お盆に実家の墓じまいを切り出すなら、どの順番で進める?改葬許可の実務

結論

先に決めるのは遺骨の移し先。改葬許可の申請先は移転先ではなく、今の墓がある市区町村です。書類は自治体で違うので様式の確認が先。帰省中は管理者への連絡と親族の合意形成まで進めるのが現実的です。

どうする?編集部 · · 読了 約10分
目次(16項目)
  1. 石材店より先に、遺骨の行き先を決める
  2. 許可を出すのは、今の墓がある側の市区町村
  3. 書類は3種類前後、ただし自治体で中身が違う
  4. 遺骨1体につき1枚が原則
  5. 寺の墓なら、書類より先に住職へ
  6. 見積書のどこを見るか
  7. 追加費用は、墓を開けてから出てくる
  8. 名義人が誰かで、必要な同意が変わる
  9. 墓は遺産分割の話し合いに乗らない
  10. 移し先の種類で、その後の手間が変わる
  11. 距離で決めると、通う人がいなくなる
  12. 永代使用料は戻らない、管理料は精算になる
  13. お盆の数日で進められること
  14. 何もせず管理料だけ止めたらどうなるか
  15. 途中で止めたくなったとき
  16. 参考資料

お盆に実家へ帰ると、墓の前で兄弟から「これ、あと何年うちで守れるかな」と切り出される。そういう夏を過ごした人は少なくないと思います。墓じまいは石材店に電話するところから始まると思われがちですが、最初に決めるのは「遺骨をどこへ移すか」です。移し先が決まらないと役所の手続きが動きません。先に決める順番さえ間違えなければ、帰省の数日でかなりのところまで進みます。

石材店より先に、遺骨の行き先を決める

墓じまいという言葉は、墓石を撤去して区画を管理者に返すところまでを指します。ただ、その工事は手続きのいちばん最後にあります。

先に決めるのは遺骨の移し先です。理由は単純で、役所に出す改葬許可申請書に「改葬の場所」を書く欄があるからです。新しい納骨先が空欄のままでは受け付けてもらえません。

お盆に親族が集まったとき、話題を「墓石の撤去費用」から入れると、金額の話でその日が終わります。「父さんと母さんの骨を、これからどこで預かってもらうか」から入ったほうが、話は前に進みます。

許可を出すのは、今の墓がある側の市区町村

遺骨を別の墓地や納骨堂へ移すには、市町村長の許可が要ります。墓地、埋葬等に関する法律の第5条に定められた手続きで、許可を出すのは遺骨が現にある場所の市町村長です。

つまり、東京に住んでいる人が秋田の実家の墓を片づける場合、申請先は東京ではなく秋田の市町村になります。自分の住民票のある役所へ行ってしまい、一度出直すことになる人がかなりいます。

許可が下りると改葬許可証が交付されます(同法第8条)。この紙がないと、新しい納骨先は遺骨を受け取れません。逆に言えば、許可証さえ手元にあれば納骨の日程は自分たちの都合で組めます。

交付手数料を取らない自治体が多く、横浜市のように無料と明記しているところもあります。お金がかかるとすれば、墓地の管理者に埋蔵証明を書いてもらうときの手数料のほうです。

書類は3種類前後、ただし自治体で中身が違う

一般に必要とされるのは、改葬許可申請書、今の墓地管理者による埋蔵証明、そして移し先の管理者が出す受入証明書です。

ところが自治体によって求めるものが違います。改葬許可申請書のなかに埋蔵証明の欄が組み込まれていて、管理者の署名だけで済む様式もあります。受入証明書を求めない自治体もあり、横浜市は改葬許可申請書と、墓地使用者と申請者が別人のときの承諾書だけで受け付けています。

だから最初にやることは、実家のある市区町村のサイトで様式を確認するか、電話で「改葬許可申請に何を持っていけばいいですか」と聞くこと。書式を先に取り寄せておけば、帰省中に管理者の署名までもらえます。

遺骨1体につき1枚が原則

改葬許可証は、遺骨1体ごとに交付されます。古い家の墓だと祖父母、曽祖父母と数体が納まっていることがあり、その人数分の申請が要ります。

困るのは、誰が入っているか正確に分からない場合です。墓誌に戒名しか刻まれていない、記録が寺の過去帳にしか残っていない。こうした状況は珍しくありません。まずは墓地管理者や菩提寺に埋蔵の記録を照会します。それでも判明しない分の扱いは自治体ごとに決まっているので、申請前に相談してください。「不詳」で受け付ける運用のところもあります。

