亡くなった親の戸籍を集める。広域交付で最寄りの窓口が使える分と、本籍地に請求が残る分

結論

広域交付で最寄りの窓口が使えるのは、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の分です。戸籍全部事項証明書だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍謄本も頼めます。外れるのはコンピュータ化されていない戸籍、一部事項証明書・個人事項証明書、戸籍の附票、そして兄弟姉妹の戸籍です。行く前に束を「窓口」と「郵送」に分けます。

どうする?編集部 · · 読了 約12分
目次(12項目)
  1. 最寄りの窓口で片づくのは、四つがそろったときだけ
  2. 出かける前の10分で、束を二つに割る
  3. 直系の線は、自分から上と下にしか伸びない
  4. 遡るほど、窓口から外れていく
  5. 身分証は「顔写真付き」でないと入口が開かない
  6. 当日もらえないことがある
  7. 平日が空かないなら、半日休むか、全部郵送にするか
  8. 残った分は郵送に回す。投函から2週間
  9. 届いた戸籍の、どこを見れば次の請求先がわかるか
  10. 集め終わったら、束のまま持ち歩かない
  11. 原本は返ってくる。だから何通取るかがここで決まる
  12. 今日やること

最寄りの窓口で片づくのは、四つがそろったときだけ

本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍を請求できる広域交付は、戸籍法の改正で令和6年3月1日に始まりました。本籍が遠方にあっても、住まいや勤め先の近くの窓口でまとめて頼める仕組みです。

ただ、相続で必要になる戸籍の束が、これで1か所そろうとは限りません。窓口で完結するのは、次の四つが全部そろったときです。

  1. 欲しい戸籍が、自分から見て本人・配偶者・直系尊属(父母、祖父母など)・直系卑属(子、孫など)のいずれかのもの
  2. その戸籍がコンピュータ化されている
  3. 欲しいのが全部事項証明書(いわゆる謄本)である
  4. 本人が窓口へ出向き、顔写真付きの身分証を提示できる

一つでも欠けた分は本籍地へ回ります。ですから最初の作業は、窓口へ行くことではありません。要る戸籍を紙に書き出して、窓口で頼む分と郵送に回す分に分けるところからです。

出かける前の10分で、束を二つに割る

今日のうちにできるのは三つです。

  • 財布の中の身分証を見る。運転免許証、マイナンバーカード、パスポートのいずれかがあるか
  • 要る戸籍を書き出し、自分から見た続柄を横に書く。直系の上下から外れるものに印をつける
  • 本籍地の市区町村の開庁日を調べる。大阪市は、本籍地が閉庁していると発行の可否等の確認ができないため広域交付はできない、と案内しています

三つ目は見落とされがちです。土日に開いている窓口へ持ち込んでも、相手方の役所が閉まっていれば戸籍は出てきません。広域交付は本籍地の市区町村に確認を取ってから出す仕組みなので、こちらの窓口だけが開いていても動きません。

直系の線は、自分から上と下にしか伸びない

法務省が挙げているのは本人、配偶者、直系尊属、直系卑属の四つです。この列挙に兄弟姉妹はありません。大阪市も、戸籍証明書を請求できる人を「本人、同一戸籍(配偶者等)の方、直系尊属(父母や祖父母)または直系卑属(子や孫)」と並べていて、横にも斜めにも枠は広がっていません。

ここが実務でいちばん詰まるところです。亡くなった方に子も親もいない場合、相続人になるのは兄弟姉妹です。そのとき必要になる戸籍の多くが、広域交付の枠の外に出ます。

代理も効きません。横浜市と大阪市は、委任状による代理人請求も、後見人などの法定代理人による請求もできないと書いています。仕事を休めないので配偶者に頼む、といった段取りは組めません。

もう一つ、直系だからといって手ぶらで通るわけでもありません。大阪市は郵送請求の添付書類として、「直系尊属(父・母等)、直系卑属(子・孫)の戸籍謄抄本を請求する場合で、請求者の本籍が大阪市内にないとき等、筆頭者との関係が確認できない場合は、請求者の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)などの関係がわかる書類の添付が必要となります」としています。結婚して親の戸籍を抜けた人が、実家の本籍地へ親の戸籍を頼む場面がまさにこれです。その市区町村の手元には、あなたが子であることを示す記録がありません。自分の現在の戸籍謄本を1通、先に用意しておくと、封筒に入れる段になって止まらずに済みます。

