福祉用具の事業者やケアマネジャーから「要介護1だと介護ベッドは介護保険では借りられません」と言われることがあります。これは制度の説明としては正しいのですが、話はそこで終わりません。要支援1・2と要介護1でも、一定の状態に当てはまれば例外的に保険給付の対象になります。
最初に見るのは、直近の要介護認定で行われた認定調査の「基本調査」の結果です。ここが厚生労働省告示の定める状態に該当していれば、市区町村への申請をしないままで借りられます。該当していなくても、医師の所見を足して市町村の確認を受ける道が別にあります。
ただし、この確認はさかのぼりません。先に借りてからあとで出すと、その間の利用料は全額自己負担になります。ケアマネジャーへの相談を後回しにしないことが、金額のうえでは一番大きく効きます。
原則として借りられないのは9種目。手すりとスロープは入っていない
厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、福祉用具貸与の対象は13品目です。このうち、軽度者(要支援1・要支援2・要介護1)の状態像からは使用が想定しにくいとして、原則として保険給付の対象にならないものが決められています。
| 種目 | 軽度者(要支援1・2、要介護1)での扱い |
|---|---|
| 車いす、車いす付属品 | 原則対象外 |
| 特殊寝台(介護ベッド)、特殊寝台付属品 | 原則対象外 |
| 床ずれ防止用具、体位変換器 | 原則対象外 |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 原則対象外 |
| 移動用リフト(つり具の部分を除く) | 原則対象外 |
| 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するものを除く) | 原則対象外。要介護2・要介護3も対象外 |
| 手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ | 軽度者でも対象 |
| 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するもの) | 要介護度を問わず対象 |
対象外は9種目です。名古屋市の案内では、尿のみを自動的に吸引する機能のものは要介護認定区分を問わず貸与できるため、例外給付の対象にはならないとしています。
借りたときの自己負担は、介護サービス情報公表システムの説明では費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)です。福祉用具貸与は要介護度別のひと月の支給限度額の枠の中に入るので、デイサービスや訪問介護と同じ枠を分け合うことになります。
まず見るのは認定調査票の基本調査。ここで該当していれば市への申請はいらない
例外給付の判断は、平成27年3月23日厚生労働省告示第94号第31号が定める状態に当てはまるかどうかで行います。熊本市と札幌市の手引きは、同じ内容の表を掲げています。
| 対象外種目 | 厚生労働大臣が定める者 | 該当する基本調査の結果 |
|---|---|---|
| 車いす、車いす付属品 | 日常的に歩行が困難な者 | 基本調査1-7「3.できない」 |
| 車いす、車いす付属品 | 日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者 | 該当項目なし |
| 特殊寝台、特殊寝台付属品 | 日常的に起きあがりが困難な者 | 基本調査1-4「3.できない」 |
| 特殊寝台、特殊寝台付属品 | 日常的に寝返りが困難な者 | 基本調査1-3「3.できない」 |
| 床ずれ防止用具、体位変換器 | 日常的に寝返りが困難な者 | 基本調査1-3「3.できない」 |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 意思の伝達、介護を行う者への反応、記憶または理解に支障がある者 | 基本調査3-1が「1.調査対象者が意思を他者に伝達できる」以外、または3-2〜3-7のいずれかが「2.できない」、または3-8〜4-15のいずれかが「1.ない」以外。主治医意見書に認知症の症状がある旨の記載がある場合も含む |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 移動において全介助を必要としない者 | 基本調査2-2「4.全介助」以外 |
| 移動用リフト(つり具の部分を除く) | 日常的に立ち上がりが困難な者 | 基本調査1-8「3.できない」 |
| 移動用リフト(つり具の部分を除く) | 移乗において一部介助または全介助を必要とする者 | 基本調査2-1「3.一部介助」または「4.全介助」 |
| 移動用リフト(つり具の部分を除く) | 生活環境において段差の解消が必要と認められる者 | 該当項目なし |
| 自動排泄処理装置(尿のみを吸引するものを除く) | 排便において全介助を必要とし、かつ移乗において全介助を必要とする者 | 基本調査2-6「4.全介助」かつ2-1「4.全介助」 |
車いすと移動用リフトは複数の条件のいずれかに当てはまればよく、認知症老人徘徊感知機器と自動排泄処理装置は条件のいずれにも当てはまる必要があります。
