精神科や心療内科への通院が何か月も続くと、3割負担でも支払いはまとまった額になります。自立支援医療(精神通院医療)を申請すると、この通院分の窓口負担が原則1割になります。
申請先は市町村の担当窓口です。大阪府は「自立支援医療(精神通院医療)の申請は、すべて市町村が窓口です」と案内しています。都道府県の窓口ではないので、住んでいる市区町村の障害福祉担当を探してください。横浜市では区役所の高齢・障害支援課、札幌市では各区の保健福祉課が受け付けています。
ただし、安くなるまでには時間がかかります。横浜市の案内では、新規申請から受給者証の交付まで約2か月。その間の受診は、代わりの書類を出して進めます。
先に確かめておくことは二つあります。いま受けている治療が精神科・心療内科への通院に当たるかどうか、そして主治医に診断書を書いてもらえるかどうかです。
対象になるのは、通院して受ける精神医療だけ
厚生労働省は精神通院医療の対象者を「精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者」としています。
名古屋市は具体的な病名として、統合失調症、躁うつ病、うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害、薬物関連障害(依存症等)を挙げています。
どこまでが対象かは、札幌市の書き方がいちばんはっきりしています。対象は「通院して行われる精神医療」で、対象外は「入院して行われる医療や精神疾患と関係のない医療」です。
つまり、次のようになります。
- 心療内科に通って受ける診察・投薬・デイケア・訪問看護 → 対象
- 同じ病気で入院したときの入院中の医療 → 対象外
- 同じ人が内科や歯科にかかったとき → 対象外
認定を受けても、健康保険証で受ける他の医療がすべて1割になるわけではありません。
1割になったうえで、所得区分ごとの上限がつく
自己負担は原則1割です。そのうえで、ひと月に支払う額に所得区分ごとの上限が設けられます。札幌市が示している表は次のとおりです。
| 区分 | 所得の基準 | 上限額(重度かつ継続に該当しない) | 上限額(重度かつ継続に該当する) |
|---|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 負担なし | 負担なし |
| 低所得1 | 市町村民税非課税で本人収入が年826,500円以下 | 2,500円 | 2,500円 |
| 低所得2 | 市町村民税非課税(低所得1以外) | 5,000円 | 5,000円 |
| 市町村民税課税 | 所得割33,000円未満 | 医療保険の自己負担限度額 | 5,000円 |
| 市町村民税課税 | 所得割33,000円以上235,000円未満 | 医療保険の自己負担限度額 | 10,000円 |
| 市町村民税課税 | 所得割235,000円以上 | 医療保険の自己負担限度額 | 20,000円(経過的特例) |
表を読むときに気をつけたいのは、課税世帯で「重度かつ継続」に当たらない場合の欄です。上限額が「医療保険の自己負担限度額」と同じ、つまり高額療養費の限度額と同じ高さに置かれているため、この上限で負担が下がる場面はほとんどありません。課税世帯の人が実際に受けている軽減は、上限ではなく3割から1割になる部分のほうです。
所得区分を決める「世帯」の範囲も、住民票の世帯とは別です。名古屋市は「同じ健康保険に入っている」人の範囲だと説明しています。共働きで健康保険が別なら、同居していても相手の所得は入りません。
「重度かつ継続」に当たるかどうかで、課税世帯の扱いが変わる
表の右の列に入れるかどうかは、「重度かつ継続」(高額治療継続者)に該当するかで決まります。札幌市は該当する範囲を二つに分けて示しています。
- 疾病等から対象になる人 — 統合失調症、双極症、うつ病、てんかん等
- 高額な費用負担が続いている人 — 医療保険の多数該当の者
該当するかどうかは診断書の内容と自治体の審査で決まります。申請者が自分で選ぶ欄ではありません。ただし主治医が診断書に何を書くかで結果が変わるため、通院が長く続いている人は、診断書を依頼するときに「重度かつ継続」に当たるかを相談しておくとよいでしょう。
所得割235,000円以上の世帯について、大阪府は「高額治療継続者(いわゆる「重度かつ継続」)に該当する方は、…経過的特例として制度の対象(月額上限負担額は、2万円)となり、認定を受けることができます」と書いています。この所得帯では、重度かつ継続に当たるかどうかが認定そのものの分かれ目になります。表の作り方は自治体によって違うので、自分の市町村の案内で確かめてください。
窓口に持っていくもの
横浜市が区役所窓口での新規申請に挙げている書類は次のとおりです。
- 申請書
- マイナンバーカード
- 本人確認書類
- 診断書
- 健康保険証の情報
- 指定医療機関の証明となるもの(診察券等)
- 課税・非課税証明書またはマイナンバー
- 非課税世帯の場合は収入証明書
