親が亡くなったあとの「準確定申告」、誰がいつまでにやる?4か月の期限と必要書類を整理
準確定申告は『亡くなった年の1月1日から死亡日まで』の所得を、相続人全員が連署して『相続開始を知った日の翌日から4か月以内』に提出します。給与と年金だけで源泉徴収済みなら申告そのものが不要な場合もあるため、まず収入の種類から確認するのが先です。
目次(12項目)
親が亡くなったあとは葬儀・年金の停止・銀行口座の凍結や仮払いなど、初動の手続きが立て続けに発生します。その流れの中で見落とされがちなのが「準確定申告」です。準確定申告とは、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を、本人に代わって相続人がまとめて申告する手続きです。期限は「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」と、相続税の10か月期限とは別の時計が動いています。
まず確認するのは、亡くなった親に給与や年金以外の収入があったか、医療費控除や生命保険料控除を使える支払いが死亡日までにあったかの2点です。給与と年金しかなかった方は申告自体が要らない場合もあれば、医療費控除を入れれば源泉徴収済みの所得税が還付されることもあります。結論を先に出す前に、手元の書類を一度棚卸しするのが回り道のない進め方です。
まず確認するのは「亡くなった年の所得が申告対象か」
準確定申告には「出さなくてよい人」「出した方が得な人」「出さないと加算税が付く人」の3つの位置取りがあります。給与収入のみで源泉徴収済みだった親や、公的年金等の収入が400万円以下で他の所得が20万円以下だった親は、原則として申告そのものが不要です。一方、生前に確定申告を毎年していた人、つまり事業所得や不動産所得があった人、年金収入が400万円を超えていた人は、ほぼ確実に準確定申告が必要になります。
判断に迷いやすいのは「給与だけだった親に医療費がかさんだ年」「年金以外に少額の配当があった親」のような中間ケースです。この場合は申告自体は要らなくても、医療費控除や寄附金控除を入れることで源泉徴収済みの所得税が戻ってくる「還付申告」として出せます。最初に取りかかる作業は、生前の確定申告の控え、給与の源泉徴収票、公的年金の源泉徴収票が手元にあるかの確認です。
典型ケースで見る判断 — 給与のみ・年金のみ・両方
実際のご相談で多いパターンを3つだけ整理しておきます。1つ目は「会社勤めの親が60歳前に亡くなった」ケース。給与の源泉徴収票で年末調整は受けられないため、勤務先発行の死亡退職時点の源泉徴収票を使って準確定申告で精算します。多くの場合、医療費控除や生命保険料控除を入れることで還付になります。
2つ目は「公的年金のみの親が亡くなった」ケース。年金収入が400万円以下で他の所得が20万円以下なら、申告自体は不要です。ただし医療費が10万円を超えていれば、還付申告で出すと所得税の一部が戻る場合があります。
3つ目は「給与と年金の両方があった親」ケース。給与所得が20万円を超え、かつ年金の源泉徴収票上で精算が終わっていない場合は、原則として申告が必要になります。判断が分かれやすい層なので、源泉徴収票を2種類とも揃えてから税務署または税理士に相談すると、結論が早く出ます。
期限は「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」
期限は亡くなった日ではなく、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。同居していた家族なら死亡日と同じ日が起算日になりますが、長く連絡を取っていなかった親族の死を後から知ったケースでは、知った日が起算日になります。
たとえば3月15日に亡くなった親について同日中に知ったなら、7月15日が期限です。期限の最終日が土日祝にあたる場合は、翌平日まで延びます。年明け早々に亡くなった親で、前年分の確定申告がまだ済んでいなかった場合は、前年分と当年分の2回の準確定申告を、それぞれ4か月以内に出す扱いになります。前年分は通常の確定申告期限(3月15日)ではなく、4か月期限のほうが適用される点に注意が必要です。
申告するのは相続人全員 — 連署と「付表」のしくみ
