学資保険と新NISA、子どもの教育費18年計画はどちらに寄せるか
確実に決まった額が必要なら学資保険、長期で値動きを許容できるなら新NISAが軸になる。実務的には半々で持ち、大学初年度分だけ学資保険で確保する折衷案が無理なく続けやすい。
目次(9項目)
子どもが生まれてから大学に進学するまでの18年間で、教育費の準備を学資保険と新NISAのつみたて投資枠のどちらに寄せるか、迷う家庭は少なくありません。返戻率を並べて比較するだけでは決まらず、家計の安定度や途中で資金が必要になったときの取り出しやすさが、判断に大きく影響します。先に押さえておきたいのは、両者が「保険」と「投資」で前提の違う商品で、同じ土俵で優劣を競うものではない点です。本稿では家庭の状況ごとに、どちらに比重を置くべきかを整理します。
学資保険と新NISAは前提が違う商品
学資保険は生命保険会社が販売する貯蓄性の保険で、満期時に受け取る金額があらかじめ契約で決まっています。契約者(多くは親)に万が一があった場合、その後の保険料は払込が免除されたまま満額が支払われる仕組みが組み込まれているのが一般的です。返戻率はソニー生命や明治安田生命などの代表的な商品で105〜108%前後が多く、ここ数年は低金利の影響で過去より下がっています。
新NISAのつみたて投資枠は、金融庁が選んだ投資信託を毎月一定額買い付ける長期積立の枠組みで、運用益と分配金が非課税になります。受取額はその時点の評価額次第で、過去20年の世界株インデックスの実績では年率5〜7%の上昇局面もあれば、暴落で30%以上下落した時期もあります。元本は保証されません。
整理すると「確実に決まった額を受け取りたい」のが学資保険、「リスクを取って増やしたい」のが新NISA、と性格がはっきり分かれます。返戻率だけを並べて比較すると新NISAが圧倒的に有利に見えますが、相場下落時に元本を下回るリスクをどこまで許容できるかが家庭ごとに違うので、単純比較では決めにくい商品です。
「確実に受け取りたい額」を先に決める
判断の入口として有効なのは、18歳時点で「これだけは確実に手元にあってほしい」という最低ラインを家計で先に決めることです。文部科学省の「子供の学習費調査」と日本政策金融公庫の教育費負担調査では、私立大学(文系)の初年度納付金が115万円前後、国公立大学では82万円前後が目安として示されています。入学金と前期授業料を合わせると、新入学のタイミングで100万円前後の現金が必要です。
この最低ラインを学資保険で確保し、その上の進学費用や下宿の仕送り分を新NISAで運用するという二段構えが、家計面では無理がありません。最低ラインまですべて運用で賄おうとすると、進学直前の相場下落で資金不足になるリスクが避けられないためです。
逆に、最低ラインを大きく上回る貯蓄が別にある世帯であれば、教育費そのものを丸ごと運用に振り向けても許容範囲に収まります。家庭の総資産のなかで、教育費が占める比重がどの程度かによって、許容できるリスクが変わると考えると整理しやすくなります。
税制の違いと家計への影響
学資保険の保険料は、契約形態によっては一般生命保険料控除の対象になり、年間の所得税・住民税が一定額軽減されます。年間8万円以上の払込で所得税側は最大4万円(住民税は2万8千円)の所得控除が受けられる仕組みで、長期で積み上げると無視できない金額になります。ただし他の生命保険料と枠を共有するので、すでに枠を使い切っている世帯では追加メリットは生まれません。
新NISAは運用益が非課税という強い特典がある一方、保険料控除のような所得控除はありません。代わりに、課税口座で運用した場合に2割引かれる譲渡益課税(20.315%)が丸ごと免除されるため、長期で運用益が大きく育つほど効果が顕在化します。月3万円を18年運用し、運用益が400万円出た場合、課税口座なら約80万円の税金がかかる計算が、新NISAなら丸ごと手元に残ります。
受取時の課税にも差があります。学資保険の満期金は一時所得として扱われ、払込総額との差額から50万円の特別控除を引いた半分が課税対象です。返戻率108%程度であれば、ほぼ非課税に収まるケースが多いものの、受取人と契約者が異なる場合は贈与税の対象になるため、契約形態を組み立てる段階で確認しておく必要があります。
学資保険を主軸にしたほうが落ち着くケース
夫婦のどちらか一方の収入で家計を回している世帯、自営業で年収の上下幅が大きい世帯、住宅ローン返済中でキャッシュフローに余裕が少ない世帯では、確実性を優先する学資保険のほうが続けやすい傾向があります。
毎月の保険料2万円を18年積み立てると元本は432万円、返戻率107%として満期金は約462万円。年率換算で0.7〜0.8%程度のリターンになり、運用効率は決して高くありません。それでも、契約者死亡時の保険料免除と確実な満期金支給という安心料が含まれていると見れば、家計のセーフティネットとしての価値は残ります。
ただし学資保険には注意点もあります。10年以内に解約すると元本割れする商品がほとんどで、解約返戻率が9割を切る期間が長いです。さらに、満期前に保険料の金額を柔軟に増減することは難しく、家計が悪化したからといって積立額を半分にする、といった調整がしにくい商品設計です。インフレが続いた場合、固定された満期金の実質価値が目減りするリスクもあります。
