法案は、給付付き税額控除の第一歩として、2027年4月に「就業者負担軽減支援金」を始める内容です。2026年10月9日に閣議決定され、同日、国会へ提出されました。働いて一定の収入がある中低所得の人に、市区町村が年1回支給する仕組みです。まだ成立していないため、国会の審議で内容が変わる可能性があります。
更新(2026年10月15日) 法案が10月9日に国会へ提出されたので、提出日と審議状況、条文で決まったことと政令に委ねられたことを書き足しました。前回まで「法案はこれから国会に出される」としていた部分を直しています。就業していない高齢者への措置の結論時期も、法案では大綱と違う書き方になっています。あわせて、配偶者に関する書面を提出する人は本人の所得で決まること、生活保護の収入認定は大綱に書かれていることを書き分け、公金受取口座の確認方法をデジタル庁の案内で確かめ直しました。
訂正(2026年9月29日) 初出(5月28日)では「2027年から本格的に始まる」「2026年6月の中間取りまとめで詳細が決まる」と書いていました。実際の中間とりまとめは7月29日で、本格導入は2029年度です。9月15日の大綱と国・地方の協議資料で確かめ、記事全体を書き直しました。
いつ、何が始まるのか
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 2026年7月29日 | 社会保障国民会議が中間とりまとめ |
| 2026年8月5日 | 「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針を閣議決定 |
| 2026年9月15日 | 飲食料品の消費税の引き下げと就業者負担軽減支援金の大綱を閣議決定 |
| 2026年9月29日 | 制度の導入準備費として約338億円の予備費使用を閣議決定 |
| 2026年10月9日 | 法律案を閣議決定し、同日国会に提出(第222回国会 閣法第1号) |
| 2026年10月15日 | 議案の一覧の審議状況は「衆議院で審議中」。委員会への付託はまだ |
| 2027年4月1日 | 法案の施行日。飲食料品の消費税が1%に(2029年3月31日まで)。支援金制度が始まる |
| 2027年度・2028年度 | 支援金を年1回支給(協議資料では秋に支給するイメージ) |
| 2029年4月 | 2028年度の受給資格者に、2029年度以降の制度による支援額の半年分相当額を先に支給 |
| 2029年度 | 本格導入。その後、2029年度の受給資格者にも半年分相当額を支給 |
2027年度からの2年間は、飲食料品の消費税の引き下げと支援金を組み合わせる「つなぎ」の期間です。消費税の引き下げで全員の食費の負担を軽くし、支援金は飲食料品の消費税1%分の範囲で働く人に配ることで、食料品の消費税を実質ゼロにする、と説明されています。
法案はまだ成立していません。衆議院の議案審議経過情報では、10月9日に衆議院が議案を受理したところまでが記録されていて、付託された委員会の欄は空欄です。参議院も同じ日に予備審査の議案を受理しています。衆議院の「第222回国会 議案の一覧」は審議状況を「衆議院で審議中」と表示していますが、同じページの注記のとおり、これは議案がどちらの院にあるかを示す表示で、委員会や本会議で議題になっていることまでは意味しません。審議の過程で中身が変わることもあります。
法案で決まったこと、政令に委ねられたこと
法案を読むと、制度の骨格は条文に書かれていますが、読者がいちばん知りたい金額はひとつも書かれていません。すべて政令に委ねられました。
| 項目 | 法案の扱い |
|---|---|
| 始まる日 | 2027年4月1日(一部の規定を除く) |
| 飲食料品の消費税率 | 0.78%(地方消費税と合わせて1%)。2027年4月1日から2029年3月31日まで |
| 支給の回数 | 年度ごとに年1回。2029年度は2029年4月にも支給 |
| 対象の要件 | 要件の組み立ては条文に。所得下限額・所得上限額・純負担基準額などの金額は政令 |
| 支援額 | 前年の所得の額と扶養児童の有無・人数に応じて「政令で定める額」 |
| 認定の請求期限 | その年度の「政令で定める日」まで |
| 支給する人 | 1月1日時点の住所地の市町村長 |
| 支払いの期限 | 認定または額の決定の日から2か月以内 |
| 税金・差し押さえ | 支援金を標準に租税その他の公課を課せない。国税滞納処分等を除き差し押さえもできない |