遡るほど、窓口から外れていく

相続では、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍が要ります。神戸市は「ほとんどの場合、出生から死亡までの戸籍はひとつではなく複数にまたがっています」と書いていて、これは死亡時の戸籍を1通取れば済む話ではない、という意味です。

そして古いものほど窓口から外れます。法務省は「コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍を除きます」とし、一部事項証明書と個人事項証明書は請求できないとしています。窓口で出てくるのは全部事項証明書だけで、必要な人の欄だけを抜いた抄本は頼めません。

もう一つ外れるのが戸籍の附票の写しです。大阪市と名古屋市はどちらも対象外だと明記しています。附票を求められる提出先があるなら、その分は最初から本籍地への請求として数えておいてください。

処理にかかる時間も違います。大阪市は「特に、過去の除籍謄本や改製原戸籍は、交付までに長時間かかる状況です」としています。新しいほうの戸籍はその場で出て、古いほうが残る。そういう出方になると見込んでおくと、窓口で落胆せずに済みます。

手数料は、戸籍全部事項証明書が1通450円、除籍全部事項証明書・除籍謄本・改製原戸籍謄本が1通750円です。横浜市と名古屋市はいずれもこの額を案内しています。額は各市区町村が定めるものなので、自分の行く窓口の案内で一度見ておいてください。

身分証は「顔写真付き」でないと入口が開かない

法務省は広域交付の本人確認について、運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなどの顔写真付きの身分証を挙げています。横浜市は「有効期限内の運転免許証・パスポート・マイナンバーカード等、官公署が発行した顔写真付き証明書」とし、「健康保険証、年金手帳などの本人確認資料では請求できません」と付け加えています。

紛らわしいのは、戸籍の窓口の一般ルールとは条件が違うことです。法務省は交付請求時の本人確認について、運転免許証などは1枚で足り、資格確認書や年金証書、印鑑登録証明書、写真付き学生証などは2枚以上の提示が必要と示しています。この2枚ルールは広域交付には及びません。「2枚あれば大丈夫と書いてあった」と持ち込むと、そこで止まります。

当日もらえないことがある

名古屋市は「請求から交付までに長時間お待たせする場合や、当日交付できない場合があります」としています。横浜市も、証明書の数量や窓口の混雑状況によっては後日の渡しになることがあると書いています。

厄介なのは、後日交付になったときの受け取りです。大阪市は、請求者本人が再度来庁する必要があるとしています。代理人が使えない制度なので、家族に取りに行ってもらう逃げ道はありません。窓口へ行く日は、半日を見ておくほうが無難です。昼休みに寄って済ませる前提では組まないでください。

窓口では、はじめに用件の形を伝えると話が早く進みます。「相続の手続きで、父の出生から死亡までの戸籍が要ります。ここで出せる分と、本籍地に請求することになる分を分けてもらえますか」。この頼み方だと、出せない分についても、コンピュータ化されていないのか、本籍地が閉庁しているのか、その場で切り分けてもらえます。理由がわかれば、次に平日また来るのか、封筒を用意するのかが決まります。

平日が空かないなら、半日休むか、全部郵送にするか

土日開庁の窓口があるから週末に片づく、とは考えないでください。この記事の前半で見たとおり、本籍地が閉庁していれば広域交付は動きません。全国の市区町村の多くが土日は閉まっているので、広域交付は事実上、平日の制度です。

現実的な選択肢は二つしかありません。平日の午前を半日空けて窓口へ行くか、広域交付を使わずに全部を郵送請求で通すかです。郵送に振り切ると往復の日数はかかりますが、平日に動く必要がなくなり、顔写真付きの身分証も要らなくなります。「半休が取れるかどうか」を先に決めると、以降の段取りが一本に決まります。

残った分は郵送に回す。投函から2週間

窓口で外れた分は、本籍地の市区町村へ郵送で請求します。横浜市が挙げている同封物は、郵送用の請求書、住所が記載された本人確認書類の写し、代理人なら委任状、第三者なら請求の権限が確認できる資料、手数料、返信用封筒の六つです。

手数料は定額小為替で送ります。横浜市は「指定受取人」の欄を空欄のまま送るよう求め、有効期間は発行の日から6か月、残りの有効期間が一週間程度あるものを送ってほしいとしています。金額は「お釣りが出ないように、手数料と同額」です。

見落とされやすいのが小為替そのものの値段です。ゆうちょ銀行の発行手数料は1枚につき200円で、額面にかかわらず同額です。額面は50円から1,000円まで12種類あり、450円券と750円券がそのまま用意されています。除籍謄本1通の750円なら750円券1枚、手数料は200円で足ります。同じ750円を500円券と250円券に割ると400円、50円券15枚なら3,000円かかります。券種は大きいものから組んでください。

