国民年金 任意加入 60歳から払う価値ある?損益分岐は何年か(2026年度)
2026年度は月17,920円。1年分の任意加入で老齢基礎年金が年20,000円台前半増える目安なので、65歳から受給開始の場合は約10年で元が取れる計算になります。
目次(10項目)
定年や早期退職で60歳を区切りに会社員を離れた方から「いまさら国民年金に任意加入してもう一度払うの、どう思いますか」と相談を受けることがあります。結論から書くと、納付月数が満額の480月に届いていない人にとっては、自分の寿命に賭けるというより、年単位の保険料を10年前後で取り戻せる設計になっています。本記事では2026年度の金額を使って、損益分岐の計算、対象になる人、見落としやすい注意点をまとめます。判断する前に手元に置いておきたいのは、ねんきん定期便と、過去の就業履歴の2つです。
結論:払った保険料は約10年で取り戻す目安
2026年度の国民年金保険料は月17,920円なので、1年加入で約21万5,000円を払うことになります。1年分の納付で増える老齢基礎年金額は20,000円台前半(後ほど計算式を示します)なので、65歳から受給開始する場合、概ね10年強で払った保険料の合計を年金で取り戻せる計算です。
つまり75歳前後まで生きていれば元が取れる、というのが大まかなラインです。厚生労働省の簡易生命表(2024年公表分)では65歳男性の平均余命は約20年、女性は約25年とされているため、平均的な余命を当てはめると、任意加入は「払うより受け取る方が多い」期待値が立つ制度に位置づけられます。
ただし損益分岐はあくまで保険料・年金額・受給開始年齢の組み合わせで動きます。所得控除による節税効果、繰り下げ受給を選んだ場合の増額、付加保険料を併用した場合まで含めると、後の節で書く通りもう少し早く元を取り戻せるケースもあります。
任意加入が使えるのはどんな人か
任意加入が使えるのは、ざっくり次のような状況にある方です。
- 60歳以上65歳未満で、これまでの納付月数(保険料を払った期間+会社員として厚生年金に入っていた期間)が480月に達していない人
- 海外に居住する20歳以上65歳未満の日本国籍の人
- 65歳以上70歳未満で、まだ老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていない人(「特例任意加入」と呼ばれる扱いになります)
学生時代に学生納付特例で猶予を受けて追納しなかった期間、20代で会社を辞めて第1号被保険者だったのに未納だった月、結婚・離婚で第3号被保険者の届け出が遅れた期間など、振り返ると数年ほど穴が空いている方は少なくありません。任意加入は、その穴を60歳以降に埋めるための制度です。
逆に、すでに480月分の納付が終わっている人は、満額の老齢基礎年金を受給できる状態なので任意加入はできません。「もうこれ以上は払わなくてよい」とも言えますし、「ここから先は厚生年金や付加保険料で増やす」という考え方に切り替える時期でもあります。
月17,920円で増える年金額の計算
ここからは2026年度(令和8年度)の数字を使って、1ヶ月任意加入したときに年金がいくら増えるかを見ます。
老齢基礎年金は、満額を480月で割って1ヶ月あたりの増加分を出します。2026年度の老齢基礎年金の満額は、年金額改定により2025年度から1.9%程度引き上げられて年83万円台前半に改定される見込みです。厚生労働省の公式発表分を使うのが安全なので、自分のねんきん定期便と日本年金機構の最新ページで確認してください。
仮に満額が年83万3,000円だとすると、1ヶ月加入で増える老齢基礎年金は年約1,735円(833,000円÷480月)になります。これを12ヶ月分積み上げると、1年加入で年20,820円ほど増える計算です。
ここで2026年度の保険料17,920円との関係を整理します。
- 1ヶ月の保険料:17,920円
- 1ヶ月加入で増える老齢基礎年金額:年約1,735円
- 単純な損益分岐(月単位):17,920円÷1,735円=約10.3年
つまり65歳から受給を始めるなら、75歳3ヶ月くらいまで生きると保険料分を取り戻せます。これは年金額改定の影響で毎年少しずつ変動しますし、社会保険料控除による節税効果は別枠の上振れ要因です。
何歳まで生きれば元が取れるかの目安
年単位で考えると、保険料の総額と将来受け取る年金額の関係はだいたい次のようになります。
- 1年加入=保険料総額215,040円 / 年金増加額 約20,800円 → 損益分岐 約10.3年
- 2年加入=430,080円 / 約41,600円 → 損益分岐 約10.3年
- 5年加入=1,075,200円 / 約104,000円 → 損益分岐 約10.3年
加入年数が変わっても、保険料と増える年金額が同じ割合で増えるので、損益分岐は約10年で安定します。ここに65歳の平均余命を重ねると、男性は損益分岐の約2倍、女性は約2.5倍の期間で受け取り続ける期待値になり、平均的なケースでは保険料以上を回収できる設計です。
ただし、長期療養や持病などで受給期間が短くなる可能性もあります。年金は終身で受け取れる商品なので「長生きリスクへの備え」と考える方が、利回り計算より実態に近いと感じます。65歳時点で持病が判明していて、平均余命を大きく下回る可能性がある方は、任意加入の枠で払うより、現預金で残しておいた方が手元の自由度が高い、という選択もありえます。
再雇用で厚生年金に入っている人は対象外
任意加入の相談で見落としやすいのが、定年後に再雇用や継続雇用で会社員として働いていて、厚生年金に入っているケースです。
厚生年金の被保険者(第2号被保険者)は、国民年金にも自動的に加入している扱いになるため、追加で任意加入はできません。代わりに、給与から天引きされる厚生年金保険料の中に国民年金分が含まれていて、そこで納付月数が積み上がっていきます。
この状態で増えるのは老齢基礎年金だけでなく、報酬比例部分の老齢厚生年金も並行して増えるので、給与水準にもよりますが、任意加入よりも増額の絶対額は大きくなります。