基本調査の結果が表に該当していれば、追加の手続きはいりません。熊本市の手引きも、この場合は「市への申請は不要ですが、最新の調査結果をケアプランと一緒に保管しておいてください」と案内しています。事業者から対象外と言われた時点で、調査結果を確認せずに引き下がらないでください。
認定調査票は本人や家族が市区町村に開示請求して受け取れますが、ふだんはケアマネジャーが調査結果を見られる立場にあります。まずは担当者に「基本調査の1-3と1-4はどうなっていますか」と具体的に聞くのが早道です。
なお、札幌市の資料は昇降座椅子について補足を置いています。認定調査項目で判断するときは「立ち上がり」ではなく「移乗」を使います。「立ち上がり」は椅子やベッド、車いすに座った状態からの立ち上がりを評価する項目で、床からの昇降を助ける昇降座椅子には合わないためです。
基本調査に項目がない2つは、ケアマネジャーの判断で通る
上の表のうち、車いすの「日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者」と、移動用リフトの「生活環境において段差の解消が必要と認められる者」には、対応する基本調査の項目がありません。
ここには別の判断経路が用意されています。熊本市の手引きによれば、医師の所見確認とサービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントに基づくケアマネジャーの判断で保険給付の対象になり、この場合も市への申請はいりません。ただし医師の所見がわかる書類とサービス担当者会議録等は保管が必要です。札幌市も、この2つに該当する場合は市町村の確認を受ける必要はないと明記しています。
つまり車いすと移動用リフトは、基本調査で外れていてもこの2項目で拾われる場合があり、そのときは市町村の確認がいりません。特殊寝台や床ずれ防止用具にその逃げ道はないため、次の手続きに進むことになります。
基本調査で外れたときの入口は、医師の所見による3つの状態
基本調査の結果が告示の状態に該当しない場合でも、疾病その他の原因によって次のいずれかに当てはまると医師の医学的な所見に基づいて判断され、かつサービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにより福祉用具貸与が特に必要と判断されていれば、市町村の確認を経て対象になります。
- 状態が変動しやすく、日によって、または時間帯によって、頻繁に告示の状態像に該当する(例:パーキンソン病の治療薬によるオン・オフ現象)
- 状態が急速に悪化し、短期間のうちに告示の状態像に該当することが確実に見込まれる(例:がん末期の急速な状態悪化)
- 身体への重大な危険性または症状の重篤化の回避等、医学的判断から告示の状態像に該当すると判断できる(例:ぜんそく発作等による呼吸不全)
どういう場合が通るのか、両市の手引きは具体例を挙げています。重度の関節リウマチで朝方に関節のこわばりが強くなり時間帯によって体を動かせなくなる、筋萎縮性側索硬化症が進行して体が動かせなくなりつつある、といった例です。福祉用具で危険を避ける側の例も載っています。重度の心疾患で特殊寝台により急激な動きを避けて心不全発作の危険を回避する、重度の逆流性食道炎で特殊寝台により上体を一定の角度に起こして誤嚥性肺炎の危険を回避する、人工股関節の術後で移動用リフトにより立ち座りの際の脱臼を避ける、といった場合です。
両市とも、例示されていない疾病でも条件を満たせば対象になることがあり、逆に例示されている疾病でも必ず対象になるとは限らないと断っています。判断されるのは病名ではなく状態像です。
医師に書いてもらうのは病名ではなく、動けなくなる場面
ここで差が出るのが、医師の回答の書き方です。熊本市の手引きは、「(疾患名)のため、(福祉用具)が必要である」では3つの状態像のどれに合致するのか判断できないとして、福祉用具が必要であることの具体的な状態像を書くよう求めています。
同じ手引きが載せている記載例は、特殊寝台の場合で次のようなものです。「パーキンソン病で、急激な症状の軽快・増悪が頻繁に起き、日によって、全く体を動かせない状態になるため、特殊寝台が必要である」。「末期がんで、急激な状態悪化により体が動かせなくなることが予想されるため、特殊寝台が必要である」。「重度の喘息発作があるため、特殊寝台の利用により、一定の角度に上体を起こすことで、呼吸不全の危険性を回避する必要がある」。
医学的所見の確認方法は、札幌市の資料では主治医意見書による確認、医師の診断書による確認、担当の介護支援専門員等の聞き取りによる確認のいずれでも構わないとされています。書面での回答が難しければ、聞き取りでも進められます。
受診に付き添う家族は、診察の場で「どの福祉用具がなぜ必要か」を医師に伝えられるよう、困っている場面を具体的に用意しておくと話が早くなります。
市町村に出すのはケアマネジャー。家族が窓口へ行く手続きではない
確認依頼を出すのは居宅介護支援事業者または介護予防支援事業者です。三鷹市の案内でも、提出者はケアマネジャーとされています。本人や家族が市役所の窓口に行って済ませる手続きではありません。
熊本市が挙げている提出書類は次の4点です。
- 軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付の確認申請書(市の様式)