総額の見当もつけておきます。仮に戸籍謄本1通と、除籍謄本・改製原戸籍謄本を合わせて3通だとすると、450円+750円×3で2,700円です。この2,700円をお釣りが出ないように組むと、1,000円券2枚・500円券1枚・200円券1枚の計4枚になり、発行手数料が800円上乗せされます。証明書の代金だけを数えていると、この800円が抜け落ちます。実際の通数は人によって違うので、下の電話で確定させます。

かかる日数は、横浜市が「投函してから証明書がお手元に届くまで、通常2週間程度」としています。ここで効いてくるのが、戸籍が複数にまたがるという先ほどの話です。届いた戸籍を読んで、その一つ前の本籍地を知り、そこへまた出す。この往復が繰り返されます。

投函日からの日数起きること
0日目本籍地Aへ投函
14日目ごろ戸籍が届く。前の本籍地Bが判明する
15日目本籍地Bへ投函
29日目ごろ戸籍が届く。さらに前の本籍地Cが判明する

本籍地が3か所にまたがれば、これだけで6週間前後です。窓口で取れる分を先に片づけて、郵送に回す分だけを最初の1通に絞ることの意味は、この往復の回数を減らせるところにあります。

届いた戸籍の、どこを見れば次の請求先がわかるか

上の表は、届いた戸籍から「前の本籍地」を読めることを前提にしています。ここが遡り作業でいちばん詰まる場所なので、見る順番を決めておきます。神戸市も「戸籍の記載から前の戸籍を調べ、出生時点までさかのぼって戸籍を請求していく」と説明しています。出発点は死亡時の戸籍で、そこから出生に向かって一つずつ戻ります。

戸籍には、その戸籍そのものの履歴を書く欄と、一人ひとりの出来事を書く欄があります。名古屋市は前者を戸籍事項欄と呼び、「その戸籍の編成や消除、改製、氏の変更などに係わる事項が記載されます」と説明しています。後者が身分事項欄で、出生・婚姻・死亡などが入ります。次の請求先は、この二つのどちらかに書かれています。

婚姻や養子縁組で新しい戸籍が作られた場合は、亡くなった方の身分事項欄の婚姻の記載を見ます。そこに「従前戸籍」という項目があります。名古屋市は「従前戸籍とは、この戸籍の前に入っていた戸籍のことです」と説明していて、初婚同士の婚姻なら、親の本籍とその筆頭者の氏名が入っています。この本籍地と筆頭者が、そのまま次の請求先です。

本籍を移していた場合は、戸籍事項欄に「転籍」の記載と、移す前の本籍が書かれています。移す前の市区町村へ請求します。

戸籍の様式が変わった場合は、戸籍事項欄に「改製」の記載があります。書き換える前の戸籍が改製原戸籍で、これは本籍地が動いたわけではないので、同じ市区町村に「改製原戸籍謄本もください」と足して頼みます。よく出てくる改製は二つです。東京都北区は、昭和32年の法務省令による改製で戸籍の単位が「家」から「夫婦と同氏の子」へ変わり、平成6年の法務省令による改製で戸籍をコンピュータで記録できるようになった、と説明しています。前者の書き換え前が昭和改製原戸籍、後者が平成改製原戸籍です。亡くなった方の生まれた年によっては、この2通が両方要ります。

読み取った本籍地と筆頭者を書き出したら、そこへ電話をかけます。伝える文言は法務局が示しています。「相続手続に必要なため、被相続人の出生から亡くなるまでの連続した戸除籍謄本が必要であることをお伝えください」。この一言で、担当者が手元の記録を追って、そこに何通あるかを教えてくれます。同じ電話で、コンピュータ化されていない戸籍が混じっていないかも聞いておきます。混じっていれば、その分は広域交付の窓口へ持ち込んでも出てきません。

自分で読み切れないときは、届いた戸籍を持って窓口で「この戸籍の一つ前は、どこの誰の戸籍になりますか」と尋ねれば、その場で指してもらえます。読めない字で止まるより、そのほうが早く進みます。

集め終わったら、束のまま持ち歩かない

戸籍がそろうと、次は銀行、法務局、年金の窓口と、同じ束を出しては返してもらう作業が始まります。ここを1枚に置き換えるのが、法務局の法定相続情報証明制度です。

法務局は、法定相続情報一覧図の写しを「戸除籍謄本等の束の代わりに相続登記にご利用いただくことができる」とし、「無料で交付する」と説明しています。申出ができるのは被相続人の相続人(またはその相続人)で、親族のほか弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士に依頼することもできます。

