道路の穴ぼこや段差にはまってタイヤがパンクした、ホイールが曲がった。こうしたとき、道路の管理に欠点(瑕疵)があったのなら、国家賠償法2条に基づいて、その道路を管理する国・都道府県・市区町村に賠償を求められます。岡山市は、道路管理者の管理に欠点があった場合、欠点の程度に応じて道路管理者が賠償の責を負うと説明しています。
岡山市と千葉市のよくある質問は、まず現場を管轄する区役所や土木事務所に連絡するよう案内しています。岡山市は、警察署にも連絡して事故証明を取るよう求めています。ただし、賠償されるのは管理の欠点の程度に応じた額で、市の過失割合を2割とした例もあり、修理代の全額が出るとは限りません。
この記事では、賠償の根拠、連絡先の見分け方、自治体が実際に賠償した例、#9910との違いを、法令と自治体の資料で確かめます。
根拠は国家賠償法2条
国家賠償法2条1項は、次のように定めています。
「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」
ここでいう「瑕疵」について、地方自治研究機構の自治体法務Q&Aは、最高裁判例(昭和45年8月20日)を引いて「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と説明しています。通常有すべき安全性を欠くかどうかは、その営造物の構造、本来の用法、場所的環境、利用状況などの事情を総合的に考えて、具体的・個別的に判断するものとされています(最高裁昭和53年7月4日判決)。
つまり、道路に穴があったという事実だけで決まるのではなく、その道路がどんな道で、穴がどの程度のものだったか、といった事情を見て判断されます。同じQ&Aには、管理に瑕疵がないとして運転者の損害賠償請求が退けられた判決(東京地裁平成16年6月25日、街路樹の事例)も挙がっています。
まず連絡するのは、その道路の管理者
賠償の相手は、その道路を管理している者です。国道(国の管理区間)、都道府県道、市区町村道で、連絡先が変わります。
自治体のよくある質問は、次のように案内しています。
- 岡山市:市道の穴ぼこや段差で車が壊れたり、けがをしたりした場合は、各区役所の地域整備課、北区役所土木農林分室、各支所の産業建設課に連絡する。警察署にも連絡し、事故証明を取る
- 千葉市:事故の日時や状況を確認したうえで現地を調査する必要があるので、事故現場を所管する区の土木事務所に連絡する。事故現場が国道の場合は千葉国道事務所に連絡する
- 広島市:現場を管轄する各区役所の維持管理課(休日・夜間も受付)か、各区の「道の相談室」(平日の日中、通話料無料)に連絡する。国道2号(一部区間を除く)、国道31号、国道54号は、国土交通省中国地方整備局の道路緊急ダイヤル(#9910)に問い合わせる
- 横浜市:道路の陥没や穴など舗装の損傷は、その区の土木事務所に連絡する
どの道路がどこの管理かは、現場では分かりにくいことがあります。広島市は、国道・県道・市道のどれかを、市の地図サイト「ひろしま地図ナビ(道路情報)」や区役所・市役所で確認できるとしています。
その場でしておくこと
自治体の案内と通報サービスの説明から、その場でしておくとよいことは次のとおりです。
- 安全な場所に車を止める。 政府広報オンラインは、交通事故などの情報は警察(110番)に通報するよう案内しています。
- 穴と車の写真を撮る。 埼玉県の道路損傷通報サービスは、穴などの損傷を通報するとき、近くからの写真と遠くからの写真の2枚以上を撮るよう求めています。これにならって、場所が分かる遠くからの写真と、穴の大きさが分かる近くからの写真を残し、壊れたタイヤやホイールも撮っておきます。
- 場所を正確に控える。 政府広報オンラインは、#9910に通報する際、道路名、進行方向、キロポスト(距離標識)、目印となる周辺の施設を確認しておくとよいとしています。賠償の連絡でも、事故の日時と場所の特定に役立ちます。
- 道路管理者と警察に連絡する。 上の岡山市・千葉市の案内のとおりです。
