健康診断でHDLコレステロールが35と出た。放置してよいか、まず何から見直すか
HDL 35は男女とも要注意のライン。単独で投薬になる数値ではありませんが、中性脂肪・LDL・喫煙の組み合わせで判断し、まず生活の見直しを3か月試すのが基本の流れです。
「健康診断の結果票を見ていたらHDLコレステロールが35 mg/dLと書かれていて、要指導の欄に丸がついていた」——毎年この時期に、40代後半から50代の相談者から届く話です。ほかの項目はほぼ問題なかったのに、HDLだけが低い。翌年も似た数字が出て気になり始めた、というパターンが定番です。単独ですぐに薬が出る値ではありませんが、放置してよい数字でもありません。まずHDL 35がどの位置にある数値なのかを確認して、暮らしのなかで動かせる部分に順に手を入れていくのが現実的な流れになります。
HDL 35 が意味するもの
HDLコレステロール(善玉コレステロール)は、血管の壁に溜まった余分なコレステロールを肝臓に運び戻す働きを担っています。日本動脈硬化学会の脂質異常症診断基準では、HDL-Cが40 mg/dL未満で「低HDLコレステロール血症」と分類されます。HDL 35は、その境界ラインを一歩下回った位置です。単独ですぐに薬が処方される数値ではありませんが、放置してよい数字でもありません。
心血管イベントのリスクは、HDLだけで決まりません。LDLコレステロール・中性脂肪・空腹時血糖・血圧・喫煙歴・家族歴の組み合わせで見ます。HDL 35が単独で出ているのか、中性脂肪150超やLDL 140超と重なっているのかで、次の一手が変わります。健診結果票の他の欄も並べて見直すのが先です。
もうひとつ、HDL値には男女差があります。女性は閉経前までエストロゲンの影響でHDLが50〜60 mg/dL前後で推移しやすく、女性でHDL 35は男性よりも要注意な水準です。男性のHDLは平均が50前後で、35は下位10%あたりに位置しています。
まず何から手を入れるか
HDLは食事だけではあまり動きません。相談を受けていて実感するのは、運動と禁煙の方が数字を動かしたという声の多さです。優先順位の高い順に見ていきます。
出発点になるのが禁煙です。喫煙者のHDLは非喫煙者と比べて平均で5〜10 mg/dL低い傾向があり、やめて3〜6か月で徐々に上がってきます。HDLを上げる打ち手のなかでは、いちばん確実に数字が動くルートです。ただし離脱の難しさは人それぞれで、いきなりゼロにする前に本数を減らす段階から始めるのも実務的な選択肢です。禁煙外来は面談・ニコチンパッチ・内服薬の組み合わせで、条件を満たせば保険適用で3か月2万円弱の負担で通えます。
次が有酸素運動です。日本動脈硬化学会の予防ガイドラインでは、中強度の有酸素運動を週150分以上、または高強度を週75分以上が推奨されています。中強度は「会話はできるが歌えないくらいの速歩」をイメージするとわかりやすいはずです。1日30分×週5日、あるいは1日50分×週3日で組むのが現実的な枠です。3か月続けるとHDLが2〜5 mg/dL上がった報告があります。細切れの5分×6回より、まとまった30分の運動の方が効果が出やすかったという研究もあります。
食事は油の質を切り替える方向で見直します。青魚(サバ・イワシ・アジ)、オリーブオイル、素焼きナッツなど不飽和脂肪酸を含む食品を意識的に増やし、揚げ物・スナック菓子・マーガリンといったトランス脂肪酸源は減らします。卵を控えるとHDLが上がるという話は俗説の域を出ないので、コレステロールが気になっても卵を無理に減らす必要はありません。
体重は、BMI 25以上の方が体重の3〜5%を減らすと、HDLが緩やかに上がってきます。急な減量はかえってHDLを下げる方向に働くので、月1〜2 kgのペースで進める緩やかな減量が向いています。
節酒については判断が難しいところです。少量の飲酒がHDLを上げる可能性は指摘されていますが、飲酒は他の疾患リスクを上げる面もあり、HDLを上げる目的で飲酒量を増やす選択肢は勧められません。もともと日常的に飲む方は、休肝日を週2日以上入れる程度で十分です。