- 医学的所見の確認書類(主治医意見書、診断書など)
- サービス担当者会議の内容がわかるもの(要介護はサービス担当者会議の要点、要支援は介護予防支援経過記録)
- 2と3に基づいたケアプラン(要介護は居宅サービス計画書の第1表・第2表、要支援は介護予防サービス・支援計画表)
様式の名前と添付書類の呼び方は市区町村ごとに違います。三鷹市は確認申請書兼確認通知書、居宅サービス計画書、医師の所見という組み合わせで案内しています。提出方法も、三鷹市は電子申請・窓口提出・郵送の3通りを示しています。実際に出すときは、住んでいる市区町村の介護保険担当課の様式を使ってください。
確認より前に借りていた期間は、保険が効かない
ここがお金に直結します。熊本市が定める保険給付の確認期間は、初日が申請日(事前連絡があった場合はその日)で、長さは初日が属する月から起算して最長6か月間です。6か月経過する前に認定有効期間が終了する場合は、その日までになります。そのうえで、申請前から利用していた場合その期間は保険給付の対象と認められないと明記しています。
札幌市も同じ扱いで、市町村確認結果通知書に記載された年月日の属する月から実施でき、それより前の期間に確認が必要な福祉用具貸与の利用があった場合は保険給付の対象とならず全額自己負担になる、としています。決定日が申請日より前になることはないとも書かれています。
提出の時期は自治体で幅があります。三鷹市は原則として貸与開始前に申請書類を提出するとし、やむを得ない場合は貸与開始日より14日以内としています。認定結果を待っている間に暫定ケアプランで始めるときの扱いも、市区町村ごとに決められています。札幌市の場合、暫定ケアプランを作成した時点で軽度者となるおそれがあると判断したら依頼書を出し、認定の結果が軽度者だったときは依頼日にさかのぼって適用されます。
急いで借りたい事情があるときほど、ケアマネジャーに「いつ出してもらえるか」を先に確かめてください。
期間が切れる前と、種目を増やすときは出し直す
確認は一度受ければ終わりではありません。熊本市は、次の場合に改めて手続きが必要だとしています。確認有効期間の終了後も継続して使う場合(期間終了前の手続きが必要)、福祉用具の種目を変更・追加する場合、区分変更申請をする場合、居宅介護支援事業所を変更する場合です。
この最後の一つは市区町村で扱いが分かれます。札幌市は、すでに市町村確認結果通知書を受けていて変更内容が居宅介護支援事業所や介護予防支援事業所のみである場合は、依頼書の提出が不要としています。事業所を変えるときは、変更先のケアマネジャーに自分の市区町村での扱いを確認してもらってください。
使い続ける間の見直しも決まっています。熊本市は、要介護の利用者については月1回のモニタリング、要支援の利用者については介護予防ケアプランの評価(最長6か月)によって必要性を見直し、結果を記録しておくよう求めています。見直しの結果、不要と判断されたときは貸与中止となり、区役所の福祉課に連絡することになります。
なお熊本市は、事後の実地調査や監査等で必要な手続きが行われていないことが判明した場合、保険給付の返還対象となることがあるとも書いています。手続きを飛ばしたまま借り続けるのは、あとで戻す話になりかねません。
対象外のままになったときに残る手
医師の所見が得られない、あるいは市町村の確認が下りないこともあります。そのときに残る選択肢は限られますが、整理しておきます。
全額を自分で払って借りることはできます。札幌市が確認前の利用を「全額自己負担になります」と書いているとおり、保険が使えないだけで貸与そのものができなくなるわけではありません。福祉用具貸与事業者に保険外で借りたい旨を伝えれば見積もりが出ます。月額は商品ごとに違うので、同じ種目で複数の見積もりを取ってください。
買う制度に振り替えられるかというと、特殊寝台や車いすについては振り替えられません。特定福祉用具販売の対象は、腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、歩行補助つえ(松葉づえを除く)です。同一年度で購入できるのは10万円までで、指定を受けた事業者から購入する必要があります。介護ベッドや車いす本体はこの一覧に入っていません。
もう一つは、認定そのものを見直してもらう道です。熊本市の手引きが再申請の必要な場合に区分変更申請を挙げているとおり、区分変更をすれば要介護度が変わる可能性があり、要介護2以上になれば、自動排泄処理装置を除く8種目は原則対象外から外れます。ただし調査のやり直しになるため、いま困っている分には間に合わないことがあります。急ぐ場合は例外給付の手続きと並行して考えることになります。
参考資料
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「福祉用具貸与」「特定福祉用具販売」
- 熊本市 軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付について(令和4年9月、介護保険課認定給付班)
- 札幌市 軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付(令和7年度版、保健福祉局高齢保健福祉部介護保険課)
- 三鷹市 軽度者福祉用具貸与の例外給付確認申請について
- 名古屋市 軽度者に係る福祉用具貸与費の例外給付について