックリストや写真を探しておく
- 契約書のクリーニング条項・原状回復条項を読み返す
- 退去通知(解約通知)の控えを保管
- 引き渡し日を文字で(メール・LINE)確認しておく
- 退去日の翌日以降に確認連絡が来ない場合の連絡先を聞いておく
特に契約書の『特約事項』に書かれている部分は、退去費用の判断に直結します。読み返してメモを作っておくと、後で明細書を確認するときの照合が早くなります。
よくある誤解
- 『立会いをしないと敷金は返ってこない』ではない: 立会いと敷金返還は別の手続き
- 『鍵を返せば終わり』ではない: 鍵返却後に明細書のやり取りが続く
- 『契約書に書いてあれば全部借主負担』ではない: 不当な特約はガイドラインや判例で無効になる場合がある
- 『相手が連絡してこなければ請求はない』ではない: 数か月後に高額請求が届くケースもある
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参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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