結論:雪道の決まりは3段階。スタッドレスで足りるのは2段階目まで
「スタッドレスを履いているから冬は大丈夫」は、半分だけ正しい言い方です。雪道に関わる決まりは3段階に分かれていて、スタッドレスタイヤで済むのは2段階目までにとどまります。
| 段階 | 誰が決めるか | 求められる装備 | スタッドレス | オールシーズン | ノーマル |
|---|---|---|---|---|---|
| ①積雪・凍結路の防滑義務 | 都道府県の公安委員会規則 | チェーンや冬用タイヤなどの滑り止め措置 | 通れる | 県の文言による | 違反(反則金) |
| ②高速道路の冬用タイヤ規制 | 高速道路会社などの道路管理者 | 全車輪に冬用タイヤ、または駆動輪にチェーン | 通れる | スノーフレークマーク付きなら通れる | 通れない |
| ③チェーン規制 | 国・高速道路会社 | 全車にタイヤチェーン | チェーンなしは通れない | 同左 | 同左 |
①は沖縄県を除く全国に常時かかっている決まり、②は雪の日に高速道路で出る規制、③は大雪特別警報級の異例の降雪でしか出ない規制です。混同されやすいのは②と③で、名前が似ているうえ、どちらも電光掲示板に「規制」と出ます。順に見ていきます。
1段階目:積雪・凍結した道でノーマルタイヤは規則違反。普通車の反則金は6,000円
根拠は道路交通法第71条第6号です。運転者は「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」を守らなければならないと定められ、その「定めた事項」が各都道府県の道路交通法施行細則や道路交通規則に置かれています。JAF Mate Onlineによれば、沖縄県を除く各都道府県がこの規則で積雪・凍結路での防滑措置を義務づけています。
違反したときの反則金は道路交通法施行令の別表で決まっていて、公安委員会遵守事項違反として次の額です。
| 車種 | 反則金 |
|---|---|
| 大型車 | 7,000円 |
| 普通車・二輪車 | 6,000円 |
| 原付等 | 5,000円 |
額は政令の改定で変わりうるので、最新は各都道府県警察が公表している反則金一覧で確かめてください。
注意したいのは、県ごとに文言が違うことです。日本自動車タイヤ協会(JATMA)が各県の条文をまとめていて、抜き出すと差がはっきり見えます。
| 都道府県 | 規則の文言(要旨) |
|---|---|
| 北海道 | 積雪し、又は凍結している道路では、スノータイヤを全車輪に装着し、又はタイヤ・チェーンを取り付ける等の滑り止め措置 |
| 新潟県 | 前又は後の駆動輪に鎖等を取り付ける、または全車輪にすべり止め性能のある雪路用タイヤを取り付ける |
| 東京都 | 積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路では、タイヤチェーンを取り付ける等のすべり止め措置 |
| 大阪府 | 積雪又は凍結のため滑るおそれのある道路では、タイヤチェーンを取り付ける等の滑り止め措置 |
| 福岡県 | 積雪又は凍結をしている道路では、滑り止めに必要な措置 |
北海道は「積雪している道路」で義務が発生し、東京都は「明らかにすべると認められる状態」という条件がつきます。同じうっすら積もった道でも、県境をまたぐと義務の発生条件が変わる形です。条文に「タイヤチェーンを取り付ける等」としか書かれていない県でも、タイヤ公正取引協議会は、沖縄県以外の公安委員会がタイヤチェーンの取り付けやスタッドレスタイヤなど冬用タイヤの装着を定めていると説明しています。JAF Mate Onlineも、冬用タイヤの装着を防滑措置の代表に挙げています。自分の県の条文はJATMAのページに一覧があり、県名で探せます。
もう一つ、東北や北陸などの10県には摩耗したタイヤを冬用と認めない規定があります。タイヤ公正取引協議会は、岩手・宮城・秋田・山形・福島・石川・福井・兵庫・鳥取・広島の各県に、50%以上摩耗したタイヤの使用を禁じる規則があると説明しています。JATMAがまとめた条文では「接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないもの」という書き方で、判断の目印はプラットフォームが露出しているかどうかです。溝が残って見えても、プラットフォームが出たスタッドレスはこれらの県で冬用タイヤと扱われません。
法律以前の話として、JAFのユーザーテストでは積雪路で夏用タイヤの制動距離がスタッドレスの1.5倍以上、圧雪路では約1.7倍になりました。反則金6,000円より、この差のほうが実際には重い数字です。
2段階目:高速道路の「冬用タイヤ規制」はスタッドレスで通れる。オールシーズンはマーク次第
雪の日に高速道路の掲示板に出る「冬用タイヤ規制」は、すべり止め装置装着規制とも呼ばれます。JAFの説明では「駆動輪へのチェーン装着」または「全車輪に冬用タイヤ装着」のどちらかで通行できます。NEXCO中日本は、チェーンの場合は駆動輪への装着が必要で一部の県では全車輪、冬用タイヤの場合は全車輪への装着が必要としています。前輪だけスタッドレスで後輪がノーマル、という組み合わせは通れません。
何が「冬用タイヤ」かはタイヤの側面で分かります。NEXCO中日本はスタッドレスやスノータイヤの側面に「STUDLESS」または「SNOW」の表記があると案内し、NEXCO西日本はスタッドレス表記(国内表記)またはスノーフレークマーク(国際表記)があるものを全車輪に装着するよう求めています。
