振替加算は、原則として自分で別の届出をしなくても老齢基礎年金に付きます。日本年金機構の手続きページが「基本的には、振替加算を受けるための手続きは必要ありませんが」と書いているとおりです。別に届出が必要になるのは、自分が65歳になった後で配偶者側の年金が加入期間240月以上になったときで、そのときの様式は「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届」、提出先は年金事務所か街角の年金相談センターです。まず確認するのは、自分の年金振込通知書か年金額改定通知書に加算が入っているかどうかと、配偶者の厚生年金・共済の加入期間が240月に届いているかどうかの2点です。
原則は届出がいらない。請求書の配偶者欄で処理されるため
振替加算は、自分が老齢基礎年金を請求したときの書類で処理される仕組みになっています。制度ページの説明はこうです。
振替加算は、年金を請求する際の裁定請求書に『配偶者の年金証書の基礎年金番号・年金コード、配偶者の氏名および生年月日』(配偶者が年金の受給権を有していない場合は『配偶者の基礎年金番号、氏名および生年月日』)を正確に記入していただくことによって行われますので、裁定請求書を記入する際には、必ずこれらの事項を記入してください。
だから、65歳で配偶者の加給年金が打ち切られるのと入れ替わりに自分の老齢基礎年金へ加算されるケースでは、追加の届出は想定されていません。逆に言うと、請求書のこの欄を書き忘れていた場合は自動では処理されない可能性があるので、年金証書や通知書の額を見て、入っていなければ年金事務所に相談する流れになります。
振替加算そのものの定義も確認しておきます。
夫(妻)が受けている老齢厚生年金や障害厚生年金に加算されている加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、それまで夫(妻)に支給されていた加給年金額が打ち切られます。このとき妻(夫)が老齢基礎年金を受けられる場合には、一定の基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。これを振替加算といいます。
打ち切られるのは配偶者(夫)の年金に付いていた加給年金額で、加算されるのは自分(妻)の老齢基礎年金です。支給される人が入れ替わるので「振替」と呼ばれます。なお、自分が65歳より後に老齢基礎年金の受給権が発生した場合は、配偶者の加給年金額の対象者でなくても、要件を満たせば加算されるとも書かれています。
届出が必要なのは、65歳の後に配偶者の年金が240月以上になったとき
例外が、ここです。制度ページは「老齢基礎年金を受給している妻(夫)が65歳になった後に、夫(妻)の年金が以下のいずれかの場合にあてはまるとき」に新たに振替加算を受けられるとして、2つを挙げています。
- 夫(妻)が厚生年金保険および共済組合等の加入期間をあわせて240月以上の老齢年金または障害年金(1,2級)を受けられるようになった場合
- 夫(妻)が受けている年金が退職による年金額改定によって、厚生年金保険および共済組合等の加入期間をあわせて240月以上の老齢年金になった場合
そして「この場合、振替加算を受けるためには、「老齢基礎年金額加算開始事由該当届」による届出が必要です。必要書類を添えて、お近くの年金事務所に提出してください。」と続きます。
手続きページ側の書き方は、配偶者が240月を満たす経路をもう少し広く示しています。
基本的には、振替加算を受けるための手続きは必要ありませんが、妻(夫)が65歳になった後に、夫(妻)が厚生年金保険の加入期間が240月(中高齢の特例※1に該当する場合を含む)を満たした※2老齢(退職)年金を受けられるようになった場合等は、振替加算を受けるために、「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届」の提出が必要です。
ここでいう中高齢の特例は「昭和26年4月1日以前に生まれた方」が対象で、40歳(女性および坑内員・船員の場合は35歳)以降の厚生年金の被保険者期間が生年月日に応じた期間(昭和22年4月1日以前は15年、以降1年刻みで昭和25年4月2日〜昭和26年4月1日は19年)以上であることとされています。240月に足りなくても、この特例に当たれば満たした扱いになります。
つまり、自分が65歳になった時点では配偶者の加入期間が足りず、加給年金も振替加算もなかった。その後に配偶者が退職したり年金を受け始めて240月以上になった——という順番のときに、こちらから届出をする必要が出てきます。待っていても自動では付きません。
「240月を満たした時期」で加算開始日が変わる
いつから加算されるかは、配偶者が240月を満たした時期で決まります。手続きページの表がそのまま基準です。
| 配偶者が240月を満たした時期 | 加算開始日 |
|---|---|
| 60歳時点で満たしている | 定額開始年齢の誕生日の前日 |
| 60歳から定額部分支給開始時までに退職して満たした | 定額開始年齢の誕生日の前日 |
| 定額部分支給開始後から65歳までの間に退職して満たした | 資格喪失日 |
| 65歳到達時に満たした | 65歳の誕生日の前日 |
| 65歳以上70歳未満の間に退職して満たした | 資格喪失日 |
| 70歳到達時に満たした | 70歳の誕生日の前日 |
退職で満たしたケースには注記が付いています。「資格喪失日以後1カ月を経過することなく厚生年金保険の被保険者になった場合には該当しません。」——退職してすぐ別の会社で厚生年金に入り直した場合は、この退職による加算開始には当たらないという意味です。資格喪失日そのものは「通常は退職日の翌日」とされています。
なお、加入期間の再計算が行われる時期も用語解説に書かれています。老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を受ける年齢に達したとき、退職などで資格を失ったとき、65歳に達したとき、70歳に達したときの4つです。配偶者の年金額改定の通知が届くのはこれらの時期なので、届出のきっかけもここで分かります。
必要書類と提出先