金額を政令に委ねたぶん、法案は「何を考えて決めるか」を条文に書いています。所得下限額なら税制と社会保険制度の状況、就業の促進等の効果。所得上限額なら日本と諸外国の純負担率・純負担額の状況と、諸外国の似た制度の状況です。政府はこれらの額を定期的に検証し、必要があれば改定するとされています。
つまり、自分がいくらもらえるかが分かるのは、法案が成立して政令が出てからです。今の時点では、自分が要件の「形」に当てはまりそうかまでしか確かめられません。
誰が対象になるか
支援金は世帯ではなく、個人を単位に支給されます。次の要件をすべて満たす人が対象です。④は2029年度分からの要件で、2027・2028年度分の支給には使われません。
| 条件 | 中身 | 決まっているか |
|---|---|---|
| ① 勤労所得が下限を超える | 前年の給与等の収入金額に応じて政令で計算した額。事業所得または業務に係る雑所得がある場合は、その合計が政令で定める額を超えれば合計額を加える | 所得下限額は政令 |
| ② 合計所得金額が上限以下 | 前年の合計所得金額。上限は扶養児童の有無と人数で変わる | 所得上限額は政令 |
| ③ 純負担が基準を超える | その年度の道府県民税と市町村民税の所得割等の額の合計に政令で定める倍数を掛けた額と、社会保険料控除額との合計から、前年中の公的年金等の収入金額を引いた額 | 純負担基準額と倍数は政令 |
| ④ 配偶者の所得が上限以下 | 1月1日に配偶者がいた人は、その配偶者の前年の合計所得金額が政令で定める額以下 | 2029年度分から。金額は政令 |
②の「扶養児童」は、扶養親族のうち前年12月31日時点で19歳未満の居住者です。前年の途中でその扶養親族が亡くなった場合は、亡くなった時点の状況で判定します。2027・2028年度分は16歳未満の扶養親族を見ます。自分の子だけでなく、扶養親族であれば対象になる点に注意してください。③の社会保険料控除額は一部が除かれますが、2027・2028年度分は全額で見ます。
①の下限について、中間とりまとめでは、給与収入約106万円超(勤め先の社会保険に入る線)、74万円超(給与所得が出始める線)、約53万円超(雇用保険に入る線)の3つの意見が並んでいました。大綱は、課税所得の把握や事業所得とのバランスを考えて決めるとしています。
単身者、個人事業主、フリーランスも対象です。③の条件があるので、年金だけの人は対象になりませんが、働いていて税・社会保険料の負担が現役並みの高齢者は対象になります。1月1日に日本国内に住所がない人には支給されません。
いくらもらえるのか
法案に金額はありません。前年の所得の額と扶養児童の有無・人数に応じた「政令で定める額」とだけ書かれています。大綱が示した金額の決まり方は次のとおりです。
| 収入の段階 | 支援額 |
|---|---|
| 勤労所得が逓増開始額以下(住民税の所得割がかかる水準をもとに決める) | 定額(定額支援額) |
| 逓増開始額を超えて逓増終了額まで | 一定の割合で逓増 |
| その先 | 定額(支援基本額) |
| 合計所得金額が逓減開始額を超える | 支援基本額(こども加算があればその合計)から逓減し、所得上限額で消える |
大綱の注記では、単身者の個人住民税所得割の非課税限度額は所得45万円(給与収入119万円)とされています。
これに2つの加算があります。扶養児童の有無と人数に応じた定額の「こども加算」(2027・2028年度分は16歳未満の扶養親族、2029年度分からは19歳未満の扶養児童)と、年収の壁に当たる人への「就業促進特例加算」です。就業促進特例加算は、勤労所得が被用者保険の短時間労働者の適用ライン(大綱の注記では給与収入106万円)から、年収の壁による手取りの減少が回復する水準までの人で、被用者保険の適用に伴う社会保険料相当額を払った人が対象です。年収の壁が解消するまでの時限的な措置とされています。
支援額は1,000円単位で、端数は切り上げます。額を決める際には、2027・2028年度分の支援金の総額が、飲食料品の消費税率を0.78%にすることによる消費税(地方消費税を含む)の収入見込額を超えないようにすることも考慮するとされています。ただし、この比較に使う2028年度分の総額には、2029年4月に支払う移行期の加算分を含めません。
2029年度分は、消費税の引き下げが終わる移行期にあたるため、本来の計算式による2029年度分の額の2分の1に相当する額を基本として政令で定めます。残りの半分に相当する額は、2028年度分への加算として2029年4月に支払われます。
どうやって受け取るのか
支給するのは、1月1日時点で住んでいる市区町村です。
- 公金受取口座(公的給付支給等口座)を登録していて、受給資格者であることと支給額が明らかだと市町村長が認めた人は、市町村長が職権で認定できます。この場合は申請がいりません。大綱はこれを原則としています
