加湿器のタンクの水は、継ぎ足さずに毎日すべて換え、タンクの中も洗うのが基本です。厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」は、「家庭用加湿器のタンクの水は、毎日完全に換えるとともに、タンク内を清掃すること」としています。
とくに気をつけたいのは、超音波式など水を加熱しないタイプです。厚労省のQ&Aは、超音波振動などの加湿器を使うときは毎日水を入れ替えて容器を洗うよう勧め、レジオネラ属菌は60℃で5分間で殺菌されるため、水を加熱して蒸気を出すタイプは感染源となる可能性は低いとしています。
この記事では、なぜ毎日なのか、加湿の方式で何が違うのか、毎日の手入れと季節の始めと終わりにすることを、厚労省と自治体の案内で確かめます。
加湿器とレジオネラ症
レジオネラ症は、レジオネラ属菌による細菌感染症です。厚労省のQ&Aによると、主な病型は、重い肺炎を起こす「レジオネラ肺炎」と、一時的で自然に治る「ポンティアック熱」です。
レジオネラ属菌は河川、湖水、温泉、土壌などの自然界にいる細菌です。感染は主に、菌に汚染されたエアロゾル(細かい霧やしぶき)を吸い込むことで起こり、代表的な感染源として冷却塔の水、加湿器、循環式浴槽が報告されています。人から人へはうつりません。
技術上の指針は、加湿器について次のように書いています。
加湿器を発生源とするレジオネラ症は、国内では報告例は少ないが、新生児室、高齢者施設等における感染例が報告され、海外でも同様の事例が報告されており、感染源として留意することが必要である。
さらに、加湿器ではタンクの中などに生物膜(バイオフィルム)ができることで、レジオネラ属菌をはじめとする微生物が増えやすくなるとし、生物膜ができるのを抑え、取り除くことが必要だとしています。広島市の案内は、加湿器が感染源になったレジオネラ症の患者の死亡事例もあるとしています。
厚労省のQ&Aは、高齢者や新生児は肺炎を起こす危険性が通常より高いので注意が必要だとし、大酒家、喫煙者、透析患者、移植患者、免疫機能が低下している人もレジオネラ肺炎のリスクが高いとしています。
加湿方式で何が違うか
広島市は、家庭の加湿器を四つに分けて説明しています。
| 方式 | しくみ(広島市の説明) |
|---|---|
| スチーム式 | 水を加熱して水蒸気にする |
| ハイブリッド式 | 加熱した水を気化や超音波で水蒸気にする |
| 気化式 | 水に風を当てて蒸発させる |
| 超音波式 | 水を超音波で水蒸気にする |
広島市は、レジオネラ属菌は60℃・5分の加熱で殺菌されるため、加熱を伴わない加湿器、とくに超音波式には注意が必要だとしています。超音波式は安価で簡単に使える一方、危険性を知らずに手入れを怠ると感染源になることがある、という書き方です。
一方で、技術上の指針の「タンクの水は毎日完全に換える」は、方式を分けていません。スチーム式でも、毎日換えることが前提です。
町田市保健所の案内は、方式ごとの手入れの注意を挙げています。
- 超音波式:細菌が繁殖しやすいため、超音波発生装置の周辺の清掃が重要
- 気化式:加湿フィルターに水あかが付きやすい
- 蒸気式:ヒーター部分に水あかが付きやすい
毎日すること
広島市と町田市の案内から、毎日の手入れを並べます。
- タンクの水は継ぎ足さず、毎日すべて換える。 広島市は、継ぎ足すと菌がそのまま残り、継ぎ足し続けるとより多くの菌が繁殖するとしています。町田市も「タンク水は、毎日全て交換し、タンクや内部の清掃をしましょう」としています。
- 水は水道水を使う。 町田市は「加湿器は水道水を使用しましょう」、広島市は「消毒されている水道水の使用をお勧めします」としています。
- タンクの中を洗う。 厚労省の指針は、毎日の水の交換とあわせてタンク内を清掃するとしています。厚労省のQ&Aも、超音波振動などの加湿器について、毎日水を入れ替えて容器を洗浄するよう書いています。
ぬるぬるしていたら
