実家に手すりを付けたい。介護保険の20万円は、工事を頼む前に申請しないと出ない

結論

介護保険の住宅改修費は工事を始める前に市区町村へ申請するのが条件で、先に工事をすると原則として一円も出ません。上限は20万円、手元から出るのはそのうち1〜3割です。最初の連絡先は工務店ではなく、親のケアマネジャーか地域包括支援センターになります。

どうする?編集部 · · 読了 約7分
目次(11項目)
  1. 工事より先に、紙を出す
  2. 20万円は工事代金の上限で、もらえる額ではない
  3. 保険が見てくれる工事は決まっている
  4. 見積書に載っていても、保険の対象から外れるもの
  5. 枠が戻ってくる条件が二つある
  6. 最初の電話は工務店にかけない
  7. 全額を立て替えるかどうかは、自治体で違う
  8. 要支援でも使える
  9. 家の名義と、住んでいる場所
  10. 帰ったときに見ておく五か所
  11. 参考資料

久しぶりに実家へ帰って、玄関の上がり框で親がふらつくのを見た。廊下に手すりがあれば違うと思って業者に見積もりを頼み、工事を終えてから領収書を市役所に持っていったら、一円も出なかった。この順番の間違いは毎年繰り返されています。介護保険の住宅改修費は、工事を始める前に市区町村へ申請しておくことが支給の条件だからです。手すりを付けたいと思った時点で最初に連絡するのは、工務店ではありません。親のケアマネジャーか、住所地の地域包括支援センターです。上限は20万円、手元から出るのはそのうち1〜3割で済みます。

工事より先に、紙を出す

介護保険の住宅改修費は、工事が終わってから領収書を持っていく制度ではありません。着工前に市区町村の介護保険担当課へ書類を出し、受け付けられたことを確認してから工事に入ります。逆になった分は原則として対象外です。

事前に出すのは次の書類です。

  • 支給申請書
  • 住宅改修が必要な理由書
  • 工事費見積書。工事箇所ごとに単価が分かる形で作ってもらう
  • 改修前の写真。日付が入ったもの
  • 完成後の状態が分かる図面
  • 住宅の所有者が本人でない場合は、所有者の承諾書

このうち理由書は家族が書くものではありません。厚生労働省の通知で、作成する者は介護支援専門員(ケアマネジャー)と地域包括支援センターの担当職員と定められています。書類をそろえようとした時点で、どちらかとやり取りする流れに乗る設計になっています。

20万円は工事代金の上限で、もらえる額ではない

支給限度基準額は20万円です。要介護1でも要介護5でも同じ額で、要介護度が重いほど枠が増える仕組みではありません(厚生省告示第35号)。

間違えやすいのは、この20万円が手元に入る額だと読んでしまうところ。20万円は保険が面倒を見てくれる工事代金の上限で、そのうち本人の負担割合にあたる分は自分で払います。1割負担の人が20万円の工事をすれば、自己負担は2万円、保険から18万円。2割負担なら4万円、3割負担なら6万円が持ち出しです。

工事が20万円に収まらなかったときは、超えた分がまるごと自己負担に乗ります。25万円の工事なら、20万円までの部分に保険が効いて、残り5万円はそのまま加算される計算です。

保険が見てくれる工事は決まっている

対象になる工事は次のものに限られます。

  1. 手すりの取付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止や移動をしやすくするための床材の変更
  4. 引き戸などへの扉の取替え
  5. 洋式便器などへの便器の取替え
  6. 上の五つに付帯して必要になる工事

言葉は硬いのですが、中身は生活の場面そのままです。廊下や階段や浴室に手すりを付ける。玄関の上がり框、浴室の出入口の段差をなくす。濡れると滑る浴室の床を、滑りにくい材質に張り替える。体重をかけないと開かない開き戸を引き戸に替える。和式便器を洋式に替える。

六つめの付帯工事は、それだけでは対象になりません。手すりを固定するために壁の下地を補強する、段差をなくしたあとに床の高さを合わせる。主たる工事に伴って避けられない部分を指します。

見積書に載っていても、保険の対象から外れるもの

見積書に並んだ項目が全部保険の対象になるわけではありません。

分かりやすいのが、和式から洋式へ便器を替えるときの温水洗浄便座です。便器の取替えそのものは対象ですが、洗浄機能を付けるための費用は住宅改修としては見てもらえません。床材の変更でも、滑り止めが目的ではなく見た目を整えるための張り替えは外れます。新築、増築、老朽化した部分の修繕も対象外です。

手すりにも線引きがあります。壁に固定する手すりは工事なので住宅改修。床に置くだけのものや、床と天井で突っ張って支えるタイプは工事ではないので、福祉用具のレンタルや購入として扱われます。どちらも介護保険から出るのですが、財布が別なので、20万円の枠を使わずに済む場合がある。ケアマネジャーに「これは住宅改修と福祉用具のどちらで出せますか」と聞いてみると、枠の使い方が変わってきます。