墓を開けてみたら想定より遺骨が多かった、という話も実際に起きます。工事日を決める前に、管理者と一緒に一度中を確認しておくと後が楽です。

寺の墓なら、書類より先に住職へ

菩提寺の境内にある墓を引き払う場合、埋蔵証明を書くのは住職です。書類だけ郵送して署名を求めると、そこからこじれます。

順番としては、まず事情を伝えて相談する。そのうえで書類をお願いする。お盆と彼岸の前後は寺がいちばん忙しい時期なので、法要の当日ではなく日を改めて時間をもらったほうがいいです。

離檀料についても触れておきます。檀家をやめるときにお寺へ包む金額を指しますが、これを義務づける法律の規定はありません。長年供養してもらったことへの謝礼という性格のもので、金額も一律ではないです。高額を提示されて折り合わないときは、消費生活センターや弁護士会の法律相談で扱ってもらえます。感情の行き違いが大きい話なので、金額を争う前に一度第三者を挟んだほうが早く収まります。

見積書のどこを見るか

墓石の撤去費は、区画の広さ、石の量、そして重機が入れるかどうかで変わります。山の中腹にあって手作業で担ぎ下ろす墓と、車が横づけできる霊園の墓とでは、同じ広さでも金額が違ってきます。

見積書をもらったら、次の欄が分かれて書かれているかを確認します。

  • 墓石の解体・撤去と、石材の処分費
  • 重機や運搬にかかる費用
  • 区画を更地に戻す整地費用
  • 遺骨の取り出しと乾燥・洗浄
  • 閉眼供養(魂抜き)のお布施

最後のお布施は石材店ではなく寺への支払いなので、工事の見積もりとは別に見ておきます。「一式」とだけ書かれた見積書は、追加請求が出たときに争いになりやすい形です。相場を調べるより、2社に現地を見てもらって見積もりを並べるほうが当てになります。

追加費用は、墓を開けてから出てくる

見積もりどおりに終わらないことがあるのは、地面の下が見えないからです。よく聞くのは、カロートと呼ばれる遺骨を納める空間に水が溜まっていて、乾燥に日数がかかる場合。長く水に浸かった遺骨は、そのままでは新しい納骨先が受け取ってくれないことがあります。

想定より遺骨の数が多かった、骨壺が崩れて土に還りかけていた、というのも定番です。土に還った分をどう扱うかは移し先の受け入れ条件で変わるので、契約前に「土砂状になった遺骨も受け入れてもらえますか」と聞いておきます。ここを確認せずに工事を先に進めると、遺骨を出したあとで行き先を探し直すことになります。

区画が墓地の奥まった場所にあると、隣の区画に足場や養生をかける承諾が要ることもあります。前面道路を工事車両でふさぐなら道路使用許可の手配も乗ります。見積書の段階で「これ以外に発生しうる費用はありますか」と一度聞いておくと、あとで揉めません。

名義人が誰かで、必要な同意が変わる

墓地には使用者、つまり名義人がいます。改葬を申請できるのは原則この名義人で、名義人以外が動くなら承諾書や委任状が要ります。

名義人がすでに亡くなっていて、承継の手続きをしていないケースもよくあります。その場合は先に墓地管理者へ承継を届け出て、名義を整えるところからです。霊園によっては承継手数料がかかります。

法律上の同意が名義人まわりで足りても、実務では親族の納得が別問題です。あとから叔父や叔母が「聞いていない」と言い出すと、工事が止まります。お盆で顔がそろっているうちに、誰に連絡を入れるかを兄弟で決めておくと安全です。

墓は遺産分割の話し合いに乗らない

兄弟で話していると「墓は長男が継ぐものだろう」「いや、相続分に応じて負担すべきだ」といった言い合いになることがあります。ここは相続の一般ルールと切り離して考えます。

民法897条は、系譜・祭具・墳墓については通常の相続財産と別に扱い、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定めています。墓石と墓地の使用権はこの祭祀財産にあたるため、遺産分割協議で法定相続分どおりに分ける対象になりません。預貯金や不動産と同じ土俵に乗せようとすると、話が空回りします。

承継する人は、亡くなった方が指定していればその人。指定がなければ慣習により、慣習も明らかでなければ家庭裁判所が定めます。長男でなければならないという決まりはなく、実際に墓へ足を運べる人が引き受けるのが自然な形です。

見落とされやすいのが、相続放棄をした人でも祭祀承継者になれる点。借金を継ぎたくないから放棄したけれど墓は自分が見る、という組み立ては成り立ちます。放棄した兄弟を話し合いから外してしまい、あとで「勝手に決めた」となる家庭が少なくありません。

移し先の種類で、その後の手間が変わる

移し先には、永代供養墓、樹木葬、納骨堂、それに親族の墓への合祀といった選択肢があります。管理を寺や霊園に任せる契約なら、次の世代に同じ悩みを渡さずに済みます。

契約前に見ておきたいのは、個別に安置される期間です。「〇年後に合祀」と決まっている契約が多く、合祀された後は遺骨を取り出せません。気が変わっても戻せない性質のものなので、期間と合祀後の扱いは必ず書面で確認してください。