誤解しやすいのは、法務局へ寄れば一覧図を作ってもらえる、と読めてしまうところです。作図するのは申出人です。法務局の案内は「被相続人(亡くなられた方)及び戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図を作成します」としています。様式と記載例が法務局のサイトに用意されているので、家族構成の近いものを選んで書き込みます。

持って行くものも決まっています。必ず要るのは、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本、被相続人の住民票の除票、相続人全員の現在の戸籍謄抄本、申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証の表裏両面のコピーなど)の四つです。相続人全員の戸籍には条件が付いていて、「被相続人が死亡した日以後の証明日のもの」でなければなりません。古い戸籍が家にあっても使えないので、ここは取り直しになります。住民票の除票が廃棄されて取れないときは、被相続人の戸籍の附票で代えます。附票は広域交付では取れないので、本籍地への郵送請求です。

申出先は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地の四つから選べます。自分の住所地が入っているので、遠方の実家まで出向かずに済む場合が多いはずです。一覧図は5年間(申出日の翌年から起算)保存されるため、その間は再交付を受けられます。

原本は返ってくる。だから何通取るかがここで決まる

苦労して集めた戸籍を出しっぱなしにせずに済むかどうかで、必要な通数が変わります。法務局ははっきり答えています。「戸籍謄本等は、一覧図の写しを交付する際に併せて返却します」。つまり、法定相続情報証明制度に出した束は手元に戻ります。

問題はその先の銀行や証券会社です。原本を預かって返す先もあれば、コピーを取って即返す先もあり、扱いは一律ではありません。窓口や電話で「戸籍の原本は返却してもらえますか。コピーを取ったら返していただけますか」と、返却の可否とタイミングをそのつど聞いてください。返してもらえるなら1通を順に回せますし、返らないなら回る先の数だけ取ることになります。この確認を先にすると、郵送請求で頼む通数が決まります。

そのうえで、一覧図の写しは必要な枚数をまとめて頼みます。銀行3行と法務局へ回るなら4枚です。戸籍の束と違って一覧図の写しは無料なので、多めに出しておいて困りません。

今日やること

  • 財布を開いて、顔写真付きの身分証があるか確かめる
  • 要る戸籍を書き出し、直系の上下から外れるものに印をつける
  • 平日の午前を半日空けられるか決める。無理なら広域交付は使わず、最初から全部を郵送請求で組む
  • 提出先(銀行・証券会社など)に「戸籍の原本は返却してもらえますか」と聞き、必要な通数を確定させる
  • 本籍地の戸籍担当へ電話し、通数・金額と、コンピュータ化されていない戸籍の有無を聞く。その額の定額小為替を、封筒を出す日に買う

戸籍は、集める順番より分ける順番で早さが決まります。窓口で全部そろうと思って出かけた日が、いちばん長くかかります。

亡くなった親の戸籍を集める。広域交付で最寄りの窓口が使える分と、本籍地に請求が残る分 — くらし 関連イラスト (どうする?)
Photo by Francesca Tosolini on Unsplash
#戸籍 #広域交付 #相続 #除籍 #改製原戸籍 #法定相続情報証明制度

参考資料

  1. 法務省 戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)
  2. 法務省 戸籍の窓口での「本人確認」が法律上のルールになりました
  3. 横浜市 戸籍証明書の広域交付について
  4. 大阪市 大阪市外の他市区町村の戸籍証明書の交付請求(戸籍証明書等の広域交付)
  5. 大阪市 戸籍謄本・戸籍抄本の交付請求
  6. 名古屋市 令和6年3月1日より、本籍地が市外の戸籍証明書等を取得できるようになりました
  7. 名古屋市 戸籍ってどんなことが載っているの?
  8. 横浜市 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)などを郵送請求する
  9. 神戸市 出生から死亡までの戸籍の取り寄せ方
  10. 法務局 「法定相続情報証明制度」について
  11. 法務局 法定相続情報証明制度の具体的な手続について(申出書様式・一覧図の記載例)
  12. 法務局 法定相続情報証明制度 よくあるご質問(PDF)
  13. 法務局 申出に必ず用意する書類/必要となる場合がある書類(PDF)
  14. 東京都北区 改製原戸籍謄本・改製原戸籍抄本
  15. ゆうちょ銀行 定額小為替

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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