準確定申告は、相続人全員が連名で出すのが原則です。相続人が複数いる場合は、申告書に「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」(以下、付表)を添付し、各相続人の住所・氏名・マイナンバー・相続分の割合を記載します。
相続人どうしが遠方で連名がむずかしいときは、相続人ごとに別々の申告書を出すことも認められています。その場合、提出した相続人以外にも申告内容を通知する手間が生じます。実務では、誰か一人 — 多くは亡くなった親と同居していた相続人や、税理士に依頼できる方 — が代表でまとめて作成し、残りの相続人にメールやPDFで内容を共有して、押印・署名を集める流れが多いです。1通にまとめた連署のほうが、押印漏れがあったときの差し戻しも早く済みます。
4か月の中で実務として何をいつ動かすか
最初の1か月は「収入の確認と書類の依頼」に充てるのが現実的です。年金事務所に死亡届を出した後、相続人宛てに「公的年金等の源泉徴収票」が送られてくるのを待ちます。郵送までに1〜2か月かかる場合もあるため、死亡届と同じタイミングで連絡を入れておくと、後半が楽になります。並行して、亡くなった親の勤務先には「死亡退職時点までの源泉徴収票」を依頼します。
2か月目は「控除の証明書集め」です。生命保険料・地震保険料の控除証明書、寄附金の受領証、医療費の領収書を集めます。3か月目に申告書の作成に入り、4か月目の前半で相続人全員の押印を回収する流れが標準的です。書類が遅れがちな年金事務所からの郵送を見込むと、最初の1か月で依頼を済ませる段取りが、後半の余裕を生む決め手になります。
地方に住んでいた親の場合や、相続人が遠方に散らばっている場合は、書類の郵送往復で数日ずつ消費されるため、当初の見込みより1〜2週間早く動き出すのが安全です。葬儀や法事と重なって時間が取りにくい時期だからこそ、書類依頼だけは早い段階で済ませ、後から作業を集中させる組み立てがうまくいきやすい印象です。
医療費控除・生命保険料控除はいつまで分が対象
準確定申告で控除できるのは、原則として「死亡日までに本人が支払った分」に限られます。入院費の請求が亡くなった後に届き、相続人が立て替えて支払った場合は、その分は準確定申告の医療費控除には含めません。
その支払いを行った相続人が同一生計の家族だった場合は、相続人本人の確定申告で医療費控除として扱える可能性があります。相続税の申告がある方は「相続税の債務控除」として扱う選択肢もあるため、どちらに入れるかは家庭の事情で結論が分かれます。判断が固まるまで領収書は捨てずに残しておきます。生命保険料控除や地震保険料控除の証明書は、保険会社から再発行できるので、見当たらない場合は早めに連絡を入れます。
不動産所得・事業所得があった場合の追加作業
親に賃貸不動産や個人事業の収入があった場合は、1月1日から死亡日までの収入・経費を集計する「準決算」が必要です。家賃は計上時期が現金主義か発生主義かで扱いが分かれ、青色申告だったかどうかでも書き方が変わります。
減価償却は「その年の月数のうち、生きていた月数分」を計上します。10月に亡くなった場合は10/12を計算する取り扱いです。事業を相続人が引き継ぐ場合は、相続人側でも事業承継後の開業届と、青色申告を続けたい場合は青色申告承認申請書の提出が必要で、それぞれに別の期限があります。
特に注意したいのが青色申告承認申請書の期限です。被相続人の死亡日に応じて2か月以内・4か月以内・年末までと3パターンに分かれ、ここを逃すと相続後の数年間にわたり65万円控除や青色専従者給与が使えなくなります。書類の数が一気に増えるため、税理士に依頼するかを比較的早い段階で判断する場面が多いです。
e-Tax か書面か、提出先の税務署はどこ
提出先は「亡くなった本人の住所地を管轄する税務署」です。相続人の住所地ではない点に注意します。書面で出す場合は、付表に各相続人の押印を集めて郵送するか、税務署の窓口に持参します。マイナンバーカードのコピーや本人確認書類が相続人全員分必要です。
e-Taxでも準確定申告は提出できます。2020年分以降、e-Tax用の準確定申告データ送信の仕様が整い、相続人の代表者がマイナンバーカードで送信する形で済むようになりました。各相続人の同意書や、付表の電子フォーマットなど追加で用意する書類があり、はじめてe-Taxを使う方は紙のほうが早いこともあります。