血液検査のどこと合わせて読むか
HDLの数字だけを気にすると、判断を誤ります。同じ結果票のなかで一緒に見ておきたい欄を並べます。
- LDLコレステロール: 140 mg/dL以上で高LDLコレステロール血症。HDL低下と重なるとリスクが上がります
- 中性脂肪(TG): 150 mg/dL以上で高トリグリセリド血症。TGが高いとHDLは下がりやすい関係にあります
- Non-HDLコレステロール: 総コレステロールからHDLを引いた値。170 mg/dL以上が要注意ライン
- 空腹時血糖・HbA1c: 糖尿病予備群だとHDLが下がる背景があります
- 血圧: 家庭で135/85を超えている日がないか
これらのどこかで並行して黄色信号が出ていると、HDL単独で見るより一段厳しめの生活改善が必要になります。健診結果票の赤丸・要指導・要再検査の欄をすべて拾い出しておくと、次の受診時の会話が具体的に進みます。
3か月続けるためのコツ
こういう生活改善は、始めるより続ける方が大変です。相談を受けていて挫折の理由に多いのは、初月に頑張り過ぎて2か月目に反動が来る、というものです。無理のない目安として、次のような組み立てが定着しやすい印象があります。
- 最初の2週間は、運動の時間帯と場所を固定するだけに集中します。「平日は帰宅前に駅の一つ手前で降りて20分歩く」など、決断の回数を減らす形で組み込みます
- 食事は「増やすもの」を先に決めます。青魚を週2回、朝食に無糖ヨーグルトとナッツ、といった追加ルールから始めた方が、我慢が中心にならずに済みます
- 家族と共有すると続きやすくなります。夕食の油ものを一緒に減らす、休日の散歩に付き合ってもらうなど、生活のなかで自然に組み込む形を取ります
- 週1回、体重と血圧の数字だけを記録します。細かい食事メモは3日で嫌になる方が多いので、記録は少なめに振ります
数値の変化が見えないと途中で疲れます。3か月後の再検査までは目に見える変化が乏しくても、途中で挫折しない仕組みを先に作っておくのが要になります。
数字が動かないときに受診を考える目安
3か月の生活改善を試したうえで再検査を受け、数値の動きを確認するのが基本の流れです。次のような場合は、内科もしくは循環器内科・脂質代謝内科の受診を検討する段階に入ります。
- LDL 140以上、または中性脂肪150以上を同時に満たす
- 家族に若年(男性55歳未満・女性65歳未満)の心筋梗塞・狭心症の既往がある
- 高血圧・糖尿病・慢性腎臓病で治療中
- 家庭血圧で140/90を超える日が続いている
- 3か月の生活改善でも数値がまったく動かない、または悪化している
こうした条件が重なるほど、脂質異常症としての診断・治療の対象になりやすくなります。受診時には健診結果票と、家庭血圧の記録があれば持参すると当日の判断が早く進みます。頸動脈エコーで動脈硬化の進み具合を確認する場合もあります。
再検査までに整えておきたいこと
再検査の日を決めたら、そこまでに以下を整えておくと当日の会話が具体的になります。3か月分の生活改善を試したなら、いつ何を変えたかを短くメモにまとめておくと、医師に「食事の何を減らしたか」「運動は何分・何回できたか」を伝えやすくなります。血圧計を家庭に置いていない方は、朝晩の血圧を2週間分計った記録があると、脂質と血圧の両面で判断してもらえます。
血液検査は空腹での採血が基本です。前日夜9時までに食事を済ませ、当日の朝は水以外を避けます。前日の激しい運動は中性脂肪の数値を一時的に押し上げるので、再検査の前日は軽めに留めるのが安全です。会社の定期健診とは別に、人間ドックや自治体の脂質異常症検査を組み合わせて受ける方もいます。
参考資料
※個人差があります。受診の判断は医師にご相談ください。
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参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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