株式100%が基本、それでも債券解禁が意味を持つ場面
2026年度税制改正で、つみたて投資枠の対象商品の定義が「主に株式に投資するもの」から「主に株式または公社債に投資するもの」へ変更されました。これにより、債券を主な投資対象とするファンドやバランス型ファンドもつみたて投資枠で購入できるようになります。 ただし、長期積立・分散投資という制度の趣旨は変わっておらず、信託報酬の低さと自身のリスク許容度を軸に商品を選ぶ基本も変わりません。株式100%が怖い方・運用終盤に入る方にとっての選択肢が増えた、と理解するのが正確です。
バランス型・債券型への切り替えを検討したい人
株式の大幅下落が怖く積立を継続できなかった方
株式インデックスファンドは短期的に30〜50%下落することがあります。2020年のコロナショックや2022年の金利上昇局面のように、大きな下落時に積立を解除・停止してしまい、その後の回復局面に乗れなかったという経験をお持ちの方は少なくありません。バランス型は債券部分がクッションになり、値動きが緩やかになります。積立を継続できることの方が「最適なリターン」よりも重要な局面もあります。
60代以降で資産の「取り崩し期」が近づいている方
つみたて投資枠は非課税保有期間が無期限ですが、70代・80代で取り崩しを始める予定がある場合、株式100%のポートフォリオは取り崩しタイミングによって受け取り額が大きくブレるリスクがあります。債券比率を高めることでそのブレを縮小しつつ、非課税の恩恵を維持するという戦略が2026年改正後に取りやすくなります。
退職金・まとまった資金を段階的に運用したい方
一括ではなく毎月の積立でNISAを活用している方が、将来的にバランス型へシフトしたい意向を持っているケースです。改正前は成長投資枠でバランス型・債券型を買う方法はありましたが、つみたて投資枠の長期積立向けの仕組みに乗せることはできませんでした。改正後はこの部分の制約がなくなります。
現在の保有銘柄をそのまま継続したい方
改正によって既存のつみたて投資枠の保有商品が強制的に変わることはありません。株式インデックス一本で積立を続けている方は、そのままでまったく問題ありません。新制度は選択肢を増やすものであり、現在の方針を変える義務はありません。
バランス型でも安全とは限らない理由
バランス型が必ずしも安全ではないケース
「債券が入っているから安全」という誤解は禁物です。金利上昇局面では債券価格が下落するため、株式と債券が同時に値下がりする場面があります(2022年がその例です)。特に長期債の比率が高いファンドほど金利上昇リスクが大きくなります。バランス型ファンドを選ぶ際には、株式・債券・REITそれぞれの比率と投資地域を目論見書で確認することが重要です。
信託報酬が高いバランス型は長期で不利になるケース
バランス型の信託報酬は、単純な株式インデックスより高い傾向があります。年0.5%を超える信託報酬のファンドは、長期の複利運用において差が積み上がります。例えば100万円を年利5%で30年運用した場合、信託報酬0.2%と0.6%では最終資産額に約20万円以上の差が生まれることがあります。コストと分散効果のバランスを見て選ぶことが重要です。
売却時に「枠の再利用」の仕組みを誤解するケース
NISAでは保有商品を売却すると、その売却分の「簿価(取得原価)」に相当する非課税保有限度額が翌年以降に再利用できます。ただし売却した年の枠は復活しません。乗り換えを急いで年末直前に売却しても、新しい銘柄を年内に枠いっぱい購入することはできないため、タイミングに注意が必要です。
信託報酬と枠復活のルールを踏まえた選び方
信託報酬の目安(年率)
- 国内株式インデックス(TOPIX・日経225連動): 0.05〜0.15%程度
- 全世界株式・先進国株式インデックス: 0.10〜0.25%程度
- バランス型(株式+債券混合): 0.20〜0.50%程度
- アクティブ型ファンド: 0.80〜1.50%程度(対象商品は限定的)
運用コストの長期影響
信託報酬が0.3%高いだけで、毎月3万円・30年積立(年利5%想定)の場合に最終資産額が約130万円程度少なくなる計算になります。つみたて投資枠の対象商品は信託報酬に上限基準が設けられているため過度に高いものはありませんが、同カテゴリ内での比較は重要です。
乗り換え時の税務上の注意
NISAの非課税口座内で売却した場合、損益は非課税扱いのため、値下がりした状態で売却しても損失を他の口座の利益と損益通算することができません。損切りによる乗り換えは課税口座では損益通算のメリットがありますが、NISA内では一切メリットがありません。
金融庁の基準確認の重要性
2026年の改正後にどのファンドがつみたて投資枠の対象として届出・認定されるかは、金融庁の更新情報で確認できます。証券会社のサイトでも随時対象ファンドが追加される予定ですが、改正直後は対象ファンドの拡充に時間がかかる可能性があります。
参考資料
- 金融庁「令和8年度税制改正要望(NISA制度の対象商品拡充)」— 改正の根拠と対象商品の定義変更の詳細
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」— 現行制度の説明、対象ファンドリスト、金融機関一覧
- 財務省「令和8年度税制改正大綱」— 「主に株式または公社債」への文言変更が明記された法令根拠