自宅で保管する手元供養や、海洋散骨を考えているなら、事前に役所へ問い合わせを。改葬許可は本来、別の墓地や納骨堂へ移すときの許可です。墓地以外へ移す場合の扱いは自治体で判断が分かれていて、許可証を出すところもあれば、別の書式で対応するところもあります。

距離で決めると、通う人がいなくなる

移し先選びで後悔が出やすいのは距離です。自宅の近くに移せば墓参りは楽になりますが、実家に残った親族は来られなくなります。逆に実家近くの永代供養墓へ移すと、片づけの動機だった「自分が通えない」という問題がそのまま残ります。

判断の材料は、これから10年、20年のあいだに誰が実際に手を合わせに行くのかを具体的に思い浮かべてみることです。年に一度も行かないと分かっているなら、駅から歩ける納骨堂のほうが結果として足が向きます。親族が集まる場を残したいなら、多少遠くても実家側に置く選択もあります。

見学は現地で。パンフレットでは分からない駐車場の有無、階段の段数、夏場に日陰があるかどうかが、高齢の親族が通えるかを決めます。

永代使用料は戻らない、管理料は精算になる

墓を返すときに気になるのが、最初に払った永代使用料です。多くの霊園や寺院では区画を使う権利の対価という位置づけで、預り金ではないため返ってきません。契約書や使用規則に返還の定めがあるかどうかを先に読んでおきます。

年間管理料のほうは、使った期間で精算されるのが通常です。滞納があると、清算するまで埋蔵証明を書いてもらえない場合があります。何年か放置していた墓なら、未納がいくら残っているかを管理者に確かめるところから始めてください。

お盆の数日で進められること

市区町村の役所にお盆休みはありません。8月13日から15日のうち平日にあたる日なら、帰省のついでに窓口へ寄れます。担当が戸籍の窓口か生活衛生の部署かは自治体で違うので、行く前に電話で確かめておくと空振りしません。

一方、石材店と寺はこの時期がいちばん詰まっています。現地見積もりの依頼はできても、実際に来てもらうのはお盆明けになると見ておいたほうがいいです。工事そのものも、繁忙期を避けた秋以降のほうが日程を組みやすくなります。

帰省中に片づくのは、墓地管理者への連絡、書類様式の入手、親族との合意形成、移し先の候補を2〜3か所に絞ること。ここまで進めば、自宅に戻ってからでも郵送と電話で回せます。

何もせず管理料だけ止めたらどうなるか

決めきれずに「とりあえず放っておく」を選ぶ家庭もあります。その先に何が起きるかは、制度の側にひととおり書かれています。

管理料の滞納が続いて連絡もつかない状態が長引くと、墓地の管理者は無縁墳墓として整理する手続きに入れます。墓地、埋葬等に関する法律施行規則では、官報への掲載と墓地への立札の掲示を1年間続け、申し出がなければ改葬できる流れになっています。

もっとも、これは管理者側の救済手段であって、費用を払わずに片づく裏道ではありません。連絡先が分かる限り管理者は使用者へ請求を続けますし、滞納分は残ります。何より、遺骨が最終的にどこへ合祀されたか家族に分からなくなる可能性があります。決断を先送りするにしても、管理者に事情を伝えて連絡が取れる状態は保っておいてください。

途中で止めたくなったとき

見積もりを取ったあとで「やっぱりもう少し続けよう」となるのは、悪い判断ではありません。改葬許可を申請する前なら、費用は発生していないはずです。

許可証の交付を受けた後でも、実際に遺骨を動かさなければ改葬は成立していません。ただし許可証に有効期限を設けている自治体があるので、保留にするなら期限だけ確認を。

工事の契約を結んだ後のキャンセルは、契約書の解約条項しだいです。着工前でも設計や手配の実費を請求されることがあります。署名する前に、途中でやめたときの負担がどう書かれているかを読んでおいてください。

参考資料

  • 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)
  • 厚生労働省 生活衛生関係(墓地・埋葬)
  • 横浜市「改葬(遺骨の移動)の手続き」
  • 東京都府中市「改葬許可申請」
お盆に実家の墓じまいを切り出すなら、どの順番で進める?改葬許可の実務 — くらし 関連イラスト (どうする?)
Photo by Elena Leya on Unsplash
#墓じまい #改葬許可 #お盆 #実家 #親族

参考資料

  1. 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)
  2. 厚生労働省 生活衛生関係(墓地・埋葬)
  3. 横浜市「改葬(遺骨の移動)の手続き」
  4. 東京都府中市「改葬許可申請」

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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