枠が戻ってくる条件が二つある

20万円は、一人につき一つの住宅で生涯の上限です。年度が替わっても復活しません。

例外が二つ用意されています。

一つは転居したとき。住む家が変われば、新しい住宅について改めて20万円まで使えます。

もう一つが、要介護状態区分が3段階以上重くなったときです。ここで注意したいのは段階の数え方で、要支援1から要介護5までを順番に並べたものとは違います。厚生労働省が定めた区分表では要支援2と要介護1が同じ段階に置かれているため、単純に数えると1段階ずれます。

区分表を並べて数えてみたのですが、ここは一度では頭に入りませんでした。親が該当するかどうかは、市区町村の介護保険担当課かケアマネジャーに「住宅改修の枠は戻っていますか」と聞くほうが早い。

このリセットは、認定結果が変わったときに家族が気づかないまま使わずに終わることが多い部分です。区分変更や更新で要介護度が上がったら、そのつど聞いておくと取りこぼしが減ります。

最初の電話は工務店にかけない

親に担当のケアマネジャーがいるなら、その人が最初の連絡先です。理由書を書くのはケアマネジャーですし、業者との日程調整や書類の受け渡しも引き受けてもらえます。

まだ介護保険を使っていない、要介護認定も受けていないという段階なら、先にもう一手間かかります。住宅改修費は要支援・要介護の認定を受けた人が使う制度なので、認定申請が先です。窓口は親の住民票がある市区町村。地域包括支援センターに電話すれば、申請の代行を無料で頼めます。センターは市町村が設置した高齢者の相談窓口で、市町村名と一緒に検索すると出てきます。

認定を待つあいだに工事の話を進めておきたくなりますが、申請書を出せるのは認定が出てからです。この期間に、どこを直したいかを写真に撮っておくと後の相談が早くなります。

全額を立て替えるかどうかは、自治体で違う

支払い方法には二通りあります。

原則は償還払いです。工事代金の全額をいったん業者に払い、あとから市区町村へ請求して保険給付分が口座に振り込まれます。20万円の工事なら、まず20万円を用意する必要がある。振り込みまでは申請からおおむね1〜2か月かかります。

これに対して受領委任払いは、自己負担分だけを業者に払い、残りは市区町村から業者へ直接支払われる形です。20万円の工事で1割負担なら、手元から出るのは2万円だけになります。

受領委任払いが使えるかどうかは自治体によって異なり、使える場合も業者側が事前に登録している必要があります。まとまった額を立て替えたくないなら、見積もりを取る前に市区町村の介護保険担当課へ「受領委任払いは使えますか、対応している業者の一覧はありますか」と聞いておいてください。業者選びの条件が一つ増えるので、順番が大事です。

要支援でも使える

要介護1以上でないと使えないと思われがちですが、要支援1・要支援2でも対象です。制度上の名前が介護予防住宅改修費に変わるだけで、上限20万円も対象工事も同じ扱いになります。

違うのは窓口です。要支援の人のケアプランは地域包括支援センターが担当するので、理由書もそちらの職員に依頼します。

家の名義と、住んでいる場所

改修する家が親の持ち家でないときは、所有者の承諾書が必要です。借家なら大家さん、子ども名義の二世帯住宅なら子ども、共有名義なら共有者全員から書面をもらいます。

賃貸の場合は、退去するときに原状回復を求められるかどうかも先に話しておいたほうがいい。手すりを外して壁を直す費用は保険の対象外なので、あとから思わぬ出費になります。

親が施設に入居している、入院中というときは使えません。住宅改修費は自宅で暮らす人のための制度で、住民票のある自宅に戻って生活することが前提だからです。退院に合わせて先に直しておきたい事情はよくあるので、退院日の見通しが立った段階での相談先は、ケアマネジャーと市区町村の介護保険担当課の両方です。

帰ったときに見ておく五か所

制度が分かっても、どこを直すかが決まらなければ見積もりも取れません。年に数回しか実家に行かないなら、次の場所を実際に歩いてみてください。

  • 玄関の上がり框。靴を履くとき、どこかに手をついているか
  • 廊下から浴室までの動線。途中で壁伝いに歩いていないか
  • 浴槽をまたぐ動き。縁に腰かけずに、立ったまま足を上げていないか
  • トイレ。立ち上がるときに便座や手洗い台に手をついているか
  • 階段。手すりが片側だけの家は多い。下りるときに使う側に付いているか

本人に聞けば「大丈夫」と返ってきます。歩いているところを後ろから見るほうが分かる。

気になる場所が見つかっても、その場でリフォーム業者を探さないでください。まずケアマネジャーか地域包括支援センターに電話する。順番さえ守れば、あとは書類が流れていきます。

参考資料

  • 厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(老企第42号)
  • 厚生労働省「居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び介護予防住宅改修費支給限度基準額」(厚生省告示第35号)
  • 厚生労働省「要介護認定」
実家に手すりを付けたい。介護保険の20万円は、工事を頼む前に申請しないと出ない — くらし 関連イラスト (どうする?)
Photo by Bailey Alexander on Unsplash
#介護保険 #住宅改修 #手すり #地域包括支援センター

参考資料

  1. 厚生労働省 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(老企第42号)
  2. 厚生労働省 居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び介護予防住宅改修費支給限度基準額(厚生省告示第35号)
  3. 厚生労働省 要介護認定

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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