介護保険の負担割合が8月から2割に上がったのはなぜ?前年所得の確認と戻る可能性
負担割合は前年所得で毎年8月に見直される。2割は本人の合計所得金額160万円以上かつ世帯の年金収入等が単身280万円・2人以上346万円以上が条件。不動産売却など一時的な所得が原因なら来年8月に1割へ戻る可能性がある。
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7月の終わりに市区町村から届く介護保険負担割合証。封筒を開けたら「2割」と印字されていて、去年までの1割から倍になっていた——8月の切り替え時期に毎年増える相談です。負担割合は前年の所得をもとに市区町村が自動で判定し、8月1日から翌年7月31日まで適用されます。手元の証で適用期間と割合の欄をまず確かめ、次に去年の収入を思い返してください。実家の売却や株の利益といった単発の所得が原因なら、来年8月に1割へ戻る可能性があります。判定の仕組み、心当たりがないときの調べ方、月々の支払いがどこまで増えるかを順に見ていきます。
2割の判定は「本人の所得」と「世帯の年金収入」の2段階
自己負担が2割や3割になるのは65歳以上の方だけです。40〜64歳で特定疾病により介護保険を使っている方は、所得がいくらあっても1割のまま変わりません。まずここで、そもそも対象かどうかが分かれます。
65歳以上の場合、次の両方に当てはまると2割になります。
- 本人の合計所得金額が160万円以上
- 同じ世帯の65歳以上の方の「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が、単身世帯で280万円以上、65歳以上が2人以上いる世帯で346万円以上
本人の合計所得金額が220万円以上で、年金収入等が単身340万円以上・2人以上世帯463万円以上に達すると3割です。逆に言えば、本人の所得が160万円を超えていても、世帯側の基準に届かなければ1割に据え置かれます。片方の条件だけでは上がらない——ここがこの判定の分かりにくさです。
「合計所得金額」は収入そのものではなく、年金や給与から控除を差し引いた後の額を指します。住民税の課税証明書に記載があるので、正確な数字を知りたいときはこの書類が出発点になります。
年金収入だけなら、どこから2割に届くか
数字だけ並べてもイメージしにくいので、単純な例で確かめます。65歳以上の公的年金には110万円の控除枠(年金収入330万円以下の場合)があります。
一人暮らしで年金収入が250万円だけなら、合計所得金額は控除後の140万円。160万円に届かず、1割のままです。年金収入が280万円あると、合計所得金額は170万円で本人基準を超え、年金収入も単身世帯の基準280万円に達するので2割になります。年金だけの一人暮らしでは、おおよそ年280万円がひとつの境目です。
夫婦の場合は1人ずつ判定される点に注意してください。夫の年金収入が300万円、妻が90万円の世帯なら、世帯の年金収入等は390万円で346万円の基準を超えます。このとき夫は合計所得金額190万円で2割ですが、妻は本人の所得が160万円未満なので1割のまま。同じ世帯でも負担割合証の記載が夫婦で違う、という結果は普通に起こります。
判定のもとになるのは前年1年間の所得
8月から適用される割合は、前年1月〜12月の所得で決まります。2026年8月からの割合なら2025年分です。申請の手続きはなく、市区町村が住民税の課税情報から職権で判定します。
つまり、今年の暮らしがどれだけ年金頼みでも、去年の所得が基準を超えていれば今年8月からの1年間は2割。この時間差が「今は収入がないのになぜ」という違和感の正体です。
見るべき書類の年度にも注意が必要です。2026年8月からの割合を確かめるなら、取り寄せるのは2026年度(令和8年度)の課税証明書で、そこに載っているのが2025年分の所得。1年前の古い証明書と見比べても答え合わせにはなりません。
心当たりがないのに上がったときに多い原因
去年の所得に思い当たる節がなければ、次のどれかに該当していないかを確かめてください。
実家や土地を売った。 不動産の譲渡所得は合計所得金額に含まれます。施設入所に合わせて自宅を処分した、空き家を売ったという翌年に2割へ上がる例は典型です。
株や投資信託の利益を確定申告した。 源泉徴収ありの特定口座で申告しなければ判定に影響しませんが、損益通算や還付を目的に確定申告すると、その譲渡所得が加算されます。NISA口座の利益はもともと非課税なので関係ありません。