千葉市は、事故の日時や状況を確認したうえで現地を調査する必要があるとしています。修理を急ぐ場合も、先に道路管理者へ連絡し、修理の進め方や請求に必要な書類を確かめます。
実際に賠償された例
市町村が損害賠償の額を決めたときは、議会に専決処分として報告されることがあります。公開された報告から、道路の穴による車の損傷の例を挙げます。
- 八代市(令和6年11月25日提出の報告)
- 市道を走行中の車がポットホールに入り、左前輪タイヤが損傷:賠償金3万3,000円
- 市道を走行中の車がポットホールに入り、右前輪タイヤがパンクしホイールが損傷:賠償金3万6,850円
- どちらも全額が道路賠償責任保険でまかなわれ、市費負担は0円
- 高山市(平成27年6月1日提出の報告)
- 市道上にできた陥没穴による走行中の車両破損事故が3件。いずれも市の過失割合を100分の20とし、被害総額1万6,848円に対して賠償金3,369円、1万2,310円に対して2,462円、7万9,272円に対して1万5,854円
八代市の報告には過失割合が書かれていないため、修理代のどの部分に当たる額かは分かりません。高山市の例のように、運転者の側にも過失があるとされれば、賠償額は被害額より少なくなります。
#9910は「通報」の窓口
道路緊急ダイヤル「#9910」は、道路の穴ぼこ、路面の陥没、落下物、ガードレールの損傷などを見つけたときの全国共通の通報窓口です。政府広報オンラインによると、24時間365日、通話料無料で、音声ガイダンスに従うと最寄りの国道事務所か高速道路会社につながります。都道府県道や市区町村道の通報は、国道事務所から該当する道路管理者に情報が渡されます。2024年3月からは、写真と位置情報を送れるLINE通報も始まっています。
ただし、通報を受けた道路管理者は必要に応じて現地調査や補修をするものの、通報者への対応状況や結果の個別連絡は行わないとされています。#9910は、穴をふさいでもらうための通報です。自分の車の損害について賠償を求めるなら、上で見たように現場の道路管理者に事故として連絡します(広島市は国道の一部区間について#9910を問い合わせ先にしています)。
この記事で確認できなかったこと
2026年11月8日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 道路管理者に請求するときに出す書類(修理の見積書・領収書、事故証明書など)の一覧と、請求の期限。
- 過失割合がどのような基準で決まるか。
- 警察への届出をしなかった場合に、賠償の判断で不利になるか。
- 自分の車両保険を使った場合と、道路管理者への請求との関係。
- 高速道路(高速道路会社の管理区間)で同じことが起きた場合の窓口と扱い。
参考資料
- e-Gov法令検索 国家賠償法 — 第2条(公の営造物の設置・管理の瑕疵による賠償責任)
- 岡山市 市道の穴ぼこ・段差で車が壊れた場合の補償 — 管理の欠点の程度に応じた賠償、連絡先、警察と事故証明
- 千葉市 道路の穴ぼこ・段差で車が壊れた場合 — 日時・状況の確認と現地調査、土木事務所、国道は千葉国道事務所
- 広島市 道路の穴ぼこや段差などが原因で、車が壊れた — 区役所維持管理課(休日・夜間も受付)、道の相談室、国道の一部区間は#9910
- 広島市 道路が国道、県道、市道かどうか確認したい — 地図サイトと区役所での確認
- 横浜市 道路の陥没・穴の補修の連絡先 — 区の土木事務所
- 埼玉県 道路損傷通報サービス — 近くと遠くからの写真2枚以上
- 政府広報オンライン 道路緊急ダイヤル#9910 — 24時間無料、つながる先、伝える情報、LINE通報、個別連絡なし、交通事故は110番
- 八代市 専決処分報告書(令和6年11月25日提出) — ポットホールによるタイヤ・ホイール損傷の賠償額
- 高山市 損害賠償の額の決定の専決処分について(平成27年6月1日提出) — 陥没穴による車両破損、市の過失割合100分の20
- 地方自治研究機構 自治体法務Q&A — 「瑕疵」の意味と判断の仕方(最高裁判例)