親の介護で会社を辞めるべき?離職前に使える制度と相談先の段取り

結論

介護休業や給付金を使い切らないまま辞めると年収が大きく下がり、復職にも時間がかかります。会社の制度・公的給付・地域包括支援センターの相談を順番に確認してから判断するのが現実的です。

どうする?編集部 · · 読了 約8分
目次(7項目)
  1. 「辞める前の見直し」がなぜ大切か
  2. 介護休業制度の中身と給付金
  3. 介護休暇と短時間勤務の組み合わせ
  4. 地域包括支援センターで先に確認する内容
  5. 兄弟姉妹と役割を分担する時に決めておくこと
  6. 会社へ伝える時に整理しておく材料
  7. それでも退職を選ぶ場合の準備

親が要介護の状態になった時に、仕事を続けるか辞めるかで悩む段階があります。会社の介護休業や給付金、地域包括支援センターのサポートを確認せずに退職を決めると、年収減と再就職の難しさが同時に重くのしかかりがちです。辞表を出す前に、社内制度・公的給付・地域の相談窓口を順番に確認する段取りを整理しました。

「辞める前の見直し」がなぜ大切か

介護を理由に離職する人は、総務省「就業構造基本調査」の集計で年間10万人前後と報告されてきました。辞めた直後は気持ちに余裕が生まれる一方、半年から1年経つと収入減と再就職の壁が重くのしかかる例が目立ちます。

退職後に制度の存在を知って後悔する声も少なくありません。育児・介護休業法は会社に介護関連の複数の制度整備を義務付けており、申し出は法律上の権利として認められます。就業規則に明記されていなくても、対象者の申し出を会社が拒むことはできません。

辞めるかどうかの判断に迷いがあるなら、最初に制度の存在を棚卸しするだけでも選択肢が広がります。一度退職届を出すと、戻れない選択肢が増えていきます。

介護休業制度の中身と給付金

介護休業は、要介護状態の家族1人につき通算93日まで取得できる休業です。対象家族は配偶者、父母(養父母や配偶者の父母を含む)、子、祖父母、兄弟姉妹、孫まで広く、要介護2以上または同等の介護状態が前提です。3回まで分割して取れるため、入院・退院・施設入所の節目に合わせて使い分けやすい設計になっています。

給付金は雇用保険から「介護休業給付金」として支払われ、休業開始時の賃金の67%が休業日数に応じて支給されます。賞与は含まれず、月給ベースの計算です。月給30万円の人が30日休めば、後日およそ20万円が振り込まれる目安です。給付には事業主の手続きが必要で、休業前にハローワークへ提出する書類と社内の承認フローを確認しておきます。

休業中も社会保険料の本人負担は発生します。事業主負担分と本人負担分を会社がいったん立て替え、後で本人へ請求する運用が多めです。家計の試算は、給付金の手取りから社会保険料を差し引いた額で確認しておくと、後で「思ったより手元に残らない」とならずに済みます。

介護休業の93日は、介護そのものを担い続ける期間ではなく、在宅介護の体制を整えるための準備期間と考えるのが現実的です。ケアマネジャーを決め、訪問・通所サービスの組み合わせを試し、住宅改修や福祉用具を導入する作業に充てれば、復職後も持続可能な体制を作れます。

給付金の試算例として、月給40万円の人が3か月分の93日を全て使った場合、賃金日額は約1万3千円、給付率67%で日額約8千7百円、93日分で約81万円が支給される計算になります。賞与が含まれないため、年収ベースで見ると休業前の月給以下になる点には注意が必要です。住宅ローンや子の教育費が重なる時期に休業を取るなら、貯蓄からの取り崩しが何か月分必要になるかを、家計簿の月平均と給付金の試算を並べて確認しておきます。給与振込から給付金振込までは2か月ほどのタイムラグが出るため、休業開始直後の生活費は手元現金で繋ぐ前提でも組んでおきます。