生前にe-Taxで確定申告をしていた方が亡くなった場合でも、本人のID・パスワードは引き継げません。相続人代表者のIDで新規に手続きをやり直す扱いになります。マイナンバーカードがまだ無い相続人がいる場合は、書面で出すか、税務署のID・パスワード方式を申請する選択肢があります。窓口持参であれば、書類の不備をその場で職員に確認してもらえるため、はじめての準確定申告では持参を選ぶ方も多い傾向です。
還付金の振込先と「相続人の代表者」の決め方
準確定申告で還付金が出る場合、税務署からは「相続人の代表者」宛てに振り込まれます。付表の「還付される税金の受取場所」欄に、代表者の氏名・住所・受取金融機関を記入する形です。代表者を決めずに各相続人宛てに分割してもらおうとすると、相続人ごとに振込手数料が引かれてしまい、結果的に手取りが目減りします。
代表者は相続人全員で話し合って事前に決め、振り込まれた還付金は法定相続分(または遺産分割で決めた割合)に従って分配する流れが一般的です。なお、還付金そのものは「亡くなった本人の財産」として相続税の対象になります。相続税申告が必要な方は、還付額をそのまま相続財産に加える処理を忘れないようにします。納税額が出る場合も同じく代表者がまとめて納めることが多く、立替分の精算ルールを家族内で決めておくと後でもめません。
4か月を過ぎてしまった場合
期限から1日でも遅れると、原則として無申告加算税(納付すべき税額の15%・50万円超の部分は20%)と延滞税の対象になります。延滞税の年率は2026年6月時点で年8.7%が目安です。ただし、税務署からの調査通知が来る前に自主的に出した場合は、無申告加算税が5%まで軽減されます。
相談の中で多いのが「気付いたら4か月が過ぎていた」というケースです。期限を過ぎていても、放置せず気付いた時点で出すのが基本的な対応です。延滞税は「法定納期限の翌日から納付日まで」の日数で計算されるため、早く納めるほど負担が軽くなります。期限内に完成しなさそうな場合は、いったん概算で出して、後から修正申告で正確な数字に直す手順も使えます。
相続税の10か月期限と混同しない
最後に、よく混同される「相続税の申告」(死亡を知った日の翌日から10か月以内)とは別の手続きである点だけ押さえておきます。準確定申告は亡くなった親の所得税を相続人がまとめて出すもので、期限は4か月。相続税の申告は相続人が引き継いだ財産に対する税金で、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に必要、期限は10か月です。
両方の対象になる方は、4か月の準確定申告 → 10か月の相続税申告という順序で進めることになります。準確定申告の納税額や還付額は、相続税の計算上「被相続人の債務」または「相続財産」として扱うため、相続税申告の数字とつながっています。順序を守って進めれば、二重に同じ書類を集める手間が減り、結果として相続税申告の作業時間も短くなります。
逆に、準確定申告だけ済ませて相続税の申告期限を見落とすケースもあります。両方の期限を同じカレンダーに書き込み、4か月の準確定申告が終わったらすぐに10か月までの相続税スケジュールに着手する流れを家族内で共有しておくのが安心です。基礎控除を超えそうかの簡易判定だけでも、不動産の固定資産税評価額・預貯金残高・有価証券の評価をざっくり集めて早めに行います。
参考資料
ここで紹介した内容は2026年6月時点の国税庁公式情報をもとに整理しています。家族構成や所得構成によって扱いが変わるため、判断に迷う場合は最寄りの税務署または税理士にご相談ください。フロントマターの「sources」欄に主要な国税庁ページのURLを記載しています。
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参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
- 国税庁 タックスアンサー No.4129 相続財産から控除できる債務
- 国税庁 タックスアンサー No.9205 延滞税について
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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