- 登録していない人は、その年度の「政令で定める日」までに市町村長へ認定の請求をします。職権認定も同じ政令で定める日までに限られます
- 前年までに認定を受けた人は、当年の1月1日時点でも前年の1月1日と同じ市区町村に住んでいれば、改めて認定を受ける必要はありません。引き続き要件を満たすかを市町村長が確認し、政令で定める日までにその年度の額を決定します。別の市区町村へ転居した場合は、以前の認定がそのまま使えると考えず、1月1日時点の住所地の市区町村に確認してください。要件を満たさなくなっていれば認定は取り消されます
- 支払いは年1回で、認定または額の決定の日から2か月以内です
- 2028年度分は、加算前の額を認定・決定の日から2か月以内に、加算分を2029年4月に支払います
- 職権認定などの通知は、本人の申し出があれば電子的な方法で受け取れる仕組みが法案に入っています
支援金には所得税も住民税もかかりません。差し押さえもできません(国税滞納処分等を除く)。ここまでは法案の条文に書かれていることです。
生活保護については、法案の条文ではなく大綱に「生活保護制度においては、支援金を収入認定の対象とする」と書かれています。法律案の要綱と概要には、この点の規定がありません。
2029年度分からの要件が加わると、1月1日に配偶者がいた人のうち、自分の前年の合計所得金額が④の政令で定める額(大綱でいう配偶者所得上限額)を超える人は、その年の3月15日までに、配偶者の氏名などを書いた書面を配偶者の1月1日時点の住所地の市町村長へ提出することになります。所得で判定されるのは配偶者ではなく、提出する本人です。一定の場合は提出したものとみなされ、大綱は確定申告書にこの情報を記載した場合をあげています。
国はコールセンターを置き、自分の支援額をウェブサイトで計算できる仕組みを作るとしています。公金受取口座の登録率は、協議資料の時点で全年齢で約51%です。9月29日には、制度の導入準備費として約338億円の予備費使用が閣議決定されました。自治体のシステム改修費の補助などに使うものです。
今からできること
支援金は住民税の情報をもとに対象者を探します。市町村長は、認定に必要な範囲で、住民税の課税などのために持っている情報を内部で使えると法案に書かれています。2027年度分は、2026年の所得が使われます。
- 公金受取口座を登録しているか確かめる。 デジタル庁は、登録した情報をマイナポータルの「公金受取口座」で確認でき、変更や抹消の手続きもそこからできると案内しています。登録していれば申請なしで受け取れる可能性が高くなります
- 登録していなければ、4つの方法から選ぶ。 デジタル庁によると、登録の申請はマイナポータル、金融機関、所得税の確定申告(還付申告)・更正の請求、年金請求の4つの方法でできます。登録できるのは1人につき1口座で、本人名義の預貯金口座に限られます
- 収入が少なくても申告をしておく。 住民税がかからない人でも、2026年分の所得を住民税の申告や所得税の確定申告で届けておくと、市区町村が所得を把握できます。大綱も、非課税の人に積極的に確定申告をしてもらうことを含めて周知広報するとしています。申告の期間と必要な書類は、国税庁の確定申告の案内と、住んでいる市区町村の住民税の申告の案内で確かめてください
まだ決まっていないこと
政令を待つもの:
- 支援額(定額支援額、支援基本額、こども加算、就業促進特例加算)と逓増・逓減の線
- 所得下限額、所得上限額、純負担基準額と、③に掛ける倍数
- 認定の請求期限と、職権認定の期限、具体的な支給の月
国会を待つもの:
- 法案の成立。10月15日時点では衆議院で審議中です
法案の検討規定に書かれていて、まだ結論が出ていないもの:
- 金融所得を支援金の制度でどう勘案するか。預金等の利子所得や資産の状況の扱いも検討されます
- 税額控除と給付を組み合わせる仕組みの導入
- 支援金の対象にならない低所得の就業者や、病気などで働くことが難しい人への措置。2028年度中に結論を出し、必要があれば2029年度以降に措置するとされています
- 就業していない高齢者等への措置。次期財政検証が作成される年の翌年までに結論を得るとされています(大綱では「次期年金法改正が予定されている令和12年(2030年)まで」でした)
- 国民年金第3号被保険者の制度の見直しと、厚生年金保険・健康保険の適用範囲の拡大。こちらも次期財政検証が作成される年の翌年までに結論を得るとされています
飲食料品の消費税が1%になる範囲や、値札・外食との違いは食料品の消費税1%の記事にまとめています。