介護休暇と短時間勤務の組み合わせ

介護休業を取らずに、もしくは取った後に、日常の通院付き添いや手続きに対応する制度として介護休暇があります。要介護家族1人につき年5日、2人以上で年10日まで、半日や時間単位でも取得できます。有給休暇とは別枠で、賃金の扱いは会社ごとに違いますが、無給でも介護休暇の権利は保障されています。

短時間勤務や時差出勤、フレックスタイム、所定外労働の免除も、育児・介護休業法で会社に整備が求められています。「1日6時間勤務」「コアタイムなし」「残業免除」など、勤務時間を組み替える形は会社で運用が異なるため、人事に具体例を確認しておきます。介護のピークが朝の通院付き添いに集中するなら時差出勤、夕方のヘルパー受け入れに集中するなら定時退社の確保が向きます。

これらを重ねれば、介護休業を一度に使い切らずに、長期戦を見据えて働き続ける道筋を描けます。介護は何年続くか見通しにくいので、急変が起きた局面に介護休業を残しておく設計が安全です。「いつか発動できる余白」を残しておくと、職場の側にも安心感が生まれます。

地域包括支援センターで先に確認する内容

会社の制度を確認するのと並行して、地域包括支援センターへ相談を入れます。市区町村に1か所以上設置されている無料の総合相談窓口で、社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーが在籍しています。

最初の相談で確認できる内容は幅広く、要介護認定の申請手順、介護サービスの種類と利用の流れ、ケアマネジャーの紹介、福祉用具レンタルや住宅改修補助の制度、家族介護者向けの支援などが含まれます。匿名で何度でも相談でき、本人が自宅から動けない場合は職員が訪問する仕組みもあります。

要介護認定は申請から30〜40日かかる場合が多く、介護休業給付金の対象になる「要介護2以上」の判定が出るかどうかが、休業の使い方を左右します。認定が出るまでの間も介護サービスを暫定的に利用できる運用があるため、認定結果を待ってから動くより、申請と同時に相談を進めるほうが時間の使い方が締まります。

ケアマネジャーが決まると、ケアプランの作成や事業者との調整を任せられます。ケアプランは家族の希望と介護者の体力を踏まえて設計されるため、初回の面談で「働き続けたいので朝晩の支援を厚くしてほしい」「日中はデイサービスで対応してほしい」と希望を伝えるのが大切です。後から修正もできますが、最初の段階で伝えておくとサービスの組み合わせの幅が広がります。

ケアマネジャーとの相性は、長期戦の中で大きな影響を持ちます。連絡の返事が遅い、家族の要望を取り合ってもらえない、特定の事業者ばかり勧める、といった違和感がある時は、地域包括支援センターを通じて他のケアマネジャーに変更できます。変更で本人へのサービスが止まることはなく、契約上の負担も発生しません。最初の選択を「途中で変えてはいけないもの」と思い込まず、合わなければ早めに見直す前提で考えておきます。

兄弟姉妹と役割を分担する時に決めておくこと

介護を1人で抱え込むと、制度を使い切っても続かなくなります。きょうだいが複数いる家庭では、最初に集まって役割と費用の分担を文章で確認しておくと、後の不満が小さくなります。

役割は「介護そのものを担う人」「金銭面を負担する人」「行政手続きを担当する人」「定期的に様子を見に行く人」など、複数の軸に分けると分担しやすくなります。同居していない兄弟姉妹も、月に1〜2回の様子見・通院付き添い・書類整理など、距離があってもできる役割があります。役割が「同居しているからお願いね」と一極集中すると、数か月で限界が来ます。

費用の分担は領収書を共有できるアプリやスプレッドシートで記録すると、後でもめにくくなります。親の年金や預貯金から支出する分と、子の自己負担分を分けて記録しておけば、相続の時にも整理が楽になります。介護で使った支出は相続税の計算でも対象になることがあり、領収書は最低でも5年間は保管しておきます。