注意したいのは、給与水準を抑えるために週20時間未満などで働く場合や、フリーランスへの転身で第1号被保険者に戻った場合は再び任意加入の対象になり得る、という点です。会社員と非会社員を行き来する場面では、自分の現在の被保険者種別をねんきんネットで確認してから判断してください。
社会保険料控除でいくら戻ってくるか
任意加入の保険料は社会保険料控除の対象になるため、所得税と住民税が軽くなる分を考えると、実質負担はもう少し軽くなります。
たとえば60歳以降も年金や継続雇用で年間200万円程度の所得がある方の場合、所得税率5%+住民税率10%=合計15%が控除の効果として戻ってくるケースが多くなります。
- 1年分の保険料:215,040円
- 節税効果(税率15%と仮定):約32,000円
- 実質負担:約183,000円
この前提だと、損益分岐は約183,000円÷20,800円=約8.8年まで縮まります。65歳から受給する場合、74歳少し前で取り戻せる計算です。
もちろん、配偶者控除や医療費控除などの組み合わせで税率が変わると、節税効果も変わります。住民税の所得割が課税されていない方は所得税分しか戻りませんし、課税所得が高い方は税率20%・23%のラインで節税額がもっと大きくなります。年末調整や確定申告で控除証明書を必ず添付してください。
繰り下げ受給と組み合わせた場合
老齢基礎年金は66歳以降75歳までの間で受給開始を遅らせることができ、1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額されます。最大の75歳開始で84%の増額です。
任意加入で増えた分の年金額も、当然この増額の対象になります。たとえば1年任意加入で月額1,735円増えた老齢基礎年金を、70歳まで5年繰り下げた場合は42%増額されるので、月額約2,463円になります。
その結果、損益分岐は次のように変わります。
- 65歳開始:1ヶ月の保険料17,920円 ÷ 月額1,735円 × 12=約10.3年(75歳3ヶ月)
- 70歳開始:1ヶ月の保険料17,920円 ÷ 月額2,463円 × 12=約7.3年(77歳3ヶ月)
- 75歳開始:1ヶ月の保険料17,920円 ÷ 月額3,193円 × 12=約5.6年(80歳7ヶ月)
繰り下げると元を取るまでに必要な「受給開始からの年数」自体は短くなりますが、受給を始める年齢が後ろにずれるので、最終的に元が取れる年齢は逆に上がります。長生きする自信がある人ほど、任意加入+繰り下げの組み合わせは効きやすい設計です。
会社員に戻る選択肢があるなら厚生年金優先
60歳以降にパートやアルバイトで働く予定がある方は、任意加入と厚生年金加入のどちらが有利か、一度比べてから判断してください。
厚生年金は労使折半なので、月15,000円の保険料負担で月30,000円分の保険料が積み上がっていく構造です。さらに報酬比例部分の老齢厚生年金も増えるため、増える年金額の合計は任意加入より大きくなります。社会保険完備の勤め先で週20時間以上・月収8.8万円以上などの加入要件を満たすなら、厚生年金加入の方が利回りは高いケースが多くなります。
逆に、配偶者の扶養に入りたい、年収の壁を超えたくない、健康面で長く働けないといった事情で厚生年金加入が難しい方は、任意加入が現実的な選択肢になります。
「いま使えるカード」がどちらかは人によって違うので、就労継続の見込みと健康状態を並べて、年金事務所や社労士に一度相談してみるのが安全です。
付加保険料を組み合わせるとどうなるか
任意加入と並行して使える制度に「付加保険料」があります。月400円を上乗せして納めると、将来の老齢基礎年金に「200円×納付月数」が加算される仕組みです。
たとえば60歳から65歳まで5年(60ヶ月)任意加入して、その期間ずっと付加保険料を組み合わせた場合、
- 払う付加保険料:400円×60ヶ月=24,000円
- 増える年金額:200円×60ヶ月=12,000円/年
つまり付加保険料部分だけ見れば、2年で元が取れる計算になります。任意加入をする方は、ほぼ全員が付加保険料を併用してよいくらいの利回りです(国民年金基金に加入している方は併用できないなど、一部例外はあります)。
ただし、付加保険料は申し込みが別途必要で、任意加入と同時に手続きしないと損をします。市区町村の国民年金窓口、または年金事務所で「任意加入と付加保険料を同時に申し込みたい」と伝えてください。
やる前に必ず確認したいこと
任意加入の判断をする前に、最低限おさえておきたいポイントを置いておきます。
- ねんきん定期便で、これまでの納付月数(480月までの残りが何月か)を確認する
- ねんきんネットで、任意加入した場合と何もしない場合の年金見込み額の差を試算する
- 再雇用やフリーランスの予定がある場合は、その期間の保険料種別がどう変わるか確認する
- 配偶者の働き方(第3号→第1号に切り替わる予定があるか)を一緒に整理する
- 国民年金基金やiDeCoとの併用ルールを年金事務所で確認する
- 健康状態や持病、家計の余裕度から「いまの数十万円を年金枠に固定してよいか」を考える
ねんきんネットの試算は、マイナンバーカード経由か、ねんきん定期便に書かれているアクセスキーで登録すると無料で使えます。自分の数字で計算しないまま「任意加入=得」と決めてしまうのが一番もったいないので、まずは試算から始めるのをおすすめします。
国民年金は終身年金なので、長生きすればするほど任意加入が「払って良かった」と感じられる制度です。一方で、家計の余力が薄い中で無理に5年分まとめて払うようなものではありません。手元資金とのバランスを取りながら、まず1年分から始めるという選択肢も含めて、自分にとって自然なペースを選んでください。
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参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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