様式は「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届」です。添付書類は3つで、使う目的もページに書かれています。
| 添付書類 | 使用目的 |
|---|---|
| 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本(記載事項証明書) | 受給権者と配偶者の続柄を確認するため |
| 世帯全員の住民票の写し(続柄・筆頭者が記載されているもの) | 受給権者と配偶者の生計同一関係を確認するため |
| 受給権者の所得証明書、非課税証明書のうち、いずれかひとつ(加算開始日からみて直近のもの) | 受給権者が配偶者によって生計維持されていることを確認するため |
この3つは「該当届にご本人や加給年金額の対象者の個人番号(マイナンバー)を記載することで添付を省略できます。」とされています。ただし同じページの注意事項に、マイナンバーを記載した場合でも「戸籍謄本等の添付書類の提出を求めることがありますので、ご了承ください。」と書かれています。省略できるのが原則で、求められる余地が残っている、という読み方になります。
紙で出す場合の条件も具体的です。
- 添付書類は原本を用意する
- 戸籍と住民票の写しは、加算開始日より後に発行されたもので、かつ提出日から6か月以内のもの
- 所得証明書・非課税証明書は、加算開始日からみて直近のもの
発行日の条件が加算開始日を起点にしているので、先に加算開始日を確定させてから取りに行く順番になります。加算開始日が自分のどの行に当たるか分からないうちに戸籍を取ると、日付が早すぎて使えないことがあります。
提出先は「お近くの年金事務所または街角の年金相談センター」です。市区町村の国民年金窓口ではありません。
対象になる人・ならない人
対象者の条件は3つ挙げられています。
- 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること
- 自分が老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険および共済組合等の加入期間をあわせて240月未満であること
- 自分の共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降(夫は40歳以降)の加入期間が、生年月日に応じた表の期間未満であること
2つめは見落としやすい条件です。配偶者側に240月以上が必要なのに対し、自分の側は240月未満であることが条件です。自分も長く厚生年金に加入していた場合は、加給年金の対象から外れるのと同じ理由で振替加算の対象にもなりません。
3つめの表は昭和22年4月1日以前が180月(15年)から始まり、昭和25年4月2日〜昭和26年4月1日が228月(19年)までで終わっています。それより後に生まれた人へこの条件がどう当てはまるかは、このページからは読み取れません。自分の生年月日が表の範囲より後で、2つめの条件に引っかかりそうな場合は、加入期間の月数を手元のねんきん定期便や年金証書で数えたうえで年金事務所に確認してください。
付く額は生年月日で決まる
金額は、受け取る本人の生年月日で決まります。制度ページの説明はこうです。
振替加算の額は、以下の表のように、昭和61年4月1日に59歳以上(大正15年4月2日から昭和2年4月1日生まれ)の方については243,100円で、それ以後年齢が若くなるごとに減額していき、昭和61年4月1日に20歳未満(昭和41年4月2日以後生まれ)の方はゼロとなるように決められています。
若い世代ほど小さくなる設計で、表の下の方は次のようになっています。
| 生年月日 | 政令で定める率 | 年額 | 月額 |
|---|---|---|---|
| 昭和2年4月1日まで | 1.000 | 243,100円 | 20,258円 |
| 昭和35年4月2日から昭和36年4月1日 | 0.093 | 22,673円 | 1,889円 |
| 昭和36年4月2日から昭和37年4月1日 | 0.067 | 16,335円 | 1,361円 |
| 昭和40年4月2日から昭和41年4月1日 | 0.067 | 16,335円 | 1,361円 |
| 昭和41年4月2日から | - | - | - |
昭和36年4月2日以後生まれは率が0.067で固定され、年16,335円・月1,361円が下限になります。昭和41年4月2日からは率も額も「-」で、対象になりません。
ここは金額の感覚がずれやすいところです。配偶者側で打ち切られる配偶者の加給年金額は令和8年4月から243,800円(受給権者の生年月日によって36,000円から179,900円の特別加算が付く場合はさらに増える)ですが、入れ替わりに自分の老齢基礎年金へ付く振替加算は、いま65歳前後の世代だと年16,335円です。「同じ額が自分に移る」仕組みではありません。世帯で見た年金額は減ります。
確認するときに気をつける点
- 加算が入っているかどうかは、年金振込通知書や年金額改定通知書の老齢基礎年金の額で見る。加給年金のように独立した欄で示されるわけではないので、額が変わった時期と突き合わせる
- 届出が必要なケースのきっかけは、自分の年金ではなく配偶者の年金の変化。配偶者に年金額改定通知書が届いたときが確認のタイミングになる
- 戸籍と住民票の写しは加算開始日より後の発行で、提出日から6か月以内のもの。先に加算開始日を確認する
- 中高齢の特例は昭和26年4月1日以前に生まれた人が対象。配偶者がそれより後の生まれなら、240月そのものを満たしているかで判断する
- 自分の厚生年金・共済の加入期間が240月以上あると、対象外になる
参考資料
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」— 振替加算とは、対象者の3条件、金額表、裁定請求書による手続き、別途届出が必要な2つの場合(更新日2026年10月30日)
- 日本年金機構「振替加算を受けられるようになったとき」— 原則として手続き不要であること、240月を満たす時期と加算開始日の表、中高齢の特例、必要書類と添付省略、提出先(更新日2025年4月1日)