意見が大きく割れる時は、地域包括支援センターのケアマネジャーに家族会議へ同席してもらえる場合があります。第三者が介護の見立てを伝えると、感情論が前に出にくくなります。話がまとまらないまま1人で抱え込んでしまう前に、外部の視点を入れる選択肢を覚えておきます。

会社へ伝える時に整理しておく材料

社内で相談に動く時は、感情論ではなく事実と希望を整理して持ち込むと話が早く進みます。親の状態(要介護度、医師の診断、本人の意思)、想定される介護期間、自分が使いたい制度、家族の協力体制、業務の引き継ぎ案を、1枚にまとめておきます。

人事と上司の役割分担も意識しておきます。上司は業務の引き継ぎや人員調整、人事は給付金や社会保険、就業規則の確認が中心です。最初の相談を人事に入れて制度を確認し、その後で上司に業務の段取りを話す順番が落ち着きやすい流れです。逆の順番だと、上司から「制度の話は人事に聞いてくれ」と返されて二度手間が起きます。

会社が制度を理解していない時の対応も準備しておきます。厚生労働省の介護休業制度パンフレットを共有する、社会保険労務士が在籍していれば同席を依頼する、それでも進まない時は都道府県労働局の総合労働相談コーナーへ連絡する流れです。総合労働相談コーナーは無料で、調整役として会社に連絡を入れてもらえる場面もあります。

それでも退職を選ぶ場合の準備

制度を使い切ってもなお退職が必要だと判断した時は、退職前から手続きの段取りを動かします。健康保険は退職翌日から無保険状態になるため、任意継続(最長2年)、家族の被扶養者になる、国民健康保険に切り替えるという三つの選択肢の中から選びます。任意継続の手続きは退職後20日以内、被扶養者の認定は5日以内が目安で、いずれも期限が短いので退職日が決まった段階で動き始めます。

年金は国民年金への切替手続きを退職後14日以内に市区町村窓口で行います。配偶者の扶養に入って第3号被保険者になる場合は、配偶者の勤務先で手続きします。手続きを忘れると未納期間が発生し、将来の年金額が下がるため、退職日と同じ日にカレンダーへ書き込んでおくと安心です。

失業手当は、介護を理由とする退職なら「特定理由離職者」として認定される可能性があります。認定されれば給付制限期間が短縮または免除され、給付日数も自己都合退職より長くなる枠が用意されます。認定にはハローワークで介護の事情を確認できる書類(要介護認定通知書、医師の意見書など)が必要なので、退職前に手元に揃えておきます。

税の取り扱いも退職する年は変わります。年末調整が会社で済まないため、確定申告で対応する流れになります。市区町村の税務窓口や税理士の無料相談で、退職翌年の申告に必要な書類を確認しておくと、3月15日の申告期限が近づいてから慌てずに済みます。医療費控除や雑損控除も合わせて検討すると、所得税・住民税の負担が下げられる場合があります。

退職後の生活費の試算も、楽観的にならない注意が要ります。失業手当は最長でも330日で終わり、その後は自分の貯蓄か家族の収入で食いつなぐ前提です。再就職活動と介護の両立は思った以上に体力を使うので、3か月分の生活費に余裕を持たせた計画にしておくと、判断の自由度が残ります。

復職の選択肢を残したい時は、退職時に「介護のため」と明記した退職理由証明書を会社からもらっておきます。雇用保険の特定理由離職者の認定で求められる書類で、後から取り直すには時間がかかります。前職の人事と良好な関係を保っておくと、介護が落ち着いた時に再雇用の相談を持ち込みやすくなります。テレワークや業務委託の形での復帰を提案できる職種なら、退職前に在宅勤務の試行を打診しておく流れもあります。「正社員を辞めて、別の働き方で残れる道がないか」を一度確認するだけでも、選択肢の幅は変わります。

親の介護で会社を辞めるべき?離職前に使える制度と相談先の段取り — お金 関連イラスト (どうする?)
Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

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参考資料

  1. 厚生労働省 仕事と介護の両立支援
  2. 厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし
  3. 厚生労働省 介護休業給付
  4. 厚生労働省 地域包括支援センター

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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