新NISAを主軸にしたほうが効率的なケース
共働きで家計に余裕があり、教育費以外の貯蓄も並行して進められる世帯、もしくは「途中で家計が変わる可能性が高いので、いつでも引き出せる柔軟性が欲しい」という世帯では、新NISAを軸にしたほうが結果として効率が高くなりやすいです。
つみたて投資枠の上限は年120万円で、月10万円まで積み立てられます。子どもが0歳のうちから月3万円を世界株インデックスファンドに積み立てた場合、年率5%で18年運用した試算では元本648万円が約1,050万円に育つ計算になります。学資保険の同じ元本との差はかなり大きく、教育費だけでなく独立後の援助資金まで視野に入る金額です。
ただし2042年前後に進学のタイミングが市場下落局面と重なると、評価額が元本を割り込むこともあり得ます。対処としては、進学が近づいた段階(高校生以降が一案)で運用商品の比率を段階的に下げ、現金や個人向け国債に寄せていく考え方が必要です。これを「グライドパス」と呼びます。新NISA枠は売却した翌年に枠が復活するため、進学に向けて少しずつ現金化していく動かし方は、制度上も無理がありません。
半々で持つ場合の典型的な組み立て
実務的に多いのは、学資保険と新NISAを半々で持つ折衷案です。学資保険で大学初年度の100〜200万円を確実に確保し、新NISAで残りの2〜4年分の学費や仕送りを準備する形になります。
具体例として、月の予算が4万円なら、学資保険1万5,000円(満期金約350万円)と新NISA2万5,000円(年率4%試算で約780万円)に振り分ける配分が考えられます。家計が苦しくなったら新NISA側の積立額を一時的に減らせるため、調整余地が残せる点が利点です。逆に余裕があれば、新NISAのほうを増額して上限の月10万円まで引き上げる動きも取りやすくなります。
夫婦間で意見が分かれる場合(夫はリスクを取りたい、妻は元本保証派、というように)も、折衷案であれば双方の安心感を確保しやすくなります。資金準備の話し合いでぶつかってしまう前に、配分を文章にして残しておくと、見直しのときに揉めにくいです。
いつから始めるかと「年齢が遅い世帯」の対応
学資保険は子どもが0歳のうちに加入するほど月々の保険料が抑えられ、返戻率も高くなります。多くの商品で7歳前後を加入年齢の上限としているため、就学前に検討するのが現実的です。新NISAは子ども自身の年齢制限はないので、親の口座でいつ始めても構いません。
「子どもがすでに小学校高学年で、学資保険にはもう加入しづらい」という相談もよく受けます。この場合は、新NISAで残り期間の積立を組みつつ、家計の安全策として終身保険や個人向け国債(変動10年)を補助的に組み合わせる方法が現実的です。学資保険にこだわらず、満期金型ではない貯蓄性商品まで視野を広げると選択肢が増えます。
中学生以降に教育費準備を始める場合は、運用期間が短くなる分、新NISAだけで全額を賄うとリスクが高くなります。預貯金と新NISAを半々程度に分け、リスクを取り過ぎない方針に切り替えるほうが、進学直前のショックを抑えられます。
祖父母からの援助・教育資金贈与があるとき
祖父母からの援助を当てにできる場合は、その確度と方式によって自分たちの準備配分が変わります。教育資金一括贈与の非課税特例は、孫1人につき最大1,500万円までを信託銀行などの専用口座で管理する仕組みで、領収書を提出しながら教育費に充てていく形です。30歳までに使い切らないと贈与税が発生するため、新NISAなどで運用する資金とは別枠で管理することになります。
この援助が確実に見込めるのであれば、自分たちで準備する分は新NISA中心にしても家計のセーフティが揺らぎにくくなります。逆に、援助の話はあるが正式な約束まで至っていない段階では、確実性のある学資保険の比率を下げない方が無難です。祖父母側にも事情があり、後年に状況が変わることがあるため、保険的な備えを残しておくと心穏やかに進められます。
教育資金贈与の特例は時限措置で、現行制度の適用期限や非課税枠の見直しは数年単位で議論されています。検討段階の制度変更で計画が崩れないよう、国税庁や信託銀行の最新情報を契約直前に確認してください。
参考資料
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」
- 公益財団法人生命保険文化センター「学資保険」
- 文部科学省「子供の学習費調査」
- 国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」
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参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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