広島市は、タンクの中や水に触れる部分が触ってぬるぬるしている場合は、バイオフィルム(微生物が増殖してできた膜状の集まり)ができているとしています。バイオフィルムでは、レジオネラ属菌が寄生するアメーバ類が増えていることがあり、レジオネラ属菌が増殖します。
案内している手順は次のとおりです。
- ぬるぬるがなくなるまで洗う
- 洗ったあとに、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)や消毒用エタノールで消毒する
- レジオネラ属菌は乾燥に弱いので、タンクや水蒸気の吹き出し口などを、定期的に乾かす時間をつくる
漂白剤やエタノールが使える部品かどうか、どこまで分解して洗えるかは製品によって違います。広島市も町田市も、取扱説明書をよく読んで定期的に清掃・整備するよう求めています。
季節の始めと終わり、長く使わないとき
- しまう前と、使い始める前に洗う。 広島市は、加湿が必要な季節が終わったらしっかり洗ってから保管し、保管していた加湿器を使い始めるときも洗ってから使うよう案内しています。
- 長期間使わないときは、水を完全に抜いて乾燥させる。 町田市の案内です。
技術上の指針は、建物の空調に組み込まれた加湿装置については、使用開始時と終了時に水抜きと清掃をし、使用期間中は月1回以上点検するよう定めています。家庭用加湿器にはこの頻度の定めはなく、タンクの水を毎日換えて清掃することが書かれています。
買うとき、選ぶとき
技術上の指針は、家庭用加湿器は「部品の分解及び清掃を容易に行うことができる構造とすること」としています。町田市も、点検や清掃がしやすいものを選ぶよう勧めています。部品を外して洗えるか、町田市が方式ごとに挙げている部分(超音波発生装置の周辺、加湿フィルター、ヒーター部分)に手が届くかを、取扱説明書で確かめます。
症状について
厚労省のQ&Aによると、レジオネラ症の潜伏期間は2〜10日です。レジオネラ肺炎は、全身のだるさ、頭痛、食欲不振、筋肉痛などから始まり、咳や38℃以上の高熱、寒気、胸の痛み、呼吸困難がみられるようになります。意識レベルの低下や手足の震えといった神経の症状、下痢がみられることもあります。適切な治療がされないと急速に進むことがあり、命にかかわることもあるとしています。ポンティアック熱は、突然の発熱、悪寒、筋肉痛などがみられますが、一時的で自然に治ります。
レジオネラ肺炎は抗菌薬で治療でき、早期診断・早期治療が重要とされています。
なお、厚労省のQ&Aによると、国内のレジオネラ症の発生は一年中みられ、とくに7月と9月に多く、温泉への入浴や旅行と関連してみられることがあります。冬に限った病気ではありません。
この記事で確認できなかったこと
2026年11月5日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 浄水器を通した水、ミネラルウォーター、アルカリイオン水などを使ってよいかどうか。読んだ資料は水道水を勧めるだけで、ほかの水の可否は書いていません。
- 消毒に使う次亜塩素酸ナトリウムの濃度や、消毒の頻度の目安。
- ハイブリッド式(加熱した水を気化や超音波で出すもの)が、スチーム式と同じように感染源となる可能性が低いといえるかどうか。
- フィルターの交換や洗浄の頻度。製品の取扱説明書によります。
- 家庭用加湿器が原因とされたレジオネラ症の国内の件数。
参考資料
- 厚生労働省 レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針 — 第五「加湿器における衛生上の措置」。家庭用加湿器のタンクの水は毎日完全に換え、タンク内を清掃。分解・清掃しやすい構造
- 厚生労働省 レジオネラ症(Q&A) — 感染経路、症状、Q5「加湿器などからの感染を防ぐためには」、60℃・5分、リスクが高い人
- 厚生労働省 レジオネラ対策のページ — 技術上の指針などの掲載ページ
- 広島市 加湿器の使用によるレジオネラ症を防ぎましょう — 方式の違い、継ぎ足さない、水道水、ぬめりの洗浄と消毒、乾燥、季節の始めと終わり
- 町田市保健所 加湿器を適切に管理しましょう — 適切な管理の5つのポイント、方式ごとの手入れの注意