オールシーズンタイヤはここで分かれます。JAFは、側面にスノーフレークマークが付いているタイヤなら高速道路の冬用タイヤ規制中も走行できるとしています。一方で「M+S」の刻印しかないタイヤについて、NEXCO中日本は、ある程度まで積雪路に対応するものの冬用タイヤより制動性能が劣るため、降雪状況によっては走行できない場合があると書いています。オールシーズンを履いている人は、山の輪郭の中に雪の結晶が描かれたマークが側面にあるかを今日見ておくと、雪の日に入口で止められるかどうかが前もって分かります。
もう一点、通れることと止まれることは別です。JAFの氷盤路での制動距離テストでは、スタッドレスが78.5mだったのに対してオールシーズンは101.1mで、JAF自身が「ノーマルタイヤに近い数値」と評しています。JAFは、オールシーズンタイヤを過信せず、スタッドレスタイヤやチェーンなどの滑り止めの装備を積極的に使うよう呼びかけています。
3段階目:「チェーン規制」はスタッドレスでも通れない
ここが最も誤解される段階です。国土交通省の雪防災ページは「スタッドレスタイヤを着けていても、タイヤチェーンをしていない自動車はチェーン規制中に通ることはできません」と言い切っています。4WDも例外ではなく、同ページは4WD車両は重量が大きいため下り坂で急ブレーキをかけた時に止まるまでの距離が長くなると説明し、やはりチェーンを求めています。
出る条件は限られています。国土交通省によれば、チェーン規制は大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪があるときに行うもので、従来なら通行止めにしていた場面でチェーン装着車だけを通し、通行止めの時間を短くするのが目的です。普通の雪の日に出る規制ではありません。
場所も決まっています。急な上り下りがある峠などで過去に立ち往生や通行止めが起きた区間のうち、チェーンを着脱できる場所や、解除まで待機できる場所がある区間に限られます。2026年9月19日に確認した時点で国土交通省のページに載っている対象は、国道6区間・高速道路7区間の計13区間です。
| 区分 | 路線 | 区間・場所 | 延長 |
|---|---|---|---|
| 国道 | 112号(山形) | 月山道路 | 15.2km |
| 国道 | 138号(山梨・静岡) | 山中湖・須走 | 8.2km |
| 国道 | 7号(新潟) | 大須戸〜上大鳥 | 15.3km |
| 国道 | 8号(福井) | 石川県境〜坂井市 | 3.2km |
| 国道 | 54号(広島・島根) | 赤名峠 | 2.5km |
| 国道 | 56号(愛媛) | 鳥坂峠 | 7.0km |
| 高速 | 上信越道 E18 | 信濃町IC〜新井PA(上り線) | 24.5km |
| 高速 | 中央道 E20 | 須玉IC〜長坂IC | 8.7km |
| 高速 | 中央道 E19 | 飯田山本IC〜園原IC | 9.6km |
| 高速 | 北陸道 E8 | 丸岡IC〜加賀IC(石川・福井) | 17.8km |
| 高速 | 北陸道 E8 | 木之本IC〜今庄IC(福井・滋賀) | 44.7km |
| 高速 | 米子道 E73 | 湯原IC〜江府IC | 33.3km |
| 高速 | 浜田道 E74 | 大朝IC〜旭IC | 26.6km |
国道の各区間の起点・終点の地名は、国土交通省のページの一覧表に載っています。区間は追加や変更がありうるので、冬の遠出の前に同じページを見直してください。裏を返せば、この13区間を通らない人にチェーン規制は関係がなく、関係するのは①と②だけです。
チェーンの種類にも条件があります。国土交通省が挙げるのは、金属チェーン、ウレタン・ゴム製チェーン、アラミドなどの特殊繊維でできた布製カバータイプの3つで、スプレーのように薬剤を吹き付けるタイプではチェーン規制中に通れません。ただし布製について、JAFはデメリットとして規制に対応できない可能性を挙げています。布製を選ぶなら、パッケージや製品ページに「チェーン規制対応」と書かれているものにしてください。装着位置は駆動輪が基本です。前輪駆動なら前輪、後輪駆動なら後輪で、自分の車がどちらかは取扱説明書の諸元か、購入時の見積書の駆動方式の欄で確かめられます。
今日できること:側面を見る、経路を照らす、チェーンを合わせる
雪の予報が出てから慌てて探すより、秋のうちに済ませておくほうが落ち着いて選べます。今日できるのは次の4つです。
- タイヤの側面を読む。 「STUDLESS」「SNOW」、またはスノーフレークマークがあれば①と②を通れる冬用タイヤです。「M+S」だけなら②で止められる可能性があり、何もなければノーマルです。
- 冬に走る経路を13区間と照らす。 上の表の路線を通るなら、③が出たときチェーンがないと進めません。スキー場や帰省先への道も含めて見てください。
- チェーンをタイヤサイズに合わせて用意し、一度付けてみる。 サイズは側面の「195/65R15」のような表記です。NEXCO西日本は、チェーンの携行と付け方の事前確認を出発前の準備として挙げています。雪の中で説明書を初めて開く事態は避けたいところです。
- 規制の確認先を登録しておく。 NEXCO西日本は交通情報サイト「アイハイウェイ」とそのアプリ、Xのアカウント、道路上の情報板とハイウェイラジオを案内しています。走る高速道路会社の交通情報サイトをスマートフォンに入れておけば、出発前と休憩のたびに見られます。
10県の50%摩耗ルールに関わる人は、プラットフォームが出ていないかも合わせて見ておきます。出ていれば、その県では冬用タイヤとして数えられません。