世帯の顔ぶれが変わった。 配偶者が65歳になった、同居や世帯分離があった、といった変化で「年金収入とその他の合計所得金額」の合算対象が入れ替わります。本人の所得は同じでも、世帯側の基準で結果が動くことがあります。
年金以外の収入が増えた。 個人年金の受け取り開始、家賃収入、働いて得た給与。こうした上乗せも合計所得金額を押し上げます。
なお、これを逆手に取って「世帯分離すれば1割に戻せるのでは」と考える方もいますが、住民票の世帯は生計の実態に合わせるのが原則です。高額介護サービス費や施設の補足給付など他の制度にも影響が及ぶため、負担割合だけを見て動くのは勧めません。
月々の支払いはどこまで増えるか
負担割合が1割から2割になれば、介護サービス費の自己負担は計算上そのまま2倍です。月8,000円なら16,000円、月3万円なら6万円。要介護度が高く利用量が多い方ほど、金額の増え方は大きくなります。
もっとも、青天井ではありません。高額介護サービス費という月額上限の仕組みがあり、住民税課税世帯(一般区分)なら世帯合計で月44,400円を超えた分が申請により払い戻されます。年収が現役並みに高い世帯は上限が93,000円または140,100円に上がりますが、そこに達していなければ44,400円で頭打ちです。利用量の多い方は、2倍になった請求額がこの上限を超えていないかを毎月の利用明細で見てください。
上限超過の対象になると、初回は市区町村から申請書が郵送されてきます。一度手続きすれば、以降は登録した口座へ自動で振り込む自治体が多く、毎月の申請は不要です。最初の封筒だけ見落とさないようにしてください。
特別養護老人ホームなどの施設に入っている場合、食費と居住費はもともと保険給付の枠外なので、負担割合が変わっても動きません。増えるのは介護サービス費の部分だけです。
請求書で初めて気づいた場合
7月に届いた封筒を開けないまま、9月にデイサービスの請求額が倍になって初めて気づく——このパターンも珍しくありません。まず郵便物を探し、見つからなければ市区町村で再交付を受けられます。負担割合は証の受け取りとは無関係に8月1日から適用されているため、「見ていないから1割のまま」にはなりません。事業所への提出が遅れていた場合は、コピーを渡して以降の請求を正しい割合で計算してもらいます。
一時的な所得増なら来年8月に戻る見込み
不動産売却のような単発の所得が原因であれば、翌年の判定ではその所得が消えます。来年7月に届く負担割合証で1割に戻るのが通常の流れで、「一度2割になったらずっと2割」ではありません。
気をつけたいのは、修正申告や税務署の更正で前年の所得が動いた場合です。課税情報が変わると年度の途中でも負担割合が変更され、新しい負担割合証が交付されます。さかのぼって差額を精算することもあるため、申告をやり直したときは市区町村の介護保険窓口に一報を入れておくと、後の混乱が減ります。
判定に疑問があるときの確認手順
記載された割合に納得がいかないときの動き方です。
最初に市区町村の介護保険課へ電話し、判定に使われた所得額を確認します。どの所得がいくらで計上されたか、本人か代理の家族が説明を受けられます。手元に最新年度の課税証明書があると照合が早く済みます。
説明を聞いてもなお誤りがあると考える場合は、都道府県の介護保険審査会に審査請求ができます。負担割合証を受け取った日の翌日から3か月以内という期限があるので、疑問を持ったまま先送りしないことです。
新しい負担割合証は、ケアマネジャーと利用中の事業所にコピーを渡します。確認中であっても8月1日以降の請求はいったん記載どおりの割合で計算され、判定が覆れば後から差額精算になります。サービスの利用自体は止めずに手続きを進めてください。
「2割の対象拡大」はまだ検討段階
社会保障審議会では、2割負担の対象者を広げる案が議論されています。ただ、対象の線引きも実施時期もまだ決まっていません。SNSで「来年から年金生活でも2割になる」といった話が流れることがありますが、現時点で確定した制度変更はなく、いま手元にある負担割合証の判定基準はこの記事に書いたとおりです。改正の正式な情報は厚生労働省の発表で確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」— 制度全体と利用者負担の仕組み
- 厚生労働省「介護保険における利用者負担割合について」— 2割・3割の判定基準
- お住まいの市区町村の介護保険課 — 個別の判定内容と審査請求の窓口
参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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