このうち時間がかかるのは診断書です。自立支援医療用の様式があり、主治医に書いてもらう必要があります。受診のたびに頼めるものではないので、次の診察の予約を取る段階で「自立支援医療の診断書をお願いしたい」と伝えておくと、往復が一回減ります。
必要書類は市町村によって差があります。上の一覧は横浜市のもので、同じ書類名でも運用が違うことがあるため、出向く前に自分の市町村のページか電話で確認してください。
病院と薬局は、先に決めて書く
自立支援医療は、申請のときに指定した医療機関でだけ使えます。横浜市の案内では、指定できる病院は原則1か所、薬局は最大2か所、訪問看護ステーションは1か所です。
薬局は2か所まで書けます。ふだん使う薬局のほかに、夜間や外出先で使うことがある薬局が思い当たるなら、最初の申請で一緒に書いておくほうが、後の変更手続きが減ります。
通う病院を変えたときや、薬局を追加したいときは変更の届け出が必要です。届け出ていない薬局に処方箋を持ち込んでも1割にはなりません。
受給者証が届くまでの2か月をどう過ごすか
横浜市の案内では、新規申請から受給者証の交付まで約2か月かかり、その間は「支給認定入力確認票」を受給者証の代わりに病院・薬局等へ提示します。そして、さかのぼっての支払いはなく、確認票を提示したときに制度が適用されていなければ、あとから払い戻しを申し出る扱いになります。
やることは二つです。
- 申請したその場で、受給者証が届くまでに使う書類を受け取り、名前を控える
- 次の受診で、受付に出す。出し忘れた回の領収書は捨てずに取っておく
市町村によって、この期間の書類の名前も扱いも違います。「申請日にさかのぼるか」「窓口で先に3割払うか」は、申請の場で必ず聞いてください。あとから払い戻せるかどうかが、ここで決まります。
有効期間は1年。更新は期限の3か月前から
受給者証の有効期間は、横浜市の案内では「申請を受理した日から1年以内で、月の末日」、札幌市では「原則1年(1年後の前月末まで)」です。申請した日が起点なので、年度で区切られているわけではありません。
継続(更新)の申請は、横浜市では有効期限が切れる3か月前から受け付けます。診断書については、受給者証に「次回更新時に診断書の提出が必要」と記載されている場合に必要とされています。更新の手続きそのものは毎年必要なので、受給者証が手元に来たら、有効期限と診断書の記載の二つを先に確認しておくと翌年あわてずに済みます。
期限を切らすと、その間の通院はふだんの窓口負担に戻ります。次の受診が期限の後になりそうなら、3か月前の受付開始に合わせて動いてください。
令和8年7月に動いた収入基準と、令和9年3月で切れる特例
金額まわりで、いま確認しておきたい点が二つあります。
ひとつは収入基準です。大阪府は「令和8年7月1日から月額自己負担上限額に係る収入基準額が一部変更されました」として、低所得1(2,500円/月)が年80万9千円以下から82万6千5百円以下へ、低所得2(5,000円/月)が年80万9千円超から82万6千5百円超へ変わったと案内しています。市町村民税が非課税の世帯で、本人の収入が年80万9千円を超えて82万6千5百円以下に収まる人は、低所得2から低所得1に移り、ひと月の上限が5,000円から2,500円になります。
もうひとつは経過的特例です。市町村民税の所得割額が23万5千円以上の世帯に属する重度かつ継続の該当者を月額2万円の上限で制度の対象とする扱いは、大阪府の案内では令和9年3月31日まで延長されています。期限つきの措置なので、更新のたびに自分の市町村の最新の案内を見てください。
なお厚生労働省の制度概要ページは、この経過的特例の期限が平成27年3月31日までと書かれた古い記述のままでした。金額と期限は、国のページより自分の市町村・都道府県の案内のほうが新しい場合があります。
この記事で確かめていないこと
- 診断書の作成料は医療機関ごとに違い、公的に定められた額を確認できませんでした。主治医のいる医療機関に直接お尋ねください。
- 自立支援医療と、精神障害者保健福祉手帳・障害年金は別々の制度で、申請も審査も別です。手帳の診断書と兼用できるかどうかは市町村によって扱いが違います。
- 上の表と書類の一覧は札幌市・横浜市・名古屋市・大阪府の案内から取っています。全国共通の枠組みはありますが、窓口の名前・必要書類・受給者証が届くまでの扱いは市町村ごとに違います。
参考にした公式ページ
- 厚生労働省「自立支援医療制度の概要」— 精神通院医療の対象者の定義、経過的特例の存在
- 札幌市「自立支援医療(精神通院医療)」— 対象となる医療と対象外、原則1割、有効期間、窓口
- 札幌市「自立支援医療の利用者負担について」— 所得区分ごとの上限額の表、重度かつ継続の範囲
- 名古屋市「自立支援医療(精神通院医療)」— 対象となる病名、世帯の範囲
- 大阪府「自立支援医療費(精神通院医療)支給認定申請について」— 令和8年7月1日の収入基準の変更、経過的特例の期限、窓口は市町村
- 横浜市「各区役所窓口での申請について-自立支援医療(精神通院医療)-」— 必要書類、有効期間、更新は3か月前から、指定医療機関の数、受給者証交付まで約2か月
※個人差があります。受診の判断は医師にご相談ください。